セールステックとは?経営者が知っておくべき営業効率化の技術

セールステック

近年は、ビジネスのデジタル化に伴い、フィンテック、HRテック、エドテックなどさまざまな新しいIT市場が勃興しています。営業現場をテクノロジーで効率化する「セールステック市場」も、有望市場として投資家から熱く注目されています。

企業にとって売上げ拡大は命題。セールステックを活用して売上げなり利益が増えるならば、ぜひ導入したいと思う経営者の方は多いと思います。しかし、新しい市場であるためか、期待値の割に明快な事例が見付けづらいのがセールステック市場の悩ましいところかも知れません。

「実際のところ、セールステックの費用対効果はどのくらいなのか?」
「導入した企業の本当の満足度はどうなのか?」
「最初はどのようなツールから使い始めればいいのか?」

など、気になる点も多いと思います。本記事では、2020年時点でのセールステック市場を整理整頓し、セールステックを選ぶ際のポイントを解説していきます。

セールステック(SalesTech)とは

セールステックとは、ITを活用した営業効率化ツールのことです。わかりやすい例では、CRMやSFAなどの営業支援ツールやMA(マーケティング・オートメーション)などがあります。直近の事例としては、訪問営業で拡販する際に活用されたAIを搭載したセールステックが挙げられます。

昨今は、SFA、CRMなどの統合支援プラットフォーム型のセールステックだけでなく、営業プロセスごとに特化した個性的なセールステックもたくさん登場しています。

  • 自動的に見込み企業リストをWebから収集するセールステック
  • 24時間Webサイト上でお客様対応をし続ける「チャットボット」
  • 移動せず自社のデスクで商談できる「オンライン商談システム」
  • プリント・押印・郵送なしでオンライン契約できる「電子契約システム」

特化型のセールステックは「コストが〇〇くらい削減できる」「月額〇円くらいで見込み客リストを増やす」など、投資に対するリターンが見えやすいシンプルなものも多く、導入判断が比較的容易だと言えるでしょう。

海外では1社平均10種類ものセールステックを使っていると言われますが、自社の課題に対応するセールステックを複数組み合わせて活用することも可能です。

セールステックが注目されている背景と市場規模

セールステックは、1990年代から米国で台頭してきた市場です。テクノロジーの進歩とともに成長し続け、米国の大手調査会社CB Insightsによると、2016年には世界のセールステックスタートアップ企業への投資件数と金額は史上最高に達しています。

セールステック市場が成長している一つの理由には、技術革新があります。昔は高額だったシステム構築も、以下の図のようにSaaS型のクラウドシステムが普及してきたことにより、導入コストが下がりました。例えば月額1ユーザー10,000円で使うことができ解約も簡単というサービスも珍しくなく、大企業だけでなく中小企業もITをビジネスに取り入れやすくなったのです。

SaaS型のクラウドシステム

セールステックの市場規模

実際の市場規模はどのくらいでしょうか?セールステック市場を牽引するCRM、MAなどの市場規模についての調査を見ると、以下のように国内外でセールステック市場が急成長していることがわかります。

CRMの市場規模と成長予測

  • 2017年の世界CRM市場規模:421億ドル(約4兆6000億円)。※前年度比15.5%の成長
    参考:日経 x TECH(米国大手調査会社ガートナー社調べ)
  • 2018年の日本のCRM市場規模:1572億1400万円。2023年は2079億8000万円を予測
    (IT専門調査会社 IDC Japan 株式会社 2019年7月調べ)

MA市場規模と成長予測

当初は高くなかったCRM、SFAの顧客満足度

市場が伸びているということは、顧客満足度も高いというイメージがあります。しかし、セールステックについては必ずしもそうではなく、苦戦してきた歴史があります。

2008年の米国ガートナー社の調査によると、セールステックの代表的なシステムであるCRM、SFAの導入に「成功」「ある程度は成功」と回答した企業は全体のわずか2割程度です。
(参考:日経BP ITpro「CRMの8割は不成功,なのにブームが再来?」)

日本でも2018年時点でCRM、SFAを導入する企業は約1/3にまで増えていますが、導入したものの成功しなかったという企業の話は決して少なくありません。「Xテック(クロステック)」という領域全般に言えることですが、テクノロジーの急速な進歩が先にきたため、お客様の課題に注目するマーケットインというよりはプロダクトアウト型が先行しているイメージがあります。

