営業管理をエクセルで行うステップとデメリット

営業 管理 エクセル

営業管理職になると、営業マン時代とは比較にならないほど多くのデータを扱います。

部下が増えるにつれ一人ひとりの行動、抱えているすべてのクライアントの状況を記憶力に頼って把握することは難しくなり、フォローが上手くできず見込み客を放置させてしまったり、部下から相談を受けた案件をパッと思い出せず、ガッカリされてしまうことが起きる場合もあります。

今の時代の営業管理職は、ITツールを駆使して数字に基づいた営業管理を行うことが求められています。売上げだけを見て「もっと売れ」「もっと新規開拓しろ」と言えばよかった時代とは違い、どの営業マンがどの企業に何を提案し、見込み度合いはどの位かわかったうえで指導できる「数値管理能力」と「マネジメント能力」が重要になっていると言えるでしょう。

営業管理ツールを導入していない企業も多いかも知れませんが、エクセル(Excel)でも基本的な営業管理は可能です。本記事では、営業管理を行うステップ、エクセルで営業管理をする時の注意点などを解説します。

営業管理をする重要性

営業管理の主な目的は「営業マンのスキルアップ」と「売上げ拡大」にあります。

一般に営業力の強い有名企業は、営業マン個人がハイレベルで自主的に活躍できるスター人材揃いという印象がありますが、基本的な営業管理も非常にしっかりしています。企業として教えるべきことをきちんと教育しているからこそ、多くの人材が短期間で戦力化するのです。

一方、営業管理が徹底していない企業では1~2割の優秀な営業マンに売上げを頼りがちであり、残念ながらそれ以外の営業マンはあまり成長しないままか途中で離職してしまうことが多くなります。営業マンのたった2割に頼る会社と、全員総力戦ができる会社のどちらが勝つかは言うまでもありません。

企業が大きく成長するためにも、営業管理をしっかりと行っていくことが重要です。営業管理の重要ポイントである「営業プロセスの管理」「KGI」「KPI」について解説します。

 営業プロセスの理解

営業マンには基本的な「営業プロセス」を理解してもらうことが大切です。

営業管理職になる方は、素晴らしい営業実績を上げてきた方が多いかと思います。優秀な営業マンは営業プロセスを教えられなくてもすぐ理解できる能力があり、想像しづらいかも知れませんが、世の中には「アポが取れたから訪問したのに、真剣に検討する感じがなかった」「まだニーズがないお客様に訪問して何を話すんですか?」と感じる営業マンもいるものです。

大抵の場合、悪気はありません。営業プロセスというものをわかっていないだけです。BtoBであれ、BtoCであれ、無形商材であれ有形商材であれ基本的な営業プロセス自体にそれほどの差はないので、まず以下のように自社なりの営業プロセスを図やチャートにして、段階ごとに何をすべきかを可視化して営業マン全員に理解してもらいましょう。

営業プロセス

営業プロセスは、新人営業マンにとっては、どのような営業フローを行えばいいのかの手がかりになります。

お客様が何かを購入するときはどのようなステップを踏むのか?信頼関係を作るのにどのようなステップが必要か?お客様の課題を探すためにはどのようなヒアリングが必要かなどを知らないと、1度訪問してすぐ諦めてしまったりしますが、営業プロセスを理解すれば、マニュアルを自分なりに調整する感覚で営業活動していくことができます。

平均的なスキルを保有する営業マンでも、営業プロセスが可視化されていると自分の得意なフェーズと苦手なフェーズに気付きやすくなります。新規開拓は熱心だけど提案しっぱなしであったり、職人のように提案書作成に時間をかけてしまいアプローチ数が減ってしまっているなどの営業スタイルの属人化を防ぐ効果もあります。

営業管理職も個々の営業マンに合わせてきめ細やかなマネジメントを行えるようになるでしょう。

営業管理をする際のKGIの設定

次に、営業管理においては「何を重点的に管理するのか」を決める必要があります。

営業管理(マネジメント)は奥が深く、極めようと思えば細部に至るまでさまざまな管理を行うことができます。しかし、何事もそうですが50点を80点にもっていくまではどうにかできても100点にするのは難しいので、必要以上に管理を強化せず「7~8割でよし」という考え方をとるほうがビジネスでは効率的かと思います。

手順としては、まず「KGI(Key Goal Indicator/重要目標達成指標)」と呼ばれる、最終目標を定量的に評価できる指標を一つだけ設定します。代表的なKGIは「売上高」「成約数」「利益率」ですが、全部ではなくとにかく一つに絞ることがポイントです。

  • 売上げを増やしたいのであれば「売上高」
  • 顧客数を増やしたいのであれば「契約数」
  • 営業マンの値引きが常態化しており売上げが上がっても利益が増えない悩みがある場合は「利益率」

などに設定して目標達成とともに、営業マンの意識改革を図っていきます。

営業プロセスごとのKPIのブレイクダウン

KGIが決まったら、KGIを達成する上で必要な要素「KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)」をあぶり出していきます。KPIは、営業プロセスにそって一連の流れになるように設定していくことが大切です。

