近年は、営業の世界でもデジタル化が着々と進んでいます。
2019年2月には、営業力の強さで知られる野村証券が、国内支店を2割削減し「非対面でもナンバー1証券会社をめざす」と、今後はオンライン取引にも注力することを公表しました。銀行しかり、小売りしかり、いろいろな業態が実店舗を縮小しオンライン経由での売上げ拡大に力を入れています。
セールステックという市場も生まれ、営業の生産性や効率性を上げるため業界別、目的別の多くのITツールが に次々と登場しています。大がかりなイベントも定期的に開催されるようになりました。
各企業の営業現場においての変化はまだ小さいかも知れませんが、やはりビジネス環境は変わってきているのです。時代の変化に合わせてタイミングよく営業現場を変革していくことが大切です。
今回は、デジタル時代に必要な営業改革についてご紹介します。

デジタル時代の営業変化の背景とは
総務省の調査によると日本のインターネット利用者はすでに人口の80%を超えています。一部の高齢者や幼児などを除けば、ほとんどの人が使用していると言ってもいい数字です。また、スマートフォンでインターネットを使用する割り合いが約60%と急増しており、2017年時点ですでにパソコン使用者を超えています。
スマートフォンは、家庭にいる時も外出している時も、常に身近にあります。ショッピングはもちろんニュースを見たり音楽や読書を楽しんだりと、生活全般のデジタル化を後押しします。2018年時点のBtoC市場におけるスマートフォン経由の商品購入率は4割弱ですが、こちらも右肩上がりです。
出典:経済産業書
さらに、株式会社ITコミュニケーションズが2018年に調査した「BtoB商材の購買行動に関するアンケート調査」によると、企業サイトをスマートフォンで閲覧すると答えた人は約50%でした。
また、製品やサービスを検討するきっかけはブログなどのWebメディアと答えた人が43.8%で、「営業担当者」と答えた人は14.2%しかいないという結果が出ています。
企業間取引の場合、正式な申し込みは営業マンと契約書を交わすというスタイルがまだ主流であるものの、情報収集のための動きはスマートフォンからになりつつあることがわかります。
今後は、BtoCであれBtoBであれスマートフォン使用者を意識した自社サイト作成を意識していかなければ、販売機会を逃してしまう可能性があると言えるでしょう。そして営業マンも、検索で得られる情報よりも価値の高い情報をお客様に提供できなければ、存在価値が薄れてしまう可能性があります。
なぜ営業改革が必要なのか
営業現場の方は、Web上での集客や問い合わせまでの誘導はマーケティング担当者や広告担当者であり、あまり関係がないと思うかもしれません。ここでは、なぜデジタル社会に合わせた営業改革が必要なのかを解説します。
デジタル時代の見込み客の行動の変化
営業改革が必要な大きな理由は、見込み客の商品購入プロセスが変わったことです。
前述した調査結果でもわかるように、今はお客様が何かを購入しようと考えたときに、以前のように各社の営業マンから情報を収集しなくても、企業HPや比較サイトなどを確認すれば価格の相場、商品の評価まである程度把握できてしまいます。
「営業マンの情報提供」という仕事の大半が、既にITに代替されているのです。営業マンと会う前に情報収集しているお客様が求めることは、営業マンが持っている詳細な他社事例や、商品を活用することで自社がどのような価値を得られるかについての説明など、より具体的になっていると考えたほうが自然でしょう。
最近では、営業マンが新規開拓のために電話をかけると、お客様はすぐ社名をネット検索し、Web上の情報を共有しながら話すことも珍しくありません。その電話でアポイントが取れる場合もあれば、次回の商談については、一度検討した後に、メールやWeb問い合わせから調整するという場合もあります。営業マンとしては直接調整したいところですが、お客様側の立場からすると自分のタイミングで行動ができるメールの方が便利な場合があります。
今後は、
- いかに自社Webサイトに見込み客を集められるか
- Webに訪問した見込み客にどのタイミングで効果的に情報提供していくか
- Web問い合わせ客に誰がどのようにアプローチするか
- 営業マンがWebをどのように活用してアプローチやクロージングするか
