BIツールとは?経営者の戦略と実行を助けるBIツールのメリット

BI ツール

近年は、第4次産業革命と名付けられるほどの変革期と言われています。テクノロジーの進歩は急速であり、革新的な技術が登場するたびに産業構造はどんどん変わっていきます。業界間の垣根は無くなりつつあり、例えば、今や自動車業界の雄としてソフトバンクの社名が出るようになっています。

今の時代の経営者は俯瞰的な視点を持ちながら、かつビジネスの現場の状況をリアルタイムに把握・分析し施策に活かしていく必要があると言えるでしょう。

ただ、難しい時代ではあるものの、ビジネスがデジタル化してきたため、各企業は「データ」という資産を蓄積できるようになりました。「データは21世紀の石油」と表現されるように、これからのビジネスにおいて重要になっていきます。

2019年3月にガートナー社がWeb上で行った調査によると「BIツールを自社で利用している」と回答した国内のビジネスマンは74%です。能動的に利用しているという人は35%ですが、多くの日本企業がデータ活用に積極的に取り組み始めていることが伺えます。

今回は、経営戦略の決定と実行に役立つBIツールの特徴と使い方について解説します。

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BIツールとは

BIとはBusiness Intelligence(ビジネス・インテリジェンス)のことで、企業内に蓄積されているデータを分析し、経営の意思決定に活かす概念を指します。一般には「インテリジェンス=知性」と訳されることが多いですが、国家同士の諜報活動もインテリジェンスと表現されるように、インテリジェンスという言葉には情報やデータを生かす力という意味合いもあります。

BIツールとは、このBI(ビジネス・インテリジェンス)に役立つデータの収集、分析、予測などができるツールです。

企業内にはさまざまなデータが点在しています。基幹システムはもちろん、昨今は安価なSaaS (クラウドコンピューティング)が登場したこともあり、会計システム、人事システム、CRM(顧客管理システム)、SFA(営業管理システム)、MA(マーケティングオートメーション)などを導入する企業も増えました。各システムには日々データが蓄積され続けています。

アーキテクチャの変化

もちろん、蓄積されたデータは各部署の戦略構築に活用されるのですが、単独の部門だけで利用が完結してしまうことが多いと言えます。例えば、MAはマーケティング部では使われているけど、営業部では一切使われていない、などが挙げられます。

また、企業内にはあまり活用されていないデータや日々変化する生データが存在します。お客様のアクセス履歴、購買履歴、SNSでの自社の評判、社内外に送信するメールの内容、営業マンの移動距離、カスタマーサービス部門の音声ログなど、一企業であってもデータ量は膨大です。

一般にインターネット上で収集・分析できる膨大なデータのことを「ビッグデータ」と呼びますが、BIツールは言わば社内のビッグデータを収集し、統合して横断的に分析できるツールなのです。加えて、総務省がすでにBIツールでの活用を想定した統計データを提供していますので、官公庁のデータも一部統合して分析することができます。

BIツールには、例えば以下のような活用例があります。

  • 経営部門:
    経営者や役員はBIツールを使うことで、経営目標の進捗状況を日々リアルタイムに把握できます。表示されるデータや予測をもとに、集中投資すべき分野、立て直しが必要な施策、撤退を検討すべき事業などが把握しやすくなるため、経営上の意思決定が容易になります。
  • 人事部門:
    社員の異動履歴、人事評価や給与のデータ、貢献した実績(売上げ、利益、新商品の開発等)などのデータを総合的に分析することで、個々の社員がどのくらい企業に価値をもたらしている人材かが把握できます。
    幹部社員として投資すべき人材と、底上げが必要な人材なども確認できるため個々の教育研修のプランも組み立てやすくなります。自社が採用すべき人材像の精度も高くなります。
    従業員満足度調査、顧客満足度調査、ストレスチェック、離職率などのデータもふくめて総合的に分析することで、職場環境を改善するための施策も立案しやすくなるでょう。このように、近年ではビッグデータを活用した戦略的な人事の在り方が注目されています。
  • 営業部門:
    営業部門では見込み客の購買行動のパターンをリアルタイムに解析し、どのようにアプローチしていくかという戦略にデータを活用することができます。例えば、見込み客の獲得戦略としては、Webの流入経路でもSNS、オウンドメディア、メールマガジン、インターネット広告などがあります。データを分析し力を入れるチャネルを決めることができます。

購買行動は常に変化していますが、BIツールではデータが自動更新されるため、変化をすぐ捉えることができます。

また、フィールドセールスによる売上げとWeb経由による売上げのバランスがどう推移しているか、今後どうなるかシュミレーションし、どの施策にどのくらい力を入れるべきか判断できます。

昨今は強い営業力を持つ会社が、データを駆使するデジタル営業にも力を入れています。例えば、大塚商会は自社通販サイトを立ち上げ、顧客層を広げることに成功しています。

お客様向けの提案資料にも、最新の人口推計、土地統計調査、労働力調査など必要な外部データをBIツールに取り込み、分析した上で作成すれば、説得力が増すことが期待できるでしょう。

