アップセルを行う際に営業マンが考えるべきこととは

アップセル 営業

自社の売上げをあげるためには、「新規顧客数を増やしていくか」あるいは「顧客単価を増やしていくか」のどちらかの方法しかありません。

営業研修やセミナーでは新規顧客に対するアプローチ手法や商談の進め方などがテーマの中心に取りあげられることが多いかもしれませんが、客単価をあげていくことも重要なテーマです。そこで、単価のアップのために営業や販売の現場で実践をしたいのが「アップセル」です。

本記事では、アップセルとは何かという点について紹介した後に、アップセルのメリット・デメリットや実行するために気を付けたいことについて解説します。

アップセルとは

営業やマーケティング、販売などの分野でしばしば耳にする「アップセル」。アップセルとは、顧客がもともと購入して使用していた商品よりもグレードや価格の高い商品を推奨する営業手法のことを指します。

顧客ニーズに合致した商品・サービスをお薦めし、販売につなげることができれば、顧客はより高い満足を得ることができます。そして、自社は高価格帯の商品・サービスを販売することで、より多くの収益を得ることができるのです。

 アップセルを成功させるための大きなポイントは、2点あります。

  1. 顧客ニーズをいかに的確に掴むことができるかどうか?
  2. 顧客ニーズに合った商品・サービスを、自然に推奨できるか否か?

これらの2点については、アップセルの効果やメリット・デメリットにも影響する部分なので、この後にさらに掘り下げて解説します。

アップセルとクロスセルとの違い

しばしば、アップセルと一緒に話題にあがるのが「クロスセル」です。クロスセルとアップセルとの共通点は、顧客単価をアップさせるための方法としてどちらも非常に効果的な手法であるということです。では、それぞれどのような違いが見られるのでしょうか?

アップセルとは上述の通り、お客様に現在活用していただいている商品・サービスよりも上位のグレードの商品・サービスを購入してもらう手法です。

具体的な例でいえば、コンパクトタイプのデジタルカメラを希望している顧客に対して、一眼レフタイプのデジタルカメラの魅力を伝え、購入をおすすめするなどがアップセルにあたります。

BtoBの事例でいえば、ソフトウェア(アプリ)のスタンダードプランを希望した顧客に対して、上位のプレミアムプランや便利な有料オプション・有料の保証サービスを推奨したりする、といったことです。この場合、プレミアムプランではスタンダード機能には搭載されていない機能が搭載されていたり、使用可能なアカウント数がスタンダードプランよりも多かったりするなど、上位プランならではの機能を搭載していることが一般的です。

一方、クロスセルは、ある商品・サービスの販売とセットにして関連商品・サービスを販売する手法です。先ほど同様、デジタルカメラの例でいえば、カメラと一緒にUSBメモリやPCと接続するためのケーブルを推奨したり、面白い写真が撮影できる特殊なレンズをおすすめしたりするなどが挙げられます。

アップセルとクロスセル

アップセルの目的

アップセルは、もともと顧客が希望していた商品・サービスとは異なるものを販売しようとする点から、販売時には労力を必要とします。それでもアップセルを活用するのは、次の4つの目的を達成させられる見込みがあるためです。

顧客単価の向上

アップセルにより、よりグレードの高い商品を販売することに成功できれば、顧客の一件あたりの売上げ単価を向上させることができます。顧客数と顧客ごとの販売数を維持したまま、単価をアップさせることができれば、そのまま自社の収益をあげることができます。

特に、市場が成熟していて競合他社との顧客の奪い合いになっている業界や、ニッチな業界のため顧客数に限りがある業界などでは、顧客単価を上げることには大きな意味があります。

顧客満足度の向上

場合によっては、顧客は現在の契約に心から満足しているとは限りません。もし、顧客が現在利用中の商品・サービスに対して不満や物足りなさを感じている場合には、より優れた商品や豊富な機能を兼ね備えた商品を提案することにより、顧客満足度を向上させることができます。

また、十分にサービスを利用している企業においても、さらなる利便性の向上やこれまでに利用できなかった機能の追加などにより、満足度が劇的に向上させることができる可能性があります。

自社の商品・サービスの活用・促進

せっかく自社で魅力的な機能やサービスを準備できていても、認知度不足や顧客への訴求不足により利用に至っていない場合は珍しくありません。例えば、ソフトウェア導入後の利用サポートを提供するプランを用意しているにもかかわらず、顧客がプランの存在を知らずに、導入後に「使い方が分からない」「社員が使いこなせていないから、業務効率が下がっている」といった不満を感じてしまうこともあります。

顧客が本当に求めている機能やサービスを提供するための手段をアップセルによって提供することで、顧客の課題の解消と自社の商品の活用を同時に実現できる場合があります。

商品開発に反映できる

高い利益を生み出すことのできる商品・サービスを考案することは簡単なことではありません。そこで、アップセルを行っていく上で得られる視点や見込み客のニーズを商品開発にも活用することができます。

