営業管理職が果たすべき役割とは

営業管理職 果たす役割

よく言われることですが「優秀な営業マン」と「優秀な営業管理職」に必要な能力は異なります。一人で動くvs.大勢を動かす、プレイヤー vs. 監督の違いをイメージしていただくとわかりやすいと思いますがマインドセット、必要な知識、スキルにいたるまで大きな違いがあると言えるでしょう。

しかし、企業では営業管理職の役割やスキルが、あまり言語化されていないことがよくあります。売上目標さえ達成していれば細かいことは言われないことも多く、管理職自身が油断しているとプレイヤーとあまり変わらない能力のまま年月がたってしまうリスクもあるでしょう。

営業マンからスタートして大きく成長(スキルアップ、昇進、昇格)していくためには、要所要所で自分の能力をバージョンアップしていくことが大切です。
本記事では営業管理職が果たすべき役割、身につけておくべき知識・スキルについて解説していきます。

営業管理職とは

営業管理職とは、営業部門の長として営業マンをマネジメントしながら売上目標を達成する役割を持つ管理職です。主な役割は以下の3つです。

  • 売上目標の達成
  • 営業マンの育成
  • 営業戦略の策定・実行

営業マンを育てながら目標数字を達成する。一行で表現できる職務ですがその実現には相当に高い能力が必要です。プレイヤーとしての能力はあって当然。さらに大局を見る力、戦略を立てる力も求められます。

以下は、経団連が2012年に経営者に対して行った調査ですが、昨今の経営者は昔よりも管理職に「経営環境の変化を踏まえた新しい事業や仕組を企画立案すること」「部下のキャリアを長期的な視点で育成すること」などより高度な役割を期待するようになっています。

営業管理職について言えば、まさしくコロナウイルス感染症の影響で激変した市場で活路を見出す企画を立案するような役割が期待されているでしょう。

経団連が2012年に経営者に対して行った調査

(参照:日本経済団体連合会

人に動いてもらう管理職に求められる能力は多様です。以下は、HR総研が2019年に調査した管理職研修のカリキュラムですが、営業管理職はこれに加えて成果を上げる高い実行力も必須。事業の存続を担う営業部門を率いているため社内でも重要なポジションだと言えるでしょう。

管理職研修のカリキュラム

(出典:人材育成「管理職研修」に関するアンケート調査(2019年)-ProFuture株式会社/HR総研) 

営業管理職の現状

では、世間一般の営業管理職はどのような仕事を日々しているのでしょうか? 営業管理職の仕事は、細かくみれば営業目標の設定、営業戦略の策定、営業マンの売上管理、営業マンの教育、成果が上がる仕組の構築、経営層や他部門との調整ほか実に幅広い業務があります。

経済産業研究所が実施した平成28年度「日米における仕事とテクノロジーに関するインターネット調査」の結果をみると、日本の営業管理職は「プレイヤーとして営業業務」「部下のマネジメント」「組織の運営業務」「情報伝達・共有」などをバランスよくこなしています。

米国と比較すると日本の営業管理職のほうが10%ほどプレイヤー業務が多いものの(日本33.1%、米国21.8%)、バランス的には似ていると言えるかもしれません。

日米における仕事とテクノロジーに関するインターネット調査

(参考:独立行政法人経済産業研究所) 

日本では、管理職のプレイングマネージャー化が進んでおり2019年の産業能率大学総合研究所の調査によると、今や「9割以上の部長がプレイングマネージャー」です。営業管理職に限定すればリクルート社のレポート「Works Report2020」によると86.3%がプレイングマネージャーです。しかも50%以上の業務を一営業マンとしての仕事に費やしている管理職は35.4%なので、プレイヤーに近い営業管理職もかなり多いことがわかります。

営業管理職の課題

ここでは、営業管理職が抱える課題について解説します。

営業部長クラスの課題

2013年にリクルートが実施した「営業部長実態調査」によると部長クラスが課題として1~3位に上げているのは「営業担当者の能力のばらつき」「リーダー・次期マネージャーの育成」「営業マネージャーのマネジメント能力のばらつきの是正」です。

営業部長実態調査

(参照:リクルート

営業マンの能力のばらつきについては他調査でもよく指摘されますが、営業部長、営業統括部長からみれば営業マネージャーのマネジメントの能力もばらつきも激しいということなのでしょう。

営業マネージャーの課題

営業マネージャークラスの認識はどうでしょうか? 

