インサイト営業を身につけるために意識するべき5つのポイント

インサイト営業 ポイント

インサイトセールスと聞くと、どのような営業をイメージされるでしょうか? 

「ソリューション営業は終わった」「顧客の60%近くは営業マンに会う前に意志決定済み」「AI時代に勝てるのはインサイト営業のみ」といった趣旨の記事を見ると、これからの営業マンに求められる能力は途方もなく高くなるように感じられます。

しかし、インサイト営業に必要なスキルを一つひとつ紐解いてみれば、多くは成績上位の営業マンが身につけていることです。また、インサイト営業の本質は「本当の意味でお客様の役に立つ」という価値観が基本になるため、営業マンが共感できることも多いと言えます。

今回は、インサイト営業を身につけるために意識するべきポイントを紹介します。

インサイト営業とは

インサイト営業が日本で注目され始めたのは、2012年にダイヤモンド社の「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」(以下、HBR)に掲載された「ソリューション営業は終わった」という論文が紹介されたころからです。

これまでも営業の世界では、御用聞き営業 → プロダクト営業 → ソリューション営業というように、時代とともに新しい営業スタイルが登場してきましたが、ソリューション営業に変わる営業手法として注目されているのがインサイト営業なのです。

インサイト営業とは「お客様すら気付いていない課題に対して、深い知識をもとに洞察を与え、ベストな提案をしていく営業」とよく表現されます。豊富な知識や洞察力、思考力を駆使し、お客様の視点や考え方の変化を促すような、お客様の購買検討に踏み込む営業スタイルです。

インサイト営業が必要とされる背景には、インターネットの普及によるお客様の情報収集力、課題解決能力の向上があります。前述のように約60%のお客様は、営業担当者と会う前に購買の意志決定が済んでおり、お客様の多くは自分でも考えつくような提案をする営業マンより、 自分のニーズや課題解決に示唆を与えてくれる営業マンを好むようになっています。

インサイト営業についても触れている全米ベストセラー書籍『The Challenger Sale: Taking Control of the Customer Conversation』によると、世界の販売員は以下の5タイプに分類され、この中で常に安定したパフォーマンスを出すのは「チャレンジャー」タイプという結果が出ています。

この「チャレンジャー」タイプの営業マンは、お客様を深く理解・分析し、お客様に対してインサイトを「指導(教え授けること)」できることが特徴の一つになり、他の営業マンと異なった提案を行うことができます。

営業社員5種類のタイプ

つまり今の時代は、お客様は自分のニーズや課題解決を手伝う実直な営業マンよりも、自分と議論でき、より良い方向に導いてくれるような独自の考えを持った営業マンを支持しているのです。

インサイト営業を身につけるメリットとは

インサイト営業は小手先のテクニックではありません。知識や経験が浅い営業マンが習得するのには、恐らく時間が掛かるでしょう。それでも、営業マンがインサイト営業を身につけるメリットは多くあります。

高度なソリューションが求められる案件に強くなる

どんな営業マンでも、商品・サービスの提案が単純で低価格な商品はある程度売ることができます。ビギナーズラックという言葉あるように、営業未経験の新人が受注することも意外とあります。しかし、高度なソリューションが求められる案件(大型案件や生活・ビジネスの中で必須ではない商品・サービス)の場合は、提案を行っていく上で高い能力が求められます。

インサイト営業の思考、ヒアリングの際の質問の技術、取引先企業の複数のキーマンの見極め方などを身に付けると、営業マンは提案の幅が広がり一回り成長できます。また、一顧客あたりの単価が上がる場合もあるため、売上げも伸ばすことができます。

競合他社とのコンペになりにくい

独自性がありシェアNo.1の商品なら、高価格でも営業マンは強気で営業できます。しかし、トップ企業を除けば、他社と差別化しづらい商品・サービスを扱っている営業マンのほうが多数です。お客様は「業界No.1の企業に頼めば安心」「大差ないなら価格とサービスのバランス」という発想をすることが多く、2番手以下の企業は相見積もり・コンペで苦しい競争を強いられがちです。

インサイト営業は、他社とのコンペになりにくいところが特長です。営業マンがお客様の課題を認識させてあげたり、もし既に課題を認識していても「本質的な課題は〇〇ではないでしょうか?」といったように、営業マンが課題とその解決策を主導して提案を行っていくため、他の営業マンとは一味違った提案になります。そのため、もしコンペになった場合でも差別化をすることができるのです。

本質的な問題解決能力がつく

インサイト営業とは基本的に顧客視点の営業です。お客様の抱えている本質的な課題を解決するという立ち位置で提案するため、自社商品をごり押しするのではなく、ときに他社のサービスと連携した提案をすることもあります。もともと日本のBtoB市場の営業マンはお客様に対してコンサルティング的な関わり方をしている場合も多いため、インサイト営業に近い営業をしている営業マンも少なくないはずです。

