社員教育の重要性とは?成果に繋がる社員教育を実行するための方法

社員教育

企業は社員一人ひとりの集合によって成り立っています。そのため社員を教育することは、企業の成長に直結する重要な要素となります。

厚生労働省が毎年実施している「能力開発基本調査(平成28年度版)」によれば、企業が教育訓練に支出した費用の労働者一人当たりの平均金額は、前年度調査結果と比較して増加しました。これは、社員教育への意識が高まっていることを示していると言えます。

今回は、社員教育を行う理由やメリット・デメリット、さらに実際に行う際に考えるべきことについて詳しく解説していきます。

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社員教育とは

社員教育とは、企業が社員に対して「働く上で必要な知識」を提供することです。社員教育というと、外部の講師を招いて実施する研修や集合研修を想像される方もいるかもしれませんが、実は研修だけに限りません。

OJT(=On The Job Training)や個別面談、資格取得支援なども社員教育の手段の一つといえます。また、実施するタイミングもさまざまで、入社時だけでなく長期間勤務している社員なども対象とした社員教育もあります。

なぜ社員教育が必要か?

企業は、育ってきた環境や受けてきた教育がそれぞれ異なる人による集合体です。もちろん個人の個性は大切です。しかし、もしそれぞれの個性や自由な行動を尊重しすぎた場合、社員全員が自分の思うままに業務を行うようになってしまい、企業としてまとまりがなくなってしまいます。

企業は、社員全員が同じ方向を向き、企業のビジョンとミッションを達成していくことを目指しています。その方向性の落とし込みや正しい方向に進んでいくために社員教育を通して自社の企業の理念や文化を伝えていく必要があります。

また、業務を行なっていくために必要なスキルを身につけなくてはなりません。例えば、営業マンであれば、営業を行うに当たって商品・サービスの基礎知識から営業スキルなどを学ぶ必要があります。場合によっては、自社がどのような営業文化を持っているのかを伝えることも大切です。

社員教育のメリット・デメリット

社員教育が必要であることに、異論がある方はいないのではないでしょうか。一見、社員教育はよいことばかりに見えます。しかし、デメリットもあります。十分にデメリットを考慮しないと、効果的な教育を行うことができません。

ここでは、社員教育のメリットとデメリットについて解説します。

社員教育のメリット

社員教育には大きく分けて3つのメリットがあります。一つ目は、企業として信頼を得ることができること。二つ目は、会社・業務の目的と存在意義を共有できること。三つ目は、社員一人ひとりの能力を高め、生産性を高められることです。

以下にて詳しく解説します。

社員教育のメリット

① 企業として信頼を得ることができる

人間関係の中で信頼を得るためには、マナーを守り常識的な言動ができる必要があります。企業も同じです。社員教育を行い、社会人としての振る舞いができるようになると、対外的な信頼を得ることができるようになります。

社員はお客様と接する際、企業の代表として対応しなければなりません。特に、新入社員はビジネス経験も浅いため、どうしても悪気なく失礼な態度や言動をしてしまうこともあるかもしれません。新入社員向けの研修をしっかり実施して、社会人としての常識やビジネスマナーを習得させる必要があります。

例えば、

  • 挨拶の仕方
  • 正しい敬語の使い方
  • お客様との名刺交換の方法
  • 電話応対の方法

などが挙げられます。

たった1人の社員の小さなトラブルでも、既存のお客様やアプローチ中のお客様の信頼を失ってしまう可能性があります。社員全員が、企業の顔として自覚を持った対応をすることが大切です。

② 会社・業務の目的と存在意義を共有できる

企業全体の社会的な目的や業務の目的を、社員全員と共有することができます。

企業には、企業理念や経営理念といった企業活動の根幹となる考えがあるはずです。社員教育を通して、自社が「どのようにあるべきなのか」やその理念に対して「自身の業務がどのように結び付けられるのか」をしっかり関連付けることができます。それにより社員は、何に貢献できるのかが明確になり、モチベーションの向上に繋がります。

③ 社員一人ひとりの能力を高め、生産性を高められる

最後に、社員教育によって、企業全体の生産性の向上が期待できます。社員一人のスキルが高まれば、生産性は高まります。しかし、それでは生産性の向上は一定のところから頭打ちになってしまいます。生産性を2倍、3倍と上げていくためには、組織全体でのスキル向上を達成する必要があります。

社員全員のスキルを向上させるのは一筋縄ではいかないのも事実です。各社員のスキルにも個人差があるため、それぞれの立場や習熟度に合わせた研修を行うことも大切です。そのためには、常に上司が部下の状況を十分に把握し、不足しているスキルを補っていくことなどが求められます。

