営業マネージャーが知っておきたいリーダーシップ論

営業 リーダーシップ

企業の売上げを上げるためには、営業マン個々の売上げを最大化させることが重要です。そのためには、一人ひとりの能力のレベルアップのため業界の知識や営業ノウハウを身につけていくことが大切ですが、同時に営業活動の原動力となるモチベーションの維持や向上も大切です。

チームのモチベーションを保ち、さらに高めることにより売上げは伸びます。そこで重要な役割を担うのが営業マネージャーです。自らのチームのモチベーションをどのようにして向上させ、売上げに結びつけていくのかを考え、実行することのできるマネージャーが、売上げ最大化の鍵を握ると言うことができるでしょう。

今回は、営業マネージャーが知っておくべきリーダーシップ論について解説し、営業マネージャーが実践の場でどのようにリーダーシップを発揮するべきかを解説します。

営業現場におけるリーダーシップの役割

リーダーシップとは、長期的な目標を定め、チームを作成し、モチベーションを高めつつ成果を出す能力のことです。リーダーシップはさまざまな研究や議論がされており言葉で表すのが難しい概念ですが、個人や組織での良好な人間関係や高い生産性を維持するために重要視されてきました。

リーダーシップの役割を考える際に勘違いしやすいこととして、「マネジメント」と「リーダーシップ」の違いが挙げられます。ジョンP.コッター氏は、両者は明確に異なるとして区別したことで知られています。

まず、マネジメントとは「効率的・確実的に組織を運営する機能」と定義しています。主に、短期的な計画や予算を立案し、適切な組織の設計やメンバー選定をおこない、KPIを設定して目標達成を目指します。

一方で、リーダーシップとは「変革を推し進める機能」と定義しました。長期的なビジョンを提示し、ビジョンを共有してメンバー組織し、メンバーのモチベーション向上を図ります。

リーダーシップとマネジメントの違い

リーダーシップ論を学ぶ意味

リーダーシップときいて、多くの人が想像するのが、実際にビジネスの現場で活躍するカリスマ性のある経営者ではないでしょうか。日本だと本田宗一郎氏や松下幸之助氏、海外だとスティーブ・ジョブズ氏といった経営者が思い浮かぶかもしれません。

このようなカリスマ性のある経営者には、誰もがなろうと思ってなれるわけではありません。そのため、自分には優れたリーダーシップは発揮できないと思いこんでいませんでしょうか。実際に、リーダーシップ理論の初期の研究では、リーダーシップは資質に依存するという考え方が有力でした。

こうしたなか、リーダーシップを「信念を創り出すことによって協働する個人的意思決定を鼓舞するような個人の力」と定義したのがチェスター・バーナード氏です。

同氏は、リーダーシップには技術的側面と道徳的側面があるとしました。技術的側面とは、体力やスキル、知識といった個人的な優位性であり、教育などによって育てることができる側面。一方、道徳的側面とは、個人が生まれながらに持っている資質と定義します。

つまり、リーダーシップは個人がもつ道徳的側面には依存するものの、学ぶことで育成することができると述べたのです。かのピーター・ドラッカー氏も、リーダーシップは資質に依存しないと述べています。

営業マネージャーがリーダーシップ論を学ぶことで、自らのリーダーシップを育成し、強化させていくことができます。それは、結果的にチームの営業マンのモチベーションを向上させ、組織全体での営業成績向上へ結びつけることができるのです。

営業マネージャーが知っておきたい4つの理論

それでは、営業マネージャーは具体的にどのようなリーダーシップ理論を学べばよいのでしょうか。リーダーリップ理論研究は、長い歴史を持ち、様々な研究者や実務者の間で議論されてきました。そのなかで、特に営業マネージャーが知っておきたい3つの理論について紹介します。

リーダーシップの行動類型論

行動類型論とは、個人の特性や性格といった内面的なものではなく、行動パターンといった外面的な要素からリーダーシップの類型化を図り、そこからリーダーシップの本質に迫ろうとする考え方です。ここでは、以下の2つの理論を紹介します。

アイオワ研究

「社会心理学の父」とも呼ばれるアメリカの心理学者クルト・レヴィン氏は、どのようなタイプのリーダーが「作業の質」「作業意欲」「有効な行動」の観点で効果を発揮するかを調査しました。その結果、リーダーシップの型を、以下の3つに分類しました。

専制型リーダーシップ

  • トップダウンによる迅速な意思決定
  • リーダーが計画策定からスケジュール管理まで関わる
  • 人材育成が難しい(リーダーへの不信感にも繋がりやすい)

放任型リーダーシップ

  • メンバーに意思決定の自由度がある
  • リーダーの関与を極力減らす
  • 組織的な行動が難しい(生産性が上がりにくい)

民主型リーダーシップ

  • メンバーと議論して意思決定の方向性を定める
  • 議論の場を設けたり、意見を取りまとめるサポートとして関与
  • 3つの中で最も高い効果を期待できる

PM理論

日本の社会心理学者三隅二不二氏は、P(Performance、目標達成機能)とM(Maintenance、集団維持機能)に着目し、リーダーシップを分類しました。

ここで「P」とは、目標を達成するための計画を立案し、メンバーに指示を出して目標達成に導く能力のことを表します。一方、「M」とは、メンバー間の人間関係を良好に保ち、組織的なまとまりを維持するための能力のことです。

持っているPとMの能力の度合いを軸として、以下の4つのパターンに分類できます。

PM型(理想的なリーダー)

