ターゲティングとは?営業マンも知っておくべきターゲティングのコツ

ターゲティング

「マス・マーケティングが通用しない時代になった」といわれるようになりました。不特定多数の人たちに向けて画一的なアプローチをしているだけでは、今や効果は望めないと考えている営業マンの方も少なくないはずです。

とは言え、どのように市場に対して個別アプローチするべきか、考えてみるとなかなか難しいもの。そこで役立つのが「ターゲティング」と呼ばれる概念です。ターゲティングを行うことで特定の顧客層に対して、顧客に合った価値を伝えやすくなります。

本記事では、今の時代に欠かせないターゲティングの意味や重要性、さらにターゲティングのポイントまでわかりやすく解説します。

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ターゲティングとは

ターゲティングとは、「セグメント(細分化)された市場の中から、どの市場に参入するかやアプローチするかを決めること」です。これは、企業の限りある資源をどの市場に集中させるか決めることにもなります。言い換えると「どんな顧客層に買ってもらいたいか決めること」と言えます。

ターゲティングの目的は、顧客の持つニーズや課題に合わせた最適な戦略を生み出すことにあります。市場には、エリアやライフスタイルなどセグメントされた顧客層ごとの特性があり、画一的な戦略だと顧客に価値を感じてもらいづらくなってしまいます。顧客層の特性を分析し、それぞれの特性に合わせた効果的なアプローチを行う必要があります。誰に向けた商品・サービスなのか、しっかりターゲティングすることで、顧客に届きやすくなるのです。

ターゲティングがなぜ大切なのか

1956年に、アメリカのマーケティング学者ウェンデル・R・スミス氏がセグメンテーション(市場の細分化)の概念を提唱するまでは、市場は単一のものと捉えられていました。当時はもちろん、ターゲティングの概念も存在していません。

しかし、1960年にマーケティング学者のE・ジェローム・マッカーシー氏が「ターゲット・マーケティング」を提唱してから今日に至るまで、ターゲティングの重要度は年々高くなっています。なぜなら、顧客が商品・サービスに感じる価値が多様になってきているからです。このような時代では、自社の商品・サービスを必要としている顧客層に集中してアプローチすることができるターゲティングが欠かせないと言えるでしょう。

他にもターゲティングが大切だと言える理由はいくつもあります。例えば、ターゲティングを行うことで、自社の対象にならない顧客に対して不必要なアプローチを行ったり、広報や宣伝にかかるコストをかける必要がなくなります。また、ターゲットが絞られているほど、顧客のニーズや抱えている課題にあったアプローチができるため、営業アプローチを効率的に展開することもできます。

ターゲティングが成功した事例として、大手コーヒーチェーン店「スターバックス コーヒー」の事例が挙げられます。スターバックス コーヒーは大都市に勤務している給料の高い会社員などをターゲットに絞り込み、高価格でも高品質なコーヒーとサービスを提供することでターゲティングに成功し、売上げを拡大していきました。このターゲティングに合わせて、スターバックス コーヒーでは不特定多数の人に向けたテレビCMなどのマス広告は使用せず、SNSや実店舗を中心に、顧客の口コミを利用した展開を行っています。

ターゲティングとセグメンテーションの違い

ターゲティングとセグメンテーションという概念は、しばしば混同されがちです。それぞれの違いを見てみましょう。

ターゲティングとセグメンテーションの違い

セグメンテーションとは、「市場を細分化(セグメント)を行うこと」を指します。マーケティング分野における「セグメント」は、年齢・性別・職業・趣味・家族構成など共通の属性を持った顧客のグループ分けです。そして、このセグメントを行うことを「セグメンテーション」と呼びます。

一方で、ターゲティングとは「ターゲットを決めること」を指します。ここで言う「ターゲット」とは、セグメンテーションされたセグメントの中でも特に自社の狙いたいセグメントのことを指します。そして、このターゲットを決める行為そのものを「ターゲティング」と呼びます。

端的に両者の違いをまとめると、「セグメンテーション」は市場を細分化(セグメント化)すること、「ターゲティング」はそのセグメントの中から自社のアプローチ対象となるセグメントを特定することだと言えます。

ターゲティングする際に確認するべき理論:6R

ターゲティングを行う前に確認しておきたいフレームワークとして「6R」が挙げられます。これは、セグメンテーションを行う際に留意しておくべき6つのことを列挙したものです。それぞれの頭文字をとって「6R」と呼ばれています。

6R

有効な市場規模(Realistic Scale)

