営業マンが身につけるべきマーケティングスキルとは

営業 マーケティング

ブランド力のある有名企業は、マーケティング施策が実に巧みです。カッコいいCM、魅力的に見える商品、燦然と輝く企業ブランド…… BtoCであれBtoBであれ、商品・サービスを購入する際に企業のマーケティング力は大きく影響します。

マーケティング部門が強い会社の営業マンは、お客様と接触する前段階で競合他社より多くの潜在的な見込み客を抱えていると言ってもよいでしょう。しかし、日本の企業の9割以上は中小企業であり、その6割以上はマーケティングの専任者がいないのが実情です。

多くの中小企業では、営業管理職や営業マンがどのような課題を持つお客様に自分たちの商品・サービスをどう売り込むかなど、マーケティングについても考えなければなりません。とは言え、マーケティングの本質とは「売るための仕掛け、仕組みづくり」と言えますので、商品・サービスをお客様に届けるための活動という点では、同じ目的を持っているのです。

今回は、営業活動で役立てられる、営業マンが身につけるべきマーケティングスキルを紹介します。

営業が求められていることの背景

近年はインターネットの普及により、お客様の情報収集力が格段に向上しています。米国CESの2012年の調査では「近年のB2B市場の購買担当者は、営業担当者と会って契約する前の段階ですでに商談プロセスの約57%を完了している」という結果が出ています。

日本においても、今やスマートフォンの個人保有率は20~30代は90%以上、40代が85.5%、50代が72.2%と、年代問わずインターネットから情報を収集し、各社の商品・サービスを比較検討できるようになっています。しかも商品・サービスの評価も評論家だけではなく、さまざまな層のユーザーのレビューを読むことができるため、お客様自身で商品について分析が可能なのです

つまり、近年はお客様が自ら知識を増やし成長していく時代です。従来の営業活動では、営業マンがお客様の課題や悩みに対する解決策の情報を持っていることが、営業マンの武器の一つでした。しかし、お客様が自身で情報を検索できるようになったことで、営業マンが課題解決へ役に立つ情報を持っていることに対する価値は相対的に低くなり、お客様が営業マンに求めることもより高度なものになります。

例えば、

  • Webに出ていないリアルな事例(成功例、失敗例)
  • 営業マンの持つ専門知識・洞察力・課題発見力
  • お客様の状況に合った独自性のある提案力

などがなければ、今後の営業マンは単なる販売窓口であり、場合によっては値引き交渉の相手と位置付けられる可能性が高くなってしまうと言えるでしょう。

営業がマーケティングスキルを身につけるべき理由

営業マンにはさまざまなスキルが必要ですが、マーケティングスキルはどの業界の営業マンにも役に立つスキルであり、営業マンの営業活動のいろいろな場面で役立ちます。

また、今は変化が非常に速い時代であり、一つの革新的な商品・サービスが登場すると業界の構図が一変する可能性もあります。市場の変化を見逃さないためにもマーケティングスキルをつけておくことが大事です。以下に、営業マンがマーケティングスキルを身につけるべき理由を記載します。

戦略策定の必要性

まず、営業マンは自分の予算や担当エリアに対する営業戦略を立てる必要があります。企業によっては、係長職以上になると営業戦略レポートを提出することがあるかもしれません。マーケティングで用いられるフレームワークを理解しておくことで、自分の営業戦略に応用することができます。

例えば、マーケティングの基本フレームワークの「3C分析」「4P分析」「SWOT分析」などを使うと、思考の整理や分析に便利で、さまざまな角度から予測を立てることができるので上司への説得力も増すことが期待できます。

3C分析

企業を分析するときに、顧客(Customer)、自社(Company)、競合企業(Competitor)の視点から分析するフレームワークです。それぞれの頭文字をとって3C分析と呼びます。

顧客分析(Customer):
現在自社はどのような顧客を抱えているか、潜在的なお客様はどのような層で市場規模はどのくらいかなど、商品・サービスに応じて優先的にアプローチしていくお客様層を絞り込みます。

自社分析(Company):
自社のシェア、商品力、戦力(営業人数、予算等)などを分析します。分析する際には「SWOT分析」というStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの要素を分析するフレームワークがよく使用されます。