例えば、営業マンが取引先企業の価値観に共感し担当者と深い信頼関係を築いている場合、お客様がAという商品やサービスの発注したいと言ってきても、営業マンは安易に受注せず「なぜ担当者が発注したいと思ったのか」「本当に解決したいことや望んでいることは何か」を真剣に考え、ときに目先の売上げを逃してでもより最適な提案を行うことがあります。

そのような顧客視点にたった提案をしたことで感謝され、結果的にますます売上げが上がるような営業マンは、既にインサイト営業に近いことは十分できていると言えるでしょう。インサイト営業とは、このような顧客視点の営業を体系的に分析して、ある程度フレームワークとして成立させた営業手法だと言えます。

インサイト営業を行えるようになると、お客様にとって価値ある営業マンに成長し、営業マン自身も大きな満足感を得ることができるでしょう。

インサイト営業を身につけるために意識するべき6つのポイント

インサイト営業は商品知識、ヒアリング力、企画提案力などの基本的な能力だけでなく、営業マン自身が広い視野、先見性、洞察力を持っている必要があります。ここでは、インサイト営業を身につけるために、営業マンが意識するポイントをご紹介します。

ヒアリング力(質問力)

営業の基本はヒアリング力です。ただし、インサイト営業ではお客様が自分で気付かない課題を把握できるような質問力が必要です。SPIN話法をご存知の方もいると思いますが、物事を違う角度から捉え直すような質問、視座を変えるような質問をすることで、お客様自身が本質的な課題に気付くことがあります。

日々の商談の中で、効果的な質問をするように意識しましょう。直接的な質問ではなく、ヒントとなるような情報を質問に盛り込むことがポイントです。

例:

  • 一般的には◯◯業界では、△△といったお悩みをお持ちの企業様が多いのですが、御社はそのようなお悩みはありますでしょうか?
  • 従業員数が150人以上になると部門間の連携が難しくなるとお聞きしますが、御社でもそのようにお感じになられることはありますでしょうか?

課題を発見する力

インサイト営業では、課題を発見するスキルを身に付けることが大切です。人は課題を課題として捉えていなかったり、何か起きたときに本質的な問題に目を向けず、小手先の技術で解決しようとすることがあります。実は、頭の良い人ですら思い込みで物事を決めつけがちなのです。「そもそも問題の本質は何か?」「本当の目的は何か?」という発想を日々意識することが大切です。

まず、自分自身が物事を違う角度でとらえたり前提を疑う思考を持ち、日頃から常識と思われていることや思い込みで判断するクセをなくすことを意識するとよいでしょう。インサイト営業を行うには、事実ベースで物事を見ることが大事です。

適切な「インサイト」を提示する能力

多くの営業マンは、お客様の計画やプランが固まっている場合、お客様の要望どおりに仕事を請け負います。しかし、インサイト営業とは、ときにお客様の考えている前提を覆すような発想の転換をしてもらうことも行う営業です。

例えば、大手コンサルタント会社では「コンサルタントにはNoという義務がある」と指導されると言われています。お客様にプラスにならないと判断したら、反論することを恐れないというプロフェッショナルとしての矜持(きょうじ)があるのです。

近年の営業に求められる能力は、知識・課題発見能力・仮説設定力など、コンサルタント顔負けに高度であり知識労働だと言えます。営業マンも専門家としての自覚を持ち、お客様の方針がベストではないと思えば、自分なりの分析・仮説などを積極的に提示する姿勢があってもよいでしょう。

顧客企業を見極める力

インサイト営業は、本質的な課題に目を向けてもらい、変化を志向する企業に特に有効です。とは言え、営業マンがいくらインサイト営業を実施しても、本質的な課題を解決することに関心を示さない企業も存在します。むしろ、保守的な企業や新しい斬新な提案に慎重な企業の方が多いかもしれません。

一人の営業マンが営業できる企業数には限りがあります。インサイト営業を大きな成果につなげたいのであれば、成長途上にある企業や変化を恐れない社風の企業見極めることで早く成果を出すことができるかもしれません。

特に新規開拓営業にあたっては、できるだけ早期に成長しそうな企業にアプローチしましょう。例えば、中小企業がターゲット企業となる場合、変化への対応が早いベンチャー企業を対象とすることが挙げられます。

近年は第4次ベンチャーブームと言われており、経済産業省はスタートアップ企業育成支援プログラム「J-Startup」を立ち上げています。ベンチャー企業の資金調達額も増加しており、ベンチャー・スタートアップを取り巻く環境が、これまでにないほど恵まれているため、日本のスタートアップ企業は予算もそれなりにあり成功確率も高くなっています。

これから伸びるのはどのような企業かというアンテナを、いつも張り巡らせておくことが大切です。

キーマンを複数でとらえる

インサイト営業を実施すると、お客様の組織自体を変革するような大きな提案をできる可能性が高くなります。しかし、大手企業とのBtoBビジネスではキーマンが一人とは限りません。担当者とだけ信頼関係を構築しても、提案が通らないこともあります。逆に現場の力が強いボトムアップの社風の企業では、経営者にだけ営業していても提案が現場で跳ねのけられることがあります。

