営業マンも身につけておくべき交渉力とは

交渉力

営業マンであれば誰しも、お客様と交渉をする場面を経験したことがあると思います。「あの時、交渉力があれば受注につながったかもしれない……」「交渉力があればお客様の要望に答えながらも値引きをせずに済んだかもしれない……」と思ったことはないでしょうか。

「交渉力」は、営業マンが自社の利益を確保しながら、お客様に商品・サービスを購入してもらうために必要な力になります。営業マンは皆、ぜひ身につけておきたい力です。

本記事では、営業マンにとって必要な交渉力について解説します。また、交渉力を高めるために役立つ具体的な手法を紹介します。

交渉力とは

交渉力とは、「話し合いを通して、自分と相手の両者が納得できる落としどころを見つけるスキル」を指します。営業の文脈で言えば、営業マンが売りたい条件とお客様が購入したい条件を、話し合いを通してお互いが納得できる条件にまでまとめる力です。

話し合いによって、自分が有利になる結論を導き出す人のことを「交渉力が高い」ということがあります。もちろん不利な条件を飲まなくてはいけないと言うことではありませんが、交渉は決して勝負事ではありません。「交渉力が高い人」は会話を通して互いにwin-winになる落としどころを見つけ、相手と持続した関係を保てる人のことです。

なぜ営業で交渉力が必要なのか

営業活動の現場、特にクロージングの際や競合との比較検討の際には、お客様からさまざまな要望や条件を提示されます。営業マンは全ての要求に応えられないかも知れませんが、できる範囲で応え、お客様と継続的な関係を構築することが不可欠です。

また、要求に応える際は、「どこまでお客様の要求を受け入れるか」と明確に線引きすることが必要です。受け入れがたい要望を提示された場合には、許容範囲内で交渉を行い、話を上手くまとめることが求められます。

営業マンは、できる限りお客様の気分や自身の信頼を損なわないようにしながら、落としどころを見つける必要があります。

営業で交渉が必要なシーン

営業活動の中で、実際に交渉が必要になるのはどんな時でしょうか。3つのシーンについて考えてみましょう。

営業で交渉が必要なシーン

競合他社と比較された時

お客様が競合他社と比較検討している場合、商品・サービスの内容について交渉が必要になることがあります。お客様としては少しでも良い条件の相手と取引したいと思っているためです。

一方、営業マンとしては、他社ではなく自社で購入してもらいたいものです。「お客様の本当に必要なものは何なのか?」を読み取り、競合他社にはない自社商品・サービスのメリットを訴求すると良いでしょう。あるいは、許容範囲内で競合他社に近い条件まで緩和したりすると受注につなげられるかも知れません。

値引き交渉をされた時

契約直前の交渉で一番発生しやすいものとして、値引き交渉が挙げられます。一度値引きを行うと、自社の売上げに影響を与えるだけでなく、今後の商談も値引きありきのものになってしまう可能性があります。

また、競合他社が値引きの応じることができたら、さらに自社は金額を下げなくてはいけなくなってしまいます。すると、自社の利益が次第になくなってしまうような価格競争に陥ってしまいます

そのため、金額をなるべく変えずに受注いただくよう交渉を行う必要があります。例えば、「商品・サービス購入後のアフターサポートを追加する」ことなどにより、値引きせずに受注してもらえる可能性が高まります。

今後注力したい取り組み

もう少しのところで提案を受け入れてもらえない時

何度か商談を行い、お客様自身も価値を感じてくれているのに受注につながらない場合には、交渉が必要となります。受注につながらない場合には、お客様側に何らかの引っかかる部分があるはずです。

例えば、BtoBでは「購入することで本当に成果が出るのか……?」といった心配であったり、あるいは社長や上長にうまく承認を取れていないなど、進捗しづらい場合が少なくありません。交渉を行い、受注につながらない原因を明確にした上で「自社ができること」を明示することが大切です。

交渉力がある営業マンの特徴

「交渉力がある」と言われる営業マンに共通している特徴とは何でしょうか。ここでは4つの特徴について解説します。

営業で交渉が必要なシーン

傾聴力がある

「交渉力」というキーワードを聞くと、つい口が達者で言葉巧みな人を思い浮かべがちですが、交渉力のある営業マンには「傾聴力」があります。自分がいくら一方的に意見を伝えたところで、お客様が受け入れなければ意味がありません。交渉の第一歩目には、相手の意見を遮らずにじっくり聞くことが不可欠です。

じっくり話を聞くことで、お客様は自然に心を開きやすくなります。人は自分の話を聞いてくれる人に対し悪い印象は抱きません。また、お客様が商品やサービスに求めることも明確になるでしょう。汲み取ったお客様のニーズに対し「自社で何ができるか」について分かりやすく提示することが重要です。

相手の気持ちを考える

どんなにいい提案であっても、お客様の感情を害してしまえば提案を受け入れてもらえないでしょう。交渉力に長けた人は、相手の「気持ち」や「感情」といった情緒的な側面を捉えられる人が多いものです。

