長期的に営業生産性を向上させる3つの方法

営業生産性 向上

多くの中小企業で「人材不足」が叫ばれる現代において「生産性向上」への取り組みは必要不可欠となっています。営業の現場においては、足で稼ぐ「量重視」の営業から、手と頭を使って稼ぐ「質重視」の営業へと変化することで、生産性向上を実現している企業も出てきました。

では、上記のように質重視への営業に変化し生産性を向上させるためには、具体的に何をすればよいのでしょうか。今回は、営業生産性を長期的に向上させるための方法についてご紹介します。

営業生産性の定義

まずは「営業生産性とは何か」から考えていきましょう。公益財団法人日本生産性本部が「生産性」の代表的な定義として挙げているのは「生産諸要素の有効利用の度合い」というものです。有形・無形を問わず、何かを生産するには機械設備や原材料をはじめ、人間の工数も必要になります。これらの「生産を行うために必要になるもの」を生産要素といい、生産性とはこの生産要素を投入することにより得られる産出物との割合のことで、式で表すと以下の通りです。

生産性

また日本全体の生産性は、あまり芳しくないのが現状です。公益財団法人日本生産性本部が発表している「労働生産性の国際比較 2018」によれば時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は47.5ドル(4,733円/購買力平価(PPP)換算)でOECD(経済協力開発機構)加盟36か国中20位という結果でした。ちなみに、主要先進7か国の中では、データが取得可能な1970年以降、常に最下位という状況です。

上記のデータは労働に焦点を当てた労働生産性についてですが、今回は、生産性の中でも営業に焦点を当てた「営業生産性」を取り上げていきます。営業の場合、産出物は売上、生産要素は時間やコストになるので、分かりやすく式で表すと以下のようになります。

営業生産性

つまり営業生産性を向上させるためには、できるだけ少ない時間・低いコストで高い売上をあげるための工夫が必要なのです。しかし、今でこそ生産性向上の必要性が叫ばれていますが、ひと昔前までは「営業は足で稼ぐものだ」と言われていたのも事実です。それではなぜ、生産性がここまで求められるようになったのでしょうか。続いて、営業生産性の重要性について見ていきます。

働き方改革に伴う営業生産性の重要性

営業をはじめ、企業が生産性を求められるようになった背景としては「働き方改革」が大きく関係します。働き方改革とは、安倍晋三首相が掲げる「一億総活躍社会」を実現するために、内閣が主導で行っている取り組みのことです。

首相官邸のホームページによると「働き方改革は、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ。多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点で取り組んでいきます」と記載があり、長時間労働の是正や子育て・介護と仕事の両立などがテーマとして挙がっています。

もともと日本は世界と比べて長時間労働している人が多く、独立行政法人労働政策研究・研修機構が発表している「データブック国際労働比較2018」によれば、週49時間以上働いている長時間労働者の割合は、2016年は20.1%で、アメリカ(16.4%)やイギリス(12.2%)、ドイツ(9.3%)といった欧米諸国と比べて高い結果になっています。

こうした長時間労働を是正するために、政府は有給休暇取得義務化をはじめとしたさまざまな取り組みを行っていますが、企業を経営する側の立場としては労働時間を削減したことによって、売上げが下がってしまっては困ります。そのため、短い時間でも今以上の成果を出すことができるよう、生産性が求められるようになったのです。

営業生産性を向上させる3つの方法

ここからは、実際に営業生産性を向上させる3つの方法を紹介します。

営業生産性を向上させる方法

① 営業外業務の効率化

営業マンの仕事は大きく2つに分けることができます。顧客との商談や電話営業など、売上げに直結する「営業業務」とそれ以外の会議やデータ入力などの「営業外業務」です。営業生産性を向上させるためには、少ない時間で今以上の売上げを出すことが必要ですので、営業外業務に割いている時間を出来るだけ削減し、営業業務に割り当てることが求められます。

