営業の人材不足を今いる営業マンで解決するためには

営業 人材 不足

「優秀な営業マンが欲しい……」「すぐ成果を出してくれる営業マンを採用したい……」「未経験でもいいから明るく元気な営業向きの人材が欲しい……」といった思いを抱く営業管理職や中小企業経営者の方々は多いと思います。 

コロナショックにより、2020年に入ってから有効求人倍率は下がり続けていますが、企業の売上げを担う営業職の求人は不況時もほかの職種ほどは減らないものなので、まだ採用が楽という状況ではありません。しかも、よく言われるように日本の若者は急速に減りつつあります。

国の人口推計の数値を見ると2020年時点で40代後半の人口は約970万人、30代後半が約730万人、20代後半は約610万人と、すでに年代による差はかなりあり、5~10年後にはより若者が少くなることも明確にわかっています。

今後は、若い世代の採用が難しくなる現実をきちんと踏まえて営業部門の人材戦略を描く必要があるでしょう。採用だけでなく定着にも力を入れて、いかに今いる営業マンの能力を高めるかが営業部門の成果につながっていきます。

本記事では、営業の人材不足を今いる営業マンで解決するノウハウをご紹介します。

営業の人材不足とは 

営業の人材不足とは、営業部門に必要な人数の営業マンが揃っていないことを指します。必要な人数とは企業が掲げている売上げ目標を達成したり、お客様に提供するサービスを一定の品質で保つために最低限必要な人数のことです。以下の兆候が見られる場合は、人材不足もしくは危険水域と言えるかも知れません。 

人材不足な状態

  • 営業マンの人数が足りず一人ひとりが業務過多になっており問合わせ案件の対応すら完璧にできていない
  • どうにか案件対応はできていても新規開拓に時間をさける営業マンがわずかしかいない
  • 一部の優秀な営業マンだけが売上げを上げ、ほかの営業マンは成果を出せていないかつスキルも高くない
  • 新規プロジェクトが持ち上がるものの、人材不足なので絵にかいた餅で終わる
  • 新卒が育ちにくい、中途採用者もあまり定着しない 

なぜ営業の人材不足が問題なのか 

なぜ、営業の人材不足は問題なのでしょうか?単純に言えば人材さえ揃っていれば、売り上げられるはずの成果を逃してしまうため、業績へのマイナスの影響が大きいからです。 

見込みのあるお客様にアプローチできない

企業が売上げを上げるまでには商品を企画する人、製造する人、宣伝する人などさまざまな人材の努力が必要ですが、最終的に売上げを決めるのは多くの場合は営業マンです。スポーツでいえばサッカーのストライカーのようなポジションなのに営業マンが忙しくて余裕がないと、パスが飛んできてもゴールを決めることができなくなります。

営業マンの人材不足は機会損失につながりますし、前工程に携わってきたメンバーの努力をむだにしてしまう残念な事態を招きます。

お客様とのつながりが弱くなる 

営業マンが不足するとお客様とのつながりが弱くなります。日本の場合、営業マンがマーケティング、営業、アフターフォローまでこなすことが多く、アップセル、クロスセルも『営業マンというチャネル』の頑張りによって保たれている企業は少なくありません。

リアルな営業であれ、オンライン営業であれ営業部門の人材が減ることは既存のお客様との信頼関係が弱まるリスクがあります。デジタル化が進むなか、より人が介在する温度感のあるコミュニケーションが好まれていく可能性もあるため、お客様のフォローをする人材は必ず一定数必要です。

営業マンがストレスを抱えてしまう

人材不足になると、営業マン一人あたりの業務が多くなりすぎて、営業マンがストレスをかかえることもあります。もちろん、人はある程度忙しいときの方が緊張感や充実感を感じつつ仕事ができ成長したりもします。

しかし、あまりに過剰な状態が続くとミスが起きやすくなりますし、感覚がマヒしてしまい、本当に大事な場面で適度な緊張感をもったりモチベーションを上げたりできなくなることがあります。「向かっていくマインド」ではなく「こなす感覚」になると仕事のクオリティも上がりません。人によっては燃え尽き症候群になるなど心身の不調につながります。

退職によりさらに人材不足に陥ってしまう

営業マンも、入社してしばらくは周りについていくために夢中なので、あまり忙しさが気にならないものですが、仕事に慣れると考える余裕ができてきます。特にGWとか夏休みとか時間がある時にいろいろと考えます。