  • 販売部門:
    小売業界の売上げは天気一つで変動します。過去の実績と気象情報などの外部データを取り込んで分析することで、季節や天候、行事やイベントなどの影響による売上げの変動を予測し、現場の仕入の量や品ぞろえの調整などに活かすことができます。J-statmapのデータをダウンロードしてBIツールに取り込めば、商圏分析もより手軽かつ迅速に行えるようになるでしょう。

もちろん、上記以外でもさまざまな切り口でビッグデータを分析して活用することが可能です。

BIツールはなぜ大切か

Amazon社のCEOであるジェフ・ベゾス氏が愛読したと言われる「データ・ドリブン・マーケティング―最低限知っておくべき15の指標」によると、米国のフォーチュン500社の業績上位20%の企業に共通する成功のカギは、データ解析にもとづくマーケティング(データドリブン・マーケティング)の意思決定だそうです。データを活用できるかできないかが利益を大きく左右する時代になっています。

日本でも既にデータドリブン(Data Driven=企業間を超えたビッグデータの共有・活用)をイノベーションに活かす動きが進んでいます。経済産業省は平成27年には「データ駆動型(ドリブン)イノベーション創出戦略協議会」を設立し、以下の図にある7つの取組事例を紹介しています。

データ駆動型社会

(画像参照元:経済産業省

AIの登場、あらゆるモノがインターネットにつながるIoTの普及により、まさしく第4次産業革命と言われる大きな変化が近未来に起きると予測されています。現実には、匿名データを企業が共有するデータドリブンについては、個人情報保護法や消費者意識の問題もあるため導入タイミングはまだ見えていませんが、世界的な潮流を見れば今後その方向に向かう可能性はかなり高いと言えるでしょう。

自社内外のビッグデータをどのように分析し、施策に活かしていけるかが企業の競争力の差となっていく可能性は高いと言えます。

これまであまりデータを活用してこなかった企業の場合は、まず社内のデータを活用できるように、個々の部門で地道にデータを蓄積していくことが必要です。データ量が増えたらさまざまな分析を行い事業に役立てていくことが、企業を成長させるために必要になっていくでしょう。

BIツールとExcelの違いとは

実はExcelは非常に優れたツールです。BIツールやSaaSなどの業務システムでできるような分析と同じようなことがかなりできます。例えば、営業力の強さで知られる有名な大手企業が、営業管理にSFAなどではなく、いまだExcelを活用していることは知られています。データ・ドリブンマーケティングもExcelである程度できるかもしれません。

しかし、Excelをそこまで使いこなすには高いスキルが必要です。ちょっとした資料作成であってもExcelは関数やピボットテーブルなどの知識は必要です。とはいえ社員のITスキルは個人差があり、Excelが苦手な人もいます。また、Excelによる資料作成はグラフや表なども社員によって形態が変わりがちで、誰が作ったかで資料の見やすさ、わかりやすさが違うなど、属人化しやすいところがあります。

その点、BIツールは特別な知識がない社員でも使いこなせます。経営者や役員でも操作できるため、会議のたびにITスキルの高い社員にレポート作成を依頼する必要もあまりなくなり、会社全体として業務の効率化が図れます。図やグラフも非常に見やすいフォーマットで統一されているため、分析資料を読む側が内容を理解しやすく会議資料としてもプレゼン資料としても適しています。

Excel使用者なら経験がある方も多いと思いますが、Excelはデータ量が多くなるにつれ重くなったりフリーズしたりすることがよくあります。BIツール(クラウド型)の場合は、そのような心配もあまりなく快適です。

BIツールのメリット

  • BIは大容量データも高速処理、Excelはデータが多いと重くなる
  • BIツールは自動更新が可能、Excelは最新のデータ入力が必要
  • BIツールは横断的なデータ分析が可能、Excelはスポットの分析向き
  • BIツールは外部データ(気象データ等)の取り込みが可能
  • BIツールは図やグラフが非常にわかりやすい

ただし、企業内にデータが蓄積されていない場合やビッグデータをBlで分析すべき課題が特にない場合は、BIツールではなくExcelで十分だと言えるでしょう。BIツールとExcelのどちらがよいかは、自社の目的と状況によって選択するとよいと言えます。

BIツールの基本機能

ここでは、BIツールの基本機能について解説します。BIツールにも無料版からAI機能搭載の多機能なサービスまでさまざまなタイプがありますが、いずれも操作自体はそれほど難しくなく、専門知識がない人でも使いやすいところが特徴です。

ダッシュボード

BIツールのダッシュボードは、グラフやチャートを一覧表示できます。各データの図やグラフを俯瞰して眺めると個々のデータだけを見るときには気付かなかったデータ同士の関連性などに気付きやすくなります。会議に参加した人も、資料が図やグラフで表現されていると理解がスムーズにできます。

レポーティング

レポーティングとは、目標やKPIなどの定められた数値と実際のずれを可視化する機能です。例えば営業マンのパフォーマンスの低下、生産工程におけるイレギュラーな数字など、何か異常な事態が起きたときに分析結果が通知されるため、問題が小さいうちに対処することができます。さまざまな仕事のプロセス管理において非常に助けになります。