  • 目標を明確に示し、成果をあげられる
  • メンバーをまとめる能力もある

Pm型(成果はあげるが人望が得られないリーダー)

  • 目標を明確に示し、成果をあげられる
  • メンバーをまとめる能力が弱い

pM型(仕事の能力は乏しいが人望はあるリーダー)

  • 目標を明確に示し、成果をあげる能力が弱い
  • メンバーをまとめる能力がある

pm型(能力のないリーダー)

  • 目標を明確に示し、成果をあげる能力が弱い
  • メンバーをまとめる能力も弱い

PもMもともに高い状態「PM型」のリーダーシップスタイルが望ましいと結論づけました。

PM理論

リーダーシップの状況適合論

リーダーシップの行動類型論により、理想とするリーダーシップが明らかになってきました。しかし、リーダーが置かれている環境によって、求められるリーダーシップが異なることが考えられるようになりました。こうした背景により注目されるようになったのが、リーダーシップの状況適合論です。ここでは、2つの理論をご紹介します。

フィードラーの状況適合論

フィードラーの状況適合論では、リーダーシップを、仕事の目標を具体的に部下に伝え指示を好む「仕事志向型」とメンバーへの支援など協調性を好む「人間関係志向型」に分類します。

そのうえで、

  • 上司と部下の関係の良し悪し
  • タスクの構造が単純か複雑か
  • リーダーの権限が強いか弱いか

といった状況に応じてどのリーダーシップが成果を生み出しやすいかを検証しました。

その結果、各状況が普通(中間)の場合には、「人間関係志向型」のリーダーシップを持つリーダーが高い成果を上げやすく、それ以外の状況では「仕事志向型」のリーダーシップを持つリーダーが高い成果を上げやすいと結論づけました。

フィードラーの状況適合論

SL理論

SL理論では、さらに「部下の成熟度」という状況に着目したリーダーシップの型を作成しました。リーダーシップを、「人間志向」と「仕事志向」の度合いを高低2つに分け、4象限に分類します。そのうえで、部下の成熟度に応じてどのリーダーシップが最適かを分析しました。

S1:教示型リーダーシップ(成熟度が低い場合)

業務のゴールを明確にし、具体的に指示を出し、細かく確認する必要がある

S2:説得型リーダーシップ(成熟度が高くなってきた場合)

リーダーの考え方を示し、コミュニケーションを取りつつメンバーの疑問に答える必要がある

S3:参加型リーダーシップ(成熟度が更に高くなってきた場合)

コミュニケーションを通して、成果を褒めたりすることで、自信をつけさせる必要がある

S4:委任型リーダーシップ:(自立できるようになってきた場合)

基本的に部下に判断を任せ、壁にぶつかった際にアドバイスをしてあげる必要がある

部下の成熟度があがるにつれて、S1→S2→S3→S4の流れでリーダーシップを変えることが最適であると結論づけました。

SL理論

実際の実務に落としこむためには

学ぶことで育成できるリーダーシップの能力ですが、机上の理論を学ぶだけで身に付くようなことはありません。しかし、リーダーシップ理論を学ぶことで、営業マネージャーがリーダーシップを発揮するにあたっての考え方や、直面している課題を解決するためのヒントを得ることができます。

まずは、自分自身のリーダーシップを、リーダーシップの行動類型論から分類してみましょう。アイオワ研究のリーダーシップの類型は、自分のリーダーシップを客観的に見つめ直すきっかけになるはずです。PM理論からは、「PM型」のリーダーシップを実現するための課題に気付くことができるかもしれません。

そのうえで、リーダーシップの状況適合論から、今置かれている状況に最適なリーダーシップを検討してみてください。例えば、インサイドセールスチームの導入など、従来とは異なる営業変革を求められている場合は、仕事(タスク)の構造に変化が求められていることから、仕事思考型のリーダーシップを発揮することに意識を向けると、チームがうまくまとめられるかもしれません。

ただし、営業マネージャーのリーダーシップは十人十色です。それぞれの個性や能力を活かしたリーダーシップ像を、自らが描き出す必要があります。リーダーシップ理論を重視しすぎると、自分らしさが失われる可能性もあるので注意してください。

学んだリーダーシップ理論から、実践で活用できる要素を積極的に取り入れ、実際に試しながら自分自身のリーダーシップを確立することが求められているのです。

まとめ

企業において売上げを増加させるためには、営業チームが高い生産性を発揮させる必要があります。それを実現できるかどうかは、営業マネージャーが適切なリーダーシップを発揮できるかどうかにかかっています。

リーダーシップを発揮すると言っても、スティーブ・ジョブス氏のようなカリスマ性が求められているわけではありません。リーダーシップ論を学ぶなかで得られた気付きを、自分のリーダーシップ像と照らし合わせて、自分の個性や能力を活かしたリーダーシップを発揮するようにしてください。
実際の営業の現場においては、営業マネージャーが営業組織強化のために、営業ワークフローや営業ツールの標準化に取り組む必要があります。「営業ワークフローと営業ツール標準化《実践ガイド》」にて具体的な手法について解説していますのでご活用ください。

    営業ワークフローと営業ツール標準化《実践ガイド》

佐原 業平(さはら なりひら)

中央大学商学部を卒業後、2016年に新卒で株式会社コンベックスに入社。 新規開拓営業を経験した後、eBook・セミナー・研修のコンテンツの作成に従事。 そこで培った営業とマーケティングの知見を生かし、「セールスハックス」の運営に取り組む。 経営者から営業マンまで、ビジネス現場を理解したお役に立てる情報を発信。