競合分析(Competitor):
競合企業の商品の特徴(強み、価格帯)、得意とするお客様の層、行動可能なエリア範囲、販売手法などを分析します。

3C分析

4P分析

どのような商品・サービス(Product)を、どのような価格帯(Price)で、どんな場所・流通網(Place)で、どのように宣伝するのか(Promotion)を決めるためのフレームワークです。

商品(Product):
商品・サービスの強み、弱みなどの特徴を分析します。営業マンの場合は、市場の特性に合わせ商品ラインナップから、どの商品に力を入れて営業するかという視点から分析することができます。

価格(Price):
業界の中で高価格戦略でいくか、最安値にするかなど価格を決めます。決める際には商品の位置づけ(主力の商品・サービスか補助的な商品・サービスか、期間限定のサービスか)、特徴、ターゲットとする顧客の予算範囲、競合他社商品との価格のバランスなどを分析して決めていきます。

場所、流通(Place):
実際にどのように販売するのか。営業マンが直接アプローチするのか、紹介営業に力を入れるのか、代理店を通して販売するのかなどを商品・サービスに応じて決めていきます。

宣伝(Promotion):
商品・サービス及びターゲットの顧客層の特性に合わせて、チラシ、DM、展示会開催など適した宣伝方法を決めます。

4P分析

もちろん、フレームワークを学ばなくてもきちんと市場を分析し営業戦略を立てることができる営業マンも多いと思いますが、このようなフレームワークを使うと戦略をたてる際に必要な要素をすべて網羅することでき、かつ短時間で戦略を立てることができるようになります。

リソースが少ない場合

中小企業では、カタログ制作や広告出稿などを行う部署はあっても、マーケティングまでは行っていないという企業が少なくありません。そのような場合は、営業部門は自分たちでマーケティング戦略を立ててお客様を集客していく必要があります。

マーケティングのよいところは、市場に大網をかけることができるところです。営業マンの数が少なくても個々の営業マンにマーケティングスキルが身につくと、イベント企画やSNSの効果的な活用など営業マンが訪問しなくても見込み客を集める施策が打てるようになります。

とは言え、やみくもにイベントを出したりDMを送っても大きな効果は見込めません。正しい見込み客に営業活動を行なっていくためには、適切なマーケティングを行う必要があるため、営業マン自身がマーケティングの基本を理解している必要があるのです。

営業マンでも手軽にできるマーケティング施策例

・展示会やイベントの企画

オンラインセミナー(YouTubeなどを利用した動画セミナーの配信)の企画

・SNSマーケティング(営業マン個人のSNS発信)

顧客理解

お客様から仕事をいただくには、お客様のことを十分理解している必要があります。営業マンは常日ごろ現場でお客様と接しているので、一般に狭くて深い知識はあります。これに加え、より俯瞰した視点でお客様を理解するためにマーケティングスキルが役立ちます。

前述の「3C・4P分析」も役立ちますが、お客様の業界全体の動向や課題、今後の変化などを分析するときは「PEST分析」が便利です。

PEST分析

Politics(政治面)、Economy(経済面)、Society(社会・ライフスタイル面)、Technology(技術面)などの外部環境が企業に与える影響を分析するフレームワークです。

PEST分析

例えば、人材採用支援の企業であれば、以下のように活用することができます。

課題:
近年の人手不足により、お客様が営業マンの募集をしても応募がほとんどなく困っている。

PEST分析:

・政治面:働き方改革推進により女性活用、中高年活用、テレワーク活用が奨励され助成金も豊富

・社会面:日本は急速な人口減少期で若者がどんどん減っている

・経済面:好景気が続いている(つまり売り手市場が続いている)

・テクノロジー面:インターネットが全国に普及し、パソコンさえあればどこでも業務が可能

4つ角度から分析すると、現在において若手の営業マンを採用できない企業は、不景気にでもならない限り採用できない可能性が高いものの、新たな層を採用したりテレワークを導入する際は支援があるため、働き方を変えることで人手不足に対応できることがわかります。

提案例:
テレワークのシステムを助成金を活用し低コストで導入し、採用対象を全国の営業経験のある主婦や中高年層などに広げ、「インサイドセールス」を担当してもらう。インサイドセールスという新しい営業形態で募集することで、これまでフィールドセールスには関心を示さなかった若手男性の応募も期待できる。

