皆さまは、営業同行を導入されていますでしょうか。研修の一環として営業同行を行ったり、部下の商談のサポートとして営業同行をすることも多いかと思います。
このような組織としての文化は、ついつい具体的な目標を明確にされず「これまでやってきたから」という流れで行われてしまいがちです。
営業マンにとって営業同行は、非常に有効な成長の機会です。しかし、実際には営業同行の経験を活かせる営業マンと活かせない営業マンがいるのも事実です。今回は、営業同行の効果を最大限に活かすためのコツをご紹介します。

営業同行とは
営業同行とは、新人営業マンや経験の浅い営業マンが、上司や先輩の営業マンと一緒に顧客や見込み客を訪問することです。OJTの一環として、取り入れている企業も多いのではないでしょうか。
営業の仕事は実際にお客様とコミュニケーションをとる必要があるため、現場の感覚を伝えることがなかなか難しいですが、営業同行は導入もしやすく、現場体験も兼ねるため、高い効果が見込める実地研修とも言えます。
営業同行がなぜ大切なのか
営業は、お客様と直接対峙した際の対応を身につけることも必要なため、講義形式でノウハウを伝えるだけでは売上げにつなげることはできません。営業現場での感覚を体感するためには、実際に商談の場に参加する必要があります。
もちろん営業戦略を考えることやは重要ですが、お客様とコミュニケーションを取ったり、実際に自ら提案をしてみてお客様の反応を見るなど現場での感覚も大切となってきます。どれだけ素晴らしいトークスクリプトを作り上げても、実際にお客様が価値を感じないトークであれば意味はありません。
特に営業経験の浅い営業マンですと、実際の提案の流れやどのようにお客様にプレゼンをすれば良いのかがイメージつかないことが多くあるかと思います。そこで、営業同行を行えば、上司や先輩が「どのように提案をするのか」「どのように提案すればお客様の反応が良いのか」など実際に体感することができます。
営業同行の目的を明確にする
皆さまは、どのような目的で営業同行を実施していますでしょうか? 昔から習慣的に営業同行を行っている場合は、目的が不明確になっていることもあります。営業同行を行う際には、上司と部下との間で毎回事前に営業同行の目的を明確にしましょう。
ここでは、営業同行の3つの目的について解説していきます。
営業同行の目的①:上司や先輩の営業スキルを学ぶ
新人営業マンの教育の一環として、上司や先輩の営業スキルを学ぶために営業同行を行うことも多いかと思います。新人の営業マンは、実際の商談の場の雰囲気やどのような提案・プレゼンを行うのかがまだイメージがついていないはずです。
例えば「商談のはじめに行うアイスブレイクはどのような話題を出すとよいのか」や「どのようにお客様のニーズや課題を引き出していくのか」「最終的に意思決定をしてもらうために、どのようにクロージングに入っていくのか」などを上司や先輩の姿を見て、目の前で学ぶことができます。
初めての営業同行は、新人営業マンにとって新鮮かつ刺激的であるはずです。スキルを学ぶだけでなく、真剣に話している上司や先輩の姿をみて「自分もできるようになりたい」とモチベーションが上がるのではないでしょうか。
営業同行の目的②: 若手営業マンの営業スキルを評価する
若手営業マンが、実際にどのように商談を進めているのかを評価したい場合です。
若手の営業マンが、ある程度の基本的な営業スキルを身につけ、実際に一人で商談を進めていく際に上司が営業同行を行うこともあります。上司にとっては、部下が独り立ちできるか判断するための確認のようなものかもしれません。
この場合は、基本的には若手の営業マンが商談を進行し、フォローや補足の必要な時のみ、上司や先輩の営業マンが解説を行うことが多いです。
営業同行の目的③: うまくいっていない案件をサポートする
若手営業マンが担当をしている案件や顧客で、成約が難航していたり、顧客からのクレームを受けたりなど、サポートが必要な場合です。特にトラブルがなくても、若手の営業マンに成約の経験が少ない場合には、クロージングのサポートが必要になることもあるでしょう。