それでも、昨今の複数の顧客満足度調査の結果をみると、日本において徐々にセールステックの満足度が向上していることがわかります。

■2017年:株式会社マツリカの「 SFA満足度調査」

  • 実施期間: 2017年1月24日~1月25日 対象200人
  • SFA導入後にその課題が解決されたか:
    ・「どちらとも言えない」46.0%
    ・「ほとんど解決されていない」6.5%
  • 導入効果満足度
    ・「どちらとも言えない」40.5%
    ・「やや不満」8.0%

 ■2018年:株式会社大塚商会の「SFA満足度調査」

  • 実施期間:2018年2月6日~2月8日 対象111名
  • 「満足している」以上の評価は55.8%
  • 「改善したい問題に即した機能がない」30.4%
  • 「業務の手間が増えた」という意見が26.1%
  • 「機能を活用しきれない」「操作が複雑」21.7%

■2019年:1st Penguin株式会社の「SFA導入についてのアンケート調査」

  • 実施期間:2019年10月25日~2019年10月28日 対象107名
  • 「大変満足している」「満足している」:80%
  • 「機能が多すぎて使いきれない」:64.3%
  • 「導入後の業務フローの想定が検討不十分だった」:50.0%
  • 「導入後の項目設定が困難」:42.9%

2017年、2018年時点の2社の調査では満足している企業としていない企業の比率は約半々です。2019年の1st Penguin社の調査では導入満足度が80%に向上しています。一方で「機能が多すぎて使いきれない」という回答も多く、 やはり SFAは、企業によっては使いこなすには難易度の高いセールステックと言えるかも知れません。

自社の営業マンのITリテラシーが高ければ統合型のセールステックSFAなどを導入する意義はあるでしょう。逆に「わが社の営業マンはITリテラシーが低いし、すぐ結果の出ることしかやる気を出さない…」ということであれば、特化型のセールステックから手堅く始めるとよいかも知れません。

近年のセールステックは拡張できるタイプのサービスが多いため、必要になれば既に活用しているツールを連携させることができます。部分的に取り組み、最終的にSFAと連携させることも可能です。

セールステックカオスマップとは            

セールステック市場については、前述のCB Insights社がカオスマップを公表しています。具体的には、過去18ヶ月以内に大きな投資を得たセールステクノロジー企業(世界の先端を走るセールステックスタートアップ企業)の一覧です。

CB Insights社では、この有望な新興企業が展開しているサービスを、7つのカテゴリーに分類しています。 (7つに分けてはいるものの、一つのセールステックが複数の領域にまたがる機能を持つ場合もあります。)

カオスマップ

出典:Cold Call: 65+ Companies Transforming The Sales Tech Landscape-CBINSIGHTS

セールステックカオスマップの7つのカテゴリー

カオスマップの7つのカテゴリーについて概要と具体例を解説します。

営業加速(セールス・イネーブルメント)

セールス・イネーブルメント領域のセールステックとは、営業活動全体の最適化を目指すためのツールのことを指します。具体的には高機能なSFA、CRMや、営業へのコンテンツ支援に特化したツール、 MAとCRMをつなぐセールステックなどが該当します。

背景には、近年営業マンに求められる能力が高度化したことや、ビジネスのデジタル化が進み、営業部門とマーケティング部門の領域が非常に近づいていることなどがあります。

例えば、マーケティング部門がMAツールを活用して集客を行い、営業部門に見込み客を渡すこともできます。しかし、組織間の連携がうまくいかないことが起きがちです。営業マンの教育についても同じであり、人事と営業部門が連携できない状況があり、営業活動を会社全体で最適化する必要性が高まってきたのです。

セールス・イネーブルメントツールを活用することで、営業マンのスキルの底上げ、ナレッジの共有、精度の高い売上げ予測などが可能となります。

カスタマーサポート

カスタマーサポート領域のセールステックには、Webサイト上でお客様とコミュニケーションを簡単にとれるチャットツールや、問い合わせへ自動回答するチャットボットなどがあります。

近年のBtoB市場の購買担当者は、営業マンに会う前に約6割の購買行動を終えているという調査結果が出ています。Webでまさに検討中のお客様に対しリアルタイムでサポートすることは、営業活動上非常に有効です。お客様が困ったことに対して迅速に対応することで、顧客満足度を向上させることも期待できます。

