営業クレームへの対応策と注意すべきこと

クレーム対応

お客様との接点が最も密になることが多い営業マンは、比較的クレームを受けやすい仕事だと言えるでしょう。

  • 積極的な営業マンが勇み足で起こしてしまうクレーム
  • プロジェクトなどの実行段階で起きるトラブルに対するクレーム
  • お客様の期待に応えられなかった仕事に対するクレーム

クレームの内容によっては、営業マン一人の問題ではなく会社全体に影響を与える可能性があります。逆にクレームに誠実に対応した結果、よりお客様と強固な信頼関係を構築できる場合もあります。クレーム対応の良し悪しでその後の結果は大きく変わります。

今回は、営業クレームのタイプと対応策について解説します。

営業クレームとは?

営業クレームとは、営業活動の中でお客様から来るクレームのことを指します。例えば、飛び込み営業や電話営業を行っていると、多忙なお客様から「忙しいのに突然連絡してくるのは迷惑だ」と厳しい言葉を受けることがあります。お客様の中には、この2つの手法を迷惑極まりないと嫌悪する方もいます。

とはいえ、新規の電話営業や飛び込み営業によるアプローチでも、興味のある内容であれば積極的に話を聞くお客様もいます。近年は、インターネットの普及によってお客様の情報収集力が上がっていますが、その情報はあくまでお客様が興味を持っているキーワードに関連する情報に限定されます。そのため、仕事熱心なお客様は外部の人からも熱心に情報を得ようと考えます。

電話営業、飛び込み営業については賛否両論ありますが、企業が保有する顧客情報の項目量や商品・サービスによっては有効であり、今後も廃れることはおそらくないでしょう。営業マンとしては、クレームにならないようにビジネスマナーを徹底することが基本です。

営業クレームは、仕事を受注した後も発生します。大きなトラブルになるのは、むしろ契約後のクレームかもしれません。社内の別部門の仕事ぶりがお客様の期待を満たしていない、プロジェクトの進行が遅いなどのクレームです。もちろん、中にはお客様の誤解に基づくものもあります。

また、ごく稀ではありますが、コストダウンの目的で些細なことをその何倍も非があるかのように追求する方もいます。金銭の交渉まで含めた解決策が必要になることがあります。

営業マンは自分の責任であれ、他の誰かの責任であれ、クレームが起きたら正面から誠実に対応しなければなりません。 いざクレームが起きると動揺するものですが、まったくクレームの発生しない企業もおそらく存在しないので、必要以上に臆せず、適切な対応で解決していくことが重要です。

営業クレームが発生するよくある3つの理由

では、営業クレームはどのようにして生じるのでしょうか?営業クレームが発生するよくある理由は以下の3つです。

理由1:自社のミス

営業活動において、自社あるいは営業マンのミスによりお客様に迷惑をかけてしまった場合に生じるクレームです。

(例)

  • 「もう営業をかけないで欲しい」と言われていた企業に頻繁に連絡をしてしまった
  • 別の支店の取引先にアプローチしてしまい「お宅はどんな営業体制なのか!」と怒られる
  • 契約するまでは熱心に訪問していたのに、契約後はさっぱりフォローしなくなった
  • 飛び込み禁止というステッカーが貼ってあったのに訪問してしまい激怒される

上記のように、意外に単純な理由のクレームは少なくありません。営業マンが多い企業では、同時に同じ企業に複数の営業マンが営業をかけてしまうことがあります。社内システムで事前にチェックしていれば、ある程度防ぐことができます。

また、受注したあとに急にフォローがおざなりになってしまう営業マンも少なくありません。営業マンは業務範囲が広く、日々忙しいかもしれません。しかし、お客様は少なからず契約した営業マンを信頼して契約に至っているはずです。長期的に良好な関係を構築していくためには、定期的にお客様の様子を気にかけることは大事なことです。

