組織開発とは?組織開発の実行へのポイント

組織開発

経営者やマネージャーなら誰しもが、組織の抱える課題への対処法や効果的な組織運営の方法について考えたことがあるのではないでしょうか。特に日本ではここ数十年間、組織内の人材や人間関係といった面への課題意識が高まってきています。

例えば、その一環としてマネージャーに対するコーチング研修が行われたり、上司と部下の間で1on1ミーティングを導入したりすることなどが挙げられます。

一方で、研修で学んだことを組織内で実践しようとしても、上司や職場の環境に受け入れられないケースがあることも。このようなことを背景として、個人の能力開発ではなく組織全体の能力を開発しようとする「組織開発」に取り組む企業が増えています。

今回は、組織開発の概要や取り組む際に気を付けるべきことについて解説します。

チームで売上げをあげるための営業標準化ガイドブックはこちら

組織開発とは

学校法人産業能率大学総合研究所では、組織開発とは「組織の効果性と健康性を高め、また、組織が環境変化にタイミングよく適応していくために、組織を動かしている人の価値観や態度、人と人との関係などをより良い方向に変革を図っていくこと」と説明されています。

つまり、組織が活力を持って生産性を高めて、さらに外部の環境に適応するために、組織のメンバーの価値観や人間関係をより良くしていくことを言います。

組織を人間の体に例えると「組織開発」は漢方薬を服用したり、適度に運動をしたりする体の機能を活性化させるようなものです。組織の人材を入れ替えるのではなく、元々組織が持っているものを機能させるよう働きかけることを目標としています。

組織開発が注目される背景

組織開発が注目を集める背景にあるのは「働き方の多様化」です。日本の労働条件は、少し前まで終身雇用が一般的でした。新卒社員は、入社した会社で定年退職までのキャリアを過ごすことが当たり前とされていたのです。このような環境において、社員の価値観はある程度似ており、話さずとも感覚を共有できていたとも言えます。

しかし、終身雇用が変わりつつある現代では、価値観は多様化し、働く理由も人それぞれとなっています。転職が容易になり、異なるキャリアや年齢、性別、国籍を持った人が同じ組織で働く時代になっているのです。

また、雇用形態も多様になりました。例えば、厚生労働省による「人生100年時代の人材と働き方」の調査によると、外国人の雇用は年々拡大傾向にあります。異なる背景や文化を持っていると、共有できていると思っていた前提となる価値観が、実際は共有できていないまま業務が進行していた、ということもあるでしょう。そこで組織開発が注目を集めるようになったのです。

組織開発と人材開発の違い

組織開発と人材開発のちがい

組織開発と人材開発。似た概念に聞こえますが、実は全くの別物です。人材開発(または人材育成)では「人」そのものに注目するのに対し、組織開発では人同士の「関係性」に注目します。

例えば、「若手営業マンの営業力アップ」という目標があった場合、「人材開発」の場合は、特定の若手営業マン個人に問題があると捉え、いかに本人の営業力を向上させるかの教育方法を考えるのが一般的です。もしくは、その上司のマネジメント能力に問題があると考え、教育を施すということも考えられます。

一方「組織開発」の場合、例えば若手営業マンと営業部長(または他の社員)との「関係性」に問題があると考え、「関係性」そのものの改善を図ります。若手営業マンと営業部長、それぞれの相手に対する役割の認識がずれていたり、信頼関係ができていなかったりすることがあるためです。

つまり、「人材開発」は組織を構成するメンバーの能力を向上させるもの、「組織開発」はメンバーの関係性やつながりを強化するものだと言えます。

組織開発の取り組みのポイント

ここからは、組織開発の取り組みのポイントについて見ていきます。「組織開発」の代名詞ともなっているリチャード・ベッカードは、組織開発には7つの実践事項があると主張しています。各事項を解説していきます。

1. 計画に基づき

組織開発をする際は必ず具体的な計画を立てましょう。特に「何を達成するのかを明確にし(目標設定)」「いつまでに目標を達成するのかを設ける(時間制限)」ことが大切です。計画を立てることで、組織のメンバーが具体的な目標や緊張感を抱くことができ、成果を生み出しやすい環境となります。

2. 組織全体にかかわる努力であり

「組織開発」という名前に引っ張られて、いきなり組織全体で動こうとすることは避けるべきです。ある程度変化を受け入れてくれそうな部署(あるいは集団)から始め、徐々に組織全体に波及させていきましょう。

最終的に組織のメンバー全員が他人事ではなく「自分事」として取り組めるようガイドラインを丁寧に作成していく必要があります。

3. トップ主導でマネージされ/組織の有効性・健康を高め

会社組織のトップである経営者や、営業組織のトップである営業責任者が組織開発に関わり、自ら企業理念や会社の目指す目標を発信します。これらは、組織全体で共有することでより組織開発の効果が高くなります。