インテリジェンス・解析ツール

社内外のさまざまなデータを収集し分析、加工し営業活動に役立てるセールステックであり、BIツールなどが該当します。例えば、営業マンとお客様の電話内容をデータ化し、分析してパターン推定することなども可能です。

小売り店や飲食店向けの営業マンなら、気象情報などの外部データを取り込んで、季節や天候、イベントなどの影響による売上予測や提案もできます。分析ツールは目的に応じさまざまな活用が可能です。

CRM(Customer Relationship Management)

CRMとは顧客管理システムであり、お客様のさまざまな情報を一元管理します。近年のCRMは高機能・多機能化しており、さまざまな用途に活用できるため、SFAと同じように統合された営業支援プラットフォームになっています。

日本と異なり転職が当たり前の雇用文化がある欧米では、人の出入りに伴う業務負荷をなくすため顧客情報を一元管理する必要がありました。日本でも近年は転職が一般化してきましたが、もし、担当者が急に退職してもCRMがあれば取引経緯やお客様企業の内部事情が共有化されているため、引き継ぎがスムーズにできます。

顧客体験

Webサイトを訪れたお客様の閲覧ページなどに応じて、必要と思われる資料を適切なタイミングでポップアップで表示したりしながら、見込み客を集めるMA(マーケティング・オートメーション)などが該当します。

営業マンが介在しない状態で資料を提示するため、お客様は気軽にダウンロードしたり、場合によっては問い合わせしたりできます。MAを経由して問い合わせるお客様は十分に資料を検討しているため、購入意欲が高い傾向があります。

コンタクト・コミュニケーション

電話・メール・SNSなど、あらゆる経路からの問い合わせを一元管理し、お客様と最適なコミュニケーションをとるためのセールステックなどが該当します。

近年はさまざまコミュニケーション手段が増えましたが、便利になるというよりは、お客様に合わせて電話、メール、各種チャット対応と臨機応変に使い分ける必要があり、営業マンの立場では負荷が増している面があります。対応漏れが起きるリスクもあるため、連絡業務を効率化できるツールは必要不可欠だと言えるでしょう。

見込み客に対して自動でメール配信を行うツール、お客様からの電話内容を分析してオペレーターにおすすめの対応トークを提示するツールなどもあります。

人材開発・コーチング

営業マンの教育、コーチングを行うためのセールステックです。ロールプレイング、営業プロセス、商談のパイプラインなど営業に必要なテーマについて、業務の隙間時間に動画などを閲覧したり、ミニテストにチャレンジしたりすることができるラーニングシステム、AIを活用したコーチングアプリなどが該当します。

営業マンに求められるセールステックを活用する力

最強の営業力で知られる某企業については、ネット上で「HPを見ていると電話がくる」「資料をダウンロードしたら必ず電話がくる」という逸話が散見しています。

MAなどのセールステックを活用して、閲覧履歴をもとに素早く見込み客にアプローチしていることが推測できますが、デジタル技術を駆使しながらも、ニーズのある企業にいち早くコンタクトするという「営業の基本」を徹底していることも伺えます。

また、他社があまり活用していない段階だからこそ、より有効という見方もできます。営業手法がコモディティ化してしまえば、迅速なアプローチにお客様があまり感動してくれなくなる可能性も出てくるでしょう。セールステックはこれからも多種多様な新サービスが登場することが予測できますが、「旬」な時期を逃さないで活用することも一つのポイントになるでしょう。

なお、営業マンがセールステックを活用するためには、もちろん最低限のITリテラシーは必要ですが、より重要なのは、セールステックの機能を営業活動に役立てる力、使いこなす力です。だからこそ、導入時に目的に合致したセールステックを選ぶことが大切です。

セールステックは自社の課題に即していれば、営業マンのスキル向上、ナレッジの共有、コスト削減などさまざまな効果が見込めます。

セールステックを効果的に活用するためには

ここでは、セールステックを効果的に活用するポイントを解説します。

セールステックで解決したい自社の課題を明確にする

セールステックには、前述のように導入効果がはっきり出やすいツールもありますが、導入するにあたり営業管理職や営業マンにそれなりのITスキル、知識が必要な場合もあります。