2010年に日本労務学会が営業課長~営業部長クラスに実施した営業マンの育成に関する調査では、課題の第1位は「現場は営業活動で忙しく、育成する時間がない」、2位が「目先の課題を優先するあまり、育成がなかなか進まない」3位が「上司や先輩の指導・育成の能力に問題がある」となっています。

業務が忙しく、育成が後回しになっている状況がリアルに伝わります。また、昨今は働き方改革もはじまっているため営業管理職もさらに忙しくなっているでしょう。

2019年のパーソル総合研究所の調査では管理職の6割以上が働き方改革によって業務量が増加したと答えており、「付加価値を生む業務に着手できない」「学びの時間を確保できない」という課題を抱える管理職も増加しています。

もし営業管理職が本来の業務に集中できないほど多忙なら経営者や営業部門のトップが体制を変更するなど何かしら決断をする必要が出てくるでしょう。

営業管理職が果たすべき役割

ここでは、営業部門を率いる管理職が果たすべき役割について解説していきます。

チームにビジョンを伝える

営業部門のトップは、多人数のメンバーを率いなくてはなりません。そのためチームが目指すべき場所、どこに進むべきかの方向性をチームメンバー全体にわかりやすくビジョンとして示してあげる必要があります。

ビジョン(VISION)=構想、未来の姿という意味です。ビジョンが明確なら部下は自社が目指している世界観がわかる → 営業部門の役割・自分の責任を理解 → どのように仕事を進めるか腹落ちと、自発的に行動しやすくなるでしょう。もし企業の理念や世界観があいまいな場合、それをかみくだいて説明する言語化能力も必要になります。

やることとやらないことを決断する

前述のとおり、昨今の中間管理職の多くはプレイングマネージャー。また、営業マンも営業以外の業務にかなり追われています。企業内では毎年のようにさまざまな改革や新プロジェクトがスタートし、目指していることは素晴らしいものの旧来の業務を断捨離しないことが多く、ほっておくと業務は増え続ける傾向があります。

企業では何かを止めることはなかなか難しいものです。組織内でも「慣性の法則」が働いてしまうのかも知れません。

  • 慣性の法則:静止している物体はいつまでも静止し続ける。運動している物体はいつまでも等速直線運動を続ける

理由や効果はわからずあまり意味がないような社内ルールも、なぜか一度始まると当たり前のことになってしまい生真面目に続けられがちです。

新しい施策を導入したものの、どうも結果が思わしくなく「失敗では……」と多くの社員が思うようなプロジェクトが、延々と運用レベルでの改善を繰り返しながら続けられることもあります。これは、サンクコストの呪縛かも知れません。一旦、投資した事業をストップするとそれまでのコストが無駄になるため、その痛みを回避する心理から止める決断がなかなかできない現象です。

しかし、会社では始めたころは意義があった業務が時代とともに優先順位が低くなることなどよくあります。プロジェクトも何割かは必ず失敗します。経営環境や現在の企業ステージにあわなくなったのであれば経営者や営業管理職が思い切って合理化を決断できるとよい結果を生むことも多いでしょう。例えば、営業日報、会議、朝礼などを止めて成功した大企業もあります。

もちろん創立からまもなかったり、未経験者が多いような企業なら日報や朝礼も必要です。社風にもよります。あくまで、現在~近未来の自社にとっては不要なことを合理化すべき決断いう意味です。

各営業マンの行動管理

チームを統括するためには、各営業マンがどのような行動を行っているのかをみる必要があります。もちろん、毎日のように細かく電話やメール件数をチェックする必要はありませんが、目標としているコール数、訪問数を満たしているのかを、俯瞰的な視点で把握することは大切です。

行動管理をしっかり行えば商品・サービスごとの「セールスサイクル」、成約になるまでに必要な「平均的な行動量」「営業マンごとの行動量」もわかるようになります。営業マン自身も、自分の力量で売上目標を達成するためにどのくらいの期間と行動量が必要かを認識できるようになるので、地道な努力を継続しやすくなるでしょう。

