みなさんはオンライン営業には慣れましたか?
「楽勝、オンライン営業のほうが絶対に成果が上がる」と言う人もいれば、「勝手がわからなくてオンライン商談のアポがとれない……」「うちのような中小企業では、話題にも出ていません……」と、同じ営業マンでも地域や業界によって大きな差が出ているかも知れません。
しかし、2020年のテレワークの普及状況を見ると、一部シフトか全面シフトかは別にして、おそらく営業の世界も今後はオンライン化していくでしょう。食品大手のカゴメ株式会社が「コロナ禍をハイブリッド営業の転機にする」と宣言したように、当面は対面とオンラインのハイブリッド型が多くなるはずです。
今は、オンライン営業自体は目新しくなくなり、いかにオンライン営業で成果を上げるかという段階に移ってきているかと言えます。本記事では、オンライン営業で成果を上げるポイントを解説します。
目次
オンライン営業とは
オンライン営業とは、お客様先に訪問せずオンライン上で商談することを指します。いわゆるオンライン商談システム(Web会議システム、テレビ会議システムなど)、電話、メールを活用して営業活動を行うことです。
通信環境とパソコンなどがあれば、オフィス、自宅、サテライトオフィスなど場所を選ばずに営業活動が可能です。動画でお互いに顔を合わせられるだけでなく、システムの画面共有機能を使って資料を提示しながら説明もできます。
もともと、国土が広く営業マンが訪問営業すると非効率だった米国で広く普及していた営業スタイルです。
活用するツールは通信回線や接続方法によって以下の種類があります。
商談ツールの種類とサービス例
- Web会議システム:Zoom、Skype
- オンライン商談専用ツール(音声は電話):ベルフェイス、RemoMee(リモミー)
- ブラウザ型:Google meets、B-Room、Calling
- チャット経由:チャットワーク、Microsoft Teams、Slack、他
上記以外にも多様なツールがありますし、一定以上の機能があればオンライン営業は可能です。ツールの良しあしも大切ですが、いかにツールを活用してオンライン営業力を高めるかに注力することがさらに重要です。
オンライン営業と訪問営業の違い
まず、簡単にオンライン営業と訪問営業の違いを説明します。同じ商品・サービスを同じ営業マンが営業しても、リアルな営業とオンライン営業では手順もマナーも必要なスキルも異なってきます。
対面 vs. 画面ごし
リアルな営業と画面越しの営業では、営業マンの印象がかなり違うことに留意しましょう。街中で芸能人を見かけたが地味だった、逆にテレビで見るよりも凄く綺麗だったという話があるように、カメラを通すとなぜか人は印象が変わります。
オンライン商談で相手の眼に入るのは顔、上半身だけとなるため、顔の表情、カメラ目線、声(トーン、話し方)などに気を配りオンライン上の印象をよくする必要がでてきます。 特に第一印象は大事なので、事前にPCカメラで何色のスーツやシャツ、ネクタイなら自分の印象がよくなるかをチェックし場合によっては買い替えてもよいかも知れません。
1時間 vs. 15分
訪問営業でアポイントを取る場合、1時間もらえることが多いと思います。十分な余裕があるため、アイスブレイクから始まりヒアリングに時間をかけ、お互いに質問したり時には話がそれたりしながら今思えばゆったりとした商談が可能でした。
オンライン営業の場合は、挨拶してアイスブレイクしてすぐ打ち解けるという感じになりにくいため、会話の密度がこくなり、話のスピードも早くなります。むしろ1時間も続けると疲れてしまうため、商談時間は15~30分も話せば十分となります。
リアルな営業のパターン:
- 名刺交換 → アイスブレイク → 商品・サービス説明 → ヒアリング → 課題把握 → 次回につながる提案 → 挨拶
オンライン営業のパターン:
- アポ獲得 → 事前に商談の資料送付 → オンライン商談用URLの送付 → 挨拶 → 説明 → 質問がないか適宜確認 → 説明 → 感想確認 → 挨拶
重要な営業スキル
オンライン営業では、オンライン上に資料を表示して簡潔にリズムよく商品・サービスを説明するプレゼンスキルが必要になってきます。なぜなら、画面ごしで淡々とした話を聞くと臨場感を感じないので、話を聞く側がすぐ飽きがちだからです。 1秒がすごく長く感じるためたまにお客様に質問をふるなどのファシリテーション力も必要です