社員教育のデメリット

社員教育を行うデメリットは、時間的なコストと金銭的なコストがかかってくる点です。

社内で社員教育を行えないということになると、外部の研修会社の講師に来てもらい研修を実施してもらわなくてはいけません。株式会社産労総合研究所「2018年度 教育研修費用の実態調査」によると、社員教育にかかる費用は、社員一人当たり平均3万8752円といわれています。

社員の教育を行うためには、教わる社員がいる一方で、教える社員もいることになります。社内で研修を行う際には、ベテランの上司が教える側になり、部下が教わる側としてスキルを落とし込んでいくことが多いのではないでしょうか。

特に中小企業の営業組織では、多くのリソースを確保することは難しいため、営業マネージャーがプレイングマネージャーとして、自分の数字を追いながらも、部下のマネジメントもしなくてはいけないという状況もあるでしょう。そのような場合、営業マネジャーにもかなりの負担がかかってしまいます。

社員教育の方法の種類

社員教育の手法は大きく「OJT」と「OFF-JT」の2種類があります。双方をバランスよく実施していかねばなりません。それぞれについて見ていきましょう。

OJT

OJTは「On The Job Training」を略したもので、日常業務のなかで行うトレーニングを指します。先輩社員のもとで、単純な業務から複雑な業務までを学び、知識や経験を身につけていきます。

OJTは現場で学んでいくため、力が身につきやすいのが一番のメリットです。一方で、日々の業務に追われている部署では、なかなか部下の教育まで手が回らず、OJTが計画通りいかないこともあります。

また、先輩社員のスキルも問われます。OJT担当者の教育スキルが低い場合、後輩社員の成長度合いにもバラつきが出てしまいます。そうならないためにも、OJT担当者を決める際にも適切なスキルセットを持っているのかを吟味した上で、任命する必要があります。

単純な業務は短期間で成果を出せるかと思いますが、複雑な処理や営業のようなコミュニケーションを伴う業務は、習得するためには長期間かかることがあります。長い目、且つ連続した社員教育が必要と言えます。

OFF-JT

OFF-JTは「Off The Job Training」を略したもので、職場外で行われる教育のことを指します。実践力を養うOJTに対し、OFF-JTでは理論や知識を学びます。

活発に意見を交換しあうことでコミュニケーション活性化にもつながる「グループ研修」や、インターネットを使った学習形態「eラーニング」などがこれに該当します。eラーニングは、いつでも受講することができるため、自身の業務の都合や隙間時間で学ぶことができます。eラーニングの中には、ビジネスマナーやマネジメント、語学、プログラミングなどさまざまな分野があります。

グループ研修に比べて受講者の受講態度を把握できないため、内容をどれほど理解したかを確認することが難しいといったデメリットもあります。そのためeラーニング後に、内容を理解しているか見極めるためのテストを実施することも方法の一つです。

また、教育資料を配布し、社員に自習を促すこともOFF-JTの一つに挙げられます。これには資格試験の受験を推薦することや、参考図書の配布をすることも含まれます。

社員教育を行うタイミング

社員教育は実施するタイミングや行う相手によって、内容が大きく変わります。社員教育を行うべきタイミングについて詳しく見ていきましょう。

入社した時

入社当初は、誰もがその企業の風土や文化を詳しく知らないはずです。特に新卒採用の社員は社会人経験もないので、何もわからない状態です。

従って、入社してすぐの社員に対しては、実際に働く前に企業の理念や目的、業務の流れを理解してもらう必要が出てきます。それによって初めて、企業のことを理解し、実際に働く流れをイメージすることができるからです。

もちろん、新卒採用と中途採用では教育の内容が異なります。まず新卒採用の社員には社会人としてのマナーやビジネススキルを教え、企業の目的や理念、規範を定着させる必要があります。また、世代のタイプに合わせた教育方法を考えることも大事でしょう。

一方で、中途採用者は基礎的な社会人としての経験がある方がほとんどであり、「社会人基礎力」を身につけてもらうような研修は必要ないと言えます。前職での経験をどう生かすかにフォーカスした内容や、企業文化を理解してもらうような教育が中心となるでしょう。

役職が上がった時

役職が変わると、業務範囲が変わります。部下をマネジメントしたりコーチングしたりと、今までに必要とされなかったスキルが必要となることもあるでしょう。

当然、立場も変わるため責任も重くなります。役職が上がることによって上手く実力を発揮できなくなる社員もいるかもしれません。特に、管理職に初めて就く社員の研修には、マネジメントを行う上で起こりやすい課題の解決のノウハウを共有できるようにするとよいでしょう。