人材不足による忙しさだけが原因ではありませんが、給与や仕事内容とのバランスがよくないと「仕事量の割に低い給与でこのまま生きていくべきか……」「ここにいても忙しいだけで成長できないかもしれない……」「新天地で頑張ろう……」と転職を決めて去っていくため、企業はさらに人材不足になっていきます。

営業の人材不足の現状

ここでは2020年7月時点での営業の人材不足の現状について解説します。何年か続いていた売り手市場もコロナショックで一変し、有効求人倍率は7ヶ月連続で下がりつつあります。と言っても、2020年7月時点では1.08倍でありおおよそ2014年頃と同じです。求職者一人に対して求人数が1社はあるイメージです。

有効求人倍率

営業職となると、有効求人倍率はもっと高くなります。都道府県ごとの営業系の職種の倍率は以下のとおりであり、まだ売り手市場だと言ってもよいでしょう。

営業の有効求人倍率(2020年7月)

営業の人材不足の原因 

結局、営業の人材不足は何が理由で生じているのでしょうか?ここでは原因を考察してみます。

営業マンの離職率の高さ

もともと営業職は人手不足になりがちな職種です。2019年のエン・ジャパンの「企業の人材不足」実態調査でも第1位の職種になっています。同調査で人材不足の原因として「退職による欠員」が1位になっていることから、明示はされていないものの、営業部門の離職率の高さが人材不足の原因であることも推測できます。

営業職は「数字が上がらないこと」に対するプレッシャーがありますし、ほかの仕事よりも自分の評価が歴然とわかります。成績下位だとやりがいを感じることは難しくなり、どうしても離職率は高くなってしまうでしょう。

「企業の人材不足」実態調査

参考:エン・ジャパン 

若者の意識の変化

今の若い世代は転職に抵抗を感じる人が少なくなっています。なかには就職するときから転職を視野に入れている新卒もいます。仕事を辞める本当の理由についての調査は少ないのですが、リクナビが行った調査では「人間関係」「給与」「仕事のやりがい」が上位にきています。

高収入なら辞めないわけではなく、大手企業から転職する若者もいます。給与、やりがい、人間関係の良さを3セットで提供できる企業は多くないものですが、少なくとも一つは社員に提供できないと定着してもらうのは難しいかも知れません。エン転職の2019年「退職のきっかけ」実態調査をみても「給与の低さ」と「やりがいのなさ」が2トップにきています。

退職を考え始めたきっかけ

退職を考え始めたきっかけ

参考:エン・ジャパン

少子高齢化

マクロな背景として、前述のとおり少子高齢化によって若い世代の人数が少なくなっているため、採用戦線がパイの奪い合いにならざるをえないことも人材不足の理由の一つだと言えるでしょう。総務省のデータをみると2020年と2019年のたった一年で、日本の生産年齢人口(15~64歳)は約38万人も減っています。

一年で一つの区や市に匹敵する数が減っていくスピードは脅威です。新規採用については人材の対象を広げる(女性、中高年、外国人材、副業人材の活用)ことも考えていく必要があるでしょう。

数字だけでは今一つピンとこない方も、以下の人口推計のグラフで今の40代後半と20代を比較するとその差に驚くのではないでしょうか?しかも、年を追うごとにさらに若者は減っていきます。

人口推計

出典:人口推計|e-Stat

営業の人材不足の解消方法

ここでは、営業の人材不足を解消する一般的な方法について説明します。

営業マンの新規採用

まず、新しい営業マンを採用して育成できる予算と時間的余裕があるのなら新卒採用や中途採用を行ってもよいでしょう。 新卒採用ではインターンシップが普及していますので、中小企業でも自社を知ってもらう目的で活用することができます。

中途採用市場も、日経HRが2020年7月に行った「ウィズコロナ時代の転職」に関する意識調査では、コロナ禍を経験して転職意識が「非常に高まった」が35%、「少し高まった」が22%と約6割近くが転職を前向きに考えるなど人材側の動きがアクティブになっています。企業にとってはふだん転職市場に出てこない優秀な人材を採用できるチャンスとも言えます。

転職意向の変化

参考:PR TIMES(日経HRリリース)