もし本当に忙しくて対応できない場合は、自社の専門のサポート部門にフォローを一次的に依頼し、お客様に問題点や要望などがあれば自ら対応することでも十分効果的です。

理由2:お客様の勘違い

営業クレームの中には、自社は正しく情報を発信していたのにお客様側が誤解して生じるクレームもあります。

  • 明日中に資料を送ると明文化して伝えていたのに、お客様が今日中に資料が届くと勘違いしていた
  • 書類の『注』に注意事項の記載があったのに、お客様が十分に確認していなかった
  • 人材紹介依頼を出したのに人材をすぐ紹介してくれない
  • 営業代行を依頼したのにすぐ結果が出ない

単純な勘違いもあれば、お客様がその分野の知識が不足していることで誤解してしまうこともあります。外部に依頼すれば自社の難しい課題も簡単に解決できると、お客様が過度な期待を抱いている場合にも起こりがちです。

お客様と営業マンとの間に持っている情報量に差がある業界では、その業界や営業マンにとっては当たり前の知識でも、お客様にとっては大量の新しい情報であり理解するまで時間がかかります。商品・サービスの成果については丁寧に説明する必要があります。

理由3:相互誤解

営業マンとお客様とのお互いの認識が異なっていた場合に生じる営業クレームです。例えば、プロジェクト型の仕事の場合、お客様が細かな方針を定めず、中には丸投げのような状態で発注をすることがあります。

営業マンがヒアリングしても「任せるよ」「急ぐから納期優先で」などと発言するため、営業マンとしてもこれまでお客様に説明していたサービスの内容や事例をもとにした成果のイメージで問題ないと判断しプロジェクトを進めます。もちろんスムーズに進む場合もありますが、途中で「こんなイメージじゃない」と何回も変更が入りトラブルになることも少なくありません。

プロジェクトはお客様と協力して構成から実行まで行うのが当たり前と考えている営業マンと、営業マンがすべて準備して実行してくれると考えているお客様の相互の誤解です。

このようなトラブルに初めて遭遇する営業マンは「リテラシーがなさすぎる」と愕然とするかもしれません。しかし、新任の担当者がお客様の場合や、言葉の定義がお互い違っている場合などに起こりがちです。

システム構築やデザインなどの製作物は、簡単な変更もかなり手間がかかる場合があります。外部の企業に製作を依頼している場合は、変更のたびに経費もかさみます。しっかり決めるべきことを決めて契約書を交わさないと赤字の仕事になり、かつ成果物へのクレームを受けるという最悪の事態になりかねません。営業マンは、適切なタイミングできちんと詳細な発注内容を書面にして残さなければなりません。

よくある営業クレーム3つ

お客様はクレームをつける際、怒りやフラストレーションを抱えているものですが、その打ち出し方はその人の個性によって違います。個々の性格が出ます。

クレームタイプ1:感情タイプ

クレームをつけるお客様の中には、感情的に自らの主張をするタイプが少なくありません。単純に営業マンの態度に怒りを覚えた、損をした、騙されたなどと、感情を比較的ストレートに出します。

ストレートに怒りをぶつけられるため、苦手に思う営業マンもいるかもしれません。しかし、怒りとは相手にまだ期待しているときに起きる感情なため、感情タイプの方はクレームを適切に解決したあとは取引が継続できる可能性があります。

顧客ロイヤルティ協会が米国の事例をもとに提唱しているグッドマンの法則によると「不満を持った顧客のうち、苦情を申し立て、その解決に満足した顧客の当該商品サービスの再入決定率は、不満を持ちながら苦情を申し立てない顧客のそれに比べて高い」とされています。

クレームタイプ2:理屈タイプ

理屈っぽく自らの主張を伝えるタイプです。物事を論理的に判断できるので、筋の通らないことは言ってきません。クレームの際の話し合いではもっとも対応しやすい相手かもしれません。

