営業でクラウドツールを使うべきメリット

営業 クラウド

営業と言えば、営業マンと顧客との信頼関係を築くことで売上実績を積み上げていくものです。そのため、担当営業マンしか握っていない情報やノウハウも多く、属人的となり資産のある顧客情報や営業記録の管理が行われていなかったという場合もあります。

転職が当たり前になった現代において、時間をかけて育てたベテラン営業マンの退職も珍しくなく、企業や営業組織内で営業管理が行われていなかった場合は、円滑な引き続きができない可能性もあります。そういった営業部門が抱える営業活動の中での課題を解決するべく発展しているのが、営業クラウドツールです。

本記事では、営業クラウドツールにはどのような種類のものがあるのか、営業クラウドールの使うべきメリットについて解説していきます。

営業クラウドツールとは

営業クラウドツールとは、営業活動において顧客データの管理ややりとりの状況等、これまで営業マン個々人でしか所有していなかった情報を一元管理するツールのことです。情報共有することで、効率的な営業活動を実現したり、営業過程の自動化を実現することで、効率的に売上アップにつなげていくことを可能にするクラウド型のツールのことを言います。 

クラウドとは「クラウドコンピューティング」の略称で、インターネットに接続して利用するサービス全般のことです。営業クラウドツールはインターネットに接続して営業活動に関しての顧客管理や情報共有を図るためのツールです。

営業クラウドツールがなぜ大切なのか?

従来の営業は個々の営業マンの握る情報、経験、ノウハウによるところが大きく、個人頼みとも言えるものでした。しかし、転職が当たり前になってきている現代において、担当者が退職する度、顧客との関係を一から築き直すのは非効率であり、大きなコストになります。しかし、営業クラウドツールを導入して企業や営業組織で顧客情報や営業活動の情報共有を図る事で、円滑に引き継ぎが可能になります。

また、スマートフォンやタブレットが普及し、どこにいてもインターネットへ接続することが可能な今、クラウドサービスを導入し、営業担当者がどこからでもアクセス可能となれば、顧客対応もより素早くすることができます。

日本での営業クラウドツールの浸透度合い

近年、日本では営業クラウドツールを導入する企業が増えています。ミック経済研究所が2019年1月15日に発表した「クラウド型CRM市場の現状と展望 2018年版」によると、日本におけるクラウド型CRMの市場規模は、2018年では2037億円、2023年には4700億円を超えると予想されています。

また、矢野経済研究所が2019年1月23日に発表した下図「業務ソフトウェア(SaaS)の導入実態についての調査結果」によると、一番右列の営業クラウドツールである「CRM・SFA」の国内の導入企業の割合は、2012年から2018年にかけて9%から28%に上昇。6年間で実に3倍以上の伸び率となっています。

業務ソフトウェア(SaaS)の導入実態についての調査結果

出展:業務ソフトウェア(SaaS)の導入実態についての調査結果

営業クラウドツールの分類

営業クラウドツールといっても、現在ではさまざまな分野の課題に適したツールが存在します。ここでは、各クラウドツールの概要について解説します。

営業支援ツール(SFA)

営業支援ツールとは「Sales Force Automation(セールス・フォース・オートメーション)」の略語。その頭文字を取って「SFA」と記載されます。

これまで個人に属していた営業活動におけるあらゆる情報をデータ化し、可視化、共有化することで、引継ぎの簡便化、マネジメントの効率化、売れる営業マンの増産を実現します。また、帳票類、報告書、提案書の作成といった非営業活動の効率化も可能です。営業活動における大部分の効率化を実現し、売上アップを図ることを可能にしてくれるシステムです。

グループチャットやメーリングリストといったグループウェア機能のあるものも多く、全員が社内で顔を揃える機会の少ない営業チームにとって、緊密な連絡、コミュニケーションの効率化にも貢献します。

顧客管理ツール(CRM)

