営業部長の役割とは?営業部長の仕事の役割と期待されること

営業部長

デジタル技術の普及により、ビジネスの展開が早くなっている近年では、企業の長期的なプランや営業計画を見据えた上での営業活動が不可欠となります。そして、長期的なプランを実行する上で最も重要なポジションが「営業部長」です。

「営業部長」という役職は多くの企業に置かれていますが、職務内容や役割が明確になっていないことは少なくありません。企業の存続にとって重要な役割を果たす営業部長の職務が不明確であることは、企業にとって大きなリスクを抱えている状態と言えます。

今回は、営業部長の役割や具体的な仕事内容を紹介し、営業部長が本来の役割を果たすためにどのような点が必要かについて解説します。

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営業部長の役割とは

営業部長に求められる主な役割とは、「営業部門の経営者」として長期的な視点での組織改革や人材育成・管理、営業戦略の策定です。いわゆる上位の「管理職」として、経営の視点を持ったマネジメントが必要とされます。

しかしながら、営業部長の仕事が明確化されていなかったり、営業課長との職務の違いが曖昧になっていたりする組織は珍しくありません。特に中小企業においては、「プレイングマネジャー」として、プレイヤーとしての役割も担っている営業部長が多いため、なおさら「部長」としての役割があいまいになりがちです。

部長の役割を端的に表すと、以下の3点が挙げられます。

  • 事業の成長
  • 部下の育成
  • 組織の改革

営業部長の役割が認識されていなかったり、職務として遂行されていなかったりすると、中長期的かつ広い視野を持った営業活動の遂行が困難になってしまいます。言い換えれば、営業部長の役割が遂行されているか否かは、将来的な売上高や営業マン一人ひとりが能力を発揮しやすい組織づくりに大きく影響を及ぼします。

営業部長の役割

(出典:https://school.jma.or.jp/products/detail.php?product_id=100131

営業部長と営業課長の役割の違い

営業部長と営業課長は、管理職という点では同じですが求められる役割は大きく異なります。

営業課長は、現場に立って短期的な目標達成やチームの意識統一を図っていく役割が課されるのに対して、営業部長は経営的な側面を持って、広い視野・長期的な視点で営業部を統括することが求められます。

また、営業課長が営業マン一人ひとりと直接密にコミュニケーションを取って「人」を管理するのに対して、営業部長は「組織」そのものを管理する姿勢やマネジメント手法が必要とされます。

営業部長と営業課長の役割が異なるにも関わらず、役割の違いが曖昧になってしまいがちな理由としては、以下の理由が挙げられます。

  • 営業部長の役割が認識されていないこと
  • 営業部長に昇格する従業員は、すでに課長職などでマネジメント実務を経験していることから、営業部長昇格時に部長に必要なスキルの研修を施す必要がないと考えられがちなこと
  • 営業部長に部長職に必要な知識やスキルが本人に不足していること

背景としては、プレイングマネジャーとしての役割を求められ、営業部長自身に課されるタスクが非常に多いことや、短期的な目標に対してのプレッシャーが強いことなどもあります。

営業部長が目先の課題に追われてしまい、本来の目的を果たすことができなければ、営業部は長期的な広い視野を失ってしまい、環境の変化に即した対応ができなかったりしてしまうリスクが生じます。

リスク回避のためには、研修やセミナーを受講したりすることで、営業部長が求められている役割を果たせるスキルを身に着けることが重要です。デジタル技術が普及してきたことにより、環境の変化に応じた素早い対応が求められているため、営業部長が役割を発揮できるか否かは、企業の存続をも左右するポイントであると言っても良いでしょう。

部門経営に必要な5つの視点

(出典:https://school.jma.or.jp/products/detail.php?product_id=100128

営業組織の管理

営業部長の仕事を一言で言えば、「人」ではなく「組織」を管理することです。部下として管理する人数が増え、課長職などよりも権限の強い部長は、部下一人ひとりよりも組織全体を動かして、会社をあるべき姿に持っていく仕事が求められているということです。組織を動かすというのは、具体的には以下に紹介する3つの手法です。

目標の認定と達成

部門経営者としての役割を持つ営業部長は、営業部の目標設定・達成についての責任も負います。注意したいのは、短期的な目標の管理・達成については営業課長の業務範囲であることです。営業部長は、短期的な目標を管理するだけではなく、経営視点に基づいた中・長期的な目標の管理が求められます。

