セグメントとは?営業とマーケティングの効果を上げるセグメントの意味と分析のポイント

セグメント

皆さんも仕事の中で「セグメント」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。使われるシーンによって微妙に意味合いが異なりますが、マーケティングの分野でよく使われる重要な概念です。営業活動やマーケティング活動の施策を考案する場合やDMやWeb広告などの運用を行う際にも使われ、ビジネスマンであれば知っておく必要のある考え方といえます。

セグメントを行わなくては、自社の商品・サービスの訴求が十分に伝わりづらくなってしまいます。お客様に合った提案を行っていくためにも、セグメントを意識的に行うことが大切です。

本記事では、セグメントとは何かを説明した上で、実際にセグメントをしていく上で参考になる理論を紹介していきます。

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セグメントとは

セグメントとは、直訳すると「区切り」を意味します。マーケティングの分野では、自社の商品・サービスを販売するにあたって、市場の分析を行う際の「ある特定の条件に基づいて区分した一つひとつの顧客層」のことを指します。

セグメントを行う上での条件としては、具体的に「人口動態変数」や「地理的変数」「心理的変数」「行動変数」が挙げられます。

  • 人口動態変数
    年齢や性別、所得、職業、学歴、家族構成 など
  • 地理的変数
    地域や人口、文化、気候 など
  • 心理的変数
    趣味や興味関心事 など
  • 行動変数
    購買状況、購買頻度、満足度 など

つまり、セグメントとは「同じ属性もしくはニーズを持ったお客様のグループ」とも言えるでしょう。そして、この区分けを行うことをセグメンテーションといいます。セグメーテーションは自社のターゲットとなる層を決めるために行われるものです。

セグメントの意味と重要性

セグメントが重要になった理由の一つに「消費者のニーズの多様化」が挙げられます。ニーズの多様化が進むと、テレビCMや新聞広告といった従来のマス・マーケティングは認知拡大には効果がある一方で、直接的な購買促進にはつながりにくくなります。

現代はインターネットの普及により、消費者が自分の求めている商品・サービスをすぐ手に入れられる時代だからです。不特定多数に向けて発信される情報では、多様化した消費者のニーズにあわせることが難しくなっています。

とは言え、多様化するニーズ全てに応えようと商品・サービスの開発や宣伝を行えば、商品は平均的なものとなり、誰の目にもとまらないものとなってしまいます。また、市場が成熟化していることもあり、差別化のできない平均的な商品・サービスでは価格競争の波に飲み込まれてしまうかもしれません。

そのため、顧客分析を行い、市場を細分化(セグメント)した上で特定のお客様の課題解決に努める展開することは現代において欠かせません。市場を細分化することで、自社のどの部分を強みにしていくべきかや今まで気づくことのなかった潜在的な自社の強みが顕在化してきます。

セグメントとターゲティングの違い

セグメントとターゲティングは互いに関連している言葉のため、意味が混同されて使われがちです。「セグメント」は先ほど挙げた通り、特定の条件をもとに顧客をグループ分けすることをいいます。一方、「ターゲティング」は、セグメントにより作成したグループの中から自社が狙う層を定めることを指します。

ターゲティングとしては、例えば「30〜40代の子育てをしている女性」「20代前半のアウトドアに興味がある男性」「郊外に住む高齢の高所得者」といったように、自社の商品・サービスにより課題解決ができる層を「選択」します。

セグメントとターゲティングの違い

セグメントとターゲティングを効果的にする理論

セグメントとターゲティングをより効果的にするためには、どうすればよいのでしょうか。実際にセグメントを行っていくにあたって参考になる理論を紹介いたします。

4つのRの原則

よいセグメントを行うためには、4つのRの原則を当てはめる必要があります。4つの原則は「Rank」「Realistic」「Reach」「Response」の頭文字をとったものです。それぞれの原則からセグメントを見つめ直すことでより良いセグメントを見極めることができます。4つの原則について見てみましょう。

4つのRの原則

Rank(優先順位づけ)

「Rank」は複数の顧客層(セグメント)の中から、重要度に応じて優先順位をつけることです。例えば、同時に複数のセグメントにアプローチを行う際、市場の状況やお客様と自社商品・サービスとの相性などにより、成果に差が出ることがあります。

もし優先順位をつけず、すべてのセグメントに同様の資源を投下していては、機会損失を出してしまう可能性があります。そのため、セグメントの優先順位を決めておくことは大変重要だと言えるでしょう。

Realistic(有効規模)

「Realistic」はそのセグメントに、事業が成立するほどの十分な売上げや利益を確保できる市場規模があるかどうかを指します。見つけたセグメントが、自社の商品・サービスと相性が合う層であったとしても、セグメントの規模が小さすぎると、十分な売上げや利益を得ることは難しくなってしまいます。

セグメントは、細分化するほどニーズや課題が合ったお客様を明確にできるため、どうしても細分化しすぎてしまうことがあります。細分化してみたはいいものの、いざ訴求をしようと思ったら「ほどんど市場規模がなかった……」といったことにならないように注意をする必要があります。

Reach(到達可能性)

「Reach」は、セグメントされた顧客層に対してどれだけ正確に商品・サービスを届けられるかを指します。例えば、自社商品・サービスがターゲット層にぴったり合うとしても、顧客層が住んでいる地域によっては配送や来店が難しい場合があります。

また、セグメントされた顧客層の中に海外居住者が多い場合は、言語が障壁になることもあるでしょう。このように顧客層に対して到達可能かどうか考えることで、提供手段や経路を検討することもできます。

Response(測定可能性)

「Response」はセグメントされた顧客層からの反応をどの程度分析可能かを指します。例えば、DMを送付する際に、セグメントした顧客層の中でどのくらいの数の反響があったのかを計測するなどが挙げられます。

