営業ステータス管理の重要性とは

営業管理職の方は、部下の案件の進捗をしっかり把握できているでしょうか? 
多くの営業部門では目標管理は徹底しています。月初に見込みを全員に出させて、営業マンの報告をもとに達成状況を見ていきます。

しかし、大体の場合、月初の見込みから何人かの営業マンのA見込みが次第に消えていき、下旬になると目標達成が厳しそうになり、好調な営業マンに「これは売り上げられないか?」「あと〇万どうにかならないか?」と要請して100%にもっていくようなパターンになりがちです。

パレートの法則で言われるように、営業部門の売上げをつくる2割の大手顧客と営業マンはおおよそ決まっていますので、それでもどうにか目標数字は達成できるでしょう。成績上位の営業マンも頼まれることを予測して、いわゆる隠し玉案件を持っていたりします。

とは言え、営業マンの報告に基づく目標管理だけだと、何を予測するにも「営業マン頼み」になってしまいます。重要案件以外の進捗の状況や、達成できなかった営業マンが落とした案件の理由も曖昧になるため営業マンが成長せず、毎月同じような光景を繰り広げることになるかも知れません。

営業ステータス管理をしっかり行える仕組みをつくると、リアルタイムに全員の案件の進捗がわかり売上予測が正確になりますし、達成できなかった営業マンへの指導も適切になっていきます。

本記事では、営業ステータス管理の重要性について改めて解説します。           

営業ステータス管理とは

営業ステータス管理とは、営業活動を段階(ステータス)ごとに区分して管理することです。

営業活動は最初のアプローチから始まり、何回かの訪問やコンタクト、商談、提案、成約、さらにその後の顧客フォローがあります。細かく分解するとテレアポのアプローチ段階だけでも、1回目、2回目、3回目と内容は変わります(お客様は不在が多く、最初につながるまでが大変なため)。

営業マンが普段感覚的にこなしている営業活動も、細分化してみればそれぞれ必要なスキルが違う多種類のタスクの集大成であることがわかります。ゆえに、営業マンは不得意な工程で躓くことがあります。

営業ステータスを区分して管理すると各案件の状況がわかるだけでなく、個々の営業マンが苦手とするステータスも判明するため、個別にきめこまやかな指導ができます。全体のステータス状況からチーム全員が停滞するステータスがわかれば必要なツール(トークスクリプトやマニュアル、事例等)も判明します。

個人のスキルアップを後押しし、売れる環境を整えていけば売上アップにつながります。近年の営業管理の研究では、成果の管理(アウトプット管理)とともに営業プロセスの管理なども、間接的に成果にプラスになると判明しています。

メリット:

  • 案件管理の解像度が高くなる
  • 営業チーム全体の営業活動の状況が可視化できる
  • 中長期的には売上げ増につながる
  • 売上予測がたてやすい

ただし、営業ステータス管理には営業マンの入力作業が伴うので、あまりに煩雑な管理では営業マンにとってストレスのもとになったり、営業活動の時間が減ってかえって生産性が下がることがあります。営業マンがわかりやすい、シンプルな営業ステータス管理の仕組みにすることがポイントです。

よくある営業ステータスの例

ここでは、営業活動でよく使われる営業ステータスの例を紹介します。 

営業活動全体のステータス例

まず、見込み客の獲得から受注までの営業活動全体のステータス管理があります。基本であり重要なステータス管理です。

例えば、案件ごとのステータスが共有されていないと、すでに取引済のお客様に営業してしまったり、ある営業マンが商談している企業に他部署の営業マンが新規開拓をかける「バッティング」が頻繁に起こることになります。お客様には迷惑をかけますし、自社のリソースのムダ使いでもあります。

ステータスの設定については業界や商品・サービスの特性に応じて各社それぞれの営業進捗のステータス基準がありますが、一般に3~7区分くらいではないかと思います。

例1:7つのステータスに区分

7つのステータス区分

例2:シンプルに4つのステタースに区分

4つのステータス区分

ステータスの名称・定義は、営業マンがパッと見てすぐ理解できるような表現にします。世間一般の定義にもばらつきはあるため、参考にしつつも自社で基準を設定すれば問題ありません。