では一体、一般的な営業マンは営業外業務にどれくらい時間を使っているのでしょうか。株式会社セールスフォース・ドットコムの「先進事例に学ぶ!成果をあげる営業マンの時間の使い方とは?」の記事によれば、「データ入力やカレンダー処理、およびアカウント管理など、営業以外の仕事に費やしている時間は全体の64%を占めます」と記載があり、なんと業務時間の半分以上を営業外業務が占めている結果になっています。

また同記事には、全世界3,100人以上の営業リーダーを対象にした調査についての記述があり、「非効率な社内プロセスが営業の足かせとなる理由」としてもっと多かったのが「事務作業が多すぎる(営業活動に十分な時間を割けない)」で半数に近い45%という結果でした。

これらの結果をまとめると、多くの営業現場は「事務作業などの営業外業務に時間がかかりすぎて、営業活動に時間を割けていない」という状況になっていることが予想されます。では、営業外業務を効率化するにはどうすればよいのでしょうか。

まずは、どの営業外業務にどれだけの時間をかけているかを記録することからはじめてみましょう。続いて、洗い出した業務を以下の画像のように、4つのマトリックスに分類していきます。左上の「かかる時間が少ない×効果の見込み度は大きい」業務はコストパフォーマンスが高いので、継続実施で問題ないでしょう。

左下の「かかる時間が少ない×効果の見込み度は小さい」業務は、一回一回の負荷は高くないですが、塵も積もれば山となるように回数が増えると負荷が高まっていきます。そのため、カレンダー入力はまとめて行うなど、実施方法を工夫してください。

また、右上の「かかる時間が多い×効果の見込み度は高い」業務は、効果が高いため実施したほうがよいことではありますが、時間を削減できるような工夫が必要です。例えば、周囲の力を借りて業務負荷を下げたり、そもそも業務の進め方を見直すことでかかる時間を削減してみてください。

そして、右下の「かかる時間が多い×効果の見込み度は小さい」業務については、コストパフォーマンスが非常に悪いため、業務を「棄てる」ことを検討してみるといいかもしれません。

営業外業務マトリックス

② 受注率の向上(適切なターゲティング×定期的な案件管理)

営業外業務を削減して、営業活動に時間を割けるようになったとしても、時間が無限に増えるわけではありません。そのため、「ニーズが全くない顧客ばかりと商談をする」「受注へと中々進捗しない顧客に対してやみくもにアプローチし続ける」という行動をしていては、結局時間が足りなくなってしまうでしょう。限られた商談数の中で売上げを向上させていくためには、受注率向上の取り組みが必要になります。

この受注率向上を実現するために必要なのが、「適切なターゲティング」と「定期的な案件管理」です。ターゲティングとはどの顧客層に対してアプローチするかを決めることです。このターゲティングの概念と真反対の行動のイメージとしては、「会社から与えられた、細かくターゲティングされていない膨大なリストを何も考えずに上から順番に電話をかけていく」といったものでしょう。これでは、アポイントの取得率が低くなることはもちろん、せっかくアポイントが取れて商談を行ってもニーズがなく無駄足に終わってしまい受注率が低下するという結果につながってしまいます。

そうならないためにも、自社が受注している顧客の特徴を分析し、ニーズがある可能性が高い顧客を絞り込んだ上で営業をかけていくようにしましょう。特にBtoB営業においては、ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)という言葉が最近注目を集めており、ターゲティングの重要性はますます高まっているので、ぜひ実践してみてください。

ターゲティングの切り口

適切なターゲティングを行いニーズのある顧客と商談ができるようになったら、次に必要になるのが案件を確実に進捗させていくことです。スムーズに受注へと進捗する案件もあれば、なかなか進捗しない案件もあるでしょう。

後者の停滞している案件に対して工夫をせずアプローチし続けてしまうと、案件が進捗しないのはもちろん、別の案件に割く時間が足りなくなるといった事態にもつながります。そのため、定期的に上司と案件管理を行うことで、効率的に案件を進めていくようにしましょう。

