営業マネジメントが苦手と思ったときに意識すること

マネジメント 苦手

営業では営業マン一人ひとりの営業力を高めて、売上を上げていく事は大切です。しかし、それと同じくらい、チームでの営業活動の成果も同じくらい求められます。

チームの成果を上げるためには営業マネジメント力が問われてきますが、営業マネジメントを「苦手」と意識していてる営業管理職の方も多いのではないかと思います。営業マネジメントが苦手と意識してしまうと、チームをマネジメントをするなかで成果を出す事が難しくなる可能性もあります。

本記事では、営業マネジメントとは何かを解説した上で、営業マネジメントが苦手だと感じている営業マネージャーの具体的な悩み、意識すべきポイントを解説します。

営業マネジメントとは

営業マネジメントとは、営業目標を達成するための活動です。「マーケティングの父」との呼び名もあるピーター・ドラッカー氏は、マネジメントのことを「組織に成果をあげさせるための道具・機能・機関」と定義しました。

営業組織における成果は、受注獲得です。営業活動の道具・機能・機関をどのように捉えるかは難しいところですが、営業チームと置き換えることもできるでしょう。少なくとも営業チームは、企業にとって受注獲得のための機関だからです。

つまりドラッカーの定義によれば、営業マネジメントとは、受注獲得のためのチーム活動だと言えるでしょう。

また、ドラッカーは「マネージャー」についても「組織の成果に責任を持つ者」と定義しています。ドラッカーの定義によらなくても、営業マネージャーは営業活動における責任者という認識は多くの方が持っていることでしょう。

しかし、責任者という言葉を具体的にイメージできないのではないでしょうか。責任とは「立場上当然負わなければならない任務や義務」のこと。つまり営業マネージャーには、受注獲得に向けて営業チームを管理する当然の義務があるのです。

営業マネジメントがなぜ大切なのか

営業マネジメントは受注獲得のためのチーム活動ですので、マネジメントが上手くいっていない場合は、受注獲得に影響がでる可能性があります。つまり、営業組織の目標・成果を達成できない可能性があります。営業マネジメントは、組織の目標数字達成のために欠かせない根本的なものだと言えるでしょう。

根本的な重要性は以上のとおりですが、営業活動を取り巻く環境の変化により、営業マネジメントの重要性は増し続けています。営業は、経験や感性がかなり重要になりますが、リモートワークでオンラインでの営業活動が増加するなか、営業人材の育成に課題を持つ営業組織が多くなってきました。

リモートワークの普及後、営業マネジメントの課題を浮かび上がってきています。2020年4月に株式会社マツリカが実施した「営業リモートワーク調査」によると、営業活動のリモートワーク化で感じる課題として、オンライン商談に移行した事による社内での意思疎通や案件情報の共有などが課題と挙がっています。

企業および一般消費者における購買行動(価値観)の変化も見逃せません。インターネットの普及と相まって、顧客の情報収集力が高まっています。購買プロセスの主導権が買い手にシフトしており、マーケティングの役割が重要になっています。また、営業プロセスをマーケティング、インサイドセールス(内勤営業)、フィールドセールス(外勤営業)、カスタマーサクセスとプロセスを分ける営業組織もあります。

リモートワーク化や営業プロセスの変化も営業マネジメントの難易度を上げている現状がありながらも、企業として売上を追及するなかで対応できていない場合は変革が問われてきます。つまり、営業マネジメントは企業として重要な役割を果たします。

リモート営業での課題

(出典:PR TIMES

営業マネジメントが苦手と感じる際の悩み

営業マネジメントが苦手だと感じていても、具体的な悩みや課題を把握しなければ改善もできません。営業マネジメントが苦手と感じてしまう際の、具体的な悩みや課題について考察していきます。

部下の進捗管理ができない

部下が進行する案件の進捗管理ができないと感じている人は多いです。進捗管理ができていない理由としては、営業マネージャー自身が忙しかったり、管理方法が確立されていなかったりしていることが考えられます。

確かに進捗状況については部下から自発的に行う報連相が重要ですが、営業マネージャーとしては報連相に頼らず、仕組みとして把握・管理することが望まれます。部下からの報連相に頼ってしまうと、それだけ案件の進捗に漏れが生じる可能性もあるからです。

ちなみに、リクルートワークスの「マネジメント行動に関する調査2019」によると、部下に一律に報連相を求める割合は全体で61.2%に対し、営業系職種は63.0%とやや高めでした。職種別で見るとシステム・エンジニアリング系職種が56.0%。報連相がなくても、ITツール等を利用して進捗を共有する仕組みを構築できているのかもしれません。

部下の教育ができない

部下の営業スキル向上の教育ができていないと、営業組織として期待する成果が見込めず、結果的に営業マネージャー自身が責任を感じてしまっていることでしょう。

部下の教育ができていない理由としては、教育の仕組みが構築できていなかったり、個人の営業スキルレベルを把握できていていなかったりなどの原因が考えられます。同期または先輩が部下である場合も考えられるでしょう。