つまり、経営計画に基づいた売上予測や売上目標の作成は、営業課長の権限で行われることではなく、営業部長が行うべき仕事と言えます。また、目標を立てた後は進捗状況の管理、部下への目標に対する意識付け、結果を踏まえたフィードバックといったように目標管理を行い成果に反映させていきます。

なお、組織によっては売上予測の作成についても営業部長が担うことがあります。売上予測は、過去の実績や自社の成長率、市場でのシェア率などを元に計算します。売上予測を正確に立て、チームにとって最適な目標を作成することが営業マン一人ひとりのモチベーションアップにつながり、さらにはスキルアップを促進します。

部下のモチベーション管理

営業目標を達成するために、営業部長は部下が最大限のパフォーマンスを発揮できるようにモチベーション管理の役割を担います。

部下一人ひとりと密にコミュニケーションを取ってアドバイスやフィードバックを日常的におこなう役割は、営業課長が担うべき役割です。営業部長は、チームとしてモチベーションを高く維持しやすい組織づくりや体制を整えていくことが求められます。

主なモチベーション管理方法は以下の通りです。

  • 適切な目標設定とフィードバックによるフォロー(特に目標の未達が続くとモチベーションが低下しがちなので、フィードバックによるフォローが重要です)
  • モチベーションを維持しやすくするためにコミュニケーションがしやすい環境づくりをします。例えば、ABW(仕事や目的に合わせてオフィス内で働く場所を選べる環境)やレクレーションの開催、社内チャットツールの導入などの対策があります
  • 部下に対して、会社の将来の展望を伝えることも重要です。部下は、普段はどうしても短期目標の達成に意識が集中してしまうものですが、部長の立場から明るい会社の将来(ビジョン)を伝えることで、部下たちのモチベーションを高めることができます

営業部長は、部門経営者としての立場を活かしてチームのモチベーションを高めていく必要があります。また、営業部長自身がモチベーションを高く保つこと、部下の小さな変化に気付けるように意識することなども必要です。

部下の営業スキルの強化

売上目標を達成するには、営業マン全員の営業力のアップが不可欠です。少人数の売れる営業マンに頼っている状態は望ましくありません。

営業スキルの強化に貢献できる主な手法は以下の3つです。

  • 営業部長自身の営業手法やスキル・知識を営業マン一人ひとりに落とし込む。営業部長自身の体験談や成功体験・失敗談などを話すのも良い。
  • 営業研修やセミナーへの参加促進、チーム内でのロールプレイングや情報交換の実施
  • 営業フローに基づく行動管理によって部下の営業活動におけるプロセス管理をおこなう。営業を結果だけではなく段階に応じて管理することで、結果が出ていない部下がどの段階に課題があるのかを明らかにして、フィードバックをおこなう

営業戦略の策定と実行

将来、継続的に企業が存続・発展を続けていくために不可欠なものが営業戦略です。営業部長は、短期の目標達成を現場のリーダーと設定していくと同時に、中長期の目標(戦略)を立案して部下に落とし込んでいかなければなりません。

例えば、現状のところ短期的な目標を常に達成している場合でも市場のニーズの変化や革新的な競合商品・サービスの台頭により一気に目標到達が困難になってしまうことは珍しくはありません。そうした状況を回避するためには、以下のポイントを押さえた戦略立案が大切です。

  • 外部環境の理解
  • 自社や自社サービスの課題の明確化
  • 自社独自の強みの把握

考えた戦略を一人ひとりの営業マンに落とし込むためには、営業の打ち手としての戦術に落とし込むことが重要です。営業課長とも連携し、戦略を実行するためにどんな行動をいつどのように実施していくべきかを検討しましょう。

職場環境の整備

営業部内でコミュニケーションが活性化し、モチベーションが高まる職場環境の整備も、営業部長の重要な仕事の一つです。職場環境の整備は、ハード面とソフト面から考えていく必要があります。

ハード面

生産性を高め、コミュニケーションが活性化する職場環境を作るために、オフィスのレイアウト変更や休憩室、打ち合わせスペース、カフェスペースの設置などが挙げることができます。

重要なポイントは、組織としてのコンセプトや目的を明確化したうえで、実施していくことです。生産性向上やコミュニケーション活性化のために職場環境にどの様な機能が必要なのかを、現在と将来の視点で考える必要があります。

目的を明確化することにより、部下に対しても導入の意図を的確に説明することができ、反対意見が生じたときにも理解してもらいながらに変革を進めることができるようになります。