逆に言えば、効果的にアップセルにつなげられる自社商品が存在しない場合には、商品開発により新たな商品戦略やサービス戦略を考えるなどの対策が取れないか考えてみましょう。

アップセルのメリット・デメリット

アップセルのメリット・デメリットを企業から顧客の視点でとらえた場合には、先ほどお伝えしたアップセルの目的がそのままメリットになるといえます。顧客単価の向上や活用できていない自社商品・サービスの活用できる点などが、自社の利益に繋がるためです。 

一方で、営業チームとしてアップセルの取り組み方をとらえた場合には、また違ったメリット・デメリットが挙げられます。この章では、営業の観点から見た、アップセルのメリット・デメリットについて解説します。

アップセルのメリット

営業面におけるアップセルの最大のメリットは、既に関係性が構築されている顧客、あるいは今まさに購入しようとしている顧客に対する営業施策であるということです。これらの顧客は、購買意思が高いことや、自社との関係性が良好であることから、アプローチが非常に取りやすいという点が挙げられます。

新規顧客に対する営業アプローチは、既存顧客に対する場合と比較をして5倍のコストがかかるといわれています。また、既存顧客に対しては営業労力も大きくかからないため、アップセルに成功すれば効率よく売上を拡大することができます。

また、万が一契約に至らなかった場合でも、顧客のニーズを正確にとらえて提案することができれば、顧客からの評価を高める効果が期待できます。そして、次回の提案の際に、アップセルの提案を踏まえて商談できます。

アップセルをおこなう場合の一つのポイントとして、顧客との良好な関係が長期間にわたって築くことができている場合には、アップセルの成約率が高まりやすいと言えます。 

アップセルのデメリット

一方、アップセルにはデメリット(リスク)もあります。アップセルに成功した場合に顧客単価の向上は見込めますが、反対にアップセル商品・サービスを推奨したことで嫌悪感を持たれてしまい、自社商品を解約されてしまった(他社商品を購入されてしまった)場合には、減少する売上げ額が大きいことです。

アップセルの進め方が、顧客のニーズに沿ったものであれば嫌悪感を持たれてしまうリスクはそれほど心配する必要がありませんが、「顧客単価を向上させたい」という思いが強く出過ぎた場合、その思いが見透かされてしまうことがあります。ただでさえ、昨今は積極的な営業スタイルが「押し売り」として敬遠されがちなご時世なので、嫌悪感を抱かれないように注意しましょう。

アップセルの成功のカギがニーズの把握にあるのは、まさにこの点が大きなポイントです。決して押し売りのつもりはなかったとしても、顧客のニーズを読み違えてしまったり、一方的に自社の考えを主張しすぎたりしてしまうと、「あの会社は私たちのことをわかっていない……」と捉えられてしまい、自社商品・サービスから他社に乗り換えられてしまうリスクもあります。その場合、現在の利益だけでなく、将来の利益も失ってしまうことになります。  

アップセルをおこなう際に気をつけるこ

普段の営業にアップセルを取り入れる際に、営業担当者はどのような点に注意してアップセルをおこなえば良いでしょうか? ここでは、アップセル成功のために気を付けたいポイントを4点解説します。

顧客のニーズを理解する

繰り返しお伝えしている通り、アップセルを成功させるために最も重要なカギとなっているのは、顧客ニーズを理解できているかどうかという点です。顧客が「現在利用中のサービス・商品に対して不満や物足りなさを持っていたりするのか?」「さらなる改善を目指しているのかどうか?」ということを意識しながら、顧客の課題解決や要望の実現を考えていくことが大切です。

顧客の課題の有無や内容を確認する方法としては、具体的に次の方法が考えられます。

  • DMやWebなどによるアンケート調査
  • 商談時のヒアリング調査
  • 自社コールセンターやカスタマーサポートに寄せられた声・クレームなど
  • 調査会社や報道機関などによる意識調査や満足度調査

BtoB商材の場合には、顧客の課題や要望を吸い上げにくいため、営業マンの商談時のヒアリング力やサポート部門に寄せられた声を効率的に社内に共有できるかどうか、的確にニーズを計れるかどうかが大きな分かれ道になります。

顧客のデータや動きを集め分析を行う

 顧客のニーズや課題については、客観的な指標や事実情報で確認することが必要です。なぜなら、顧客のニーズ・課題を感覚でとらえてしまった場合には、営業担当者ごとの感覚によって課題の重さ・重要性の認識にズレが生じてしまったり、適切な解決策が取られなかったりするためです。

とは言え、顧客の満足度や自社へのロイヤリティの高さについては客観視するのが難しい項目でもあります。そこで、客観的な判断が難しい場合には、数値化できる指標を用いたり、顧客分析のためのフレームワークを用いたりするなどにより、分析を行うことが大切です。

(顧客分析のために用いるデータ)

  • 商品やサービスの購入頻度や1回あたりの単価
  • 自社ホームページの閲覧数
  • メールマガジンやDMのリアクション率(開封率やクーポンの使用率など)
  • 顧客リストに登録されている顧客の属性(年齢層・男女比・地域・属性など)
  • 商品がよく売れる時期と反対にあまり売れない時期との比較
  • 商品のリピート率