しかし、論理的で客観的、そして合理的であるからこそ「この営業マンに依頼した自分のミスだった」「機会損失」だと判断します。人間なので感情的な怒りもあるのですが判断基準は感情ではなくメリット、デメリットであるため、クレーム対応の際は相手にデメリットを与えた以上の何かを提供しないと「今後取引する価値なし」とあっさり見限られてしまうでしょう。

クレームタイプ3:非主張タイプ

事実だけを伝え、自らの主張はあまりしてこないタイプの方もいます。もちろん、主張しないからといって何もしないでよいということではありません。自社に非がある場合は、何らかの対応が必要です。表立って主張はしないものの、不満は溜まっているためTwitterやBlogなどで悪い口コミを拡散されてしまう場合があります。

クレームタイプ

営業クレームに対応する手法

営業クレームを受けてしまったらどのように対応したら良いのでしょうか?ここでは、営業クレームに対応する一般的な流れを解説します。

手順1:まずは謝罪

クレーム対応の最初の手順は、まずは謝罪です。この段階では事実関係に対する謝罪ではなく、何よりも感情を害してしまったことに対する謝罪です。もちろん、このときに言い訳は禁物です。

昨今のさまざまな事件の謝罪会見を見てもわかるように、謝罪する人が「自分の非ではない、自分だけが悪くない」という雰囲気を漂わせていると、より印象が悪くなります。しかし、例えば日大アメフト事件の選手の謝罪が多くの人に称賛されたように、自分の非を認め、かつ他者に責任を転嫁しない覚悟ある態度は人の気持ちを動かします。

営業クレームのほとんどは、余程のことがない限り裁判などに発展するような大きな事態にはなりません。お客様が望むことは、自分が失望、怒りを感じていることへの理解であり、損失に対する補填をしようとする営業マン側の誠実な姿勢です。自社の非が大きい場合は率直に謝罪するなど人として、美しい姿で臨み、保身に走らなほうがよい結果に終わるでしょう。

手順2:お客様のお考えや主張を聞く

クレーム対応も、基本はまずお客様の話を徹底して聞くことから始まります。お客様の不満の解決には、お客様の主張とその原因となる事象の情報が必要となるからです。なぜクレームをしてきているのか、そのお客様の考えと主張を理解しないと、対応の方向性が定まらず根本的な不満解消になりません。

また、お客様自身もクレームをつけてきた当初は混乱していることが多く、話しながら自分の感情やニーズを整理することができます。営業マンは普段の営業活動で行っている傾聴のスキルを駆使し、できるだけお客様に話してもらうように努めましょう。

手順3:原因の事実とお客様の考えを区別する

営業マンはお客様の話を聞きながら、お客様の考えと原因の事実を正確に見抜くことが大切です。クレームもよくよく原因を分析するとお客様の勘違いである場合や、自社側のサポートで簡単に解決できることもあります。事実と主張の二つを分けて考えることはクレーム対応だけでなく、いろいろな言説を判断するうえで重要です。なぜなら、主張している本人が、その区別ができていないことがよくあるからです。

例えば、プロジェクトにおいてお客様が何度か予定外の希望を出したため、プロジェクトの納期が大幅に遅れてしまった場合でも、お客様がクレームをつけることがあります。この場合、事実は「納期が遅れたこと」であり、原因が100%営業マンの非があるという主張はあくまでお客様側の見方にすぎません。

  • 事実:納期遅れ
  • 主張:納期が遅れたのは営業マン側のプロジェクト管理が悪い

予定外の変更が発生したときに「何日くらい納期が遅れます」と営業が説明していなかったのであれば、営業マンは説明不足について非があります。説明していたことをお客様が覚えていないのであればお客様にも非はあります。お客様の話を整理して、自社の過失が何割くらいなのかを把握することが大切です。