顧客管理ツールとは「Customer Relationship Management(カスタマーリレーションシップマネジメント)」の略語。その頭文字を取って「CRM」と表記されます。

SFAが新規顧客開拓から受注にわたる営業活動の過程を支援するシステムであるのに対し、CRMは既存顧客のフォローや管理が中心です。顧客管理や解析、問い合わせ対応やセミナーなどのイベント集客により、顧客との関係を強化することで、最大限の利益獲得を目指します。

SFAと重複する機能もあり、最近では両者の違いは曖昧になっているところもあります。

MAツール

MAとは「Marketing Autmation(マーケティングオートメーション)」のことです。メールやウェブサイトの訪問者の分析や、訪問者の行動分析、それにより割り出した見込み客へのアプローチを行うことで、受注見込みの高い見込み客を抽出します。営業部門へ引き継ぐことで、成約率の高い商談を効率的に量産することを目的としたツールです。

従来の営業マンが直接顧客先に出向かなければ得られなかった情報を、顧客の元へ行かなくとも得ることを可能にし、受注に至る過程を効率化することで営業活動の効率化に貢献します。

BIツール

BIとは「Business Intelligence(ビジネスインテリジェンス)」の略語です。企業に日々蓄積されていくさまざまな種類の膨大なデータを分析し、その結果を活用し、迅速で正確な経営意思決定の助けとなります。具体的には、経営、財務、営業、売上、人事データの分析や予算管理など経営判断において重要なデータの分析・レポートが可能です。

営業責任者は、このツールを活用することで、戦略の見直しや立案などを即座に行うことが可能となり、素早く的確な判断をする助けとなります。

セールスエンゲージメントツール

セールスエンゲージメントツールとは、営業のアプローチを通じて、営業マンと顧客との信頼関係を築いていくためのツールです。顧客のWebサイト上での行動を分析することで、顧客のニーズを正確に把握し、最適なタイミングで最適な提案を行うことで、顧客との信頼関係の構築、受注に繋げていきます。

MAツールと被る部分も多いですが、MAツールが受注見込みの高い顧客の抽出というマーケティングにとどまるのに対し、セールスエンゲージメントツールは、そこから電話やメール、SMSによる営業アクションを起こし、より積極的に顧客へアプローチできる営業マンの活動に主軸をおいたツールになります。

営業活動でクラウドツールを活用する7つのメリット

ここでは営業クラウドツールを導入、活用することで享受することのできる7つのメリットについて解説いたします。

どこでも使うことができる

クラウドツールを導入しても、社内でしか使えず、最新の情報を外出先で確認できなければ意味がありません。顧客対応や訪問などで社外にいることも多い営業マンにとって、訪問先や移動中に最新の情報を確認し、対応のできるクラウドツールは利便性が高いと言えるでしょう。

また、クラウドツールを導入しても常に最新のデータが入力されなければ意味がありません。どこでもアクセスできて、いつでも入力可能であることは、営業マンにとって効率的な時間の活用が可能となります。また、報告書の入力や書類作成のためだけに帰社する必要もなくなり、営業活動のあらゆる面で効率化が期待できます。

営業クラウドツールを導入する場合は、どこでも使うことができるものを選ぶことがお薦めです。

運用コストが安い

クラウドツール導入企業のなかで、多くの企業が導入理由に挙げているのが運用コストの安さです。

クラウドツールの多くは、定額料金を支払うことで一定期間サービスの利用が可能となるサブスクリプションの課金体系を採用していることが多いです。ユーザー数などに応じて、使う分だけの月額料金を支払うだけなので、各月の運用コストを比較的安く抑えることが可能です。

また、パッケージ型にありがちな導入時に莫大な費用がかかるといった事態も避けることができます。

いつでも解約できる

多くの場合、契約期間が長期間であることは珍しく、月単位、半年、一年単位といった短期間での契約がほとんどです。その後は、契約期間満了後は、更新を繰り返すことで利用を続けることになるので、導入したものの自社に合わないサービスであった場合などは、すぐに解約することができます。

