LTV(顧客生涯価値)を高める上で知っておくべき計算方法とポイント

顧客生涯価値

多くの企業では、顧客に自社の商品・サービスを長期的に継続して使用して欲しいと思ってるのではないでしょうか?

イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見した法則である「パレートの法則(20:80の法則)」では、「上位2割の要素が全体の数値の8割を生み出している」と言われています。ビジネスの世界でも、上位2割の顧客が企業の8割の収益をもたらしているという分析があり、パレートの法則があてはまります。

長期間継続して自社の製品を利用してくれている上位2割の顧客が会社にとって大きな利益を生んでいるのです。生涯を通して、顧客との関係を維持しつつ、関係性をもっと強いものにしていけば、売上げも拡大していくのではないでしょうか。

今回は、顧客がその商品・サービス対して生涯で使う金額である「LTV(顧客生涯価値)」の重要性やその計算方法、さらには最大化させる方法について解説していきます。

LTV(顧客生涯価値)とは

LTVとはLife Time Value(ライフタイムバリュー)の略で日本語に直すと「顧客生涯価値」の事をいいます。「一人の顧客がその商品・サービス対して生涯でどれだけの額を使うのか」という指標です。

顧客が継続的に長期間にわたって商品・サービスを利用するほど、LTV(顧客生涯価値)は高まります。そのためには、顧客が企業のサービスに対し愛着を持ち、ファン化することによってLTVは高くなるとされています。さらに、顧客の満足度を上げるためには、企業独自の商品・サービスの魅力を醸成することが必要だとされています。

LTV(顧客生涯価値)がなぜ重要なのか

LTVが重要視されている背景には、新規顧客獲得の難しさが挙げられます。「1:5の法則」と言われているように、新規顧客獲得にかかるコストは既存顧客を維持するためにかかるコストの5倍かかるとされています。

さらに、新規顧客は獲得コストが高いにも関わらず利益率が低い傾向があります。そのため新規顧客の獲得より、既存顧客の維持に注力し、安定的に利益を出していく方がよいという考えが浸透してきているのです。

そんな中、注目を集めているのがサブスクリプションというビジネスモデルです。これはモノを直接買うのではなく、モノ(あるいはサービス)の利用権を一定期間借りて、利用した期間分の金額を支払う方式です。

月額定額制のビデオ・音楽のストリーミングサイトや、電子書籍を自由に閲覧できるアプリなどコンテンツ配信型サービスに多くみられます。近年では「Office365」などのソフトウェアの利用形態としても採用されています。

顧客が自社のサービスのファンになり、継続して利用し続けてもらうことを目指したビジネスモデルといえるでしょう。

LTV(顧客生涯価値)の計算方法とは

LTVは、多くの場合は以下の式で算出されます。

LTV(顧客生涯価値)の計算方法

例えば、月額1,000円のサービス(購買単価)を3年継続して利用するとします。
この場合、1,000(円) × 12(ヶ月)× 3(年)=36,000(円) となります。
(※月額のため購買頻度は1回とする)
つまり、LTVは36,000円となります。

一人当たりの売上げを求めるのか、それとも利益を求めるのかによって以下のように変わることもあります。

  • LTV = 顧客の平均購入単価 × 平均購入回数(売上げ)
  • LTV = 顧客の年間取引額 × 収益率 × 顧客の継続年数(利益)
  • LTV = (売上高 – 売上原価) ÷ 購入者数(利益)

上記で解説した式に基づくと、LTVを向上させたい場合は、「購買単価をあげる」「購買頻度をあげる」「継続期間を長期化させる」ことを意識する必要があります。

LTV(顧客生涯価値)を最大化させるポイント

LTVを上げることで、売上げや利益の向上が見込まれます。では、どのようにすれば最大化することができるのでしょうか。具体的な手法を取り上げていきます。

LTV(顧客生涯価値)を最大化させるポイント

購買単価をあげる

一人当たりの購買単価をあげることで売上げを拡大することができます。より単価の高いサービスやプレミアムサービスを購入してもらうことで実現できます。

例えば、今よりも高額な商品を購入してもらう「アップセル」や別商品・サービスをまとめ買いしてもらうような「クロスセル」を活用することで、購買単価を上げることができるでしょう。

とは言っても、商品・サービスの単価をあげると同時に販売する難易度も高くなります。そこで「ラッピングなどのサービスをつける」「パッケージを限定のものにする」といった付加価値をつけることで、価値に見合った商品・サービスを得られると感じてもらうことができます。