以下の図のようにKGI(契約数)→ 商談数・アポイント(KPI)→ キーマン通話数(KPI)→ アプローチ数(KPI)という感じで逆算して数字を出します。

逆算例:契約数10件の目標

KGIの逆算

KGIに対するKPIの数値がわかると、営業マンも「目標件数に対して、自分は1日何件のお客様にアプローチして、何件の商談をすることが理想」というように、自分に必要な行動量をイメージできます。

営業管理職も「営業マンの営業活動量は十分か?」「プロセスごとの進捗状況はどうか?」を数値に基づいてマネジメントできます。なお、KPIも多すぎると営業マンが混乱するため、1~3つ程度が望ましいでしょう。

営業管理を行うステップ

営業マンに基本的な知識を伝えるだけでなく、管理職は営業マン個別に営業管理を行っていく必要もあります。以下に、ステップを解説していきます。

1 on 1 を行う

営業マンの知識・スキルは一人ひとり異なります。KGI、KPIの設定にしても、例えば、1件の契約を得るために50件のアプローチで問題ない営業マンもいれば、300件のアプローチが必要な営業マンもいるでしょう。

定期的に1on1ミーティングを行い、営業マンのスキル、営業スタイルにあわせて管理項目なども変え、適切なKGIとKPIの数値を設定し、達成度合いを見ていくことが大切です。

フィードバックを行う

1on1ミーティングをするだけでなく、フィードバックを行うことも大切です。注意しなければならいのは、1on1は叱咤する場ではなくコーチングの場ということです。前回の目標を達成していなくても、営業マンが全力で頑張って達成できていないのか(目標が高めだった)、時間を取られるような案件が発生したのか(アクシデント)、単に頑張りが足りなかったのかなどが見えてくるような質問をし、営業マンが自分でどうすればよいか考えるようにすることが大切です。

質問例:

  • 「コール数KPIは達成できていていいですね、この調子で商談数も増やしていけそう?」
  • 「今回、営業以外に時間がとられて困ったことは、何かあった?」
  • 「今月の動きに自分で点数をつけるとしたら何点?」

もちろん、情報提供やアドバイスはしてかまいません。特に今のようにコロナウィルス感染症の影響で変化の激しい時代は、営業マンが過去の成功体験に固執して伸びない業界を開拓し続けたり、同じ手法を続けてしまうなど変化に対応できないケースも出てきます。

営業マンがリスクを避けられるようなアドバイスをすることは大事です。ただ、それ以外は極力営業マンに話してもらうように心がけましょう。

改善しているかの確認

1on1を継続することで前回フィードバックしたところがどれだけ改善されたのか、さらにフィードバックできるところはないかが見えてきます。適切な質問をして営業マンに振り返りを行ってもらいます。

質問例:

  • 「今回は商談数が増えていますね? うまく改善できた理由は何だと思いますか?」
  • 「自分でうまくいかなかったと感じる点はありますか?会社がサポートできることは?」

一辺倒な質問だと「特に何もありません」で終わってしまう可能性があるので、角度を180度変えて質問することも大事です。営業活動をしていればどちらかには答えられるはずです。

1on1については、SFAや営業日報などで数字と活動報告がされているので、あまり重要ではないと思う営業マン、営業管理職の方もいるかもしれません。しかし、日報はある程度脚色することが可能ですし、テキストだけでは伝わらないことも多いものです。

「メラビアンの法則」で言われるように、人がコミュニケーション上、文字で伝えられるのは約7%にすぎず、実際は相手の表情、声のトーン、雰囲気で感情や意図するところを汲み取って判断しているのです。オンライン面談でもよいのですが、顔を見ながら話すことで、営業マンの調子、営業マンを通した市場の変化をつかんだり、自分の想いを伝えるなど人間味のあるコミュニケーションを心がけることが大切です。

営業管理をエクセルで行う時に意識しておくこと

「エクセル文化」という言葉があるように、日本のほとんどの企業で導入されているエクセルは営業マンにとっても馴染みやすいツールです。多少のエクセルスキルがある営業管理職なら、自らフォーマットを作成して、エクセルで営業管理を行うことができます。以下に、エクセルの魅力を紹介します。

すぐ利用開始ができ学習コストが安い

エクセルは何といっても手軽でコストもかからない点がメリットです。パッケージが入っているパソコンであれば無料で使えますし、近年発売された「office365」なども複数人で使えることを考えればかなり低価格になっていると言えるでしょう。

また、エクセルはITシステムを導入して使いこなすよりも「自分の管理したい項目を簡単に管理」できるメリットがあります。一から作成しなくても、マイクロソフト社はじめ各社が提供しているテンプレートをカスタマイズして手間をかけず活用する方法もあります。

部下に使ってもらうハードルが低いのも魅力です。Word、Excelはビジネスマンの基本スキルとして見なされているので、新入社員でも他部署から移動してきた人材でもエクセルの基本知識はあることが多く、一から教える必要がありません。