高機能、多機能だからよいのではなく、自社の課題と社員のレベルにあっている必要があります。使うことのできない機能が多すぎるということは、オーバースペックなツールということであり、費用対効果は悪くなります。

また、そもそも見込み客数が少ないところにCRMを導入しても成果には限界があります。先に導入すべきは「営業リスト自動作成ツール」、あるいはWebサイトのコンテンツの充実とMAかもしれません。 

「業務を合理化できるツールか?」「自社が求める成果につながりやすいツールか?」この2点を押さえた上で、費用対効果を見積もる必要があります。

SFAの費用は提供企業によって営業マン1人あたり月1,500円~50,000円くらいまでとかなり差があります。初期費用の有無、機能の多さ、カスタマイズ可能かどうかなど各社それぞれ違います。
比較的多い以下の価格帯で費用をシミュレーションしてみましょう。

価格例:

  • 5,000円/1ユーザー/月
  • 10,000円/1ユーザー/月
  • 20,000円/1ユーザー/月

仮に営業マンが20名の場合、一ヶ月あたり5,000円のプランだと月額10万円(年間120万円)、10,000円のプランだと月額20万円(年間240万円)、月20,000円のプランだと月額40万円(年間480万円)のコストが発生します。

「優秀な営業マンを一人採用したと思えば安いもの」「一つ契約がとれればすぐ元がとれる」という考え方もできますし「年間これだけの利益を出すのは当社の商材では大変」という判断もできます。自社の商品・サービスの価格帯によっても高いか低いかのイメージも変わるはずです。事前に投資分を回収できるか試算しておくことが大切です。

同時に多くのセールステックを導入しない

自社の営業活動を振り返り課題がいくつか見つかっても、一気にすべてをセールステックで解決しようとするのは避けることがポイントです。

セールステックを使うのは現場の営業マンであり、忙しいなか1つの新しいセールステックを使いこなすことができるようになるためには、時間や労力が必要です。慣れるまでの時間も想定しておかないと現場が混乱し定着しなくなる可能性もあります。 

運用を徹底させる

セールステックを導入したら、営業現場に使ってもらうことを徹底させましょう。習慣となっていないことや追加で作業が必要なことは、時間の経過とともに風化してしまいます。せっかく導入したのにもったいないので、何をさせるのかを明確にした上で、現場に落とし込みます。

定期的に営業マンの意見をヒアリングすることも大切です。「競合A社がこんなツールを使っているからうちも必要」「お客様がオンライン商談できるかと聞いてきた」など、営業現場で見聞きするようなセールステックには、営業マンも興味があるはずです。

実際に使う営業マンの声を重視して、セールステックを検討したり運用したりすることが望ましいと言えます。

まとめ

日本の営業マンの仕事の仕方が非効率であることは、かなり昔から指摘されてきました。しかし、売上げが上がらないという課題には、一般に複数の要因が絡みあっているため、セールステックに限りませんが魔法の杖のような解決策があることはそうありません。

セールステックを導入する場合は、正しい手順で導入することが何より大切です。「何がもっとも解決したい課題か」ということと「自分たちがセールステックで解決できることは何か」を明確にし、導入成果のイメージを現場と共有する必要があります。

セールステックを営業マンが使いこなせるかも重要なポイントです。営業マンのITリテラシーに不安がある場合は、いきなり大掛かりなセールステックを導入するのではなく事務作業を減らすようなわかりやすいセールステックから導入して、小さな成功体験を作っていくことがおすすめです。

セールスハックスの運営会社では、営業活動の見込み客へのアプローチに特化したクラウド営業支援ソフト「Digima」を提供しています。リードの獲得に特化したMAや、顧客の情報を管理するCRMとは異なり、営業活動の中で電話やメール、Webサイトを活用して「いかにお客様と連絡が繋げることができるか」にお役立ちできるツールになっております。

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佐原 業平(さはら なりひら)

中央大学商学部を卒業後、2016年に新卒で株式会社コンベックスに入社。 新規開拓営業を経験した後、eBook・セミナー・研修のコンテンツの作成に従事。 そこで培った営業とマーケティングの知見を生かし、「セールスハックス」の運営に取り組む。 経営者から営業マンまで、ビジネス現場を理解したお役に立てる情報を発信。

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