また、トップが下部組織と直接関わることにより、何がその組織に必要なのかがわかり、トップとして何をするべきかを理解できることもあります。

4. 行動科学の知識を活用して

組織開発は、組織全体を変えていかなくてはいけないため、短期間で結果が出るものではありません。変革に対して強い意志を持ったメンバーによる、長期間の継続的な協力が欠かせないと言えるでしょう。

5. 組織のいろんなプロセスにおける

組織開発には、長期的な取り組みが必要不可欠であることはお伝えしました。組織開発の途中段階で振り返り、効果測定を行い、これまでの開発過程を客観的に評価しましょう。最初に立てた目標とあまりにもかけ離れている場合は、その理由を調べ、目標を再設定するなどの軌道修正が求められます。

6. 計画的介入・計画的ゆさぶり

現状を評価したらフィードバックを行うことは大切です。組織開発においても同じです。フィードバックを行う際には、成果が出た具体例をストーリーとともに示しましょう。具体例を出すと、組織構成員はその成果を「自分事」として感じられ、自分が所属している組織の変化を嬉しく思います。変化を実感・共有することによって、まるでスポーツチームのような一体感が生まれるでしょう。

7. ビジョンに照らした施策の長期的継続を

これらのことを長期的に継続して行うことが、組織開発の成功に直結します。事業収益や当面の経済的価値にのみ目を向けるのではなく、人と人の関係性に目を向けることが組織開発には必須です。

時間はかかるかもしれませんが、関係性を大切にしていくと、皆のモチベーションは高まり、最終的には業績拡大といった目標達成へとつながるでしょう。

また、組織開発にプロセスの見直しは必要ですが、一方で変わることのない「一貫した思想(ビジョン)」も重要です。これがなければ、組織のメンバーから信頼を得ることはできません。組織開発を進めようとする経営者は、メンバーに納得してもらえるような「ビジョン」を持つ必要があります。

組織開発で実現できること

組織開発によってどんなことが実現できるでしょうか。それぞれ見ていきましょう。

組織との信頼関係の構築

組織開発を行うと、今まで直接業務上では関わることのなかった人とも関わる機会が生まれるかもしれません。また、組織開発の際に組織全体が目指す場所や、経営者の思いを直接聞くことで、メンバーにとっては自分の立場を確かめる機会ともなります。

このような組織内でのメンバー同士の双方向のコミュニケーションが可能になることで、風通しのよい組織環境やメンバー同士の信頼関係が生まれます。

メンバーのモチベーションの維持、向上

心理学者マズローの欲求階層説によると、人が生きていくうえで3番目に重視される欲求は、所属や友人を求める「社会的欲求」なのだそうです。どんなに金銭が得られる仕事であったとしても、自分が「この組織に所属している」という感覚を得られなければ、継続したモチベーションを抱くことは難しいといえます。

組織開発により組織内の関係性が向上すると、目標に向かって一致団結する気持ちが組織のメンバーそれぞれに芽生えます。会議の際には意見が活発になるなど、皆が「よくしていこう」という気持ちのもと業務にあたることができるようになるでしょう。

組織内での協力関係の構築

価値観が多様化し、働き方が変化しつつある現代。同じ部署にいても、お互いがどんな仕事をやっているか把握していない場合もあります。最新のテクノロジーを活用した業務についていけず、上司が部下の仕事内容を上手く掴めていないこともあるでしょう。

しかし、組織開発により組織内での協力関係が生まれれば、お互いの共通認識が可能になり、いざという時に業務を引き継いだり助けたりすることが可能になります。ひとりで業務を抱え込むのではなく、共有した上で分担して効率よく進めることもできるでしょう。

まとめ

雇用や価値観が多様化している現代において、組織開発の必要性を感じている経営者やマネージャー、営業責任者は多いことでしょう。一方で、目の前の業績や数字に不安を感じ、組織開発に時間を割いている暇はない、と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

人間が生きていく上で必要な欲求や価値を軽視し、従来然とした組織づくりを行い営業活動を行っていたのでは、いずれ無理が生じてしまう可能性もあります。組織の経済的な側面にのみ注視するのではなく、人間的な側面にも注視し、関係性を重視した組織開発を検討してみてはいかがでしょうか。

営業ワークフローと営業ツール標準化《実践ガイド》」では、営業活動を見える化し、営業全体で一丸となって営業活動に向かっていく組織開発に必要なポイントをまとめています。

従来の営業ツールを標準化することによって、新規問い合わせについて対応時間を60%削減・商談数を2倍という大きな効果を得ることができた事例についても紹介しています。ぜひご覧ください。

    営業ワークフローと営業ツール標準化《実践ガイド》

kondo

関連記事

  • 人材育成

    営業ロープレの際に行うべきフィードバックとは?

  • 人材育成

    内部研修と外部研修、営業力強化にはどっちが有効?

  • 人材育成

    社員教育の重要性とは?成果に繋がる社員教育を実行するための方法