今注目される内勤営業とは何か?

内勤営業

欧米ではすでに内勤営業(インサイドセールス)の営業スタイルが根付いており、広く取り入れられています。一方、日本でも少しずつ内勤営業を導入する企業が増えてきました。

内勤営業は、従来の営業マンが見込み客の発掘から契約やアフターフォローをしてきた営業活動と比べて、効率よく営業活動を行うことができ、成果をあげることができる可能性があります。実際に、内勤営業を取り入れてみたいと考えてる方もいるかもしれません。

今回は内勤営業とは何かを明らかにしたうえで、内勤営業の種類やどのような人が内勤営業に向いているのか、内勤営業にはどんなスキルが求められるのかについて紹介します。

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内勤営業とは

内勤営業(インサイドセールス)とはどのようなものなのかイメージしていただけるように、その概要や外勤営業との違いについて紹介します。

内勤営業は社内で活動する営業職

内勤営業(インサイドセールス)とは、電話やメール、ビデオ会議システムなどを活用した社内で行うことができる営業活動のことです。

内勤営業が、具体的にどこからどこまでの業務をカバーするのかについては企業ごとに範囲が異なりますが、潜在的な見込み客にアプローチして見込み度合いを見極めたり、商品・サービスによってはオンラインでの商談も行うこともあります。

例えば、DMの送付やメールマーケティングなどによって獲得した潜在顧客に対して直接電話でコミュニケーションをとり「どのようなお悩みを抱えているのか」や「どのような情報提供を行えばお役に立てるのか」を見極めます。そこで見込み度合いが高ければ、外勤営業(フィールドセールス)に引き渡して営業活動を進めても良いでしょう。

アメリカは内勤営業が生まれた国としても知られています。現在最もインサイドセールスが活用されている国の一つです。InsideSale.com(現XANT)の統計によると、2017年のアメリカでの営業職全体におけるインサイドセールスの割合は43.5%です。そして、その割合は年々増加の傾向を見せることが予想されています。

欧米で内勤営業が主流化している流れを受けて、日本国内でも徐々に内勤営業を取り入れて営業活動の効率化を目指している企業が増え始めているという状況です。

内勤営業と外勤営業との違い

内勤営業と外勤営業との最も明確な違いはお客様と接する機会が社内にあるのか社外にあるのかの違いです。営業活動を社内でおこなうか、社外でおこなうかによって、営業活動を行う上でさまざまな違いが現れます。

外勤営業と比較した際の内勤営業の強み

  • 営業効率のアップ(移動時間の短縮)
  • 商談スペースが用意されていること
  • 資料の確認や上司の決裁がその場ですぐに取れること(営業のプロセスの短縮化)
  • 営業手法の標準化(ツールを使用することで、マニュアルやトークスクリプトを営業側の画面のみに表示させられる、上司が営業スタッフ一人ひとりの営業を直接見られる)

内勤営業と比較した際の外勤営業の強み

  • 対面での商談によって顧客側に安心感を与えられる(特にクロージングに適している)
  • その場で商品のデモンストレーションをおこなって示すことができる
  • においや感触、重さなど実物でしか確認できない情報を伝えられる
  • ルートセールスなどでは、商談と同時に納品や代金の回収などをおこなうこともできる

内勤営業と外勤営業にはそれぞれ異なる強みがあります。そのため、どちらかの手法を二者択一で導入するのではなく、営業効率を挙げられる内勤営業で顧客の見込み度合いを高めた上で、対面での商談の強みを発揮できる外勤営業がクロージングするなど、双方で役割分担をして協力する体制を整えることが理想的です。

内勤営業の種類

内勤営業の活用法は、企業によってさまざまです。ここでは、内勤営業の活用法として3種類の内勤営業の種類について紹介します。

全ての種類に通して共通していえることは、見込み顧客から受注までの顧客の状態を踏まえて、タイミングに合わせたアプローチをすることで中・長期的に顧客のニーズや課題に対してアプローチできる点です。

新規開拓型営業

新規開拓型営業とは、新規開拓をおこなう内勤営業です。新規獲得のための内勤営業ということで、テレアポスタッフと混同されがちですが、テレアポの目的がアポの取得であるのに対して、内勤営業は顧客の購買プロセスを進めることを目的としている点が大きな相違点です。

また、新規獲得営業型の営業手法は電話だけとは限りません。DM送付やメールマーケティングなど、さまざまな手法で新規顧客の獲得(あるいは新規顧客獲得のための見込み顧客の創出)を試みます。

