営業の属人化とは?属人化を防ぐための方法

属人化

営業の属人化は、営業チームに根付きやすい大きな問題です。しかも、営業マン個人の意識的な問題が属人化の原因の1つであるため、営業マネージャーとしては頭を抱えてしまう問題でもあるでしょう。

しかし、営業の属人化が起こる原因を正しく理解し、正しいステップで対策をすれば営業の属人化問題は解決できます。

そこで本記事では、営業の属人化とは何か、なぜ属人化してしまうのか、どのような影響があるのか、防ぐためにはどうすれば良いのかを解説します。

営業の属人化とは

営業の属人化とは、営業活動が営業マン個人に依存した状態になってしまっていることを指します。ご自身が属する営業チームを考えてみてください。「あの人がいないと困る」「あの人がいないと営業成績が落ちるだろう」という状況に当てはまっていないでしょうか。

当てはまっている場合、つまり「個人に依存している」可能性があり、営業が属人化していると言えます。

それでは、逆に属人化していない状態とはどのような状態でしょうか。属人化していない状態とは、営業マン各々が組織的な営業活動を行えている状態を指します。先ほどの例だと、「あの人がいなくても困らない」「あの人がいなくても営業成績は落ちない」という状態です。

一見すると冷めた表現にもとれますが、仮にトップセールスが退職してしまった場合は営業成績が急に落ちてしまうことになります。このように考えると、やはり「特定の人がいなくなっても困らない」状態が理想的といえるでしょう。これには、「自分がいなくてもうまくいく状態を作る」という意識が重要です。

営業の属人化はなぜ起こるのか?

営業の属人化が起こる理由は、営業チームそれぞれで異なります。しかし、一般的には以降で紹介する理由(原因)によって起こってしまうことが多いでしょう。自社の営業チームに当てはまるものはないか、確認してみましょう。

自分の立場を守りたい(ジョブセキュリティ)

営業の属人化を防ぐには、もはや自分がいなくても良い状態を目指さなければなりません。「自分にしかできない業務」や「自分にしか担当できない顧客」がいては、他の営業マンが代わりに対応したり、引き継いで対応することができません。

しかし実際には、自分にしかできない業務や自分にしか担当できない顧客を作ってしまいがちです。これは自分の立場を守りたいという「ジョブセキュリティ(仕事の安定性)」の意識が働くためです。さらに、営業職では歩合給制度(インセンティブ)など、実績に応じて給料が上がる賃金体系を採用していることも少なくありません。

このような背景もあり、「自分にしか担当できない業務(顧客)」を作ってしまいがちなのです。

営業活動が忙しい

営業職は、営業アプローチや商談などで常に忙しいことが一般的です。さらに、営業は「足で稼ぐ」という表現もあるとおり、営業マンが外出していることも多いでしょう。

そのため、ジョブセキュリティの意識が改善できたとしても、情報共有を行う余裕がなかったり、情報をまとめて管理したりする時間が取れない場合があります。個人が持つ営業活動とタスクの処理に追われ、別途営業チーム内で情報を共有する余裕がないのです。

自己完結しやすい業務である

営業活動は、自己完結してしまいやすいという性質があります。分業で成果をあげられている営業組織もありますが、実際のところ精度高く分業して成果を上げることは簡単なことではありません。多くの場合、ファーストアプローチからヒアリング、提案、見積もり、商談、受注に至るまで、ほとんど営業マン1人で進められる場合もあると思います。

ただ、1人で営業活動を進めることが常態化していると、営業活動に関して「自分だけが管理できればいい」と思ってしまいがちです。その結果、営業マンが培ったノウハウや成功と失敗の経験、顧客情報などが、個人のノートやメモ帳などで閉鎖的に蓄積されてしまいます。当然、このような状態では営業の属人化は避けられません。

情報の管理体制ができていない

営業活動における情報の管理体制ができていないと、やはり組織的な営業を行うことができません。個人が得た情報を個人が閉鎖的に管理していると、突然その担当者が会社を休んだとき、顧客対応に支障が出ます。

情報の管理体制とは、「誰が」「どこに」「何を」記録するのかを明確化すること、あるいはその記録の管理場所などのことを指します。このような体制ができていないと、結果的に情報を管理する場所がわからず、個人管理になってしまうのです。

営業の属人化による課題

営業が属人化しやすいことは前章で述べましたが、具体的にはどのような影響が生じるのでしょうか。ひと言でまとめてしまうと、属人化によって営業活動の効率が落ち、会社の成長が限定されるという課題が生じてしまいます。

営業に限らず、仕事を進める時は、多くの場合でチームを組みます。チームメンバー同士で助け合い、学び合い、切磋琢磨しながら同じ成果にコミットすれば、メンバーの総和を超える成果を出すこともできるのです。これがいわゆる相乗効果(シナジー効果)です。

一方、属人化していると相乗効果はおろか、メンバーの総和未満の成果しか出せない場合もあります。これはチームであるのにチームで仕事を進めていないことから起こる弊害です。

