営業ロープレの際に行うべきフィードバックとは?

営業 ロープレ フィードバック

営業マンの能力を底上げする手段として有効なのが「営業ロープレ」。営業ロープレでは、上司が部下に対して適切なフィードバックを行い、問題点を一つひとつ改善しつつ、長所をより伸ばすことが大切です。

ただしフィードバックにはコツがあり、そのコツを押さえておかないと営業ロープレの効果が減少するおそれがあります。そこで本記事では、営業ロープレに際して上司が行うべきフィードバックについて解説します。

また、営業ロープレの意味や進め方といった基本的な要点も解説します。営業マンを指導する経営者や管理職の方はもちろん、スキルアップを目指す営業マンの方も学べる内容となっています。ぜひご覧ください。

営業ロープレとは

そもそも営業ロープレの「ロープレ」という用語は、ロールプレイングの略称です。ロールプレイングとは、仕事での役割を想定した上で、擬似的に業務を体験することで研修を行う手法を意味します。

つまり営業ロープレとは、実際の場面を想定して営業を擬似体験することです。具体的には、同僚や上司にクライアント役になってもらい、電話営業や商談での営業トークや対応を練習します。

なぜ営業ロープレが大切なのか

営業ロープレが大切と言われる理由、および実際の効果をご紹介します。

営業ロープレが大切であると言われる理由

営業ロープレが大切である理由は、営業に必要な実践的なスキルを効率的に高めることができるからです。

「あらかじめ営業のテクニックを座学で学んでおけば、実際の営業でも十分対応できるのでは?」と思う方もいるでしょう。ですが、どれほど座学で営業に役立つテクニックを学んでも、それを実践で100%役立てることができるとは限りません。実際の営業では想定外の事態が多々生じるので、テクニックだけでは対処しきれない可能性が高いからです。

こう聞くと、「想定外の事態が生じるならば、そもそもロープレを行う必要はないのでは?」と感じるかもしれません。ですが、よほど営業慣れしている方でない限り、実際の営業を想定した練習を経ずに、あらゆる想定外の事態に対して完璧に対応するのは極めて困難です。

座学では得られない実践的なスキルや想定外の事態に対処する能力を得るためにも、営業ロープレはに重要なのです。

営業ロープレの効果

では、実際に営業ロープレを行うことで目に見える効果は得られるのでしょうか?ソフトブレーン株式会社が営業部門におけるマネージャークラス以上の人材(課長や部長、経営者)に行った「営業の人材育成についての実態調査」によると、営業ロープレを行っている企業と行っていない企業の間で、売上高が増加した企業の割合に大きな違いがあることが判明しています。

2009年度と2010年度の業績を比較した結果、「定期的に営業ロープレを実施している」と回答した企業の43.5%が売上高の増加を記録した一方で、「一度も営業ロープレを実施したことがない」と回答した企業では売上高の増加を記録した割合は24.2%に留まったとのことです。

営業の人材育成についての実態調査

(出典:営業の人材育成についての実態調査

また、「売上高が減少した」と回答した割合については、営業ロープレを実施していない企業の方が高いことも判明しています。以上のデータより、営業ロープレを行うと行わないとでは、業績に大きな差が生じることが理解できたでしょう。

営業ロープレの目的

次に、営業ロープレを行う目的をご説明します。営業ロープレは主に以下4つの目的で行われます。

営業トークの全体の流れを理解する

営業で成果をあげるには、自社商品・サービスを提案するまでの全体的な流れを理解しておくことが大切です。重要となるのは、トークのスキルやテクニックを一つずつ学習するのではなく、提案の全体像を掴むということです。

テクニックなどをかいつまんで習得すると、商品・サービスを提案するまでの流れが不自然となったり、相手の課題を無視した押し売りのような形になってしまうリスクが高いです。そうした事態を防ぐためにも、顧客と対面してから商材を提案するまでの流れを繰り返し練習し、スムーズな営業の進め方を習得する必要があるのです。