また、いつでも解約可能であるということは、ツールを提供するベンダー側からしてみれば、サービスが合わず、不要だと判断されてしまえば売上を逃してしまうということになります。そのような事態を避けるべく、常に改良、アップデートを重ね、サービス向上のため、努力をするので、ユーザー側はよりよいサービスを受けることが期待できます。

情報共有が楽

外出の多い営業部門は、メンバー全員が社内にそろう機会は非常に少なく、ともすれば情報共有において問題が発生しがち。クラウドツールを導入することで、営業メンバーの情報共有がしやすくなり、緊密な連絡が可能となることで、報告・連絡・相談のタイミングを逃すこともなくなります。その結果、営業責任者は的確なマネジメントを効率よくできるようになるはずです。

管理しやすい

以前に主流だった、パッケージ型の場合、導入時にパソコン一台一台にソフトを入れて、それを社内で管理するのに膨大な手間がかかりました。一度不具合が見つかれば、インストールしたすべてのパソコンを一台ずつ対応していかねばなりません。

しかし、インターネットに接続すれば利用可能なクラウドツールにおいては、導入時にインストールする手間はかかりませんし、不具合が起こったとしてもシステム側が対応してくれれば済む話になり、利用者がするべきことはありません。サポート体制が整っているところも多く、管理しやすいのも大きなメリットの一つです。

顧客管理が容易

これまで個人の名刺ファイルで管理していた顧客情報をデータ化し、管理共有することが可能となるのも営業クラウドツールを導入する大きなメリットです。

名刺に記載された情報だけでなく、顧客先担当者の性格や特徴、傾向などもデータとして蓄積・共有可能です。社内異動や退職等の理由で営業担当が変わっても円滑に綿密な引継ぎが可能となります。

業務の効率化が可能

集積したデータを活用することで、さまざまなことができるクラウドツールは、これまで社員が時間をかけて行っていた業務も、短時間で行うことを可能にするなど、業務の効率化が可能です。

例えば、営業クラウドツールの中には、報告書や見積・請求書などの帳票類、提案書などの書類作成が簡単にできるものもあり、営業部門においてこれまで負担ともいえた営業活動以外の作業について効率化が図れます。

また、グループウェア機能により、緊密なコミュニケーションが容易になることで、打ち合わせや会議の時間を短縮可能となることで、営業マンは本来の営業活動により一層時間を割き、注力することができるようになります。 

MAツールやセールスエンゲージメントツールに見られるように、これまで営業マンが直接訪問することで機会を見出していた、見込み客との商談機会もクラウドツールを活用することで、営業マンが時間をかけて何度も足を運ぶことなく容易に実現できるようになります。

営業クラウドツールは、営業活動のさまざまな場面における効率化が可能なツール。導入による業務の効率化により、売上アップ、生産性の向上を期待できるツールなのです。

営業活動でクラウドツールを導入する手順

営業クラウドツールを導入したからといって、直ちに業務効率化が叶い、売上アップを実現できるわけではありません。正しく活用できなければ、宝の持ち腐れになってしまう可能性もあります。ここでは、導入を検討する際に、考慮すべきポイントについて解説いたします。

現在の課題を明確にする

営業クラウドツールの導入を検討している営業責任者は、導入による売上アップを期待して検討していることでしょう。しかし、ただ導入をしただけでは、売上アップにはつながりません。

営業クラウドツールを効果的に運用するためには、より多くのデータを共有し、しかもそれらを常に最新の状態にしておく必要があります。営業メンバーにとってみれば、これまで提出する必要のなかった、個々人のみが有していたデータを会社に提出させられることは負担にもなりえます。

責任者が課題を明確にせず、なぜ導入するのかをチームに共有しないまま、導入してしまうと、より多くの部分を管理されるようになったと不信感を募らせるメンバーが続出し、その結果協力を得られない可能性もあります。

