「営業の数値管理はどのようにしたらいいのか?」「KGIやKPIによって、営業の数値管理することで、売上向上につなげられるのか?」「営業の数値管理しているつもりなんだけど、なぜか上手く機能していないと感じる…」そのようなお悩みを抱えている営業マネージャーや営業マンの方も多いと思います。
これまで、営業は営業マン一人ひとりの頑張り次第と考えられてきましたが、近年では組織全体で成果を上げていくことの重要性が認識されるようになりました。営業を数値管理することにより、営業の属人化を防ぐことができ、チームとしての進捗管理や一人ひとりの課題の発見や改善が行いやすくなるというメリットがあります。しかしながら、営業の数値管理をおこなうためには、適切な手順を踏む必要もあります。
本記事では、営業の数値管理の概要を紹介した上で、KGIやKPIと数値管理との関連性、数値管理の設定方法などについて解説します。
目次
営業数値管理とは
営業数値管理とは、営業部内の目標に対する実績を数値で管理することです。営業部は、会社の利益を生みだす部署でもあるため、営業部が目標を達成できているか否かが、企業の将来を左右するといっても過言ではありません。数値による目標管理は、目標値と成果(売上など)との差(ギャップ)を管理するということから、「ギャップ管理」と言われることもあります。
最も多くの企業で営業数値管理の指標とされるのは、年間あるいは月間の売上目標ではないでしょうか。過去の実績や業界の動向、競合他社の状況などに基づき、適切な売上数値目標が設定ができれば、営業マンのモチベーションを高め、売上を底上げすることに繋がります。
とは言え、営業数値管理は売上の目標と成果だけを管理するだけではありません。例えば、業界内での「シェア率」「粗利率」「売上単価」など、さまざまな指標で目標値を設定することもあります。あるいは、「案件数」や「アポの取得数」「商談数」など、売上に至るまでの過程の数値を管理することもあります。
前提として重要となるのは、営業活動を営業マン一人ひとりの感覚や管理で終わらせるのではなく、営業活動を数字で可視化して組織全体で管理するということです。
営業数値管理がなぜ大切なのか
営業数値管理が重要であることの最大の理由は、数値管理をすることで営業活動を科学的に分析できることです。特に、営業活動を細分化して管理をすることにより、営業活動を定量的に評価して、ボトルネック(上手くいっていない主な原因)や改善点がどこなのかを把握することに繋がります。
営業の数値管理が営業活動の科学的な分析につながる点を理解するためには、逆に「営業数値管理を行わない状況」をイメージすると理解しやすいかと思います。
営業活動や売上の管理を各営業マンに任せていると、営業マンによって営業活動の内容や成果に大きな違いが生まれてしまいます。営業マネージャーの立場で考えると、見込み度が高そうで、あてにしていた案件が想定外に失注してしまったり、商談成立の時期が大きくずれ込んでしまったりすることが頻繁に起こってしまう状況が考えられます。
そして、数値管理ができていない状況下で目標達成ができていない営業マンがいる場合、「なぜ目標が達成できていないのか?」「目標を達成するためにどこから改善すれば良いのか?」といった点について客観的に判断することが難しいということです。改善ポイントが分からないまま、マネージャーが部下の指導にあたっても、効果的な対策ができない可能性が高いでしょう。
一方、細分化した数値管理をしていれば、ボトルネックを明確にすることができます。最終的な目標が未達の理由として、「商談数が不足している」「リードの獲得数が少ない」「商談の成約率が悪い」といったようにチームの課題を明確にすることができるため、次にどこに注力して取り組むべきかが明確になり、売上の向上につなげることができます。
例えば、商談の成約率に課題が生じていそうな場合には、成果を上げている営業マンの商談内容を分析し、他の営業マンに共有して落とし込みます。商談における「挨拶・アイスブレイク → 課題のヒアリング → 解決手法の提案 → クロージング」といった一連の活動を可視化し、行動レベルに落とし込むことで、属人化しがちな営業活動を、組織的・科学的に対応できるようになります。