新規開拓をおこなう内勤営業の特徴は以下の通りです。

  • 見込み客の創出数で評価(アポ件数や荷電件数で評価されるテレアポと異なる)
  • 営業プロセスを内勤営業だけで完結する場合もある(企業によって異なりますが、外勤営業に引き継ぐ企業や状況に応じて内勤営業と外勤営業を使い分ける企業、基本的に内勤営業でクロージングを行う企業などさまざまあります)
  • 見込み顧客の創出を目的としているので、アプローチの時点でアポ取得を目指さずにニーズや課題の確認をしたり、次回アプローチするタイミングの確認のみにとどめたりすることもある

インバウンド型内勤営業

インバウンド型内勤営業とは、マーケティング施策や自社のウェブサイトから興味持った顧客の問い合わせに対しておこなう内勤営業です。「反響型」営業ともいわれます。インバウンド型は、新規開拓型と比較すると見込み度合いの高い顧客の案件となることが多く、受注につながりやすいというメリットがあります。

具体的なインバウンドの手法は以下の通りです。

  • Webサイト(コーポレートサイト)、企業ブログ、SNSの投稿
  • メールマーケティング、DM
  • 展示会やセミナー参加者からの問い合わせ
  • 顧客や取引先からの紹介案件

特にインバウンドで流入してくる顧客は、何かしらの関心やニーズ、課題を抱えている場合が多くあります。そのため、顧客とコミュニケーションをとる際には、顧客の見込み度合いを見極めることが大切です。

既存顧客向け内勤営業

内勤営業は既存顧客のフォローにも非常に効果的です。

既存顧客は一般的に新規顧客よりも費用を抑えてアプローチできるため、新規獲得営業よりも利益率が高いというメリットがあります。しかし、多くの企業では営業マンは目の前の見込み客を追うことで忙しいため、既存顧客に対するフォローは後回しにされがちです。特に遠方の顧客や発注頻度の高くない企業に対しては、担当営業が全く顔を出せていないという状況もあるのではないでしょうか。

こうしたフォローがおろそかになりがちな既存顧客に対して営業活動をおこない、将来の失注の防止、ニーズの発見によりアップセルの拡大などを目指していくのが既存顧客向け内勤営業です。既存顧客向けの場合には内勤営業の以下の点が大きなメリットになります。

  • Web会議システムを利用すれば、遠隔地にもアプローチできる(信頼性がすでに構築されているので、Web会議システム利用の依頼もしやすい)
  • いったん離反してしまった顧客を自社に呼び戻せる
  • 営業コストを抑えた効率の良い営業活動をおこなえる

既存顧客に対する内勤営業は、継続受注と案件の拡大が主な目的になります。そのためには、以下の点が重要なポイントになります。

  • ていねいなヒアリングによる既存顧客の分析(顧客のニーズや課題の把握、アプローチすべきタイミングの確認)
  • アップセル(既存よりも高価格帯の商品、サービスを販売すること)やクロスセル(購入される商品・サービスの関連商品を販売すること)の提案
  • 単純接触の増加による信頼関係の向上

内勤営業に求められるスキル

次に内勤営業に求められるスキルについて紹介します。

内勤営業に求められるスキル

データを紐解くスキルと活用するスキル

内勤営業において成果を出すために重要なスキルの一つがデータを紐解くスキルです。売上の増加や顧客のニーズを満たすためにデータを活用しなければならない点は、3つの種類の内勤営業に共通して言えます。また、データを活用するだけではなく、共有することによりチーム全体でデータを活用できるようになります。

新規獲得型内勤営業

リストの情報をアプローチをおこなうためだけの電話番号リストやメールアドレスリストと考えてしまうと効果的なアプローチができません。リストを基に、顧客のウェブサイトを見て電話のトークの内容を組み立てるなどを行っていきます。

メールの開封状況や顧客のニーズの高さなどをデータとして読み取ることで、担当者につながりやすくなったり、担当者・決裁者に関する情報、他社商品の利用状況などのデータを参照することで最適なタイミングでのアプローチが可能です。

インバウンド型内勤営業

メールの開封状況やウェブサイトの閲覧履歴を確認できれば、顧客がどのようなことに興味を持っているのかや検討をしているタイミングを把握することができます。それにより、顧客と連絡がつながりやすくなったり、案件化しやすくなる可能性が高まります。

既存顧客向け内勤営業

既存顧客に対するフォローをおこなう際にはCRMが有効です。CRMとは、顧客情報を管理するためのシステムのことで、顧客との関係を積み上げ、状態をよくするためにあらゆるデータを蓄積することができます。

前回の商談内容、購入履歴、問い合わせ履歴などを確認することにより、密度の高い商談をすることができます。また、その商談内容を記録として残すことで、情報共有や次回の商談の際の資料としての活用が可能になります。