多角度分析

多角度分析とは、設定した目標と現実の数値との差異があるとき、データをさまざま角度から分析して原因を探す機能です。例えば以下のような手法を駆使します。

  • スライシング:特定の分析軸から情報を絞り込み、表を作成する
  • ダイシング:集計軸を入れ替えてさまざまな表を作成する
  • ドリルダウン:ひとつのデータを深く掘り下げて分析する

操作する社員に統計の知識がなくても、BIツールを使うと、問題が起きたときその結果に至った原因がどこにあるのか?仮定した原因がどのくらい影響しているのか?本当に問題の原因なのかなどを分析することが可能です。

ビジネス上の成功や失敗を人間が分析すると感情や思い込みが入ったり、「この一つの原因がすべて」と結論を出したりすることがあります。BIツールを使うと決してわかりやすい解答が出るとは限りませんが、客観的な検証が可能なため問題解決に際して有効だと言えるでしょう。

データマイニング

データマイニングとは、大量のデータの中から法則性を発見することです。統計の専門知識を持つ担当者がいない企業でも、BIツールがクロス分析、相関分析、回帰分析という手法を行い、データの中にあるパターン、データ同士の関係性を見つけることができます。

新たな法則や関係性をヒントに新商品やサービスの開発、営業戦略の策定などに活かすことができるでしょう。

ただし、BIツールで報告されるのは相関関係であることが多く、すべてが因果関係ではありません。AとBに因果関係があるという仮説を立てるのはあくまで人間です。そこで経営者、現場スタッフなどの経験値や予測する力が必要になります。

データサイエンティストという専門職も存在しますが、現状、国内でデータサイエンティストは稀少であり大手企業でなければほぼ採用は難しい状況です。

経営者はもちろん個々の社員がデータマイニング機能を活用しながら、自分で仮説を立てて施策を立案し、実行を繰り返しながら成果をあげていけるようになることがBIツールの現実的な活用方法であり、社員の成長にもつながると言えるでしょう。

プランニング

経営施策や予算策定など、さまざまなことを計画する際に役立つ機能です。例えば、予算を決める際にも、過去のデータを分析の上、いくつかの予算案のパターンをシミュレーションすることができます。

BIツールを活用して戦略を実行するためには

ここでは、BIツールを活用して戦略を実行するためのポイントを解説します。

BIツールを効果的に活用するには、まず自社が何のために企業内ビッグデータの分析結果を役立てたいか明確にすることが大事です。前述のように狭い領域の分析・予測が目標なら、各部門で導入している業務システムやExcelでも十分対応可能かもしれません。目的が明確でないと、効果の検証もできません。

また、データを分析する際の指標も重要です。前半にも紹介した「データ・ドリブン・マーケティング ― 最低限知っておくべき15の指標」の著者は、データを活用できない最大の理由は「そもそもどのような指標が有効なのかを知らないことにある」とし、15の指標を提言しています。さらに「大規模なシステムや人的投資を必ずしも必要でなく、内容を正しく理解した担当者が一人いればできる」と書いています

アメリカ・マーケティング協会最優秀賞を受賞したAmazon社員の教科書と言われる本。「顧客満足度」「利益」「正味現在価値」「顧客生涯価値」「広告費用対効果」など 15の指標を提言しています。

BIツールを選択する際は既存のシステムやExcelと連携できるBIツールを選ぶ必要があります。BIツールのデータは基本的に基幹システムや営業支援システム(SFA)などの既存システムから収集するものであり、BIツール自体は手入力するツールではないからです。

最後に、BIツール活用にあたってはAIがはじき出した予測であっても、100%正しい訳ではないと認識して活用することが大切です。分析するのはAIでも最初の段階での各システムの入力などは人間が行う場合が多々あり、一定のヒューマンエラーは起こるはずです。誤差がすべて補正されるとは限りません。また、常に市場は変化します。

仮説はあくまで仮説です。AI市場は勃興したばかりであることを踏まえデータに依存しきるのではなく、実行段階では目の前の現実の変化を捉えて判断していくことが大切です。そもそも、データより現実の変化が速いため、目の前の変化が何かの新しい兆候である可能性も十分ありえます。

まとめ

近年のBIツールは価格も低コストであり、無料版でもかなり多機能なツールも登場しているため、大手企業から中小企業まで手軽にBIツールを活用できます。

冒頭のガートナー社の調査結果では、BIツールの使用頻度は企業によってかなりばらつきがあるようですが、今後ビッグデータを経営に活かせるかどうかが企業の競争力の差となる可能性は十分あります。

もちろん、競合企業もビッグデータを活かした施策を打ってくることは当然予測できます。各社がデータを重視した経営をするなか他社と差別化を図るには、データを元にした戦略の内容はもとより、施策に着手するスピード、戦略を現場に落とし込んでいく実行力がより重要になっていきます。セールスハックスでは《中小企業経営層向け》デジタル時代の「売上げ拡大戦略と実行」ガイドブックを無料提供しております。お気軽にダウンロードしてご活用ください。

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