- 論理的で簡潔な説明
- 資料を使ったわかりやすい説明
- リズムの良いトークと質問力
※会社でオンライン営業用のフローを作成し、オンライン商談トークスクリプト、画面上で魅力を感じるプレゼン用の資料などを用意することが望ましいでしょう。
オンライン営業のメリット
ここでは、なぜオンライン営業が大切なのかを解説します。
顧客から受け入れられやすい
まず、テレワーク自体が近年の日本のビジネスマンに急速に普及しつつあります。ビジネスメディアDIMEの2020年4月の調査では、テレワークの導入率はすでに全国で61.7%、今後も続けたい人は49.3%と半数近くにのぼります。
大企業、30代、IT部門、開発部門、営業・マーケティング部門の導入率が高めであり、中小企業、50代、事務・サービス部門の導入率が低めになっています。
出典:DIME
緊急事態宣言解除後にテレワークをやめて元の営業スタイルに戻した企業もありますが、今年、来年にまた同じ状況が起きる可能性もあります。
また、世代交代が進んだり、オンラインでの快適さも経験したお客様が在宅ワークをする率が増えていけば、オンライン商談が選べるのを当たり前と思うようになるでしょう
今は働き方改革が進み、社内の会議であれ社外との打ち合わせであれ、ムダな時間に向けられる目も厳しくなっています。オフィスで勤務していても、商談用の部屋を押さえたり、お茶を出したりする必要もなく、それほど急ぎでない用件に時間をかけないですむオンライン商談は、お客様にとって何かと好都合です。
営業マンのコストの削減
営業する側にもオンライン営業はメリットがあります。移動時間は0になり、交通費などのコストがかからなくなります。相当なコスト削減です。さらに、無駄な時間がへれば新規アプローチに時間をかけることができます。
訪問=基本という常識が薄まりつつあるため、地方、海外のお客様にオンライン営業をしても自然に受けとめてもらえるようになるでしょう。商圏は格段に広がります。台風、大雨、雪などの日は、無理せず自宅で営業活動できるので、本人にとっても会社にとっても安心安全です。
- 移動時間がなくなる
- 交通費もなくなる
- 1日の商談数のアップ
- 営業エリアの拡大
- 悪天候の際もほぼ支障なし
営業活動のノウハウ共有化が進む
リアルな営業で先輩社員に同行しても、ここぞという場面に立ち会えないことは少なくありません。なぜなら、すでに信頼関係ができたあとの営業マンとお客様の会話はシンプルなことが多く、「今回、〇〇な企画を」「面白い、それで頼む」とあっさりクロージングしたりするためです。
新規アプローチ中であっても、お客様はそれまでの信頼関係の積み重ねがあった上で、ある瞬間「この営業マン、この商品がいい」と意識が変容します。何がいつきっかけになるかは想定できないため、営業活動の一場面だけを新人営業マンが見ても、「何だか、別に高度なことはしていないな……」と映りあまり参考になりません。
とは言え、教育のために毎日同行営業させる余裕がある会社は多くはありません。ところがオンライン営業が主体になると、営業活動の最初~最後までの通話、動画での商談、メールなどのすべてがツールに記録できます。
オンライン営業が得意な営業マンの営業プロセス、間合いの取り方、表情、口調、資料の説明の仕方などを、ほかの営業マンは動画を見ながらイメージトレーニングのように学ぶことができるでしょう。
オンライン営業のデメリット
ここでは、オンライン営業のデメリットを紹介します。
オンライン営業のツールが使いこなせない
オンライン営業ではオンライン商談ツール、企業によってはCRMなども活用します。初期の段階はオンライン営業の中身よりもITツールを使いこなせるかどうかが課題となります。
十分な研修もなくオンライン営業をスタートすると、お客様との本番である商談でもたもたしてしまったり、使いこなせないことで心象が悪くなってしまうリスクがあります。また、通信状況が悪いだけで「使えない営業マン」の印象を持たれることもあります。
リアルでの熱量や雰囲気を発揮することができない
営業マンの中には、その人自身の雰囲気や熱量で魅力を発揮できる営業マンがいます。ついお客様が心を開くような人懐っこいタイプ、モチベーションが高くお客様を自然にやる気にさせるタイプ、地味ながら経験からくる自信や物腰で信頼される営業マンは、第一印象時点ですでに有利です。