などが商談の成約率に影響していくと考えられます。そのためには営業部門とマーケティング部門が連携しながら営業改革を進めることが理想的です。あるいは営業部門がよりマーケティングの知識を身につけ、自らの営業活動に応用させていく必要があります。
営業手法の多様化
デジタル技術が発展したことにより、営業マンが見込み客にアプローチする際の営業手段が多様化しました。例えば、Web広告やコンテンツ(見込み客に価値のある情報)をつかった営業手法や電話とメールを組み合わせた営業手法、SNSを活用した営業手法などが挙げられます。
テレアポや飛び込み営業のように営業マンが直接見込み客にアプローチする手法(アウトバウンド)よりも、お客様自らが購買プロセスを進めることができるように価値ある情報をタイミングよく提供していく手法(インバウンド)が増えています。
もちろん、飛び込み営業やテレアポはいまだに多くの企業で実施されています。一方で、デジタル化により営業マンとお客様の接点が増えたため、アプローチ手段も増えているとも言えます。以下に、近年に登場してきたアプローチ手法の例を紹介します。
1. インサイドセールス
広告やメディアなどからインバウンドで獲得した見込み客に対し、訪問することなく電話やメールなどで商談(オンライン商談)を行うこと。見込み度合いを決められた定義(見込み度合いをレベルごとに定義したもの)に照らし合わせた上で、必要に応じて購買プロセスを進めることを目的としています。
2. SNS営業
営業マンがTwitter、FacebookなどのSNSで情報発信することでファンを増やし見込み客につなげる営業手法です。BtoBの場合、積極的にSNSを活用されているお客様には個別のメッセージを送ることで繋がりを作ることができます。
3. Webセミナー(オンラインセミナー)
インターネット上で動画セミナーを配信することで集客につなげる手法です。遠隔地のお客様やセミナーに来場できなかったお客様に対する情報提供ができます。Web会議システムのウェビナー機能やYouTube Liveなどを活用することで簡単に始められます。
4. コンテンツマーケティング
自社Webサイトやオウンドメディア上で、お客様の課題解決に役立つ価値のある情報を提供する手法です。eBookやホワイトペーパーなどの資料ダウンロードを通して見込み客の情報を獲得していきます。
デジタル時代に対応する営業改革のポイント
今後、社会のデジタル化が進むことはあっても衰退することはありません。将来的には業務のプロセスはもちろん組織の役割も見直す必要があるかもしれません。とは言え、すべてのお客様が今年、来年からデジタルツールを使いこなし、営業マンの訪問よりもオンライン商談を歓迎するわけではありません。これまでの方法でビジネスが回っているのであれば無理に変化させる必要はありません。
かなり前から「営業職は10年後になくなる」「BtoB営業も絶滅する」などの言説は飛び交ってはいますが、営業マンがコンサルタントのごとくお客様の課題解決に注力することが多い日本のBtoBの営業現場においては、訪問の商談がすべてなくなることも考えにくいと言えます。
働き方改革の推進やデジタルに強い世代への決裁権の世代交代を背景として、営業マンはデジタル化へ対応していく必要はあります。しかし、明日から営業組織や営業手法、ツールを抜本的に変えるというよりかは、営業改革も段階を踏んで行うことがポイントです。
まず何から変えるべきか、改善のためにはどのようなツールがあるのかを確認していくことが大切です。
現在の営業活動を見直す
最初に行うべきは、現状の営業活動のどこが効率が悪いのかをあぶりだすことです。そして、営業活動のプロセスのなかでデジタルに代替できるところをリストアップします。これは、営業マンの負担を減らし、見込み客とのコミュニケーションという重要な仕事に専念してもらうために必要なステップです。
調査によると、営業マンの多くがムダだと感じている業務の上位は「提案資料の作成」「名刺情報の入力」「管理ツールへの記入」などがあります。自社の営業効率を妨げているのは何か、現場の本音をヒアリングすることから始めるとよいでしょう。
デジタルツールの活用
課題が確認できたら次に課題を解決できそうなツールを選定します。近年は高機能で安価なデジタルツールもどんどん登場しています。またツール同士の連携も容易な商品が増えています。自社の営業課題に合わせて取り入れていくことで、現場の営業マンに「デジタル化は業務を楽にするもの」だと認識してもらうことが大切です。
1. クラウドサイン