まずターゲットを設定する前に確認しておきたいのが、その市場には十分な市場規模があるかどうかです。自社の商品・サービスがぴったりとその市場にマッチしていたとしても、顧客の数が少なくては売上げを拡大することはできないでしょう。十分な市場規模があるかどうか、確認する必要があります。

競合状況(Rival)

次に確認しておきたいのが競合状況です。市場に強い競合他社が存在しないターゲットかどうか、確認する必要があります。ヒトやモノ、カネといった資源が潤沢にある大企業でない限り、すでに開拓された市場に参入し、利益を上げ続けることは困難です。そのため、市場に強い競合他社が存在しないかどうか確認してからターゲットに設定する必要があります。

成長性(Rate of Growth)

ターゲットのニーズが、今後拡大しそうかどうかも確認する必要があります。ニーズがあったとしても、すでに成熟しきっている市場だと、現状の限られたパイを他社と奪い合うことになってしまいます。これでは利益を伸ばしにくいでしょう。そのため、これからもニーズが増えていく市場かどうか判断する必要があります。

波及効果(Ripple Effect)

ターゲットとなる市場に、波及効果が見込めるかどうかも留意点の一つです。顧客層に口コミ力があるか、また、SNSやインターネットのレビューサイトなどで情報を拡散してくれそうな層かどうかを、見極める必要があります。

2005年に大手広告代理店の電通が提唱した「AISAS」と呼ばれる消費者の購買行動原理によれば、消費者は商品・サービスを購入したのちに「共有(share)」という行動を起こすと言われています。SNSの発展により拡散行動は近年拡大しています。拡散されることによって多くの人を市場に引き込むことができるため、考慮すべきことだと言えます。

到達可能性(Reach)

ターゲットにチャネルやメディアを通じて到達できるのかどうかも、確認する必要があります。現代は直営店や代理店はもちろんのこと、通信販売などさまざまな手段で商品・サービスを届けることができます。

利便性があるかどうかは、消費者にとって利用するかどうかの一つの指標となっているのです。例えば、スノーボードのレンタルショップはスキー場に近い方が消費者に購入されやすいと言われます。このように、ターゲットにプロモーションが行き届く導線が確保できているかどうか確認することは大切です。自社の商品・サービスに合ったチャネルを通じて提供しましょう。

測定可能性(Response)

ターゲットに対してアクションを起こしても効果が測定できなければ、ビジネスの目標達成が不明確になってしまいます。営業チームのモチベーションにも影響するでしょう。そのため、アクションに対する効果が測定可能なターゲットかどうか吟味する必要があります。営業活動後に、実際にそのターゲット設定が正しかったかどうか分析してPDCAを回していくためにも、事前に効果測定ができる仕組みを考えておく必要があるでしょう。

営業活動にもターゲティングを落とし込んでみる

営業職の仕事で大事な目標として挙げられるのが、売上げの拡大です。売上げの拡大に欠かせないのが、新規顧客の拡大と既存顧客の単価アップ。どちらもターゲティングが欠かせません。ターゲティングを行わなければ、受注につながらない無駄な営業工数を増やしてしまうでしょう。そのため、電話営業でのアプローチや一斉メールの配信などの際には、必ず適切なターゲティングを行う必要があります。

例えば、BtoBの企業で新規顧客を開拓する際は、自社が抱えている既存優良顧客のリストを分析しましょう。顧客の所属する企業の属性(業種・企業規模)から共通項を見出し、同じ属性を持った他の企業をターゲティングすることができます。

既存顧客の単価アップのためには、どのようなターゲティングができるでしょうか。例えば購入頻度が高い顧客をターゲティングし、新規商品・サービスの情報をいち早くお届けすることができます。また、以前の購入履歴に基づいた顧客リストを作成し、その顧客に対しオプションとなる商品・サービスを提案することができるでしょう。

このように営業活動においても、ターゲティングは欠かせません。サービス・商品を利用する人は、必ず何かの課題を解決したいと考えています。同じ課題を持つ顧客の層を見つけ出し、課題解決のためのアプローチを上手く行うことができれば、売上げ向上にもつながります。

まとめ

ターゲティングは、現在の市場を理解するためにも必要な概念です。業種や企業規模を問わず、ターゲティングを行う企業は増えています。一度ターゲティングを行ってうまく成果をあげることができても、しばらくすると市場の変化により顧客が離れていくこともあります。

市場は、競合他社の新規参入などといった外的要因によって変化してしまう性質を持っています。そのため、市場を注意深く観察し、常に適切なターゲティングをし直すことが欠かせません。

また、効率的に売上げを拡大するためには、営業マンひとりひとりが顧客それぞれの特性を把握し、それぞれにあったアプローチを行うことが必要です。つまり、営業マンのスキルも問われるのです。

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