購買頻度をあげる

商品・サービスの特性によって向き、不向きはありますが、顧客が購買する回数を増やしていくことで、当然それに準じて売上げは増えていきます。では、どうすれば購買頻度をあげられるのでしょうか。

商品・サービスの購入後のフォローによって、顧客の購買の促進をすることができ、購買頻度を高められるかもしれません。例えば、消耗品を扱っている場合であれば、商品がなくなる頃に、追加の注文を促すメールを送ることも可能です。

購買頻度をあげるためには、顧客に対して定期的に商品・サービスの存在を印象付けることが重要です。そのようにして顧客との接点が増えていくと、顧客は親しみを持ちやすく検討の際に想起してもらいやすくなります。

継続期間の長期化

顧客に商品・サービスを継続して使用してもらう期間を伸ばすことで、売上げは増加していきます。

ここで、重要な方法としては、カスタマーサポート(あるいはカスタマーサクセス)体制の構築です。顧客が長い期間継続して使ってもらうためには、不満や不便さを感じさせることなく、自社商品・サービスを活用していただくことが大切です。

カスタマーサポート体制を構築することで、顧客が活用している中でわからなかった時や不満を感じているときに顧客から連絡をしてもらい、抱えた問題に寄り添ったサポートにより不満解消へと結びつけることができます。

さらに、最近では「カスタマーサクセス」が話題になっています。カスタマーサクセスとは、従来のカスタマーサポートと比べて、顧客のビジネスの成功(成果と経験)を第一の目的としています。自社の顧客がどのような状態にあるのか、自社の製品・サービスをどのように利用しているのかをデータで把握し、顧客に対して積極的に働きかけて、より良い状態に導くことです。

カスタマーサクセスにより、顧客が不満や不便さを感じる前に解消することができ、さらにはより効果的な活用提案や事例などを共有することができます。それにより顧客の満足度を高めることができるのです。

新規顧客獲得コストを最小化する

企業としては、新規顧客の獲得と既存顧客との関係性維持はどちらも重要なアプローチと言えるでしょう。商品・サービスにもよりますが、どちらに比重をおいた方がいいかというと、既存顧客へのアプローチに注力した方が効率が良い場合が多いです。

なぜなら、前述した通り新規顧客獲得は短期間で売上げを上げることはできますが、その分獲得するための費用がかかるからです。

例えば、新規獲得にかかる費用の代表例としては

  • リスティング広告やオンライン広告などの広告費用
  • 電話営業によってかかる通信費用
  • 展示館やイベントなどの出展費用

などが挙げられます。

もしたくさんの新規顧客を獲得したとしても、売上げ以上の費用を消化して集客をしていたのでは最終的な利益に貢献できません。そのため集客で使用する費用を最小限に抑え、利益を確保すべきと言えます。

自社のLTV(顧客生涯価値)を分析して営業戦略に落とし込む

自社のLTVを算出したら、次に「自社で今弱いところはどこなのか」を明確にして、強化するための営業戦略を立てましょう。

例えば、顧客単価が低い場合はアップセルやクロスセルができないかを考え、購買単価の向上を目指していきます。また、顧客の継続利用期間が短い場合は継続特典をつけたり、サポート体制を構築したりするなど継続してもらえるような施策を考えましょう。

さらに近年注目されている顧客関係管理(CRM)を行うのも一つの手法かもしれません。顧客関係管理は、顧客情報をもとに顧客満足度を向上させ、売上げの拡大を目指す経営戦略のことです。

従来のマス・マーケティングとは異なり、それぞれの顧客の属性に合わせてキャンペーンや施策を行っていきます。どこまで深く顧客関係管理を行うかは企業によって異なりますが、ある程度自社の顧客の傾向・特徴とつかんだ上で効果的なアプローチを行うことが、LTVを最大化することにつながるでしょう。

まとめ

新規の顧客獲得も重要な要素ですが、既存顧客に長期的に良好な関係を構築して、自社の商品・サービスを活用してもらうことも売上げの拡大には重要です。そのためには、顧客一人ひとりの満足度を高めていきましょう。

顧客一人ひとりの満足度を高めることによって、購買頻度や購買金額は自ずとあがり、LTVは最大化されていきます。
顧客の関係性を維持するためにも、営業担当者やサポート担当者からのアプローチが必要になります。新規顧客獲得も行う営業担当者の場合は日々の営業活動の中で、新規顧客と既存顧客を両立して対応する必要があります。「本当に使える、意味のある営業活動KPI集」では、営業シーンごとに31個のKPIを紹介しています。自身の営業目標設定のKPIの参考に役立ててみてください。

    営業KPI

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