チームのモチベーション管理

営業チームは、人の集合体であるため営業マンにモチベーションを維持してもらうことも営業管理職の重要な役割です。具体的には、モチベーションが上がりやすい職場環境をつくることが仕事です。

プレッシャーだけが強い職場だと、くじける営業マンが多くなります。一方、楽すぎても営業マンによってはだらけてしまい、モチベーションが上がらなくなることもあるでしょう。

厳しさと嬉しいこと、励みになることのバランスがポイントなので、以下のJD-Rモデルを参考にするとよいでしょう。例えば、仕事のプレッシャーや精神的負担、肉体的負担があっても、「裁量性(営業マンが自分で判断、コントロールできる範囲の大きさ」「コーチング」「成果に対するフィードバック」の割合が大きければ全体でみればやる気の出やすい環境になります

JD-Rモデル

(参照:厚生労働省

 案件の進捗管理

営業管理職は、チーム全体で案件がどのくらい進捗しているかを把握できている必要があります。リアルタイムでチーム全体の受注数の把握と見込み客の案件管理をしっかりと行うことによって、適切な施策を打つことができるからです。

案件管理はエクセル、スプレッドシート、SFAなどを活用し情報を共有化することがポイントです。お客様の情報、コール数やメール数などを簡単に一元管理することができるので市場の傾向がわかりますし、営業マンの強みや躓きやすいポイントもわかり指導が的確になります。また、営業マン同士もナレッジを共有できます。

目標達成度の管理

営業管理職がもっとも力を入れているのは、売上目標の達成かと思います。達成度合いを分析して受注や案件が足りず達成度が低ければ、早め早めに次の打ち手を考えていかなければなりません。そのためには日々リアルタイムで売上目標に対する現状の達成率を把握することが大切です。

案件管理と同じく、達成度の管理自体が売上を生むわけではありません。あくまでその後の打ち手が重要なので、できるだけスピーディに管理するめにITツールなどを活用することがポイントです。

営業管理職が役割を果たすための5つのポイント

ここでは営業管理職が役割を果たすために、具体的にどのようなことを行った方がよいかを解説します。

チームに目的と目標を明確に伝える

会社にもチームにも目的と目標があります。言語化されているかどうかは別として、どの会社にも理念や目指している世界観があるでしょう。その実現のために、営業部門には会社を存続させ成長させる売上げを持ってくる目的があり、各営業チームの目標数字が決まります。

まず、おおもとの目的を理解してもらうことが重要です。組織の目的が理解できれば部下は役割・責任がわかり、どのように仕事を進めていけばよいか自主的に考えられます。

組織の健全性を測るGRPIモデルというフレームワークがあります。会議でのファシリテーションやチームビルディングの振り返りの際にもよく使われますが、組織ではもっとも重要なのは上のゴールです。まず、上位概念である目的を部下にしっかり伝えましょう。

GRPIモデル

営業プロセスとKPIの標準化

営業マンに売上目標だけを伝えすべてを自由に営業させた場合、売れる営業マンと売れない営業マンの差は相当に開きます。前述の調査でも「営業マンの能力のばらつき」が多くの企業の課題でした。

あまり売れない営業マン、平均的な営業マンに売れるようになってもらうには「仕組」を作っていく必要があります。具体的には、営業プロセスの標準化とKPIの設定です。営業活動は一件一件異なっているため細部まではマニュアル化できませんが、営業プロセスを構築するだけでも動きやすくなる営業マンは多いはずです。

  • KPI例:営業メール数、コール数、コンタクト数、アポイント数、キーマン面談率、他
営業導線

営業マンとコミュニケーションをとる

営業マンのモチベーションを維持するためには、営業マンとコミュニケーションをとることも大切です。それぞれの営業マンがどのような考え方、価値観を持っているのかについて考えながら接することがポイントです。

つい人は他人も自分と同じように感じたり考えたりすると思いがちですが、実はかなり違うものです。同じように接してもA君は喜びB君にはストレスになることは珍しくありません。