また、現代はデジタルツールも普及してきており、送ったメールがどのくらい開封やクリックがされているのかや、自社のHPがどのくらい見られてるのかが容易に確認できます。

DMを送付した際でも、デジタルツールがなくては、返信や反響の連絡だけしか効果測定はできませんが、実際お客様の多くは御社のHPを見ていることも多くあります。リアルでの反応だけではなく、デジタル上の行動に基づいた反応の計測も行うとよいでしょう。

STP

「STP」とは、マーケティング論で知られるフィリップ・コトラー氏が提唱した、自社のアプローチするべき顧客層を特定するための枠組みのことです。セグメンテーションの「S」、ターゲティングの「T」、ポジショニングの「P」のそれぞれの頭文字をとって「STP」と名付けられました。それぞれ順に分析方法をみていきましょう。

セグメンテーション

セグメンテーションとは市場を細分化すること。さまざまなニーズが混在する市場を、顧客のニーズごとに細分化することです。

先にも挙げましたが、年齢・性別・地域などの「属性人口動態変数」や、アウトドアかインドアかといった「行動変数」、節約志向か高級志向かといった「心理的変数」などで細分化することができます。

ターゲティング

ターゲティングとは、セグメンテーションによって明らかにされた複数の顧客層(セグメント)の中から、自社の強みを十分発揮でき、競争優位性を得られる可能性が高いセグメントを選定することです。判断材料には、自社の商品・サービスの強みが活かせるか、競合他社との差別化は可能か、市場規模はどれほどか、参入に際して障壁はないか、などが挙げられます。

実例で考えてみましょう。2000年代前後、今まで一部の職種のユーザーやマニア層しか購入することがなかったノートパソコンが、一般の消費者も購入するようになりました。こうした状況を受けて、関連企業は一般の消費者(20〜30代の社会人)をターゲットに、デザイン性やオーディオ機能に特化したノートパソコンを開発・販売しました。

しかし、パナソニックが2002年に発売したノートパソコン「Lets Note CF-R1」は、当時各企業がターゲットにした一般消費者層に向けたものではありませんでした。パナソニックがターゲットに選んだのは「法人で外回りをしている営業マン」。

ターゲットのニーズに合わせて、自社の強みである長時間駆動・軽量化、またターゲットの意見を取り入れ高い防水性を保持したノートパソコンを開発しました。結果、発売後モバイルパソコン出荷台数で一番に躍り出たのです。競合他社が参入しにくく、ニーズがあるセグメントを探し出しターゲットに選定することは、成果につながりやすいことがこの例からもうかがえます。

ポジショニング

選定したターゲットが求めるものを理解した上で、ターゲットにとって価値を感じてもらえるような商品・サービスを検討します。これを「ポジショニング」と呼びます。

ポジショニングは、競合と比べて自社の価値を高く評価してもらうための位置付け作業ともいえるでしょう。基本的に、セグメントやターゲティングの結果を踏まえた上で決定されることが一般的です。ポジショニングを行う際には、消費者の目線に立ち、競合他社の状況などを分析することが欠かせません。

国内老舗お菓子メーカー「湖池屋」は非常によい事例といえます。コンビニやスーパーの普及により、ヒット商品の移り変わりが激しいお菓子業界ですが、湖池屋は存在感を発揮し続けています。2017年に湖池屋が発売した高品質・高価格帯のポテトチップス「KOIKEYA PRIDE POTATO」は市場の平均単価を10%近く押し上げてヒットしました。

成功の背景には、湖池屋の徹底した顧客ニーズの分析に基づく商品設定(ポジショニング)があります。湖池屋は消費者のニーズが健康志向や国内産志向に傾いていることに気づき、安さや手軽さよりも「価格は高くても健康に良く、国内産の高品質な商品」を重視した商品開発を行いました。結果、競合他社の「安価で手軽さを重視した商品」とは全く違う位置付けを市場の中で獲得することができたのです。

自社の見込み客をセグメントするためには

自社の見込み客をセグメントする際には、何に気を付ける必要があるのでしょうか。新規と既存、それぞれの事業に合わせて考えてみましょう。

新規事業の場合

新規事業を行う場合は、事前に市場の調査を行う必要があります。市場の規模、成長性といった動向を分析し、既存企業のポジショニングがどのようになされているのか、参入できる領域はあるか、といったことも調べます。市場ニーズをある程度仮定した上で、自社の商品・サービスが活用できそうな層を細分化(セグメント)してくことが欠かせません。

既存事業の場合

既存事業の場合はまず、現在の顧客の分析をしましょう。BtoBの事業であればどのような業種・業界の顧客が多いのか。BtoCの事業であればどのような年齢・性別・趣味趣向を持った顧客が多いのかを調査します。

既存顧客から共通項を見つけ出し、自社の商品・サービスの強みを打ち出せている層(セグメント)を見つけていきます。そのため顧客分析を行う上で必要なのは、自社の強みを理解していることです。

しかしながら、自社の強みは客観視することを意識しなければなかなか見えないものです。そこで、普段から3C分析やSWOT分析などで自社の強みを把握しておくことは重要です。

まとめ

本記事では、セグメントの重要性、セグメントとターゲティングの違いなどを紹介しました。スマートフォンの普及によりインターネットが身近なものになったことにより、テレビや雑誌といった媒体から与えられる情報を受動的に受け止めていた消費者が、今では興味関心のある情報を能動的に情報収集しています。

マーケティングに携わる担当者は、移りゆく消費者のニーズや競合他社の動向に常に意識しておかなければ、市場のニーズから外れてしまいます。そのため、4つのRの法則などを当てはめつつ有効なセグメンテーションを行っていく必要があるのです。

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