営業トークに慣れてもらう

電話営業や商談では、実際にお客様と向き合って対話する必要があります。営業トークに慣れていないと、実際にお客様と対面した際に緊張して、上手くトークを展開できない可能性があります。もしくは話し方がぎこちなくなったり、自信なさげになったりすることで、不信感を抱かれるかもしれません。

こうした事態は商談成立やアポイント獲得の可能性を下げる要因となるため、営業ロープレを繰り返し実施し、営業トークに慣れてもらうことが重要です。営業ロープレを繰り返し行えば、自信を持って緊張せずに営業を行えるようになるでしょう。

臨機応変な対応に慣れてもらう

実際の営業シーンでは、あらかじめ準備したトークスクリプト通りの展開になることはほとんどなく、必ずお客様に合わせた対応が必須となります。毎回想定外の事態が生じるため、座学でトークスクリプトを読み込むだけでは対応しきれないでしょう。

営業で必須となる臨機応変力を習得するために、営業ロープレは欠かせません。たとえばクライアント役が想定外の質問を投げかけるなどの練習を繰り返せば、自ずと臨機応変に対応できる力が高まるでしょう。

課題を明確化して改善する

各営業マンが抱える課題を明確化・改善することも、営業ロープレにおいて重要な目的の一つです。

電話営業や商談が上手くいかない背景には、営業マン自身が気づいていない課題が潜んでいる可能性があります。例えば、商材を提案する方法や言葉遣いなど、ちょっとした要素で営業の成功確率は下がります。

実践形式で営業ロープレを行えば、どこに問題があるかをピンポイントで洗い出すことができます。問題を的確に洗い出してそれを改善することで、営業の質を高める効果が期待できるでしょう。

営業ロープレの進め方

やみくもに営業の練習をするだけでは、トーク力や臨機応変な対応力はアップしません。営業に役立つ能力を高めるには、「ターゲットの明確化」→「事前準備」→「役割分担の決定」→「実行」→「フィードバック・営業ロープレの定着化」という5つの流れで営業ロープレを進めることが重要です。

では、各プロセスの概要や重要なポイントを詳しく見ていきましょう。

想定するターゲットを明確にする 

はじめに行うべきことは、営業する相手となるターゲット像を明確にすることです。自社商品・サービスのペルソナがすでに用意されているならば、お客様役の方はペルソナのニーズや特徴を踏まえて営業ロープレを行えばよいでしょう。なお、ペルソナとは自社の見込み客について、年齢や性別、家族構成などの情報を詳細に設定した架空の人物像を指します。

どのような特徴を持つ見込み客であるかによって、抱えているニーズや購買を決定する要因などは異なります。そのため、ペルソナを決めておかないと、営業の場面で何を訴求すればよいのか分からなくなってしまいます。

見込み客の特徴に合わせて最適な訴求を行うためにも、ペルソナを定めた上で営業ロープレを進めるのがベストです。ペルソナを決めずに営業ロープレを行うと、実践的な営業スキルの向上につながらない時間となるので注意しましょう。

なおペルソナを作る際には、以下のポイントを押さえておくと、見込み客の特徴やニーズを的確に捉えることができます。

  • 見込み客へのインタビューや営業マンからのヒアリングにより、事実に基づいた情報を集める
  • 性別や年齢などの人口統計的な情報だけでなく、価値観やニーズといった心理的な特性に関する情報も収集する
  • 優先的に対応したい見込み客に絞ってペルソナを作る(作成するペルソナの数を絞る)

事前準備をする

次に、営業する側とされる側のそれぞれに必要な事前準備をします。

営業する側に関しては、先程のプロセスで決定したペルソナに対して、「どのような流れで話すか」や「どのような提案を行うか」を入念に準備しましょう。一方で、見込み客側については、そのペルソナ層でよく聞かれる質問や返答などを洗い出しておき、営業ロープレで適切に応対や質問の投げかけをできるようにしておきます。