近年は人事の世界も科学されており、心理学的裏づけのある個性診断ツールが簡単に活用できます。社内の勉強会などで全員で受けてお互いの違いがわかると、コミュニケーションが円滑になるでしょう。管理職なら部下ごとに適した伝え方、ほめ方、注意の仕方がわかりますし、診断を受けた営業マンも社内やお客様とのコミュニケーションに活かせるはずです。

  • ストレングスファインダー:米国Gallup社が開発した個人の才能診断ツール。書籍に無料診断テスト付。
  • FFS診断:人間を5つの因子とストレスの状況で分類。書籍に無料診断テストあり(Web上に簡易無料診断あり)
  • ビッグ・ファイブ:5つの因子をもとに25タイプに人を診断。Web上に無料診断テストあり
  • ソーシャルタイプ:人のコミュニケーションスタイルを4タイプに分類。Web上に無料診断テストあり

ITツールの活用

営業活動の管理にはエクセルなどのツールを使うこともできますが、かなりの労力がかかります。また、営業マンに営業する時間を増やしてもらうためには単純な繰り返しの仕事はツールで効率化したほうがよいでしょう。

昨今は、SaaS(低コスト月額払いで活用できるクラウドサービス)が沢山あるので、必要に応じて導入しましょう。ただし多種多様なITツールが登場し続けている一方で、使いこなせないという声も根強くあります。

ITツールはあくまで手段。習得に時間がかりすぎるのは本末転倒なので、自社の課題を把握した上で自社が必要とする機能が強いか?自社の営業マンのITリテラシーで使いこなせるか?活用したら売上が上がりそうか?という基準で選びましょう。

例)主要ITツールとメリット

  • MA(マーケティングオートメーション):オウンドメディアなどで潜在顧客を大量に創出できる企業ならスコアリング機能、メール配信機能を活用した見込み客創出に非常に有効。導入の目安は保有潜在見込み客5,000件以上。

  • SA(セールスオートメーション):営業リスト生成、営業メールの自動配信、有望見込み客のレコメンド機能等を活用し営業活動を効率化したり、営業アプローチのタイミングの精度を高めることができる。

  • SFA(営業支援システム):新規開拓~成約までの営業活動を一元管理するシステム。ナレッジの共有ができる。また、営業マン一人ひとりの行動履歴がわかるため的確な指導が可能に。

  • CRM(顧客管理システム):顧客情報を一元管理。顧客ごとのすべての問合せ履歴、取引履歴がデータとしてのこるため、顧客ごとに適切な施策を立てられある。営業マンが異動した際も引継ぎもスムーズに。

マインドセット

近年は管理職になれる社員は約3割と言われています。正社員になることすら難しい時代なので、営業管理職のポジションについた人は能力もそうですが、相当に努力してきた人ではないかと思います。そうすると当然、平均的な部下より優秀なので、どうしても部下の粗が見えやすくなるかも知れません。

ただ、管理職の仕事は部下の育成なので厳しい目で評価するだけでなく成長させる視点を持つことがポイントです。「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ 」の言葉で有名な連合艦隊司令長官山本五十六氏は、以下の名言も残しています。指導者の器・マインドセットの一例として、今の時代でも参考になる内容だと言えるでしょう。

連合艦隊司令長官山本五十六氏の名言

(引用:山本五十六名言集

まとめ

営業管理職の責務は売上目標を達成することであり、そのためには部下の営業マンの能力を伸ばす必要があります。つきつめれば、営業マンの能力を底上げする仕組づくり、営業マンのモチベーションが向上する環境づくりが営業管理職の大きな役割だと言えるでしょう。

営業プロセスの標準化やKPIの設定、部下の強みを伸ばすような顧客の割り振りやチームビルディング(チーム編成)、効果的なITツールの導入、不要な業務の断捨離ほか営業管理職のポジションだからこそ決断できる施策は数多くあります。まず、たくさんある課題の優先順位をたてて成果に直結するものから取り組んでいきましょう。

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佐原 業平(さはら なりひら)

中央大学商学部を卒業後、2016年に新卒で株式会社コンベックスに入社。 新規開拓営業を経験した後、eBook・セミナー・研修のコンテンツの作成に従事。 そこで培った営業とマーケティングの知見を生かし、「セールスハックス」の運営に取り組む。 経営者から営業マンまで、ビジネス現場を理解したお役に立てる情報を発信。