このような状態だと、部下の実践的な教育が案件ごとのフィードバックに限られてしまうのです。

部下を叱ることができない

部下を叱ることができず、マネジメントを苦手と感じてしまう営業マネージャーも多いでしょう。叱ることがマネジメントというわけではありませんが、部下を良い方向に導くためには、適切なタイミングで叱ることも重要です。

部下を叱ることができない理由として、部下のモチベーションを下げてしまうのではないか、嫌われるのではないかと考えてしまうのではないでしょうか。確かに、叱ることに代表されるネガティブフィードバックは、日本人にとってかなり辛いことです。

当然、叱られる側もネガティブフィードバックばっかりだとモチベーション低下につながってしまいます。そのため、叱るときは事実に基づいて的確なフィードバックを行うことや、ポジティブフィードバックも一緒に行うことも重要です。

部下のモチベーションをあげることができない

部下にやる気が見えない、営業マネージャー自身と営業担当者のモチベーションに大きな差があるなど感じていないでしょうか。このような場合もマネジメントを苦手だと感じる大きな要因です。

そもそもモチベーションとは、やる気・意欲・動機のことを言います。自分自身でさえ仕事に対するやる気を高い水準で持ち続けるのは難しいため、他人のやる気を向上し継続するのはもっと難しいのです。

難しい一方、部下のモチベーションを管理することは「モチベーションマネジメント」という言葉もあるくらい重要なもの。部下のモチベーションマネジメントについては、営業担当者一人ひとりの適切なスキル評価や目標管理が重要でしょう。

営業マネジメントが苦手と感じた際に意識するポイント

営業マネジメントが苦手と感じた際に意識すべきポイントを紹介します。もし現時点で実践できていないものがあれば、ぜひ実践してみてください。

相手の話や意見を聞く

営業職に必要なスキルと言えばヒアリング能力。営業活動ではお客様にばかり意識してしまいますが、実は営業組織内でもヒアリング能力は重要です。

組織をマネジメントするには当然、組織を理解する必要があります。そのためには、営業担当者の話や意見をしっかりと聞くべきなのです。

よくある勘違いが、マネジメントは「自分ではなく自分以外の人に対して行うもの」という認識。この考えではマネジメントは上手くいきません。マネジメントは「自分を含めて組織全体に対して行うもの」です。

営業マネージャーであっても営業担当者から学ぶべきものがありますし、お客様に対してと同様、部下の心の窓を開かねばなりません。営業マネージャーはマネージャーであり、組織のボスではないのです。

例えば、ボスは部下に命令しますが、マネージャー(リーダー)は部下に依頼します。ボスは部下の失敗を非難しますが、マネージャーは失敗から学ばせます。

いわゆるボスのように営業マネージャーが部下に自身の意見を押し付けてしまうと、部下としては自分のことを理解されていないと感じたり、強制力を感じたりしてしまいます。すると営業マネージャーと部下の関係が悪化してしまい、かえってマネジメントしづらくなってしまうのです。

お客様に対する時と同様、営業マネージャーは部下に対して相手の話や意見をしっかりと聞くことがマネジメントのコツと言えます。

自身が部下の立場だった時を思い出す

今となっては営業マネージャーの役職にいる方でも、担当者および部下として営業活動を行っていた時期があるはずです。その時のことを思い出せば、良い上司や悪い上司のイメージ像を持っているのではないでしょうか。

その時のイメージこそ、現在の部下の気持ちでもあるのです。自分が部下だったらどのようなマネージャーが良いか、どのようなマネージャーは嫌なのかを一度書き起こしてみても良いでしょう。

書き起こした結果、自分なりに理想のマネージャー像ができます。その理想のマネージャーと現実の自分を比較し、部下と接してみましょう。

ちなみに、現在営業マネージャーではなく営業担当者の方も、将来マネージャーとなるのを見据えて理想のマネージャー像を書き起こしておくのがお薦めです。

完璧にマネジメントしようと思わない

マネジメントを行うにあたり、完璧を目指すのは悪いことではありません。しかし完璧な人間がいないように、完璧なマネジメントは現実的に不可能です。いくら著名な経営者・マネージャーであっても完璧はありえません。

マネジメントに完璧がない理由には、人と人との関係である面が大きいです。対人関係で好き嫌いが生じてしまうのは避けられません。「○○課長お気に入りの○○さん」という表現もありますし、逆に営業マネージャーに不満がある担当者もいれば不満がない担当者もいるのです。

このような対人関係においても、可能な限り営業担当者全員と良好な関係を保ち、チームとして最大の成果を出せるように考えることが大切です。

メンバーの特性や強みを知ろうとする

営業チームにいるメンバーの特性や強みを知ろうと努力していますか?営業マネージャーがメンバーの特性や強みを知らなければ、マネージャーの重要な役割である人材育成、モチベーション管理、メンバーの目標管理を満足にできません。