課長職や部長職向けにおこなわれる研修では、組織全体を俯瞰できる力を培うような、より高度な内容のものが求められます。管理職に求められるのは、部下一人ひとりの特徴を踏まえたチームづくりです。現在の立場に必要とされるスキルを身につけましょう。

スキルを磨きたい時

入社して数年が経過した社員は、仕事にも慣れて一人で自分のやるべきことができるようになるのではないでしょうか。入社時より視野が拡がっているので、「さらにスキルを磨いて業務を効率化したい、業務上の課題を解決したい」という思いも強くなっていることでしょう。

また、キャリアが長い社員であっても、スキル向上のために社員教育を受ける必要があります。この場合は、個々の磨きたいスキルに合わせた社員教育カリキュラムを組みましょう。

例えば、後輩や部下が増えた社員には、マネジメントやリーダーシップについての研修を行うことが適当です。研修を通じて次のステップを見せてあげることで、社員のモチベーション維持にもつながり、離職率を下げることも期待できるでしょう。

効果的な社員教育を実行する方法

社員教育を実行する際には、しっかりと計画を立てることが大切です。教育を行う目的、期間や内容を事前に決めておきましょう。ここでは、効果的な社員教育を行うための流れについて解説します。

効果的に社員教育を行うための流れ

目標となる「理想の社員像」を明確にする

いくら社員教育に力を入れていきたいと考えても、目的をはっきりとさせないことには成果が期待できません。社員教育の実施が目的化してしまっては、実施する意味がありません。あくまで、社員教育は手段です。

従って、まず「どのような社員を育てるか」を決めましょう。これには経営者側の意見だけではなく、現場の声も取り入れて、理想的な社員像を組み立てる必要があります。それにより、自社ではどのようなスキルを持っている社員を必要としているのか、どのような教育に力を入れていくのかを明確にすることができます。

現状の問題を把握し、カリキュラムを組む

次に、現状の問題を把握してカリキュラムを組みます。

まず、社員研修の対象にする社員層を決め、関係部署に現状の課題点についてヒアリングします。部署の責任者だけでなく、場合によっては対象となる社員に対して悩みや課題をヒアリングするのもよいでしょう。

ヒアリングの中で課題が見つかった場合、ギャップを埋めるために必要なカリキュラムを社員教育として検討することができます。

目標達成までの期限を決める

目標と課題、解決方法が固まったら、次はその目標達成をいつまでに行うかの期限を設定します。

「今年度中」のような漠然とした設定方法ではいつまで経っても進みません。具体的に「いつ行い、いつ結果や効果を検証するのか」スケジュールをあらかじめ決めておく必要があります。それにより、決められた時間の間での効果検証ができるようになります。

効果測定を行う

社員教育が一通り終わったら、効果測定を行いましょう。効果測定の方法の1つとしては、教育を受けた社員にアンケートを行い、実践度や効果を聞き取ります。また、テストの実施やレポート提出によって習熟度をはかることもできるかもしれません。

効果測定と同時に、上司から社員教育のフィードバックをもらうことも有益です。その際、社員教育を通して部下が成長したところを伝えてあげましょう。さらに、まだ十分に身についていない点については、何か疑問点や悩みがないかをヒアリングするなどして寄り添ってあげてもよいでしょう。

教育後もフォローを継続する

社員教育が終わったらそれっきり……。これでは何の意味もありません。人間は時間が経つと学んだことも薄れてきてしまいます。間を空けてフォローアップ研修などを行い、定期的に社員に学ぶ機会を与え続けることが大切です。

また、効果測定の結果を受けてカリキュラムを修正していくなどしつつ、長期的な視点で社員を育成していく必要があります。参加者の意見には常に耳を傾け、目標達成を共に喜び、失敗の原因を調べ、目標に近づくための教育を作りましょう。

まとめ

社員教育は毎年行っていると、どうしても行うことが目的化してしまうものです。場合によっては、前例踏襲で何十年も同じことをやってしまっている可能性もあります。ビジネス環境が刻一刻と変化している今、求められる社員像も変わりつつあります。変化に合わせた社員教育を実施しなければならないのです。

そのためには、今回ご紹介したような流れを全社的に取り組み、一人ひとりが真剣に社員教育に関わっていく必要があります。社員教育の目的を今一度見直し、カリキュラムを改めて考えてみてはいかがでしょうか。
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