自分主体で相手の気持ちを考えず一方的に話すと、お客様もいい印象を抱くことはありません。交渉とは、「お互いが納得を得られるような結論を導くためのもの」なのです。お客様のメリットと自社のメリットのバランスがよくなるよう提案することが大切です。

判断軸がはっきりしている

交渉では、できるだけお客様の要望に応えることが重要です。一方、無理な要望が発生した場合にははっきりと断ることも大切です。目の前の利益を優先して要望を断れないでいると、結果的には信用を失ってしまうことにつながりかねません。

交渉力がある人は、自分の中に明確な判断軸を持っています。判断軸があると「これはYes」「これはNo」とはっきり相手に伝えられます。もちろん「No」と言うのが難しい場合もあるでしょう。しかし、そんな時こそ正直に伝えることで、かえって信頼関係の構築につながることもあります。

洞察力があり状況の把握が的確

交渉上手な人の中には、お客様の態度や仕草から感情を察した上で、状況を把握することが得意な人が多くいます。

交渉で大切なのは、タイミング。相手がその気になっていないのに、気づくことなく強気で提案を続けていくと交渉は失敗に終わります。必要なのは、「ここぞという時には押し、そうでないときには引く」と緩急を付けながら交渉すること。そのためには、相手の行動を観察しながらタイミングを見計らうことが欠かせません。

営業マンの交渉力をあげるコツ

ここでは、営業マンが交渉力を向上させるための3つのコツを紹介します。

交渉の目的をイメージする

交渉の前に「何のための交渉か」と自分の中で目的を明確にしましょう。「交渉のゴール」がはっきりしていないと、自分の判断軸がぶれてしまい、話がまとまらなくなってしまう恐れがあります。

「自社の商品・サービスの強みである〇〇についてお客様に理解してもらって、こちらの提示する金額で納得してもらう」というように、こちらが一番訴求したいゴールのあり方を明確にしておきましょう。

それにより、お客様から条件を提示されても、このゴールに影響がある条件なのかを瞬時に判断することができます。影響がなく、受け入れることができる条件であれば対応し、影響がある条件であれば交渉を行っていきましょう。

相手のニーズや課題を把握しておく

「お客様が何を求めているか」「何が問題で受注を踏みとどまっているか」など、交渉では相手のニーズや課題を把握しておくことが大切です。

相手の状況をしっかり把握できていなければ、ニーズにあった提案を行えず、提案は的外れなものになってしまうでしょう。これまでの営業活動や商談でのコミュニケーションの内容を見返したり、情報が足りない場合は直接ヒアリングを行うと良いでしょう。お客様の立場になって、どのような状況なのかについて寄り添っていくことが大切です。

複数の選択肢を用意しておく

一つの提案だけでなく、複数の提案を準備しておくことも交渉力を上げるために必要です。複数の選択肢を事前に用意しておくことで、交渉中の不意な要望にも応えられる可能性が高まります。

何も想定せず交渉に臨み、突然の要望にしっかりその場で答えられず持ち帰ってしまうと、相手を不安にさせてしまいます。また、競合他社がその要望に的確に提案ができれば、競合の方が印象がよくなり、受注を逃してしまう恐れもあります。

交渉力を高めたい際に知っておくべき5つの理論

交渉力を高めたい営業マンにおすすめの5つの理論を解説します。ぜひ交渉に取り入れてみてください。

ダブルバインド

ダブルバインドは、2つの選択肢を提示することで断る選択肢を消す心理学の手法です。

例えば、ある人が洋服のお店に入ったとします。この時点でその人は洋服を買う予定はありませんでした。しかし、店員から「この服Aと、あの服Bだとどちらがお好みですか」と尋ねられます。そう尋ねられると、その人は「どっちの方が自分は欲しいだろう」と考え、購入を検討し始めます。これがダブルバインドの手法です。

つまり、お店に入った時点で本来は「服を買う/買わない」という選択肢があるはずですが、店員から2つの選択肢を提示されることで「どちらかを選ばなくてはいけない」と思い込んでしまうのです。

さまざまな交渉のシーンでこのダブルバインドは応用できます。提案の際にはしばしば「これを買いませんか」と一本調子になりがちですが、例に出てきた店員のように「こちらのサービスAとサービスBでしたらどちらがお好みですか」と問いかけてみましょう。

相手がどちらかの選択肢を選んだら「仮に導入されるとしたら今期と来期、どちらがご都合よろしいでしょうか」などと、さらに選択肢を提示しましょう。

アンカリング

人にはいくつかの「認知バイアス(認知のゆがみ)」が存在しています。その一つがアンカリングと呼ばれるものです。これは名前の由来になっている錨(いかり=アンカー)の通り、「最初に提示されたものの数値が錨のように重く印象付けられ、後から提示されるものの数値の判断が歪んでしまうこと」を指します。

例えば、通常価格40万円の洗濯機が、セールで30万円になっていたとします。もともと40万円で売られているところを見ていた人からすると「40万円」という金額がアンカリングされているため「30万円は安い」と感じます。「10万円も安くなったのなら」と購入を検討する人も出てくるでしょう。