(顧客分析のために用いるフレームワーク)

  • RFM分析
    ECサイトなどで用いられる顧客分析のためのフレームワークです。直近購入日、購入頻度、購入金額の3項目をポイント制で評価して、顧客の属性を判断します。
RFM分析
  • CPM(Costomer Portfolio Management)分析
    CPM分析とは、顧客の購買履歴をもとにグループ分けをして、グループごとに適切な施策をおこなうために用いられるフレームワークです。グループは、購入金額・購入総額・在籍期間・離脱期間の4つの項目から、顧客を「初回客」→「よちよち客」→「コツコツ客」→「優良客」と分類されます。

    例えば、購入頻度が多いにも関わらず、1度の購入総額が高くない顧客に対してはアップセルを試み、反対に初回購入から間もない顧客に対してはアップセルを推奨すると離反されてしまう可能性が高いため、積極的なアプローチはしない、など顧客のグループに合わせた展開をおこないます。

アップセルのタイミングを捉える

アップセルを実施する際はタイミングの捉え方が重要です。アップセルの成功の可否はロイヤリティや活用度合いの高さが大きく影響するため、ロイヤリティが高いユーザーに向けた商品・サービスを新規利用客に提案しても価値を感じてもらうことはできません。

タイミング良く効果的な案を提案するためには、顧客1件ごとの状況や成熟度合い、活用度合いなど、営業に必要なデータを集めて「見える化」することです。このとき、フレームワークを用いることにプラスして、クラウド型のITツールを活用することで、データの共有や見える化を実現することができます。

現在の商品・サービスとの関係を捉える

アップセルの商品・サービスについて、現在の商品・サービスとの関係を捉えることも大切です。検討をしたい点としては、具体的には以下の項目が考えられます。

  • 現在の商品・サービスにはどのような課題が生じやすかったのか?
  • アップセルの商品・サービスではその課題をどのように解決することができるか?
  • 現在の商品は、顧客からどのような点が支持されていて、アップセルの商品・サービスでは現在の商品・サービスの利点を損なっていないか?

これらのポイントは、特に商品・サービスの開発を行う際や顧客に提案をする際に、一つひとつ顧客目線で考えることが大切です。

同時に、もともとの商品・サービスとかけ離れたものを提案しないことも大切です。現在の商品に課題や小さな不満があるとはいっても、元の商品とかけ離れたものを紹介すると、顧客から強引な印象を持たれてしまいます。アップセルは、元の商品の良さを踏まえて、物足りない部分についてさらに満足してもらうという姿勢が理想的です。

あらかじめアップセルを想定した商品開発や営業の準備をする

商品やサービスのラインナップを考える際や、顧客に提案をする際にあらかじめアップセルを想定したラインナップを準備しておく姿勢も重要です。

  • 商品・サービス開発をする際に、3種類ほどのグレードのラインナップを作る
  • 営業の商談時に、顧客が希望するサービスだけではなく、上位サービスや上位商品の提案の資料を提案できるように準備しておく
  • オンライン商材や継続利用を前提とした商品では、契約月に無料でオプションをサービスするなど将来的にアップセルに魅力を感じてもらえるようなキャンペーンをおこなう
  • 「オプション申し込み特典」「5,000円以上購入なら送料無料」などその場でアップセルを希望されたときに魅力を感じてもらえるような特典を準備しておく

以上のように、商品開発や商談の段階で、いつでもアップセルを提案できるようにしておくことで、常に顧客単価を意識して営業活動をすることができます。

まとめ

アップセルとは、主に既存顧客に対して、現在の商品よりもグレードの高い商品を推奨する営業・販売手法のことです。アップセルに成功すると、顧客単価をアップさせられるだけではなく、顧客満足の向上や活用しきれていない自社商品・サービスを活用してもらえる点などのメリットがあります。

アップセルを成功させるためには、顧客ニーズを正確に把握すること、顧客のデータや行動を客観的に分析すること、アップセルのタイミングを見極めること、現在の製品・サービスとの関係を踏まえて提案することなどが大切です。

営業マンとしては、自社の利益を追求する姿勢とともに、顧客目線で課題解決の為の提案をしなければならないというやや難しい状況に対応しなくてはなりません。そのような状況下で利用していただきたいのが、以下のチェックシートです。

営業スキルチェックシート」では、営業マンが商談の際に注意したいポイントを客観的に振り返えることができます。営業スタッフが個人的に使用する場合にもマネージャーがチームの一人ひとりの成果をチェックする際にも活用いただけます。ぜひご覧ください。

    営業スキルチェックシート

佐原 業平(さはら なりひら)

中央大学商学部を卒業後、2016年に新卒で株式会社コンベックスに入社。 新規開拓営業を経験した後、eBook・セミナー・研修のコンテンツの作成に従事。 そこで培った営業とマーケティングの知見を生かし、「セールスハックス」の運営に取り組む。 経営者から営業マンまで、ビジネス現場を理解したお役に立てる情報を発信。

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