書面で契約せずWeb上で契約を締結できる電子契約サービス。印鑑も印紙税も不要なためコストが削減できます。また、これまで書類への押印、郵送にかかっていた時間はもちろん、クラウド上で相手の書類の開封状況も確認できるためメールや確認電話などの時間も不要となり、大幅な業務効率化が可能です。
2. 名刺データ管理システム
社員が保有している名刺情報をもとに会社・個人単位で取引先情報を一元管理するシステム。例えば、担当者の人事異動、昇進・昇格についての情報、趣味や志向性などの情報も可視化されるため、自社の営業マンが退職しても引継ぎがスムーズになります。担当者が転職あるいは新部署に異動した場合も自社の関係セクションに情報を共有することで、新たなビジネスチャンスにつなげられる可能性があります。
3. 営業アタックリスト自動生成ツール
各種ポータルサイトや求人サイトなどから、指定した条件をもとに企業リストを自動生成するシステム。システムが定期的にクローリングして情報を更新するため、常に新しい企業情報を入手することが可能です。
4. AI搭載型クラウド電話
営業マンの営業電話の声の抑揚やスピードをAIがリアルタイムで解析しアドバイスを行うクラウド電話システム。電話の内容はすべて録音・テキスト化されるので、個人が自分の営業トークを見直し課題を発見できたり、優秀な営業マンのトークの秘訣を社内で学んだりすることができます。
5. MA(マーケティング・オートメーション)
見込み客の集客、信頼関係構築、見込みの顕在化までのプロセスを一元管理するシステム。例えば、自社サイトに訪れた見込み客の行動に合せて、インターネット上で必要な情報を適切なタイミングで自動的に提供することで、有望な見込み客を選別して営業部門に引き渡すことができます。
6. SFA(営業支援システム)
営業活動のプロセスをデータ化し、営業マンを支援し生産性を上げるためのシステム。各種資料、データの共有はもちろん、属人化しやすい営業ノウハウも共有できるため、営業マン全員の受注率向上が期待できる。新人営業マンや中途入社の営業マンも、成約した提案資料などを見ながら自分で学べるため成長スピードが速くなります。
7. CRM(顧客情報管理システム)
顧客の取引履歴、問い合わせ履歴、Webへのアクセス状況、商談の進捗などの情報を一元管理するシステム。個々の取引先を深く理解することにより、顧客満足度を高め関係を維持・発展させていくことがおもな目的です。いろいろな切り口のCRMがあり、前述の名刺データ管理システムもCRMの一種類です。
営業改革を実行するためには
テレアポも飛び込み営業も業界によっては、現在でも効果的なアプローチ手法です。営業改革を実行すると言っても、いきなり現在の営業活動を抜本的に変える必要はなく、有効な手法はそのままに、自分たちがデジタルを活用して業務を効率化できそうなところから改革を進めることがポイントです。
できるだけ現場の営業マンからのヒアリングも行ってから着手していきましょう。もちろん、経営者や営業管理職の方は同時に組織体制や業務プロセスも見直していくことが大切です。
新しい手法を試すときは一時的に効率が落ちるものです。だからと言ってこの厳しい時代、営業部門が四半期あるいは1ヶ月でも目標数字を落としてしまうと、現場はもちろん会社にとっても痛手です。また、営業マンのモチベーションの低下にもつながりかねません。現場の混乱は最低限に抑える必要があります。
まとめ
アナログ時代からデジタル時代に変わる過渡期である今は、ビジネスの手法もどんどん変わります。
近年は非常に変化の速い時代です。営業改革にあたっては、今は素晴らしいと思うようなツールや手法が2~3年後に陳腐化していくこともありえることを念頭においておきましょう。
AI、IoT、5Gなどテクノロジーの発展があまりに速く何から手を付けていいかわからなくなることもあるかと思いますが、便利なツールが登場しているという認識で営業改革を行うことがポイントです。
営業の目的は昔も今も成果を上げることであり、具体的に言えばお客様の役にたち、売上げをあげることです。「営業改革」も「新しい営業手法」も「Webマーケティング」も、すべてあくまで手段でしかありません。その軸をぶらさず、デジタル時代に合わせた組織体制を組み、次から次へと登場する多様な営業手法や新しいITツールの中から自社に合うものを選んで活用していきましょう。
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