しかし、このような全身から発する人間性、個人の魅力のようなものがオンライン上だと画面を通しての印象になるので伝わりにくくなります。それを補うためにはテキストのわかりやすさ、資料のビジュアル、テキパキ話して相手の時間をムダにしないことなどを意識する必要があります。
お客様の反応がわかりづらい
2020年6月に株式会社学情が、自社サイト訪問の20代の営業経験者に行った「希望する営業スタイル」に関するアンケートでは「オンラインの商談」を希望する人は3割で、約7割が「対面営業」を好むという結果になりました。その理由は「オンライン商談では表情が分かりにくいから」が43.2%で最多となっています。
出典:学情
デジタルに慣れ親しんでいる20代でも、オンライン営業でお客様の反応が掴めないことが課題ということは、単なるテレワークとは違ってオンライン営業のコミュニケーションはやはり難しいということだと思います。 オンライン営業ではオンライン営業に適したコミュニケーション力を身につける必要があるでしょう。
企業にブランド力、安心感がないとハードルが上がる
全く知らない会社の営業マンが、いきなり「オンライン商談どうですか?」とメール、電話で持ちかけても、たまたま検討時期でアポがとれる場合を別にするとオンライン商談アポはなかなか入らず、成果にはつながらないことが多いです。
いきなり商談アポを持ちかけるのではなく、メールや電話などでコミュニケーションを取りながら、ここぞというタイミングを見極めてオンライン商談と、ステップを踏む必要があり、意外とハードルは高いのです。
例外はあります。社名がよく知られているほどオンライン商談アポはとりやすくなります。要は安心感があるからです、オンライン営業をスタートする場合、中小企業であっても何かわかりやすい特長を打ち出したり、情報を発信してブランド力をアップさせる努力が必要です。メルマガやSNSなら無料でできます。
例) :
- 〇〇分野の1位(業界、商品シェア等)
- 駅の近くにある創業50年の〇〇
- メディアに取り上げられている企業
- 業界に役立つメルマガを発行
- お客様に役立つオウンドメディアを発行
- SNSで経営者が人気、他
オンライン営業の手段の一つ「インサイドセールス」
オンライン営業の形態の一つにインサイドセールスがあります。前述のとおり、オンライン営業はニーズが明確な段階か、企業イメージが浸透していないとなかなか商談につながりません。
その点、オウンドメディアやメールマガジンなどで情報を発信して、信頼関係を醸成した見込み客に営業するインサイドセールスは、オンライン営業にマッチしています。
インサイドセールスとは
インサイドセールスとは訪問せずに電話やメール、オンライン商談ツールなどを使ってお客様とコミュニケーションをとる営業です。導入スタイルは以下の3パターンがあります。
アプローチからアポ獲得まで
インサイドセールスが大量の見込み客に継続して情報を発信しながら、お客様の動き(オンラインデモ視聴、資料ダウンロード等)を分析しつつ、個別にアプローチして時間をかけてアポイントを獲得したり、営業マンに見込み客情報として引き渡します。
一般的な内勤営業より見込み客の範囲は広く、オウンドメディアや広告で多少興味を持ってメールマガジンに登録したり、展示会で名刺交換しただけのニーズが顕在化していないお客様も含めて対応します。
インサイドセールス部隊と営業活動を分業することにより、営業マンには提案からクロージングまでの業務に集中してもらい、業務効率や売上の向上につなげていくことができます。
既存顧客深耕(アップセル・クロスセル)
既存顧客のフォローをインサイドセールス部門に任せることもできます。お客様との関係を深めてアップセル、クロスセルにつなげられることはもちろんですが契約後もまめな情報提供やフォローをすることで更新時期に他社に乗り換えられるリスクを防げます。ブランク顧客にも定期的に情報を発信することができます。
営業マンにまかせるとフォローに力を入れるか入れないかは個人差がでやすく、商品・サービスによっては分業したほうがよいかも知れません。個人のお客様はもちろん、企業担当者にも義理堅い人は多く、あまり発注していない時期にも情報提供を続けた営業マンや企業に対して、あとあと何かと声をかけたり大きな発注をしてくれることは決して珍しくありません。