ソフト面

コミュニケーション活性化や従業員の営業スキルの向上のためには、ソフト面での対策も必須です。具体的には、以下の対策が必要です。

  • 定例の営業会議や面談により営業マン一人ひとりに売上目標を意識するように指導し、目標達成のために何が必要なのかを指導すること
  • キックオフミーティングや全社員会議、レクレーション大会など営業マンのモチベーションを高めコミュニケーションを促進するためのイベントの実施

などが挙げられます。

部下を承認・評価する

営業部長は、部下一人ひとりがモチベーションを高く維持し、スキルを高めていくために「承認」と「評価」を行います。重要な点は、部下が能力を最大限に発揮できる環境を整えるために承認・評価をすることです。

承認はよく褒めることと混同されがちですが、褒めれば良いというわけではありません。承認のために最も重要なことは、部下に関心を持って観察し、ありのままの存在を認めることです。一方、評価とは結果や行動に対して褒めたり叱責したりすることによって「良い」あるいは「良くない」といった判断を示すことです。

組織のパフォーマンスを上げるためには、営業部長は営業マン一人ひとりを意識する姿勢が重要です。営業マン一人ひとりをマネジメントするのは課長職の役割ですが、だからといって全く現場を見ないというのは、チーム全体の動きを捉えることができなくなってしまいます。

日ごろから観察していると、部下の小さな変化にも気付きやすくなり、部下のモチベーションが低下していたり、課題に直面していたりする時などに変化に気が付きやすくなります。こうした変化に気付いた時や目に見えて成果が生まれたときなどに褒めたり叱責を加えたりすることにより、部下をやる気にさせたり勇気づけたりすることができます。

評価を行う際に承認が欠かせない理由が、普段自分のことを見てくれない人から急に褒められたり叱られたりしても、部下の心に響きにくいからです。日頃からしっかりと目にかけてくれていると感じるからこそ、褒められた時に嬉しくてモチベーションが高まり、叱られた時にも期待に応えようという意欲が生まれるということです。

モチベーションを高める3つの承認

(出典:http://www.nantoeri.or.jp/research/201807.html

また、人事考課の場面では公平かつ公正な評価をすることが重要です。他の管理職が査定した評価をチェックする際には、個人的な感情にとらわれない正当な評価が行われているかも視野に入れる必要があります。

営業部長としてのスキルを上げ、将来的に売上を作れる体制を作るために

営業マンとして優れた実績を残した人が営業部長の地位に就くことが多いですが、これまで見てきた通り営業部長と営業マンとでは求められるスキルは全く異なります。また、同じ管理職である営業課長とも大きく異なります。従って、営業部長は、チームを見る・まとめる力が新たに必要になってくるスキルになります。営業部長は部門経営者として以下のスキルを習得する必要があります。

  • 決断力や課題解決能力
  • コミュニケーション能力、承認力
  • 組織を動かし、時には変革を起こす力
  • 長期的にビジネスプランを考え、戦略に落とし込む力

これらのスキルを身に着け、実践していくために効果的な手法としては、管理職セミナーや研修への参加、ビジネス書を読むなどの自身での学習、ITツールなどのチームの営業活動の進捗状況が可視化されるツールの活用、営業部長としての実務を通じての経験による学習、などが効果的です。

まとめ

営業部の最大の目標といえば、売上目標を達成することと考えがちですが、経営的な視点から売上目標を作ったり、将来的な売上予測に基づくプランを考えることも営業部長の役割です。そして、営業目標を達成するための組織づくりや改革も営業部長が非常に重要な役割を担います。

これらの職務を担うために、営業部長は大きな権限や営業部に対する影響力が付与されています。短期目標を達成しながら、経営視点も併せ持って職務を遂行しなければならないこと、企業によってはプレイングマネジャーとしての役割もこなさなければならないといった、負担がかかる反面やりがいのある職位です。

営業部長の役割は多岐にわたるため、実際に営業戦略をワークフローという形に現場に落とし込むことによって、営業組織の動きや営業スキルを標準化することができます。「営業ワークフローと営業ツール標準化《実践ガイド》」では営業ワークフローの作成から落とし込みまでを紹介しておりますので、ぜひご覧ください。

    営業ワークフローと営業ツール標準化《実践ガイド》

戸栗 頌平(とぐり しょうへい)

B2Bマーケティングを幅広く経験。外資系ソフトウェア企業の日本支社立ち上げを行い、創業期の全マーケティング活動を責任者として行う。現在、東京と海外を行き来しながら場所にとらわれない働き方を通じ、日本企業のマーケティング支援の戦略立案から実行までの支援を行なっている。

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