営業同行の目的によっては、必要な事前準備も異なってきます。①の上司や先輩のスキルを学ぶためであれば、商談で使う資料の印刷の手伝いなどを行い「どのような資料を使っているのか」を事前に見ておくことも大切です。また、③であればお客様とのこれまでのコミュニケーションの経緯やどのような点がトラブルに繋がっているのかをまとめておくとよいでしょう。
営業同行での役割を明確にする
目的が決まったら、実際に商談で行うことの役割を決めます。
商談は上司や先輩が全て行うのか、それとも若手の営業マンにも商品説明やデモだけ部分的に行ってもらうのか。営業同行の目的と若手の営業マンのスキルに応じて役割を考えておきます。
若手の営業マンにもプレゼンをしてもらう場合には、具体的にどのようなことを話すのか、どのタイミングで話せばよいのかも決めておくとよいでしょう。必ず事前練習をしておくことも大切です。
例えば、部分的に参加をしてもらう場合には、
のように、商談の流れに合わせて考えていくとよいでしょう。
また、上司や先輩が商談を全て行う場合でも、商談の議事録や資料の配布、今後のスケジュール説明など、できるところは率先して役割を請け負っていきましょう。
営業同行する際には複数のシナリオを用意する
実際の商談には想定外の出来事がつきものです。
円滑に進むと思っていた商談が難航したり、商品説明だけだと思っていたら、お客様が乗り気ですぐに契約の話にまで進むこともあります。
上司や先輩のような経験あるベテランの営業マンであれば、状況に応じて対応を変えることができますが、若手の営業マンにとっては臨機応変な対応は難しいことが多いでしょう。想定と異なる展開になった場合はどうするかについて、よいパターンと好ましくないパターンの両方で考えておき、商談時の対応について決めておきましょう。
営業行動の評価を行う
営業同行を行った後はできるだけ早く評価を行います。ここでの評価は、上司や先輩が部下を評価することも大切ですが、営業マン自身が行った商談について自らを評価することも大切です。
上司や先輩は、若手の営業マンの役割についての評価だけでなく、商談自体や今後の見込みについても意見を聞くと、営業案件を見極める訓練にもなります。
実際に評価の際には、次のような質問を部下に聞くとよいでしょう。
商談についての質問
- 「今回の商談はうまくいったと思いますか?」
- 「商談は今後どのように進んでいくと思いますか?」
この質問は、将来的に自分で営業案件を見極める力につながります。感覚的にどうだったのか、どう感じたのかを聞くことも大切ですが、同時になぜそう感じたのか、判断したのかというところも聞くことで見込み度合いを見極める力が磨かれていきます。
上司や先輩は、自分の感じたことと異なっていたとしても、否定することは避けましょう。なぜそのように感じたのかを丁寧に掘り下げ、もし違った方向性であれば「〇〇の視点もあるのでは?」と自ら気づかせることも大切です。
自身の役割についての質問
- 「自分の役割はうまく果たせましたか?」
- 「うまくいったこと、うまくいかなかったことは何ですか?」
- 「こうすればよかった、次はこうしたい、など改善点はありますか?」
- 「次のステップに向けて、自分は何がするべきだと思いますか?何ができますか?」
実際に、商談で説明の役割をになった営業マンに対して問いかけると有効です。若手営業マンであればどの程度まで自分ができたのか、どこに気をつけて商談を行ったのかを振り返るきっかけにもなります。
話し方や説明の内容などスキルとして改善できるものは、上司や先輩とロープレなどを行い、改善していくとよいでしょう。
まとめ
今回は、営業同行の効果を最大化するためのコツについてお伝えしました。若手の営業マン自身が自分は何をするべきか、営業同行から何を学ぶかを理解することが一番大切です。
それを前提にしっかりと事前準備をし、営業同行後は実際に何を学んだか、次にどうするかを振り返ることにより、学びも深まりスキルアップにもつながります。
「営業スキルチェックシート」では、商談でも活用できる営業スキルをチェックリストとしてご用意しております。ぜひ営業スキルの強化のヒントとしてご覧ください。