地方の人材を「オンライン営業職」として採用

オンライン営業を導入している企業なら、地方の人材をリモートワーク前提で採用して活躍してもらう手法がお薦めです。面接、研修も今ならすべてオンラインで完結できます。地方の有効求人倍率は低いため北海道の奥地や沖縄、離島地区などにしぼって採用して、順調に成果が上がる場合、現地にサテライトオフィスを設けてもよいでしょう。

コロナ禍の影響でリモートワークをできる企業に惹かれる人材が増えつつあり、前述の日経HRの調査においても、転職先選びの重視点の第2位に「働きやすい制度(リモートワーク、在宅勤務制度)」がきています。

リモートワーク社員の採用は2020年がちょうど旬なので、できるだけ早期に着手することがポイントです。

転職先選びの重視点

参考:PR TIMES(日経HRリリース)

営業活動のアウトソーシング 

もっとも採用には時間もお金もかかります。時間的にも資金的にもそこまで待てない中小企業の場合は、「営業代行」など営業活動そのものを外部委託する方法があります。

営業系のアウトソーシング企業には営業が得意な人材が集まっているため、コストさえかければあまり発注側に負担がかからないメリットがあります。アウトソーシング企業と取引を続けながら自社の営業プロセスやワークフローを整備し、ノウハウを内製化していくこともできるでしょう。

  • 営業代行会社、BPO企業
    ・一般的なメニュー:完全営業代行、新規のアプローチ代行、ルートセールス代行、アポイ ント取得代行、営業戦略立案・コンサルティング、新規事業立ち上げ、他
    ・目安予算:固定報酬制は営業マン一人につき約50万~60万円。完全成果報酬型もあり

アルバイト・パート・派遣社員の活用

アルバイトやパート、派遣社員を活用して営業アシスタント的な事務業務に携わってもらう方法もあります。業態によっては、営業活動を派遣の営業スタッフの方に任せてもよいでしょう。繁忙期だけお願いすることもできます。

  • 連絡業務、見積書作成、契約書作成等をまかせる
  • 新規のテレアポ、メール営業をまかせる
  • ルートセールスを派遣営業スタッフにまかせる 

中小企業における営業の人材を増やす上での課題

中小企業にとって人材を増やす上での課題はまずコストです。求人メディアや転職エージェントに支払う費用もかかりますし、面接や選考、入社後の育成にも社員の労力や時間が必要になってきます。

営業職を一人採用するための求人広告費用

営業職を一人採用するための求人広告費用

株式会社マイナビの「マイナビ 中途採⽤状況調査2020年版(2020年1月調査)」によると、営業職の採用1人あたりの求人広告費は「53.9万円」となっています。

参照:マイナビ 中途採⽤状況調査2020年版

もちろん、不況になると求人企業が少なくなるため採用コストも下がっていくと予想できますが、今度は企業側に資金的余裕がなくなることが多く、優秀な人材を目にしても、人件費や採用コストを抑えなければならないのが悩ましいところです。

リファラル採用、SNS採用の課題

コストをかけずにSNSを活用したり社員の紹介によるリファラル採用で人材を採用する手法もあります。上手に活用できれば自社の社風にあう社員が採用できる良い方法です。とは言え、社内の様子をオープンにしたり社員が友人を誘うには、そもそも今いる社員が職場に魅力を感じていないと難しいため、新しい手法こそまず営業マンの働く環境をよくすることから始める必要があるでしょう。

リファラル採用の場合は、紹介で入った社員が辞めてしまうと友人に責任を感じた社員も辞めてしまうことがあるので、社員の立場に十分に配慮して進めることが大切です。

今いる営業マンで成果をあげるためには

人材の新規採用ができるのであれば、それにこしたことはありません。しかし、採用にはコスト、時間がかかり残念ながら当たりはずれもあります。また、そもそも職場に人が辞めていく要因が多いのであれば、新たに営業マンを採用しても同じことの繰り返しになりがちです。

むしろ、人材不足を契機に生産性が上がる仕組みづくりに力を入れて、今いる営業マンの能力を活かす対策を進めたほうが長期的には成果につながるでしょう。以下にポイントを紹介します。

チーム編成

今、売上げが上がっていない営業マンはもともとの能力が低いのでしょうか? 仕事上のやる気、成績などに上司や先輩との人間関係が影響していることは少なからずあります。

上司が一概に悪いということではなく相性の問題がしばしば発生します。営業マンには細かな指示・サポートを必要とするタイプもいれば、極力自由に動き必要最小限のアドバイスを望むタイプもいますが、上司のマネジメントスタイルとの相性によっては、どちらも駄目だしをされるかも知れません。