ここでは、営業の属人化によって生じる、具体的な営業組織運営上の課題を紹介します。

営業活動が不明確になる

営業が属人化してしまうと、営業マン一人ひとりにとっては今行なっている営業活動が明確であっても、営業マネージャーにとっては不明確になってしまいます。結果的に、営業マネージャーが行うべきタスク(プロセス)マネジメントが十分に行えず、結果的に営業組織の活動効率が悪化してしまうでしょう。

営業マンの対応がバラバラになってしまう

営業が属人化してしまうと、営業マンの対応がバラバラになってしまいます。つまり、同じ営業チームであっても営業活動が統一されないのです。

こうなってしまうのも、営業マンが自分のやりやすい方法で営業活動を行ってしまうためです。「自分のやりやすい方法」といっても、トップセールスが成果を出し続けている方法ならば実質的には問題とされないでしょう。「トップセールスのやり方」で統一されていれば理想的です。

しかし、経験の浅い新人営業マンだとどうなるでしょうか。トップセールスの方法であれば成果が出たものの、不十分な対応をし続けてしまい、成果を出せないなんてこともあるはずです。

先ほど述べたとおり、属人化していると営業活動が不明確でもあるわけですから、「望ましくない対応」の発見も遅れてしまいます。

当然、営業マン一人ひとりの対応にばらつきが出ると、お客様が困ってしまう場合もあるでしょう。

このように、営業が属人化してしまうと営業マンの対応にばらつきが出て、組織として成果の出る営業活動をできなくなってしまいます。

営業ノウハウがチームに共有されない

営業が属人化していると、営業ノウハウがチームに共有されません。当然、トップセールスのノウハウがチームで共有されていることが理想的です。しかし、属人化していれば、なかなかノウハウがチーム全体で共有されることは難しいものとなります。

結果として、ノウハウが共有され実践するだけで営業チーム全体の成果を上げることができる可能性があるのに、その機会を損失してしまっているのです。

営業マンが変わる時の引き継ぎが難しくなる

営業が属人化していると、営業マンが変わる時の引き継ぎが難しくなってしまいます。

属人化していると、営業マンが病気やケガで休職することになった時、あるいは転職したいと申し出られた時に困るわけです。経営上の人事戦略としてローテーションを行うにしても同様です。

具体的にどのように困るかというと、お客様との接触履歴やヒアリング事項が共有されていない場合、個人が閉鎖的に記録していた内容を引き継ぐことになります。この場合、予想以上に時間がかかってしまうでしょう。

引き継ぎに時間がかかってしまうとお客様への対応も遅くなりますし、引き継ぎが十分でない場合はお客様に同じようなことを聞いてしまうなど、さまざまな悪影響が生じます。

最悪の場合にはお客様が競合に流れてしまうなど、案件化率や受注率の低下につながり、最終的に売上の減少として現れてしまうのです。考え方によっては、顧客生涯価値(LTV)分の損失とも言えるでしょう。

クレームになった時の対応が大変

営業が属人化していると、クレームになった時の対応が大変になってしまいます。そもそもクレーム対応は大変ですが、そのうえ属人化しているとさらに大変です。なぜなら、クレーム時はお客様の情報を確認し、適切な人が適切な対応をしなければならないからです。

クレーム対応では、お客様がなぜ不満なのか、お客様が誰に対して不満を持っていて、誰に対応を求めているのかなどを把握する必要があります。少しでも的外れの対応をしてしまうと、さらにお客様の感情を逆撫でしてしまうことになりかねません。あるいは、自社にミスがないのにお客様の勘違いでクレームを受ける場合もあります。

いずれにしても、すぐに事実情報を確認しなければなりません。そのような時に属人化していて情報が管理されていないと、正しい状況の把握が遅れてしまうのです。

営業の属人化を防ぐためには

営業の属人化が起こる理由や、具体的な影響について解説してきました。それでは、営業の属人化を防ぐためには何をすれば良いのでしょうか。以降で営業の属人化対策を紹介します。

営業プロセスの標準化

営業の属人化対策としてまず行うべきことは、営業プロセスの標準化です。標準化はいわゆる「ルールやマニュアルを定める」ことを指しますが、具体的には「ルールやマニュアルの普及」といった意味合いも含むものです。従って、ルールやマニュアルを定めるだけではなく、共有したうえで実践されているかどうかを確認することも含みます。

営業プロセスの標準化

営業プロセスの標準化により、いつ・誰が行っても同じ業務品質を確保できるだけでなく、現状把握にも役立ちます。属人化と対義するものが標準化であると考えても良いでしょう。

ただし、ルールやマニュアルを定めて普及したとしてもそれだけで終わってはいけません。後述する対策方法とあわせ、改善を図りましょう。営業プロセスを標準化する流れを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