キーマンは一人ではないことを常に意識し、大きな提案を行う際は、複数のキーマンと接触する視点を持っているとよいでしょう。

例えば人材紹介会社には、経営者、人事担当者、配属先の現場の管理職や役員とも積極的に名刺交換し情報収集を欠かさない営業マンがいます。何人かと交流しているため、取引先の事業展開などの情報も早々に入手でき人材ニーズを早く掴むことでき、提案するべき相手を見極めることができます。

常に学ぶ姿勢

インサイト営業の土台となるのは豊富な知識であり経験です。業界知識、商品知識、取引先企業を取り巻く環境(競合他社、消費者の変化)などを常に意識していることが大切です。知識や情報が増えると知識と知識が結びつくため、自然にいろいろな発想、アイデアが浮かぶようになります。

また、インサイト営業で成果を上げるには、お客様から専門家と認められるくらいに知識豊富である必要があります。

組織にインサイト営業を落とし込むためには

インサイト営業は、個人の知識欲、お客様へのコミュニケーションの取り方など、本人の個性によるところも多い手法だと言えます。しかし、営業チームとして成果をあげるためには、営業組織にインサイト営業の技術を落とし込む必要があります。

営業マンのマインドセット

多くの営業マンにインサイト営業を実践してもらうためには、まず時代が変革期にあり営業マンに求められる能力、スタンスが大きく変わってきていることを認識してもらう必要があります。研修などを実施し、営業マンのマインドセットを変えることが必要です。

組織に自由な風土を醸成し営業マンの裁量権を広げる

ソリューション営業からインサイト営業へ」の論文では、インサイト営業を行える組織は、自由度が高いことが指摘されており、プロセス管理にそれほど力点おいていないことを指摘しています。「セールス・マシン」を量産する現在の大手企業組織についてどちらかというと否定的です。

ある程度の商談パイプライン管理は必要ですが、営業マンの発言や提案内容などの裁量権は広げることが大切です。なぜなら、裁量権がないと決められたアプローチや提案しかできなくなってしまい、現在の複雑なお客様の意思決定に対応できなくなってしまうからです。

また、リモートワーク、サテライトオフィスの活用を許可するなど、働き方の自由度を高めて自由な風土を醸成していくのもよいでしょう。

ITツールによる支援

近年は、お客様のデータを分析できるテクノロジーもかなり進歩しています。例えば、蓄積されたWeb来訪者のデータをもとに、チャットボットを活用して資料ダウンロードの提案を促したり、営業支援ツールを使うことで、お客様に電話やメールを送るタイミングをはかることもできます。

同時に、営業支援ツールはお客様のインサイトを把握するうえでも役立ちます。例えば、Webのトラッキングやメールの開封、リンククリックを把握することによりお客様の興味関心がある程度わかるからです。

自社のWebサイトのある事例ページをよく見ているなら、似たような課題を抱えているのかもしれません。訪れたページによって、「料金が気になっているのかな?」「企業の信頼性を気にしているのかな?」なども多少推測できます。

営業マンも一個人としては、AmazonやYouTubeのレコメンド機能を重宝しているはずです。ITリテラシーの高い営業マンが多い企業では、MA、CRMなどのデータをもっと外回りの営業活動に活かしてみることを検討してもよいでしょう。営業マンの知見も深まりインサイト営業が実施しやすくなるはずです。

まとめ

インサイト営業とソリューション営業の違いは、知識やテクニックというよりも心構えや姿勢の在り方、お客様への向き合い方にあると言えます。インサイト営業を身につけるためには、営業マンが自分の頭で物事を思考する習慣をつけることが大切です。

インサイト営業に必要な前提をくつがえすような思考とは、例えばこの記事を読んだときに、

・ソリューション営業は本当に効果は薄れてしまっているのか?
・どんな企業でもインサイト営業は必要になるのか?

という前提を疑う視点を持つことです。米国の権威や有名コンサルタントが薦めることも100%正しいわけではありません。業態・業種、商品・サービスによって大きく営業活動や提案方法は変わってきます。前提を鵜呑みにせず、自分なりに考えたうえでインサイト営業を実践してみることが大切です。

本質的な課題に目を向けるインサイト営業の考え方は、営業だけでなくほかの仕事でも役立ちます。日頃から「そもそも前提は正しいのか」「本質的な原因は何か」「本当の目的は何か」という視点で仕事に取り組みましょう。
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佐原 業平(さはら なりひら)

中央大学商学部を卒業後、2016年に新卒で株式会社コンベックスに入社。 新規開拓営業を経験した後、eBook・セミナー・研修のコンテンツの作成に従事。 そこで培った営業とマーケティングの知見を生かし、「セールスハックス」の運営に取り組む。 経営者から営業マンまで、ビジネス現場を理解したお役に立てる情報を発信。

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