案件管理では、まず顧客のニーズの有無を確認していきます。ニーズがない顧客については時間をかけても徒労に終わてしまう可能性が高いため、見切りにするかの判断を行ってください。続いて、ニーズのある顧客は今後のアプローチ方法を検討していきます。その中で、先方担当者の役職や稟議の通りづらさ、自身のスキル不足などによって、自分ひとりでは進捗させられない案件については、積極的に上司との同行を依頼するなど、周囲の協力を求めながら進めていきましょう。

③ 営業プロセスの見直し

ターゲティングや案件管理の工夫を行ったとしても、なかなか生産性が向上しない場合には、営業プロセス自体の見直しが必要かもしれません。例えば、以下の画像の見直し前のプロセスでは受注までに「ニーズ確認」「商品説明」「クロージング」で3回の訪問商談を行っており、移動時間が多くなっている状況です。

営業プロセスの見直し

そこでより効率化するために、まずは1回目の訪問商談をオンライン商談に変更することで、移動時間をかけずにニーズの確認を行います。次に2回目の商品説明については、セミナーなどの説明会を開催することで一度に多数の顧客にアプローチを行えるでしょう。最後に、3回目のクロージングについては、説明会後に商談の時間を確保できれば、訪問することなく実施が可能です。このように営業プロセスを見直すことで、工数を削減することはもちろん、受注までの時間を短くできる可能性もあります。

長期的に向上させるためには

生産性というのは、短期的に向上させればよいというものではありません。例えば、受注率を一時的に向上させるだけでよければ、「●月限定!入会金無料キャンペーン」や「●月末日までのご契約で豪華特典付き」といった期間限定のセールやキャンペーンを行うことで実現できるかもしれません。しかし、こうした期間限定の施策はその期間が終わってしまうと効果が無くなるだけでなく、「キャンペーンじゃないなら今購入するのはやめとこうかな」など、受注率が低下する恐れさえあります。

つまり長期的に営業生産性を向上させるためには、こうした期間限定の一過性の施策に頼るのではなく、上述した「営業外業務の効率化」や「ターゲティングの工夫」といった、効果が出るまでに時間はかかるものの、継続的に効果がある施策を実施するようにしましょう。

そして、施策を実施した後には効果検証を忘れてはいけません。効果検証を行い、「営業外業務の削減施策を行った結果、月間〇時間を営業活動に割り当てることができた」「ターゲティングの工夫を行った結果、アポイント取得率が〇%向上した」など、成果を可視化することができれば、チーム全体に営業生産性向上の意識を芽生えさせることも可能です、。

もちろん全ての施策が上手くいくとも限らないので、効果検証を行った結果、今回の施策は効果が無かったということもあり得ます。その場合は、「なぜ効果が出なかったのか」「効果を出すためには今後何をすればよいのか」といった原因分析や、次回への解決策の検討を行い、PDCAを回していくことも重要です。

必ず効果検証まで行い、より成果が上がる施策を模索し続けることで、長期的に営業生産性が向上するよう実践してみてください。

まとめ

営業生産性を向上させるのは容易ではありません。そのため「今のやり方で最低限の成果は出ているし、まだ何もしなくていいか」と先延ばしにしたくなる気持ちもわかります。しかし、上述したように生産性向上の重要性は今後も増していくことが予想されていますので、いつかは取り組まなくてはならないタイミングが来るはずです。切羽詰まった状況で生産性向上の取り組みをはじめるよりも、余裕があるときにはじめておけば、周囲と差をつけることもできます。

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佐原 業平(さはら なりひら)

中央大学商学部を卒業後、2016年に新卒で株式会社コンベックスに入社。 新規開拓営業を経験した後、eBook・セミナー・研修のコンテンツの作成に従事。 そこで培った営業とマーケティングの知見を生かし、「セールスハックス」の運営に取り組む。 経営者から営業マンまで、ビジネス現場を理解したお役に立てる情報を発信。