手順4:今後の方針を伝える

事実と主張を把握した上で、お客様に最適な方針を約束します。その場で判断せず持ち帰ってもよいでしょう。ことが大きければ大きいほど、クレームに会社として対応する姿勢を見せる必要も出てきます。会社の営業方針に対するクレームなど、営業マンだけで判断すべきではないクレームもあります。

また、営業マン自身が当事者であるため、客観的に考えられず全て自分の責任と思ったり、逆にお客様が悪いと思ったりすることもあります。複雑なクレームは自分だけで解決しようとせず、冷静な視点で判断できる上司に相談し指示をあおぎましょう。

なお、クレーム対応は、相手が感情的であろうが冷静であろうが、要求が低かろうが高かろうが、そのクレームによって起きた損害を埋め合わせる対応をとる姿勢を見せる必要があります。その上でお客様が望む対応をとることが基本です。

営業クレームの対応手順

営業クレームに対してマニュアルを持つべきか?

営業クレームへの対応策として、基本的なマニュアルは用意しておくべきです。まったくクレームを想定していない体制だと、営業マンがクレームを放置してしまうことが起きかねません。また、営業マンが必要以上に「こんな事態を引き起こした自分はどうしようもない」「営業に向いていないのではないか」など悩んでしまうこともあります。

反省することは大切です。たしかに、営業マンが常に礼儀正しく感じよく接していればクレームはそう起きないかもしれません。しかし、誰しも人間であり飛び込み営業などで断られ続けていると、自分では気づかなくても顔の表情が暗くなってしまったり、丁寧ではない言葉遣いをしてしまうことがあるかもしれません。

クレームは発生しないことがベストですが、誰にでも起こりうることだと営業マンに理解してもらうためにも、マニュアルがあったほうが望ましいと言えます。

ただし、すべてのクレームがマニュアルに当てはまる訳ではありません。お客様も、いかにもマニュアル化された対応は好みません。クレーム対応の際の方向性、基本の流れは理解した上で、お客様に合わせた対応をすることが大切です。

まとめ

近年は電話受付をアウトソーシングする企業も多いため、電話に出てくるのはオペレータの方であり、営業マンが話す内容によって見事に断ったり、資料送付をOKとしたり、場合によっては担当者につないでくれたりします。

飛び込み営業をしても、受付に電話が置いてあるだけという企業も多くなりましたので、一昔前よりも新規開拓においてのクレームは多くないかもしれません。ただ、やはり一定の確率でクレームは発生する可能性があります。「礼節は最強の武器」という言葉があります。新規開拓時は特に身だしなみ、営業マナーに気を配って取り組むことが基本です。

クレームは相手が怒りの感情を持っている場合は、そこに何かしらのニーズや本音があり、対応次第では信頼関係を構築できます。クレームをつけるお客様は黙って去ってしまうお客様よりも、営業マンに気付きを与えてくれる存在です。

また、お客様が個人的に営業マンに対して怒ってはないものの、会社の姿勢としてマイナスを与えられた分の補填を要求する場合もあります。自社に非がある場合は、例え一時的に不利益になっても、きちんとした対応が必要です。何かあった時にフォローしてくれるという信頼を得ることは、長期的な取引につながっていきます。クレームには逃げずに正面から対応していきましょう。
クレームに適切に対応することは大切ですが、クレームを防ぐことも大切であることは言うまでもありません。事前にクレームを防ぐためには、お客様が考えている文脈を理解することが大切です。営業支援システムの普及によりお客様の行動を可視化することもできるようになっていますので、対応策の一つとして考えてみてはいかがでしょうか?

    Digima

佐原 業平(さはら なりひら)

中央大学商学部を卒業後、2016年に新卒で株式会社コンベックスに入社。 新規開拓営業を経験した後、eBook・セミナー・研修のコンテンツの作成に従事。 そこで培った営業とマーケティングの知見を生かし、「セールスハックス」の運営に取り組む。 経営者から営業マンまで、ビジネス現場を理解したお役に立てる情報を発信。

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