①営業プロセスの現状を把握する

営業プロセスのルールやマニュアルを作るためには、まず、現状どのような営業プロセスを進めているかを把握しなければなりません。

この時、ただ「テレアポ」「メール」「フォロー」「商談」など抽象的な把握に留まってはいけません。テレアポやメールでお客様に対してどのようなアプローチをとりどのような反応を得たのか、案件化率はどうか、受注率はどうかなども併せて現状を把握しましょう。

このように営業プロセスの現状を把握することで、自然と「3ム(ムリ・ムラ・ムダ)」を発見できるはずです。

②営業プロセスを見直して明確にする

先のステップで抽出した営業プロセスと「3ム」をもとに営業プロセスを見直し、営業プロセスを標準化します。

「営業プロセスを見直す」ということが重要です。営業プロセスを見直す時は、今まで個人が蓄積してきた「営業の型」「営業のスキル」「営業ナレッジ(知識やノウハウ)」「営業の経験(成功や失敗)」を個人がチームに共有しなければならないからです。

つまり営業プロセスを見直すというのは、3つの「ム」を個人のスキルやナレッジ、経験を集約して改善するステップとなります。

当然、新人営業マンの営業プロセスで標準化するのではなく、トップセールスマンの営業プロセスをさらに改善して標準化するということです。すると、理論的には営業チーム全員がトップセールスと同等以上の「営業の型」「営業のスキル」「営業ナレッジ」を実践できます。

③営業プロセスの普及と改善を繰り返す

営業プロセスが明確になったら、その営業プロセスの普及と改善を繰り返します。改善を繰り返すとは、いわゆるPDCAのことです。

これまでに紹介したように営業プロセスの標準化を進めていくと、理論的には営業チームの全員がトップセールスと同じ営業活動が可能です。しかし「理論的には」と述べたように、いくら営業プロセスを標準化したとしても、現実的にはトップセールスの営業を簡単に再現できるかというと難しいところでしょう。

営業マン個人のクセや個性もありますし、標準化された営業プロセスが良くないということもあります。営業プロセスが明確になると営業パイプライン管理を行えるわけですから、その都度、営業マネージャーあるいは営業チームメンバー同士でフォローアップができる環境を構築していくべきです。

このように普及させながら実践し、さらなる課題が見つかったらまた営業プロセスの改善を繰り返す。この営業チームメンバー全員でのPDCAこそ、属人的な営業ではなく組織的な営業と言えるでしょう。

営業マンのノウハウ共有の場を作る

営業の属人化を防ぐためには、営業マンのノウハウ共有の場を作ることが重要です。営業プロセスの標準化でノウハウやナレッジを共有したように、継続的な改善をするためにも必要と言えます。

具体的には、営業会議の一部を成功事例共有の時間にしたり、勉強会の時間を設けたり、あるいは受注に至った案件の流れをチーム内で共有したりなどの情報を共有しましょう。

営業活動での情報や顧客情報の管理を徹底する

営業プロセスを標準化しノウハウ共有の場を作ったとしても、これらの情報が管理できていないと、共有性および継続性に欠けてしまいます。

例えば営業活動の情報が上がってこないと、標準化された営業プロセスが実践できているかどうかもわかりません。また、ノウハウ共有の場を作ったとしても、その場限りで終わってしまい、継続して実践できているかどうかもわからないでしょう。

組織的な営業活動では、営業メンバー全員が助け合い、学び合い、切磋琢磨しながら1+1が2を超えるような相乗効果を目指します。そのため、属人化を防ぐためには営業活動での情報や顧客情報がメンバーに共有(可視化)されていなければなりません。

特に営業マンは外出することが多いため、外出先でもすぐに情報にアクセスできるようにすることも大切です。その意味では、ITツールを活用することも1つの手段となるでしょう。

まとめ

営業の属人化は、営業活動およびその成果が個人に依存してしまうことを指します。自分の立場を守りたいというジョブセキュリティの意識や、忙しく自己完結しやすい職種であることなどから、営業組織に根付きやすい問題です。属人化してしまうと、営業活動の効率が落ち、会社の成長が限定されるという課題が生じてしまいます。

そこで属人化の対策として有効な方法が、営業プロセスの標準化、ノウハウ共有の場を作る、情報管理の徹底の3点セットです。これらはセットであり、どれか1つでも欠けると属人化への穴が開いてしまいます。3点セットの実践および改善を継続しながら、組織的な営業で成果を出す営業組織を目指しましょう。

こちらから「営業ワークフローと営業ツール標準化《実践ガイド》」をダウンロードできます。属人化対策に必要なプロセスとツールの標準化をわかりやすく解説していますので、ぜひチェックしてみてください。

    営業ワークフローと営業ツール標準化《実践ガイド》

佐原 業平(さはら なりひら)

中央大学商学部を卒業後、2016年に新卒で株式会社コンベックスに入社。 新規開拓営業を経験した後、eBook・セミナー・研修のコンテンツの作成に従事。 そこで培った営業とマーケティングの知見を生かし、「セールスハックス」の運営に取り組む。 経営者から営業マンまで、ビジネス現場を理解したお役に立てる情報を発信。