コモディティ化とは?コモディティ化の中で売上げを上げていくためには

コモディティ化

成長社会においては、多くの企業で技術や商品力を磨き、その技術が他社との差別化につながっていました。同じ用途の商品を買うのにしても、それぞれの企業や商品によって異なる技術があり、消費者はその技術を見比べて購入を決断していました。

しかし、現在では市場が成熟し、インターネットの普及や海外からの輸入といった要因もあり、企業ごとの商品の差異は小さくなりつつあります。

それにより、商品の魅力や価値ではなく、「価格」や「手に入りやすさ」が購入の判断基準の1つとなっています。このような状況下で、企業はどうすれば自社商品の魅力を伝えられるのでしょうか?また、どうすれば価格競争に巻き込まれずに、他社と棲み分けができるのでしょうか?

今回は、「コモディティ化」の中で売上げを上げていく方法について具体的に考えていきます。

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コモディティ化とは

コモディティ化とは、多数の類似商品・サービスが同時に販売されることで商品間の差異がなくなり、市場価値が低下することを指します。つまり、異なる企業が提供している商品・サービスがどれも同じように見えてしまうことです。

定義したカール・マルクス氏は、この特性を「小麦の味から、誰がそれを生産したのか、ロシアの農奴かフランスの農民か英国の資本家か、を知るのは不可能である」と『資本論』の中で述べています。

それぞれ生産元は違っても、一見消費者からすればどれも同質のものに見えてしまう「小麦」。この「小麦」のように商品・サービスごとの違いがはっきりわからないものが、市場にあふれていくとどうなるでしょうか。多くの消費者は商品・サービスに大きな違いがないなら、価格が安いものを購入することでしょう。

その結果、商品が売れるためには、どの企業も他社よりも低い価格設定をしなくてはいけなくなり、価格競争が激化してしまいます。

もともとコモディティとは「利便性」を指すフランスの言葉が由来です。どの企業の商品を購入しても同質のものが得られるため、消費者の利便性は拡大しますが、企業は価格競争下で他社の商品と差別化をはかる必要が出てきます。

コモディティ化が生じる原因

コモディティ化はなぜ起こるのでしょうか。ここでは、特に3つの原因について取り上げます。

コモディティ化が生じる3つの原因

情報の入手と流通が容易になった

現代は、各社特有のビジネスモデルや技術に関する情報が、インターネットを介して簡単に手に入る時代になりました。その情報を元に、他社のビジネスモデルや技術を模倣することが容易になったともいえます。

業種によっては模倣を避けるために、特許権等の知的財産権を確保する企業もあります。実際、工業製品の製造業では、特許の出願できる余地を狙う動きも高まっていることも事実です。しかし特許権にも期限がある上に、特許権に抵触しない商品を他社が開発することもあります。

他社が商品の差別化を行なっているという情報が出回るスピードは年々早くなり、新商品を開発しては模倣される、いたちごっこのようになっています。これも高度情報化社会により、他社の情報を入手しやすくなったことが関係しているといえます。

技術水準も高くなってきた

かつて高度経済成長期においては、技術力による差異がそのまま商品・サービス購入の判断基準になっていましたが、今や基本的な技術水準が高まり、どの企業も消費者が求めるレベルの商品を開発できる時代になってきています。

もちろん、トヨタ自動車株式会社のように圧倒的な技術力を持っている企業もあります。しかし、多くの企業では競合他社を出し抜こうと新しい技術を投下しても、すぐに他社に技術の後追いをされてしまう可能性もあります。他の企業でも高い技術水準を持っていることにより、すぐに均質化した商品・サービスを提供できるようになっています。

海外の低価格商品の流入

海外で製造される商品の多くは低コストで製造することができるため、日本メーカーの商品よりも低価格での販売が可能です。特に近年はアジア各国から低価格の商品・サービスが国内に入ってきています。

低価格でも消費者から見て、国内の商品と同質だと見なされれば、もちろん低価格の商品の方が売れる可能性が高くなります。そのような場合、商品・サービスの価格帯を海外と揃える必要が出てきます。結果として価格競争は余儀なくされていくものとなります。

コモディティ化が企業に及ぼす影響

インターネットの発達や、各社の技術力向上により、他社と足並みを揃えやすくなった現代。海外から安価な商品が流入されていることもあり、コモディティ化はどんな業種でも容易に起こりうる現象だと言えます。では、コモディティ化が進むと企業には具体的にどんな影響があるのでしょうか。