営業マン数値管理とKPIの関係
営業マンの数値管理をおこなう際に、適切なKPI(Key Performance Indicators)を設定することは重要です。KPIとは、日本語で「重要業績評価指数」と訳されており、組織としての目標を達成するために重要となる中間目標のことを指します。KPIは最終目標を達成するためのカギとなる数値目標なので、KPIを達成できれば最終目標達成できる可能性が高い項目を、数値化して設定することが大切です。
例えば、最終目標である売上目標の達成を実現するために、DMの送付件数が最もカギとなる場合、KPIとして「DM送付からの反響数〇〇件」というように設定します。KPIの設定方法として、覚えておくと便利なのが「SMARTの法則」です。
「SMARTの法則」とは、
S(Specific)= 明確性(具体的で明確である)
M(Measurable)= 計量性(数値化されている)
A(Achievable)= 現実性(実現可能である)
R(Result-oriented or Relevant)= 結果指向・関連性(目標と関連している)
T(Time-bound)= 適時性(期限が定められている)
のことで、KPIを設定する際に最もやってしまいがちな過ちが、KPIを沢山設定してしまうことです。KPIは「目標に対してカギとなる指標」なので、可能な限りすくすることも大切です。KPIを少なくすることには、以下のようなメリットがあります。
- 注力するポイントが明確になり、成果が出やすくなる
- 営業マン一人ひとりの成長スピードが速くなる
- KPIを押さえて成果を上げることにより、数値目標にも意識が持てるようになる
(例えば、DM反響数をKPIとして設定した際に、さらに売上を伸ばすために案件化率や商談化率を意識するようになるなど)
一方、多くのKPIを設定してしまった場合には、重要ポイントがぼやけてしまい、結局何が重視すべきポイントがなのかわかりづらくなってしまいます。その結果、成果を出すことも難しくなってしまいます。
営業部における数値管理の課題
多くの営業現場では、適切な数値管理がおこなわれていない場合がまだまだ多く見られます。では、いったいどのような課題が見られるのでしょうか?ここでは、企業の数値管理においてありがちな課題について解説します。
共通のKPIが決まっていない
最初に挙げられるのは、営業組織に共通のKPIが定まっていないことです。
営業マンのスキルや課題に合わせたKPIを設定することは効果的な手法ではありますが、例えば、AさんのKPIはアポ数、Bさんはコール数、Cさんはメールの送信数といったように、それぞれの指標がバラバラになってしまうと、組織全体の数値の動きが分からなくなってしまいます。
数値管理としてそれぞれ多数の項目を設定することは問題ありませんが、KPIはあくまで組織として重要なポイントに絞って設定するようにしましょう。
KPIを設定するのは、売上の向上や営業体制の強化のためですので、基準を明確にして組織や営業マン一人ひとりの成果やスキルアップにつながるようにすることが大切です。
情報管理の体制が取れていない
組織として、情報管理の体制が取れていない場合もあります。例えば、「今月はリードをできるだけ多く集める」「今週はDMを1000件送付する」といった具合に設定はするものの、その数値や結果の数値を管理できる体制ができていない場合もあります。
多くの場合、Excelや営業支援ツールなどを活用して、成果を追っていきますが、このように情報管理の体制が取れていない状況下では、そのうち手がどれだけ成果につながったのかを確認することができなくなってしまします。
営業活動と管理の両立ができていない
営業活動と管理の両方を同時に見なければならないケースがありますが、その両立ができていないケースが考えられます。
特に、中小企業においてはプレイングマネージャーとして、マネージャーがプレーヤーも兼任するケースが良くあります。このとき、マネージャー自身が多くの案件を抱えていたり、自分自身に高い数値目標を課していたりすると、部下の数値管理を細かくチェックすることが難しくなります。
(参考:リクルートワークス研究所)