機能的にも文章入力、グラフ・図の作成から、関数を使ったデータ整理・分析、スキルが高い人ならBIツールに近い使い方もできるなど実に幅広い機能があるツールでです。

  • 低コストもしくは無料で使用可能
  • 誰でも気軽に使えるので導入ハードルが低い
  • 図やグラフ、表も簡単に作成できる
  • ABC分析ほか営業管理に必要な分析が可能

ルールがないと負債が蓄積しやすい

一方、エクセルは簡単さと自由度が高いゆえにデメリットも生じやすいところが難点です。

よくある問題は、個人がさまざまなフォーマットで独自のシートを作成できるため、A営業マンでは〇〇の項目は管理しているが、B営業マンでは管理していないといった社内でのバラつきが出て、最終的なデータの統合が難しくなることです。

また、エクセルスキルを極めている人と、基本知識しか身につけていない人たちとのスキルの差が大きくなりがちであり、ITリテラシーが高いエクセルに詳しい人材が移動してしまったあとに、残された人が困るような事態も起きます。

一番困るのは、最初にフォーマットを作成した人材のエクセルスキルが低い場合、重要な項目が抜けているなど、将来システム移行する際の負債ができてしまう可能性があることです。また、エクセルを使う方なら同感していただけると思いますが、エクセルはデータ量が増えると重くなったり遅くなったり止まったりするなど日常的にストレスもよく感じ、ときに仕事のリズムやモチベーションに影響を与えてしまうツールでもあります。

  • 作成者によってバラバラなファイルが乱立
  • データ量が増えると重く、遅くなる
  • 大人数で共有するときにフリーズするストレス
  • バージョンごとの機能の違いがあり使いにくい

将来的にデータを統合する前提で活用する

エクセルで営業管理を行うときは、基本項目である5W1Hのヌケがないように設定しておくと、後々ほかのITシステムとデータを統合するときに困らないでしょう。

  • 「商談日(いつ)」
  • 「会社所在地(どこで)」
  • 「取引先(誰と)」
  • 「営業担当者(誰が)
  • 「商材」(何を)
  • 「商談内容(どのように)」

設定したKPI項目や「見込み度(A~Eくらいの選択)」「売上規模(予測)」「売上げ予定時期」などの項目をカスタムして入れておくとプロセス管理や、年度内の売上げ予測がスムーズになります。

営業管理をエクセルから脱却するタイミング

エクセルは、もともと営業特化ツールではないので、管理する項目が増加・複雑化するとどうしても限界が出たり、非効率になることが多くなります。

部下が少人数のうちはExcelで問題ありませんが、当初から将来的にはITツールに切り替えることを想定してエクセルを活用することが望ましいと言えます。

切り替えるベストなタイミングは、営業管理職のITスキルによっても異なりますが、管理職自身が「案件数が膨大でエクセルでマネジメントするのが難しい……」「データ管理、分析に時間がかかる、深い分析ができない……」「営業マンが情報を活用できていない……」と感じるタイミングかと思います。

なお、エクセルから脱却し、ITツールを選ぶときにも注意が必要です。近年は昔と違って安価なクラウド型のシステムが多数登場していますが、反面、カスタマイズに限界があることに留意しましょう。むしろ、ツールによっては営業管理の方法をシステムに合わせなければならない場合もあります。

業界別、規模別、営業スタイル別ほか、さまざまなITツールが登場していますので、自業界の営業慣行に適したツール、「自社の理想とする営業スタイルを実現」できるような世界観を持つツールを選択することがポイントです。 また、コロナウィルス感染症対策でテレワーク(在宅ワーク)が増えることも視野に入れ、システムの軽さやスマホ対応かどうかもチェックしておきましょう。

まとめ

営業管理は営業チームの規模に応じて、エクセルでの管理→中小企業向けITツール → 高機能ITツールと活用するツールを進化させていくことができます。まず、営業管理の基本を学ぶために、エクセルでフォーマットを作成し営業管理を始めるのも勉強になるかもしれません。

営業管理の目的はエクセルであれ、最先端のITシステムであれ同じです。「営業マンを育てる」「部署の営業成績をあげる」「営業活動に活かせるデータを蓄積していく」ために最適なツールを選ぶ視点が大切です。自社にあうITツールを活用しながら、業務フローを見直し、適切なKGI、KPIを設定・改善し、成果を上げていきましょう。こちらから「本当に使える、意味のある営業活動KPI集」がダウンロード可能です。他社の成功事例もふんだんに参考にして、効率よく営業管理を行っていただければと思います。

    営業KPI

佐原 業平(さはら なりひら)

中央大学商学部を卒業後、2016年に新卒で株式会社コンベックスに入社。 新規開拓営業を経験した後、eBook・セミナー・研修のコンテンツの作成に従事。 そこで培った営業とマーケティングの知見を生かし、「セールスハックス」の運営に取り組む。 経営者から営業マンまで、ビジネス現場を理解したお役に立てる情報を発信。

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