ピグマリオン効果といって人は期待されていると成長し、「ダメだな」と思われているとあまり成長しない傾向があると判明しています。上司の側の感情を変えることは難しいので、成績が低迷していたり当初の期待ほど活躍していない営業マンについては、新しい上司と組み合わせてみると伸びることがあります。近年は上司・部下の相性を測定できるITツールもあるのでチーム編成に活かすとよいでしょう。

営業導線、営業プロセス

営業導線や営業プロセスは標準化されているでしょうか?もしかしたら新人がなかなか育たないのも、中途採用で営業経験のある人材を採用したのに成績がぱっとしないのも、営業プロセスが明快でないため遠回りをしていたからかも知れません。

何をどのくらい行動すれば成果が上がるのか見えるように、基本的な営業プロセスを作成しKPIを明確にすることがポイントです。

◎おすすめ記事:若手営業マンの成長を測る行動ベースのKPI実例集

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営業プロセス

セールスオートメーション

近年の研究でマルチタスクは生産性を下げると判明していますが、営業マンはリスト作成、見積書や契約書の作成、お礼、報告、調整のメール業務ほか仕事が多岐にわたり、どうしてもマルチタスクになってしまう現状があります。

極力、繰り返しの作業はセールスオートメーションツールなどで自動化していくことがポイントです。セールスオートメーションとは「sales(営業)」を「automation(自動的に行う)」という意味であり近年は米国でも日本でもさまざまなセールスオートメーションツールが登場しています。

問い合わせ対応、電子契約、メール配信ほか営業マンが時間を割いている営業フロー上の細かいタスクをツールで自動化することで、営業マンに商談など本来の営業活動に集中してもらえるところがメリットです。

営業リストを自動的に生成

リストを自動生成するセールスオートメーションツールを活用すると、営業マンが見込み客と接触していない期間、メール開封状況、Web閲覧履歴などをもとに日々「優先してアプローチすべき見込み客リスト」が提示されます。

見込み客を放置するようなことを防げますし、新人営業マンでも新規開拓の際に有望な見込み客にタイミングよくアプローチできます。

メールテンプレートの活用

メールをゼロから作成すると時間がかかります。特に文面に迷い始めるときりがないものです。セールスオートメーションツールにお礼、報告、ちょっとした電話相談会やデモの案内などのメールテンプレートを用意し共有しておくと、必要なときにすぐ好感度の高いメールを送信できます(営業マンが多少手を加えることもできます)。

掘り起こしメール例):

15分電話相談の日時調整メール例

営業マンの行動にあわせたオートメーションが可能

営業案件は一件ごとにお客様の個性も、営業マンとお客様との心理的距離も異なります。営業マンのコミュニケーション上の感覚的な判断(勘)が正しいことは多いので、一律にオートメーション化するのではなく、営業マンが自動化する内容を決められる仕様だと営業マンそれぞれの個性を活かした営業のオートメーションが可能になります。

忙しいときなどは以下のように自動フォローでお客様の対応をすることもできます。

設定例):

セールスオートメーション設定例

米国の調査では、営業マンが仕事に費やす約4割の時間を自動化できるという結果が出ています。今いる営業マンが行っている成果に直結しない業務をITツールにまかせ、営業に集中できる仕組を作ることができれば、結果的に新しい営業マンを採用したことと同じ成果につなげることができるでしょう。

まとめ

日本の若者が年々減っていくことは変えることのできない現実です。一部の採用強者である企業を別としてほとんどの企業は今後、採用する人材の対象を大きく広げるか、ITを活用して生産性を上げていくか、アウトソーシング企業を活用して自社は得意領域に集中するかを検討する必要が出てくるでしょう。

営業の人材不足を解決するためには「報酬面のインセンティブ」「仕事の裁量権」「風通しのよい職場」など、何か一つでも自社の魅力を特化させていくとともに、個人の力に頼らない組織力で成果を上げる盤石な仕組を構築することが必要です。多くの営業マンにとって、売上げを上げられることこそがやりがいや成長実感、社内の居心地につながるからです。

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    営業シーン別 営業自動化のヒント

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