ビジネスに対する深い知識

内勤営業は、対面しなくともツールや電話、メールなどの手段により顧客のニーズを満たすことです。そして、そのニーズを満たすためにはビジネスに対する深い知識が必要とされます。

ビジネスに対する深い知識が求められるのは内勤営業に限らず営業職全般について言えることですが、内勤営業の場合は非対面型ということもあるので、なおさら提案の中身が重要になります。そして、良い提案をするためには、自社商品だけではなく顧客の会社の状況、業界の動向、市場の変化、近年のトレンド、最新のニュースなど、多くの引き出しを持つことが求められます。

カスタマイズされた提案力

カスタマイズされた提案力についても、営業職全般に求められるスキルといえます。

顧客が欲しているのは、「現在の悩みを解決するためにはどうしたらよいのか?」「どうすればもっと業務を効率化できるのか?」「自社のこのツールにはこのようなデメリットがあるけどなんとかならないのか?」といったニーズや課題を解決してくれる商品・サービスです。

多機能であることや高品質であることは商品の魅力であり、間違いなくメリットではありますが、顧客にとってそれがメリットとなるためにはまず顧客目線での問題を解決する、あるいはニーズを満たす必要があるということです。

内勤営業の目的は見込み客の創出にあるので、顧客の要望をかなえられることを分かりやすく提示することにより、顧客に商品を購入することで得られる利益を想像してもらう必要があります。

内勤営業の場合、電話やメールでは非対面で提案をおこなうので身振り手振りが使用できません。文章やメール、添付資料などを活用して、いかに情報を的確に伝えるかについて工夫を練りましょう。Web会議ツールを使うと身振り手振りも伝えることができるため、手段として取り入れて見ましょう。

ITスキル全般

CRM(顧客管理ツール)、MA(マーケティングオートメーションツール)、SFA(営業支援ツール)など、内勤営業の営業マンはITツールを日常的に使用します。また、社内外の連絡ツールとしてビジネスチャットを利用したり、商談の際にWeb会議システムを使用したりすることも多いでしょう。

ITツールを使いこなすのはもちろんですが、例えばWeb会議中にネットワークが不安定になった場合の対応やビジネスチャット利用時の顧客情報の取扱規定、社外秘情報の取り扱いなどITスキルやリテラシーが低い場合に大きなトラブルを招きかねない場面があります。

また、Web商談の際には、インターネットを通じて顧客に対して資料のPDFファイルを提示したり、共有したりする場面もあるので、ITスキルを使いこなせれば質の高い提案をおこなうことができます。

チームワーク力

内勤営業の力を最大限に発揮するために必要なのがチームワーク力です。内勤営業は営業職として見込み顧客の創出からクロージングまでを一人で担当するケースもありますが、基本的には他のメンバーとの協力が必要になるためです。

他のメンバーと協力が必要になる場面の例としては以下のとおりです。

  • 外勤営業の営業マンへの案件の引継ぎ・情報共有
  • 内勤営業の営業マン間での情報共有
  • マネージャーや直属の上司に対する進捗状況の報告

チームワークを活用することにより会社全体で顧客に対応し、営業案件の精度を高めることができます。また、インサイドセールスでは商談の進め方や提案内容についてマネージャーがチェックし、直接その場で指導するようなケースも起こりますが、その際にも前向きな気持ちで指示を仰ぐことができれば営業マン本人のスキルアップにもつながりやすいものです。

まとめ

内勤営業を導入することの効果は、移動時間や移動コストの削減だけにとどまりません。CRMやMA、SFAなどをうまく活用することにより顧客情報を戦略的に管理することができ、顧客の状態に合わせたアプローチが可能になります。つまり、情報を的確に集めて活用できる内勤営業営業マンをそろえることができれば、顧客の検討のタイミングで顧客の求めるサービスや情報を提供できるということです。

まだ会っていない 見込客を魅了する!AI時代に向けて知っておきたい デジタル時代の営業スタイル」では、今回紹介した内勤営業(インサイドセールス)について、調査に基づくデータや専門的な見地から解釈を加えて紹介しています。インサイドセールスについて知りたい方はぜひご覧ください。

    デジタル時代の営業スタイル

戸栗 頌平(とぐり しょうへい)

B2Bマーケティングを幅広く経験。外資系ソフトウェア企業の日本支社立ち上げを行い、創業期の全マーケティング活動を責任者として行う。現在、東京と海外を行き来しながら場所にとらわれない働き方を通じ、日本企業のマーケティング支援の戦略立案から実行までの支援を行なっている。