例):

  • リード:担当者の連絡先・氏名が判明している見込み客
  • アプローチ中:営業メール、テレアポなどで新規開拓中
  • アポ:アポイントの日時が確定した段階
  • 商談中:初回訪問~提案までの営業活動
  • 商談済:提案書・見積書を提案した
  • 受注(失注):提案後の結果
  • フォロー中:営業活動継続中

アプローチ中のステータス例

各ステータスをさらに細かく分けることもできます。例えば、テレアポなど新規開拓アプローチ中のステータスも、以下のように分けるとわかりやすくなります。エクセルやITツールを活用して、お客様の反応をプルダウンで選べるようにすると便利です。

例)テレアポのステータス例

テレアポのステータス例

テレアポをアルバイトなどに任せている場合、日によって担当するスタッフが変わることもありますが、ステータスを見れば「このお客様は今日が2回目のコールで前回のステータスが『資料送付済み』だから、今日は資料はご覧いただけかを確認しよう……」と、誰もが一瞬で判断できます。

商談後のステータス例

商談後のステータス管理の目的は、見込み度のランク付けもしくは商談の成否を明確にすることです。現実には見込み度を正確に把握することは難しいものですが、ある程度の予測でもステータスを選択してもらうことで、リアルタイムで営業チーム全体の確定数字とおおよその売上予測が可能になります。

ステータスを入れる段階で、営業マンが「より見込み度を正確に意識するようになる」効果もあります。売り切り型、長期取引型など商品・サービスの特徴によって区分をどこまで細かくするかは異なります。

例1):細かく設定

  • S:契約確定(書類締結済)
  • A:ほぼ確定(見込み度80% 口頭で発注依頼ありor書類待ち)
  • B:提案済(見込み度60~80%)
  • C:提案済(見込み度60%未満)
  • D:現状ニーズなし・長期フォロー要
  • E:現状・今後ともニーズなし
  • F:失注(1:他決、2:不要、3:価格、4:機能、5:時期早承、6:不明)
  • G:その他

例2):シンプルに設定

  • 確定     :契約書締結、発注書受領済
  • 見込み度(高):口頭で発注の意志あり。稟議中
  • 見込み度(中):興味・関心は高いが、すぐのニーズではない
  • 見込み度(低):関心度が低く、ニーズ自体あまりない

営業ステータス管理の重要性

ここでは、なぜ営業ステータス管理が重要なのか解説します。

① 案件の進捗の管理ができる

各案件がどのくらい進捗しているかがわかりやすくなるので、営業マンは自分がどのステータスの案件をどのくらい抱えているのかを把握できますし、営業管理職はチームをマネジメントするときに全体の案件の進捗状況、売上目標の達成状況がパッとわかるようになります。

月初で成約可能性がある高い案件(A見込み)が何件あって、いわゆるB見込みが何件か把握することは目標管理上とても重要です。この「読み」の確度が低いと、月末にかけて一部の営業マンに無理に数字を出させるようなことになりがちですが、ステータス管理が徹底していれば早め早めに手を打つことができます。

② 次回のアクションがわかる

営業ステータスを把握することで、そのお客様に次回どのようなアクションをするべきなのかがわかりやすくなります。営業マンも案件が増えてくると、どの顧客がどの段階まで進んだかを正確に記憶できなくなることがあります。営業活動ではある程度時間をおく必要もあるため、うっかりフォローを忘れてしまうことも起こります。

ステータスを確認できれば、次回のアクションをすぐイメージできるようになります。

例):

  • 次回はより深いヒアリングをする(BANT条件をできるだけ確認する)
  • 次の商談では事例を紹介しながらお客様の課題について話し合おう

③ 他者に引継ぎやすい

営業ステータス管理がしっかりしていると、案件を上司や先輩、同僚などに引継ぐ際にスムーズにことが運びます。営業マンの頭の中にだけしか情報がないと往々にしてそれを言語化できず、せっかくの良い見込みのタイミングを逸することがあります。