数値管理においては、途中経過を日々細かくチェックすることが大切なので、業務の棚卸や役割分担の変更、ツールの活用による業務効率化などを通じて、管理できる体制を整えましょう。
KPIの設定値が間違っている
KPIを達成しているにも関わらず最終目標が達成できない場合には、そもそもKPIの設定が適正ではない可能性が高いです。この場合、そもそもKPIとしての意味がなくなってしまい、営業マンのモチベーション低下にもつながってしまいます。
最終目標につながっていくような、適切なKPIを再設定しましょう。KPIが最終目標につながるようになるまで、PDCAを繰り返す姿勢が重要です。
営業数値管理でみるべき指標
営業数値管理では、見るべき指標が3つあります。
- 目標管理
- 案件管理
- 行動管理
これらはそれぞれ、どのような違いがあり、どのように管理するべきでしょうか?ここでは、それぞれの管理方法について解説します。
目標管理(ギャップ管理)
目標管理とは、売上金額や受注件数を目標として設定し、現状とのギャップを管理する方法です。目標に対する現時点での達成状況や課題などを明確にできるため、営業数値管理においては、最も重要な指標と言えます。
もし、目標に対して現状の進捗が思わしくない場合には、営業手法を軌道修正したり、課題に対して集中に取り組んだりする必要があります。
目標管理により売上をアップさせるためには、KGIやKPIを適切に設定することはもちろんですが、目安となる数値目標を複数設定し営業マン一人ひとりのボトルネックや強みを明らかにすることが大切です。
案件管理
案件管理とは、営業案件(リードの創出から商談が成立するまでの見込み顧客のこと)の数とフェーズごとの状態を管理することです。
フェーズごとの管理を具体的に解説すると、次のようになります。
- DM送付、電話案内、初回訪問など、どのフェーズの顧客がどの程度いるか?
- こちらの営業活動に対して顧客がどのようにアクションをしたか?
(例:DMを送付した際に、開封されたのか、されなかったか?
DM開封した顧客は、資料請求をしたのか、しなかったのか?など) - 顧客からのアクションに対して、自社の営業マンがどのように対応したか?
これらの分析を行うことにより、いつ頃、どの程度の売上があがりそうかなどの目安を立てることができます。
また、リード創出から成約までの期間が長い商材においては、中・長期的な予測が立てやすくなることから、重点的に対応すべき点が明らかになります。例えば、リードが少ない場合には早期にリード創出のための施策(テレアポの架電数の増加や広告などの実施)を行うことが求められます。
行動管理
行動管理とは、営業マン一人ひとりの行動について管理をすることです。とは言っても、営業マンのサボりを監視するといったネガティブな管理ではありません。行動管理の具体例は、以下の通りです。
- 見込み情報の獲得数
- メール送信数
- コール数
- 商談数
これらの行動管理を行う目的は、営業マンが自社の目標や方向性に合った行動をしていることを確認するためです。また、目標管理では顧客側のアクションによって達成できるかどうかが左右されますが(例えば、売上は相手方が契約をしなければ上がらない)、行動管理における数値目標は相手方に左右されないという特徴があります。目標に沿った行動をとることが、最終目標の達成につながります。
営業数値管理を進めるための5つのステップ
営業数値管理を行えばチームの売上が上がる可能性が高いにも関わらず、適切に営業数値管理を実施できている企業はそれほど多くありません。あるいは、売上数値管理を行おうとしても、適切なやり方で進められていないケースも多く見られます。
この章では、営業数値管理を適切に進めるための5つのステップについて解説します。
目標(KGI)を明確にする
まずは、最終目標であるKGI(Key Goal Indicator)を明確にします。KGIは、日本語で「重要目標達成指標」と訳されます。営業部の場合は、年間や月間での売上目標=KGIとなるケースが大半です。
基本的に、営業部における数値目標はKGIを達成するために、KGIから逆算して作られるため、KGIが基準になるといっても過言ではありません。なお、売上目標は、あくまで目標値なので、自社の現状の実績や売上予測、必要予算に基づいて「このくらい売上を出したい」といった数値を元に算出します。