今の時代は、丁寧なフォローをする企業は口コミサイトで良い評判が拡散しますのでブランド力向上にもつながります。
アプローチから成約まで
業界や商品・サービスによってはインサイドセールスだけでアプローチ~契約~フォローまで担当することも可能です。例えば、デルコンピュータではアプローチからクロージングまでインサイドセールスで完結する部門もあります。コロナ禍となり訪問=リスクという状況になったため、対面営業部隊を本格的にインサイドセールスに切り替え、今後はインサイドセールスを主力にする企業も増えていくでしょう。
中小企業におけるインサイドセールスの限界と課題
ただし、中小企業の場合はリソース不足のためインサイドセールスの運用が難しいこともあります。
インバウンドリード(潜在見込み客)の数が必要
インサイドセールスで新規アプローチを行う場合は、前提としてある程度のボリュームの見込み客が必要です。十分な見込み客を集めるにはオウンドメディアの立ち上げや、メールアドレスをご登録いただくきっかけとなるeBookなどコンテンツの設置もしくは広告の出稿など投資が必要です。
中小企業だと予算もふんだんには使えないため、見込み客数が十分に確保できず、結果としてただのテレアポ部隊化してしまう可能性があります。
人材リソースが必要
インサイドセールス担当を決める際に、兼業にするのか専任にするのかという課題が持ち上がります。多くの中小企業はリソースに限界があるため兼業になります。担当者は当然忙しくなり、将来有望な見込み客にすぐに対応ができず、見込み客との信頼関係を醸成するというインサイドセールスの目的を果たせない状況に陥ることがあります。人材リソースを見極めて判断しましょう。
オンライン営業で効果を出すためには
ここでは、オンライン営業で成果をあげるためのコツや準備を紹介します。
コミュニケーションの回数を増やす
オンライン営業は、リアルな営業より信頼関係の醸成に時間がかかります。そのため、オンライン上の小さな接点を積み重ねることが成果を上げるポイントになります。
例えば、これまでは訪問したからには失礼にならないように1時間は話すという暗黙の風潮がありましたが、オンラインなら「15分程度の電話のミーティング」「30分のZoom相談会」といった短い時間でのコミュニケーションを持ちかけても自然です。お客様も気軽に感じるため短時間のほうがアポが入りやすくなります。
まめなメール → 電話ミーティング → メール → Zoomといった感じで回数こなしながら信頼度を積み上げていきます。商談が15分と短いので事前の資料送付や、商談後に議事録をまとめて送るなど気を利かせることも大切です。
オンライン営業のロールプレイングの徹底
オンライン営業は、リアルな対面営業の時とは営業マンの印象が変わってしまうので、社内でロールプレイングを徹底することが大切です。オンライン上での資料の説明の仕方、お客様にかける言葉などをすべて「オンライン営業用」と割り切って、各営業マンが身に付け直すくらいの姿勢が望ましいでしょう。
- 話すリズム、間合い、活舌
- カメラ目線、表情
- 資料をめくるスピード
- お客様に話しかけるタイミング
- 始まりと終わりのトーク
などを、ロールプレイングで営業を受ける立場になって感じるといろいろ勉強になるはずです。個人でも各種ウェビナーに参加しながら、商談を受ける側の視点で自分のオンライン営業を捉え直してみましょう。多少コストがかかりますが、有料オンライン営業研修ウェビナーを受けてもよいでしょう。
まとめ
オンライン営業とリアルの営業は、目的は同じでも手順や優先順位の高いスキル、活用するツールが異なるため、営業マンが慣れるまで時間がかかりがちです。対面営業での成功体験があるがゆえに、「勘所」を間違えてしまう営業マンも出てくるでしょう。
むしろまったく違う営業スタイルであり、新人になったと思うくらいが先入観に惑わされずスムーズに慣れていけるかも知れません。全員ができるだけ早くオンライン営業に慣れるためには、営業部門で「オンライン営業のワークフロー」「オンライン営業トークスクリプト」を用意して社内でロールプレイングを徹底することが大切です。リアルな営業もオンライン営業もできるハイブリッド型営業を目指していきましょう。
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