一般に3月や9月に人事異動があると思いますが、辞令が出てから異動するまであまり時間がないことがよくあるものです。営業マンはまとめて何十件と引き継がなければならないので、すべての案件を丁寧に説明できません。日頃からきちんと営業ステータス管理をしておくと、担当変更による顧客離れを防ぐことができます。

④ 営業組織全体のパイプラインを分析できる

営業部で営業ステータス管理ができていると、組織全体でどのステータスが多いのかが確認できます。自社で設定した営業パイプライン(営業プロセス)にそって営業マンに動いてもらっているので、ボトルネックになりやすいところを特定しやすくなります。

  • ステータスに「アプローチ中」が突出して多い
      ↓
    アポがとれていない、お客様と繋がれていない可能性がある
      ↓
    ・営業リストに問題があるかもしれない
    ・アプローチ用のトークスクリプトが今一つな可能性がある
    ・アプローチ用の商品・サービス、イベントなどの企画が必要かもしれない
  • 商談の2回目に移行できる案件が全体的に少ない
      ↓
    商談1回目で信頼されていない可能性がある
      ↓
    ・導入事例が十分でないかもしれない
    ・営業マンの傾聴スキル、ヒアリングスキルが不十分な可能性がある

といった感じで分析ができます。現場のリアルな状況がイメージしやすくなるでしょう。

また、失注の理由をデータから分析できます。「他社の商品・サービスが強力なのか」「市場のニーズ自体があまりないのか」「機能や価格が支持されていないのか」がわかり対策を考えることができます。

営業ステータス管理を行う際に気を付けること

営業ステータス管理を行う際に、気を付けなければいけないポイントを解説します。

入力や設定を徹底する

基本かつ重要なことは、営業ステータス管理を行うために営業マンに入力や設定を徹底してもらうことです。記載漏れがあると全体の数値が正しく掴めません。

そのためには、わかりやすく簡単に入力できるシステム(エクセルでも可)にすることと、最初の段階でどの営業マンにでもわかるように、何をどこに記載するのかについて明確にしておく必要があります。

ステータス変更をある程度許容する

前述のとおり営業の見込みの判定は難しいものです。正確には、契約書をもらうまでわからないからです。それでもある程度の情報で予測してもらう以上、営業ステータス管理で見込みのBがCやDに移行することを、多少は許容する必要があります。

なぜなら、ステータスをBにしたことで営業管理職の追求がきつくなるとわかると、営業マンがほとんどの見込みをC、Dのステータスのままにして、契約書をもらった段階でいきなりS(契約)に変更するようなことが起きます。

「売上が上がりそうだけどもし上がらなかったときに叱責されそう(がっかりされそう)」という発想になり、実際のステータスと現実が乖離し始めます。そうなると営業管理職が、結局「実際はこの見込みはどうなんだ?」と口頭で確認することになり、営業ステータスの入力の意味自体がなくなります。

ステータスの定義を決めておく

営業マンが自己申告する見込み度合いは、個人の性格が影響するためなかなか難しいものです。定義が曖昧だと、楽観的なA君の「絶対いけると思います」より、慎重なB君の「厳しそうです」という案件のほうが成約する確率が高いことがしばしば起こります。

部下の人数が少ないうちは目配りも行き届くため、過去の実績や営業マンの性格を踏まえて「多分、こんなとこだろうな」という読みもあたるでしょう。しかし、10人くらいになると煩雑さも増してきます。

各ステータスの定義を具体的に決めておくことが大切です。誰がみても、この場合はこのステータスと設定できるように、わかりやすく一覧にしておくことがベストです。特に商談後のステータスは個人の感覚によるバラツキが大きくなりがちので、例えばBANT条件をどこまでヒアリングできているかを指標に見込み度合い(スターテス)を区切ることもできます。

※BANT:Budget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(ニーズ)、Time(発注時期)の4条件

BANTを指標にしたステタースの定義例):

  • A:決裁権者と対面できており、ニーズと予算、予定時期もヒアリング済(4条件OK)
  • B:決裁権のない担当者からニーズ、予算、予定時期をヒアリング済(3条件のみ)
  • C:担当者からニーズはヒアリングできた(1条件のみ)
       決裁権者と会えているがニーズを確認できていない(1条件のみ)
       決裁権者からニーズはうかがえたが予定も予算もわからない(2条件のみ)  
  •  D:4条件すべてヒアリングできていない