あらかじめ提案内容やそれに応じた返答・質問などを準備しておくことで、実践的な営業ロープレをスムーズに進めることができます。

役割分担を決める

事前準備を終えたら、営業ロープレの役割を一つずつ決定します。

営業ロープレの効果を高める上では、営業マン役とお客様役、評価役の3人チームで行うのがベストです。2人で営業ロープレを実施すると、役をこなすことに夢中になって、営業ロープレの質や課題を俯瞰的に捉えることが難しくなります。評価に徹する第三者を入れることで、全体を通じた課題や長所などを見つけやすくなるでしょう。

具体的な役割の分担については、部下がロープレを実施し、上司がお客様役を担い、同僚が評価役を行うのが一般的です。営業に慣れている上司がお客様役を行うことで、実践に即した応答や質問が可能となるでしょう。

なお、同僚同士で営業ロープレを行う際は、あらかじめどちらが受け手でどちらが行う方なのかについて、明確にしておくことが大切です。

実行する

ペルソナ設定や役割分担などをすべて終えたら、いよいよ実際の営業シーンを想定してロープレを実行します。対面の挨拶やアイスブレイク、課題のヒアリング、商品・サービスの提案といった一連の流れを体験します。練習ではあるものの、本番だと思って営業ロープレに取り組むことが大切です。

また、後から改善点を確認しやすくするために、実施する営業ロープレは動画で撮影しておくことがお薦めです。フィードバックの際に動画を見せることで、営業を行った側は自身の立ち振る舞いや言動、トーク力を客観的に振り返ることができるため、口頭のみでフィードバックするよりも改善すべき点を理解しやすくなります。

フィードバックを基に営業ロープレを繰り返

一通り営業ロープレを終えたら、内容をもとに改善点や良かった部分をフィードバックします。

また、フィードバックした内容を定着させるために、あまり時間を空けずに営業ロープレを繰り返すことも重要です。週2〜4回ほど営業ロープレを繰り返し実施することで、短期間で営業に慣れたり、指摘された課題を改善したりする効果が見込めます。

営業ロープレの際に上司が行うべきフィードバックのポイント

営業ロープレを実施する際には、ロープレを実行しただけでは効果が不十分である点に注意が必要です。ロープレで見つかった課題や改善点を上司が的確にフィードバックし、着実なスキルアップを図ることが重要です。

下記7つのポイントを押さえた上でフィードバックを行えば、営業ロープレによって効果的に営業マンのスキルアップを実現できるでしょう。

あらかじめフィードバックの基準を明確化しておく

フィードバックの基準が明確でないと、評価者が変わるたびに指摘する内容が変わってしまい、部下を悩ませる原因となり得ます。誰が評価者となっても同じ改善点を指摘できるように、フィードバックの基準は明確にしておきましょう。

なお、営業ロープレにおけるフィードバックの基準としては、主に以下の項目が挙げられます。下記項目を満たしていない場合には、その点を改善してもらう必要があるでしょう。

  • はっきり大きな声でトークできているか
  • 伝えている内容は分かりやすいか
  • 話しやすい雰囲気作りができているか
  • 顧客の課題を的確に聞き出せているか
  • 顧客の課題に基づいて自社商品・サービスを提案できているか

事実ベースでのフィードバックを行う

営業ロープレでは、事実ベースでフィードバックを与えることが大切です。たとえば「話し方がなんとなく無愛想」といった感じで抽象的にフィードバックを行うと、指摘された側は何を改善すべきか理解できません。

営業ロープレで営業の実践力を上げるには、問題点を改善してもらうことが重要です。そのためには、どこを改善すべきかを事実に基づいて指摘する必要があります。

録画や録音などを活用すると、事実ベースでフィードバックを行いやすいですし、営業した側にも改善点を理解してもらいやすいでしょう。

実際にお手本を見せてあげる

上司がお手本として、実際にどういった形で営業を行っているかを見せてあげることも大切です。営業に慣れている上司がお手本を示すことで、部下の営業マンは完成形に向けて問題点を修正しやすくなります。