なお、政治、経済、社会、テクノロジーの変化をどのように分析し予測するかは提案時の目的によります。一つの変化も見方を変えれば脅威にもチャンスにもなります。

大きな外部環境の変化は、どの業界の企業にも少なからず影響します。PEST分析を使いマクロな視点で取引先を分析すると、お客様の近未来の課題あるいはビジネスチャンスを見つけやすくなるでしょう。

営業が身につけるべきマーケティングの3つのスキル

ここでは、営業マンが身につけるべき基本的なマーケティングスキルを3つ紹介します。

企画力

営業の求人は「企画営業」という名称で募集されていることも少なくないように、企画力は営業マンには必須といってもよいスキルです。

とは言え、営業マンの企画力とは長期的なブランディングなども行うマーケティング部門とは異なり、企画を立てる目的が「(比較的短期で)売上げにつながること」が多いため、必ずしも斬新な発想が必要なわけではありません。経験があまりなくても目的に応じて社内の事例、競合他社の事例、他業界で実施されている話題の企画などを参考に(もちろんオリジナルな発想があればそれも加味して)立てていくことができます。

5W1Hと言われるフレームワークを使うと、思考が整理しやすくなります。

Where(どこで)、When(いつ)、Who(誰が)、Whom(誰に向けて)、Why(なぜ)、How to(どのように)

例えば、営業マンの人数が少なく全員が多忙で、かつ極力予算も抑えて集客しなければならないという場合、以下のような企画を立てることができます。

・Why:人手不足、予算不足で全国に自社商品を拡販できないから

・Where:Youtube上で

・When:会社員の業務の終わった18:00以降と休日に

・Who:営業担当者(もしくは経営者)の

・How to:過去に行ったセミナーの映像を流し、新セミナーの宣伝も行う。

情報収集力

営業マンも、常日頃から書籍、オンラインメディア、SNS、メールマガジンなどで自分のお客様の業界や自社業界の動向について情報収集することが大切です。情報収集力があると知識が蓄積され、企画のアイデアも浮かびやすくなります。

情報収集力を高めるためには「ノウフー(Know Who):詳しいことを知っている人を知っているスキル」を身につけることも大切です。本当に貴重な情報はネットに出ないこともあり、出たとしてもインターネットに掲載された時点で情報は拡散し、あっという間に陳腐化するのが今の時代です。

他の部署の知識豊富な社員、教えることが好きなお客様、SNSなどで知り合った人でも構いませんが、誰に聞けば知りたい情報の詳細がわかるかを把握しておき、何かあったときに教えてもらえる人間関係を構築しておきましょう。

データ分析力

社内のマーケティング部門や経営企画部門から市場調査や自社内で収集したデータが提供される場合は、そのデータを仕事に活かすことが大切です。各業界動向を分析するデータがあれば個々の業界の成長性がわかり、自社の売上げデータの内訳を読み解けば自社の強い業界、企業規模も見えてきます。いずれも新規開拓する市場を見つけるのに役立ちます。

MAなど最新のITツールを導入している企業であれば、お客様のWebの訪問ログやメールの開封などのデジタル上の行動を解析することにより、お客様が何に関心がありそうかがある程度予測でき、効果的な営業活動やお客様理解に活かすことが可能です。

提案資料作成スキル

提案資料はお客様の担当者だけでなく、その企業の経営陣も確認する場合があるため、どのような立場の方が読んでも理解しやすく、データの裏付けなども活用された信頼できる資料を作成するスキルが必要です。

たとえば、以下のFABE(ファブ分析)のフレームワークなどを使うと提案書の流れがスムーズになり、提案書に必要な情報の漏れがなくなります。

FABE分析(ファブ分析)

提案書を、以下の4ステップの流れに沿って作成します。

1.Feature (特徴):提案内容の特徴を簡略に説明する

   ↓

2.Advantage (優位性):提案内容のポイントを3つ程度簡潔に記載する

   ↓

3.Benefit (利益):お客様のメリットを具体的に記載する 

   ↓

4.Evidence(証拠):提案内容を裏付けるデータ、事例を補足する

マジカルナンバー

提案書で数字を使うときは、マーケティングで使われる「マジカルナンバー」という概念も意識し「3つのメリット」「7つの理由」など、人の記憶に残りやすい数字を使うと効果的です。マジカルナンバーにはさまざまな種類があります。このようなマーケティング上の小技も、提案書のわかりやすさに影響しますので大事にしましょう。