なお、BANT条件は見込み客の見極めのフレームワークとして有効ですが、まずニーズがあるかどうかをお客様が気付いていなければ、予算、時期の話題にはなりませんので、ヒアリングの順序は通常どおりで課題の把握中心で問題ありません。

営業組織全体がアクセスできるようにする

営業ステータスの状況は、チームの全員が閲覧できるようにしておきます。営業マンは切磋琢磨しあいながら伸びるものです。同僚の見込み度会い、達成の状況などがわかるので、お互いが刺激を受けます。チーム全体の見込み数字の動きがわかるので、成績上位の営業マン層は「今月自分がもっと頑張らないとチームが達成できないかも知れない」と予測して動いていくでしょう。

Excelや営業支援ツールを活用する 

営業ステータス管理はExcelやGoogleスプレッドシート、営業支援ツールなどを活用すると管理がしやすくなります。営業マンの人数が多くなるとデータ量が増えるためExcelだと重くなることもあり、ITツールのほうがより手軽です。

営業支援ツールには簡易商材向けであれば、商談後すぐスマートフォンでプルダウンで見込みを選択してそのまま「日報」になるタイプもあります。日々リアルタイムで商談の「A~D」の見込みが可視化されて便利ですし、誰もがオンライン上データを確認できるため日報を廃止してもミーティングを減らしてもあまり支障はありません。 

営業ステータス管理を営業活動に活用する

営業ステータス管理の目的は、チームの成果を上げることです。大切なのは分析を行うことではなく、ステータスの分析を行った上で、どのように全体の営業活動に落とし込んでいくか、打ち手を考えて実行していくことです。

トップ層と比較して、平均的な営業マンが明らかに停滞してしまうステータスはどこでしょうか?

まず、ボトルネックを特定することが大切です。次に営業マンに何を提供すればよいかを突き止めて用意します。必要に応じて事例やトークスクリプト、営業ワークフローなども作成しましょう。

くれぐれも「トップセールスマンができている行動を見習え」で終わらせないことがポイントです。営業は元々の個性(勘の良さ、明るさ等)や、思考回路(発想の豊かさ、ロジカルさ、情報処理能力の高さ)などもかなり影響するからです。

行動の量など真似できるところと真似できない「センス」があると理解して、できる限り平均的な人材が成長するように再現性の高い仕組を作りながら、管理職として営業マン個々が成長するように指導していく必要があります。

営業マンであれば、自身の営業ステータス状況をみて今月の数字の組み立てと同時に、半期、年間の目標の達成ができるように行動計画を立てることが大切です。また、ほかの営業マンと比較して自分の強み・弱みを理解して、自分がさらに成果を上げるための戦略を考えるのにも役立つでしょう。 

まとめ

AIDMAやAISASなどのフレームワークが存在するように、人が何かを購入する際のプロセスはBtoBもBtoCも比較的似ています。いきなり訪問して売れることはほぼありませんが、きちんと手順を踏んでヒアリングをして必要な情報を提供し、タイミングのよい段階で提案すれば成約する可能性は高まります。

営業ステータス管理は購買プロセスに沿った管理手法なので、各ステータスでするべきことをすれば成果に結びつきやすく、営業マンの理解も得られやすいのではないかと思います。業界の慣行にあう営業ステータスの定義の設定などに多少手間がかかりますが、後々の成果に大きなプラスとなりますので、ぜひ始めてみましょう。

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    営業ワークフローと営業ツール標準化《実践ガイド》

佐原 業平(さはら なりひら)

中央大学商学部を卒業後、2016年に新卒で株式会社コンベックスに入社。 新規開拓営業を経験した後、eBook・セミナー・研修のコンテンツの作成に従事。 そこで培った営業とマーケティングの知見を生かし、「セールスハックス」の運営に取り組む。 経営者から営業マンまで、ビジネス現場を理解したお役に立てる情報を発信。

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