なお、お手本を見せるにあたっては、実際に営業に同行させたり、営業ロープレの場面を目の前で見せるのが一般的です。ただし今は、オンライン商談などで商談を録画できるため、録画したオンライン商談を試聴させるのも効果的な手段となるでしょう。

口頭ではなく、実際のスクリプトとして共有してあげる

ベテランの営業マンは、あまり深く考えずにサラサラと営業トークを展開できます。そのため、営業力のある上司がお手本を見せるときほど、口頭でサラッとお手本を部下に伝える傾向があります。

経験が浅い営業マンだと、口頭のみで情報を伝えられると、メモを取りきれなかったり、言っている内容を理解しきれなかったりする可能性があります。メモや理解に不足が生じることで、お手本を自身の営業スキル向上に役立てることが困難となってしまいます。

お手本の内容を役立ててもらうには、上司側で営業の内容を文章化したスクリプトとして共有することが重要です。明文化することで、経験が浅い営業マンでも優れた営業マンのトーク術や展開を理解できるようになります。

一度に指摘する改善点は少数に絞る

一度に沢山の改善点を指摘すると、すべてを把握・理解することは難しいため、かえって何一つアドバイスが頭の中に残らなくなる恐れがあります。

一度に覚えることができる量には限界があるので、一回の営業ロープレで指摘する改善点は1〜2個に絞るようにしましょう。1〜2個ずつ問題点を改善した方が、着実に営業スキルの向上につながります。

営業ロープレによって複数の改善点が見つかった際には、特に優先すべき改善点から伝えるようにしましょう。

「なぜダメなのか?」を考えさせる

実際の営業では、話す相手や場所、相手のニーズ、気分、商品・サービスなどは毎回変わってきます。すべての条件が毎回変わるため、自分で臨機応変に考えて対応する力がないと、営業で成果を出し続けることは難しいです。

臨機応変な思考力・対応力を身に付けさせるには、改善点を指摘すると同時に、「なぜその言動がダメなのか?」を営業マンに考えさせることが大切です。一つひとつの言動が失敗につながる原因を考えることで、営業を受ける相手の立場に立って物事を考えられる力が身に付きます。その結果、相手の気分やニーズが変わっても臨機応変に対応できるようになるのです。

よかった点も伝える

営業ロープレでよくある失敗が、悪かった部分をひたすら指摘することです。改善点をひたすらダメ出しすると、された側は自信を無くしたり、営業に苦手意識を抱えてしまい、かえってパフォーマンスが低下するリスクがあります。

営業ロープレは、ダメ出しすることではなく「実践的な営業力を伸ばすこと」を目的に実施します。実践的な営業力を伸ばすには、ダメなことだけでなく、さらに伸ばすべき長所(よかった点)も同時に伝えることが重要です。

よかった点も同時に伝えることで、自信を失わせずにスキルアップに注力してもらえます。また、自身の長所を活かした営業も可能となります。

なお、心理学の有名な理論「初頭効果」では、人は最初に受けた情報の印象が後々まで続くとされています。したがって営業ロープレのフィードバックでは、「良い点→悪い点」という順番でフィードバックを行うのが好ましいです。

先によかった点(相手の長所)を伝えることで、「認めてもらえた」という前向きな気持ちを持ってもらった上で、改善すべき点を聞いてもらえるでしょう。

まとめ

営業ロープレは、営業マンの実践的な営業力を高める上で有効な手段です。中でも上司や同僚によるフィードバックは、客観的に改善点や長所を把握できる点で欠かせないプロセスです。

フィードバックを実施する際には、動画やスクリプトを使いながら客観的に改善点を理解してもらいつつ、上司がお手本を示すことが大切です。今回ご紹介したポイントを押さえてフィードバックを行えば、営業ロープレで着実に営業力を伸ばせるでしょう。

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