また、システムに慣れるまでは負担が増えたように感じるでしょうし、面倒だとデータの共有を怠るメンバーが増えると、クラウドツールは機能せず、結局導入は失敗に終わってしまいます。

導入を検討する営業責任者が現在の営業チームの課題を明確にし、営業メンバー全員で課題を共有し、さらにはその課題解決のための導入なのだという認識を全員で共有することは、営業クラウドツールのメリットを最大限活かすために、非常に大切なことです。

課題を解決できる分野のクラウドツールを理解する

課題が明確になったら、その課題を解決することのできるクラウドツールは何であるかリサーチする必要があります。

先述のとおり、営業クラウドツールには、SFAやCRM、セールスエンゲージメントツールといったさまざまな分野のツールがあります。自社の課題解決に最も有効なツールはどれであるのか、しっかりと検討する必要があります。

企業の営業活動のなかで最も重点的に解決したい問題はどれかを絞り、その課題に見合ったツールを選ぶのがよいでしょう。

自社に合ったツールを選ぶ

営業クラウドツールの分野を絞り込むことができたら、いよいよ具体的にどのツールを採用するのか検討します。

この時、特に考慮すべきは、営業メンバーのITスキルです。身近にIT機器が増え、使いこなさざるをえない状況が増えた昨今ですが、ITスキルの個人差は大きいです。特に、営業部門はその傾向が大きく、あまり複雑なものだと使いこなせないメンバーが続出する懸念もあります。

自社の営業メンバーのITスキルを鑑み、ITスキルがそこまで高くない組織であるなら、直感的に使いこなせるようなツールを検討するなど、実際にツールを使用する現場のメンバーが使いやすいものを選びましょう。可能な限り現場の声を取り入れる方が、失敗は少ないです。

営業クラウドツールを導入して成果を最大化するために営業研修やコンサルティングを行う外部パートナー企業を活用して、業務内容を理解することも選択肢です。研修後の営業活動では検証・改善が必要ですが、成果を出している営業マンの対話技術を社内で分析共有することも必要です。このような研修は自社だけでなく営業支援コンサルティングサービスを活用する事で成果を最大化する事ができます。

現場に落とし込んで運用開始

いよいよ導入が決まれば、実際に使う現場のメンバーに機能や使い方、運用方法をしっかり落とし込んで運用を開始します。

せっかくよい営業クラウドツールを導入しても、現場が使いこなせなければ何の意味もありません。最初は慣れない作業に戸惑うメンバーもいるでしょうし、定着までに多少の時間は要するはずです。導入後しばらくは責任者が注意を払って、正しく運用するよう指導しましょう。

定期的な確認

導入されて、運用が開始されたらそこで終わりではありません。むしろ、そこからが始まりです。責任者は定期的に正しく運用されているのかを確認し、正しい運用ができていないのなら、その原因を探り、解決していくことが大切です。

どんなに素晴らしい仕組みも正しく運用されているのか定期的に確認しなければ、いずれ惰性に陥り、無意味なものへと成り下がる可能性があるのです。定期的な運用チェックは、面倒でもできるだけやるようにしましょう。

まとめ

あらゆる分野においてクラウドツールの普及が進み、効率化による生産性の向上が可能となった現代において、営業分野も例外ではありません。営業クラウドツールの登場によって、難しいと思われた営業分野の効率化や顧客管理も可能となり、効率化による売上アップが可能です。

しかし、課題を明確にせず、どの営業シーンにおける効率化を進めればよいのかもわからないまま導入を進めても、結局失敗に終わり兼ねません。自社においてはどのようなシーンで、自動化・効率化を図るのが最も効果的なのか見極める必要があります。

営業ワークフローと営業ツール標準化《実践ガイド》」では、営業を効率化しながら売上げを拡大する進め方を沿って解説しています。経営者や営業マネジャーの方向けの営業組織強化に役立つヒントになりますので、ぜひご活用ください。

    営業ワークフローと営業ツール標準化《実践ガイド》

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