目標からKPI・数値目標を設定する
明確にしたKGI(最終目標)から逆算して、KPIや数値目標を設定します。この時、KPIとKGIがしっかりと紐づけられていることが重要です。特に、KPIは本来達成することでほぼKGIが達成できるという重要指標であるはずなので、KGIとの関連性が非常に高いです。
KPIの実数を見える化できるようにする
KGIに基づくKPIを設定したら、定量的に測ることができるようにするために、数値化する必要があります。そのため、ExcelやITツールなどを活用して、売上や営業マンの行動(DM送付件数やアポ取得件数など)を管理できる体制を整えることが大切です。
ここで、重要なことは日々の進捗をその都度、手軽に入力できる仕組みを整えることです。途中経過が見えることで、途中で営業活動の重点を変更したり、あるいは活動の方向性が合っているか否かをチェックしたりすることができるためです。
チーム全体にKGIとKPIを落とし込む
KGIとKPIが明確に決まったら、チーム全体にそれらの指標を落とし込みましょう。数値の落とし込みは、事前に資料などで共有した上で、営業会議や月例会議で周知すると良いでしょう。
この時、チーム全体で統一した指標で数値を見ることが大切です。営業の数値管理は、チームの成果を大きく左右することに加え、営業マン一人ひとりの成果や評価にも直結します。また、営業活動に対するモチベーションや成長の度合いにも直結するため、KGIとKPIの落とし込みは非常に重要です。
振り返る
KPIやKGIによって売上を向上させるためには、定期的に振り返ることも必要です。PDCAを回しながら、半年や1年など一定の期間ごとに見直しをすることで、より精度の高い目標を設定することができます。
適切な目標が設定できている場合であっても、一定期間が経過すると市場の環境やトレンドの変化、スタッフの成長や入れ替わりなどがあるため、目標の振り返りはとても重要です。
営業数値管理は誰が行うのか?
営業の数値管理は、マネージャーが行うものとみなされがちですが、営業マン全員が管理する仕組みを取ることが理想的です。もちろん、マネージャーが管理を牽引する立場であることに変わりはありませんが、基本的に営業マン一人ひとりの行動や案件の状況管理は、営業マンが行います。
チームの営業マン全員が入力作業をスムーズに進められるようにするには、営業マン一人ひとりが、いつでもどこでも最新の情報を反映させられるようにしておくことも大切です。
リアルタイムに情報を反映させるためのポイントは、ITツールを活用することです。クラウド型のITツールを導入すれば、常に最新の情報を共有することができ、いつでも最新の情報を参照することができます。
また、ITツールを導入することで、顧客フォローを自動化したり、パイプラインを適切に管理したりすることにもつながるので、より適切な顧客数値管理ができるようになります。
まとめ
営業の成果を属人的なものとせず、チームとして組織力を高めるためには数値管理が効果的です。
数値管理とは、目標管理(ギャップ管理)、案件管理、行動管理の3つの観点で、営業活動を定量管理することです。チームの目標(KGI)として売上目標が設定されていても目標が細分化されていなかったり、中間目標が最終目標と紐づいていなかったりすると、効果的な数値管理にはなりません。
また、営業マン一人ひとりが成果や顧客の反応をリアルタイムに報告し、常に最新の進捗状況がチーム全員で確認できる仕組みを整えることも重要です。
そのためにお薦めしたいのは、クラウド型のITツールの導入です。ITツールを導入することで、数値化した最新の状況を営業マン一人ひとりがリアルタイムに報告することができます。そして、マネージャーやチームのメンバーが同じ基準に基づいて情報をチェックし、目標達成に向けて体制を整えていくことができます。
「営業ワークフローと営業ツール標準化《実践ガイド》」ではチームで成果をあげていくための営業の流れを構築する方法について解説しております。営業数値管理を営業組織に落とし込むヒントになりますので、ぜひご覧ください。