コモディティ化が企業に及ぼす影響

価格競争で利益率が低下

コモディティ化が進行すると、それまで価値のあった自社特有のブランド性や技術の優位性がなくなってしまいます。その中で他社と差異をはかるために一番簡単で有効な方法は価格を下げること。しかし、それと同時に利益率を低くせざるを得なくなってしまいます。

結果的に市場では価格競争が起き、価格が安止まりすることになります。これは、市場を牽引しているリーダー企業以外にはなかなか厳しい環境です。生産効率の向上や流通販路の調整(サプライチェーンマネジメント)などが問われるようになり、資本力が鍵になってきてしまうためです。小・中規模の企業にとって深刻な問題と言えるでしょう。

営業提案が難しくなる

コモディティ化が起きていない環境下においては、自社の商品と他社の商品が差別化されており、自社のオリジナリティを訴求する提案が可能です。しかしコモディティ化が起きると、商品やサービスの価値が均質化してしまうため、営業提案が難しくなります。

もちろん、均質化された商品の中でも、全く同じ商品・サービスではないため、細かな差異について述べることは可能です。しかし冒頭で述べたマルクスの言葉を借りるなら、「小麦の味から、誰がそれを生産したのかを消費者が知るのは不可能」企業側からすれば差異があると考えても、消費者にそれが大きな差異だと受け取られるかどうかは別です。

つまり、価格以外の部分で自社のオリジナリティを訴求するには、お客様のインサイトを刺激できるような、高い営業提案力を必要になると言えます。

コモディティ化への対策で売上げを上げる

できれば避けたいコモディティ化。価格競争に飲み込まれず、企業としてのアイデンティティを確立していくためにはどうすればよいのでしょうか。実は、適切な対策を講じることによって、売上げ拡大へとつなげることもできます。

付加価値を高める

商品を開発し、内容を良いものにしていっても、すぐに他社に模倣され差異は解消されてしまいます。これを繰り返していては本当の意味での差異化は図れないでしょう。そのため、他の企業には追随できない商品・サービスの付加価値を高める必要があります。

現在、さまざまな企業でこの付加価値を高める動きが進んでいます。例えば、あえて流通販路を絞り込み、希少性を高めることでブランド力を高めたり、商品の背後にある歴史や物語といった文脈のオリジナリティを訴求したり、商品をコンセプト面も含めて再ブランディングしたり。付加価値を高めることは競合他社の商品との差別化につながるでしょう。

一方で、気を付けたいのは、安易に購入特典などの付加価値を付けないことです。特典をつけていくと他社もすぐに追随し、競争が生まれ、結果的に価格競争になってしまう恐れがあるからです。

付加価値を高める場合は、他社に模倣されやすいかどうかを常に考慮しましょう。そのため、リーダー企業以外は資本力だけでカバーされるような付加価値でない方が効果的だといえます。

例えば、商品購入後のアフターサービスなど「人」や「組織」といった人的リソースを活用することが有用でしょう。商品購入者に対し、定期的にサポートセンターから困りごとがないかどうか聞くことができるかもしれません。また、有効に商品を活用するための方法を定期的に伝えることも考えられます。

こうしたお客様目線を忘れず、人的なつながりを絶やさないことが差異化につながります。商品を何か抜本的に変えなくても、そうしたアプローチの方法を変えていくだけでも付加価値は高めることができるのです。

営業活動での差別化

営業活動でも商品の内容を単に紹介しただけは、お客様に価値を感じてもらえません。お客様本人も気付いていない潜在的な課題を発見し、それに合わせた解決策を商品とともに提示するなど、アプローチにおいても他社と差異化をはかる必要があります。

これには入念な準備が必要です。従来通りのマーケティングや顧客へのヒアリングを行うだけでは他社と大きな差異を生み出すことはできません。お客様の目線に立った提案が大切です。

まとめ

ここまでコモディティ化と、その対策について考えてきました。企業からするとコモディティ化は悩みのタネではありますが、消費者の立場からすると、メリットである一面もあります。なぜなら、商品供給量や流通ルートが増え、容易に同質の商品が安く買えるようになるためです。

企業はコモディティ化を抜け出すために商品開発に莫大な費用をかけ、新商品を生み出し差別化をはかりますが、すぐに他社に差異を埋められ、またコモディティ化されてしまいます。それを繰り返すたびに質の高い商品が安価で手に入るようになります。

このコモディティ化の時代では、競争に乗っかっていくことは危険です。特に中小企業では、他の企業に対抗するための資産が不十分である場合もあります。それよりは営業の原初的な気持ちに立ち返り、お客様の気持ちに寄り添うような営業で差別化をすることが効果的かもしれません。

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