前述した分析手法以外にも、提案書類作成に活用できる多種多様なフレームワークがあります。提案の目的ごとにひな形を作成しておき、必要に応じて使い分けられると、提案書類作成にかける時間が減り、商談や新規開拓などに時間をさくことができるようになります。

営業業務と両立して身につけるためには

前述のとおり、営業とマーケティングの目的は同じで「商品・サービス」を売ることです。アプローチの手法が違うだけです。

  • 「どういう仕掛けをしたら売れるか」
  • 「競合他社と比べて自社商品はどこが優れているか」
  • 「お客様の業界はどう変化しているか、そうするとどんなニーズが発生するか」
  • 「お客様が成長するにはどのような企画提案がよいか」

など、営業活動をしながら日々考えるクセをつけることが、マーケティングスキルを身につけることにつながります。もちろん日本の営業マンはマーケティング領域の業務も多いため、自覚はともかくマーケティングセンスに優れた方も多いと思います。そのような方は、直感的に理解していたことを「理論武装」するという感覚でマーケティング知識を身につけてもよいかもしれません。

以下は、マーケティングの基本を学ぶのにお薦めの書籍です。

マーケティング基礎 (宣伝会議マーケティング選書)
マーケティングの基本から、今のデジタル化した社会のマーケティングまでを網羅した教科書的な本です。環境分析、チャネル戦略、コミュニケーション戦略など営業マンに役立つ内容も盛り込まれています。

弱者でも勝てるモノの売り方 お金をかけずに売上を上げるマーケティング入門
元星野リゾート マーケティングの著者が書いたマーケティング初心者向けの書籍です。ストーリー仕立ての展開なため、「3C分析」「4P分析」「SWOT分析」などのフレームワークも楽しく読み進めながら理解していくことができます。

BtoBウェブマーケティングの新しい教科書 営業力を飛躍させる戦略と実践
BtoBウェブマーケティングの基本、戦略の立て方、成功事例が書かれた本です。マーケティング部門から引き渡されたWeb問い合わせ経由の見込み客がどのような仕組みで集客されているか、どこまで分析されたデータなのかを理解できます。これからWebサイト経由で見込み客を増やしたい営業幹部の方に特にお薦めです。

マーケティングの世界は幅広く、かつ変化が速くトレンドもあります。営業マンがマーケティングスキルを身につける場合は、基本的な知識やフレームワークを押さえた上で、新しいマーケティング手法についてもアンテナを張っておき、自分の業務に役立ちそうであれば積極的に取り入れるというスタンスが実践的だと言えるでしょう。

まとめ

マーケティングとは非常に幅広い領域の仕事ですが、「売れる仕組み」を作っていく業務なので、営業マンにとっても営業活動と共通点がある分野です。

営業マンが基本的なマーケティングスキルを身につけると、営業戦略策定、新規開拓、提案書類作成の際などいろいろな場面で活用できます。また、マーケティングスキルが身につくと少ない人数でも営業成果を上げるための施策がとれるようになるため、中小企業の営業管理職、営業マンにとっては特に役立つスキルだと言えます。

営業部門は市場の変化の最前線にいます。これに加えて俯瞰的な顧客理解という両方の視点を持つことで、さらに深いお客様の理解ができるようになるでしょう。セールスハックスでは、営業リソースを増やさず売上げを拡大する「営業ワークフローと営業ツール標準化《実践ガイド》」を提供しています。お気軽にダウンロードしてご活用ください。

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佐原 業平(さはら なりひら)

中央大学商学部を卒業後、2016年に新卒で株式会社コンベックスに入社。 新規開拓営業を経験した後、eBook・セミナー・研修のコンテンツの作成に従事。 そこで培った営業とマーケティングの知見を生かし、「セールスハックス」の運営に取り組む。 経営者から営業マンまで、ビジネス現場を理解したお役に立てる情報を発信。

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