つまり、最初に見た価格がアンカリングされたことによって、後に見た価格の捉え方が歪んでしまったということです。これがアンカリング効果です。

アンカリング効果はさまざまなシーンで使われています。例えばレストランでは、あえて高級なコースをメニューに並べておくことで、安価なコースの魅力が増すようにしています。骨董品や美術品を扱う店では、店頭に高価な商品を陳列することで、店内の高価な商品の購入ハードルを下げています。

この手法は交渉の際にも大きく役立ちます。例えば、自社の商品・サービスを提案する際は、従来の性能や価格を見せてアンカリングした上で、最新の自社製品の性能や価格を提示します。こうすることで「お得感」が増すでしょう。

ドア・イン・ザ・フェイス

「ドア・イン・ザ・フェイス」とは、断られるような高い要求を行い、相手に断られてから負担の少ない要求を出す手法のことです。

例えば、最初に高い商品を提示し、お客様が「いい商品だとは思うけれど、価格が高いから購入できない」と断ったとします。そこで、最初の商品より金額の低い商品を紹介するとお客様も話を聞きやすくなり、交渉はスムーズに進みます。これがドア・イン・ザ・フェイスの効果です。

この手法では、最初に提示する商品・サービスが鍵を握ります。相手が欲しいとは思うけれど、少し手が出ない金額の商品・サービスを提案することで、ドア・イン・ザ・フェイスは初めて効果を発揮します。

ラベリング効果

他人から聞いた自分の印象によって、自分自身の行動が良くも悪くも変わってしまうことがあります。ラベリング効果は、その仕組みを利用した効果のこと。相手にレッテルを貼り付ける(ラベリング)ことで、本人にその通りに行動するように誘導させる手法です。

例えば、奥さんにプレゼントを送りたい人が、アクセサリーショップに行ったとします。そこで店員がお客様のことを「奥様思いの優しい旦那様ですね」と言うと、お客様は「自分は奥さん思いの優しい旦那なんだ」と考えます。

次に、店員は「奥様のことを大事に思われているお客様には、奥様の誕生石を使用したアクセサリーがお薦めです」と続けます。すると、お客様は当初考えていた予算を多少オーバーしていても、そのアクセサリーの購入を検討し始めるでしょう。この場合、「奥さん思いの優しい旦那」だというラベリングが効果を発揮しています。

交渉の場でも、このラベリング効果は役立ちます。お客様にラベリングを行うことで当初の予定より多く、より高価なサービスの受注を得ることができるでしょう。

ミラーリング

ミラーリングとは、「相手の仕草や口調を真似して、親近感を相手に抱かせる手法」のことです。人は、相手と気持ちを共有しているときに親しみを感じるもの。楽しいことがあると一緒に笑ったり、悲しいことがあると同情してくれたりする人のことを信頼します。

ミラーリングでは、あからさまに相手の動きを真似るのではなく、あくまで自然に相手の動きを真似することで、相手に無意識のうちに親近感を抱かせます。例えば、「声のトーン」「会話の抑揚」「ポーズ」「歩き方」を合わせ相手に安心感を与えることで、交渉はスムーズになるでしょう。

ミラーリングはどんな場でも行えます。身振り手振りが大きい相手であれば、その癖を観察し、同じように振る舞いましょう。水を飲むタイミングを相手に合わせることもテクニックの一つです。

継続的に交渉力を高めていくためには

交渉力を高めるためには、実際の営業シーンでの実践が何よりも重要です。さまざまな理論を紹介しましたが、「業種」「お客様の属性」「営業マンの資質」によって上手くいく手法、上手くいかない手法があるでしょう。

実際の交渉の場でお客様と交渉を行っていくことで、自分にあった交渉術や自身の業界やお客様に合った交渉術を見つけることができるはずです。継続的に試行錯誤を行い、交渉力を高めていきましょう。

まとめ

交渉力を高めるために大切なのは、「相手のことを考える」ということです。お客様の気分を害している状態では、納得してもらえる内容でも納得してもらうこともできません。お客様が「理性的なタイプか」「感情的なタイプか」「長い話を嫌うタイプか」「じっくり話したいタイプか」など、お客様のことを注意深く観察し、状況を見極めた上で提案することが大切です。

お客様のことを考えた上で、お互いが納得しあえる条件を見つけられるように考えていきましょう。そのポイントを見つける上では、本記事でご紹介した心理学などのテクニックを参考にしながら、実際にお客様と交渉を行う場を通じて交渉力に磨きをかけていきましょう。

交渉を行うにしても、基本的な営業スキルは必要不可欠です。営業マンが身につけておくべき営業スキルを「営業スキルチェックシート」にまとめしました。ご自身の営業スキルの確認にご活用ください。

    営業スキルチェックシート

佐原 業平(さはら なりひら)

中央大学商学部を卒業後、2016年に新卒で株式会社コンベックスに入社。 新規開拓営業を経験した後、eBook・セミナー・研修のコンテンツの作成に従事。 そこで培った営業とマーケティングの知見を生かし、「セールスハックス」の運営に取り組む。 経営者から営業マンまで、ビジネス現場を理解したお役に立てる情報を発信。

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