営業職の人事評価は行動指標に頼った評価になりがちですが、可能な限り性格や資質、知識、スキル、態度といった表に出にくい部分も評価すべきです。

また、マネージャーは組織における人員配置・役割定義(アサイン)も考慮しなければなりません。マネジメントは、リソースを効率的に活用して成果を出すことも重要な義務です。つまり、適所適材を考慮しアサインしなければならないのです。人それぞれ得意・不得意があるため、得意を活かせる役割を任せるのが、効率的な目標達成のために重要な考え方となります。

ちなみに、組織における人員配置・役割定義(アサイン)を考慮するうえで「適材適所」と「適所適材」の違いをご存知でしょうか。

小学館のデジタル大辞泉によれば、適材適所とは、その人の適正や能力に応じて、それにふさわしい地位・仕事に就かせることだとあります。一方、適所適材を説明した辞典は少ないです。

語順が違うだけの話ですが、適所適材は、職務に必要な役割や能力に応じた人をその地位に就かせること。大きな違いは、人を基準にするのか、必要な役割や能力を基準にするのかです。例えば適所適材の考え方なら、営業課長に必要な役割や能力に応じた人が自社にいなければ、外部からでも人材を獲得します。

成果を出せる組織は、適材適所より適所適材で構築された組織と考えられるでしょう。

次期リーダーになりそうな部下を巻き込む

マネジメントは「自分を含めて組織全体に対して行うもの」と前述しました。本当にそのとおりで、営業マネジメントは営業マネージャー1人で抱え込む必要はありません。

具体的には、次期リーダー格となる人に裁量を与え、チームをまとめる役割の一部を負わせても良いのです。この方法であれば1人で抱え込む必要もなく、いわゆるボスではなく真のマネージャー(リーダー)としてマネジメントができます。それだけでなく、次期リーダーの育成とも考えられるのです。

情報収集や勉強で基礎知識を身につける

営業マネージャーの中には、営業担当者だった時は多くの勉強をして実践し、経験と実績を積んできた方もいるのではないでしょうか。しかし悲しいことに、担当者とマネージャーでは必要なスキルが異なってきます。

営業担当者として必要なスキルは、ヒアリング能力、クロージング能力、情報収集能力、情報分析能力、コミュニケーション能力など。もちろん営業マネージャーにも通ずるスキルですが、マネージャーはこれらに加えてコーチング力、共感力、リスク管理能力、評価検証能力、育成力、マーケティング知識、経営知識等が必要です。

つまり、優秀なプレイヤーが優秀なマネージャーになるとは限りません。苦手を克服し優秀なマネージャーになるためには、自発的にマネジメント力を高める情報収集を行ったり、セミナーに参加したりしてみると良いでしょう。

インプットをしながらアウトプットするサイクルを止めないことが重要です。

営業マネジメントが苦手と思った時こそチームを意識する

営業マネジメントが苦手だと思った時こそ、チーム全体を意識しましょう。これまで紹介してきたとおり、マネジメントは1人で完結できるものではありません。人を動かすのがマネジメントではなく、組織全体で協力しあうことが重要です。

もっと言えば「自分の力で営業目標を達成できる」のであれば、マネージャーではなくプレイヤーとして活躍するべきなのです。マネジメントの真の目的は、部下を管理することではなく、部下を含めた組織全体を管理しながら、効率的に成果を出し続けることに違いありません。

営業マネージャーとして「マネジメントが苦手」と悩んだ時は、どのようにしたら管理ができるのかを考えるのではなく、どのようにしたらチームが活性化し、全員で成果を上げられるのかを考えることが大切です。

まとめ

営業マネジメントが苦手だと思うこと自体は悪いことではありません。プレイヤーからマネージャーになったのであれば、誰もが「自分には向いていない」など苦手意識を持ちます。

ただし、苦手意識で終わってしまわず、自分が具体的に何に悩んでいて、なぜ苦手意識を持ってしまっているのか、そのような時にどのような意識を持つべきなのか考え、実践を継続していくことが重要です。

マネージャーを任せられているということは、ハイマネージャー(上位管理職者・経営者)から適所適材であると考えられているはず。簡単なことではありませんが、本記事で紹介した意識すべきポイントなどを参考に、少しずつ苦手意識を克服してくと良いでしょう。

本記事で紹介した内容でもう一度押さえておきたいのが、そもそもマネジメントの目的は組織目標をより効率的に達成することだという点。また、マネジメントは必ずしも1人で行うものではなく、完璧なマネジメントは現実的に不可能だという点。マネジメントは人を管理するのではなく、組織を管理するものだという考え方です。

もしマネジメントについて誤解していたのなら、必要以上に自分を苦しめていたかもしれません。ぜひもう一度ゆっくりマネジメントについて考え直し、実践を繰り返してみてください。実践にお薦めなのが、「営業ワークフローと営業ツール標準化《実践ガイド》」の活用です。マネジメントに悩む営業マネージャーにとって、部下の個別スキルの把握・フィードバックにご活用いただけます。ぜひご活用ください。

    営業ワークフローと営業ツール標準化《実践ガイド》

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