営業同行の目的を明確にして営業成果をあげる方法

営業 同行 目的

皆さんの営業組織では営業同行は採用していますか?新人や経験の浅い営業マンの実践的な教育や研修の一環として、商談の成約率を高めるためのコツを伝えるために、多くの企業で営業同行が実施されているのではないでしょうか。

近年では、ビジネスのさまざまな部分がデジタル化している流れを受けて、営業同行についてもオンラインで対応が可能になるなど、これまでのリアルでの営業同行とは異なった、デジタル時代ならではの新たなスタイルの営業同行の方法も生まれています。

本記事では、営業同行とは何かという点を改めて明らかにした上で、営業同行にはどのような目的があるのか?営業同行の効果を高めるためにはどのような点に意識をすれば良いのか?について解説します。

営業同行とは

営業同行とは、2人以上の社員がペアやチームになって顧客の元に訪問をすることです。多くの企業でOJTの一環として、あるいは営業手法の一つとして採用されており、営業同行にはさまざまなスタイルがあります。

ベテラン営業マン(上司や先輩)と若手営業マンが同行するケース

若手営業マンの研修やフォローを主な目的とした営業同行です。まだ一人ではクロージングまでできない若手の営業マンや、他の営業マンよりも受注率の低い営業マンが、商談を設定する、あるいは商談を行う場合などに用いられます。

マネージャーや管理職が営業マンに同行するケース

上司や役職の高い社員が同行することにより、「どうしても取引したい」という顧客に対しての熱意を示したり、ベテランの提案を交えることで成約率を高めたりする目的で営業同行を行います。大きなクレーム対応のために、上司や管理職が前に立って顧客対応をするケースもあります。

専門知識をもった社員が営業マンに同行するケース

商品・サービスに関する詳しい説明やディスカッションをするために、専門知識を持った社員と営業マンがペアで商談を行うこともあります。主に、メーカーやITなどの詳細の提案に当たって専門的な知識が必要な業界で行われます。仕入先メーカーの担当者など、社外の専門スタッフに同行を依頼するケースもあります。

これらの営業同行の中で、最も多く用いられているのは、上司・先輩と部下・後輩によるペア営業のスタイルです。本記事も、上司と部下が同行するパターンを中心に解説します。 

デジタル時代の営業同行のスタイル

近年、クラウド化やIoTの導入など、日常やビジネスにおけるさまざまな場面で急速にデジタル化が進んでいます。また、新型コロナウイルス感染拡大により対面営業が困難になってしまった(例えば「自社がリモートワークに対応しなくてはならない…」「顧客から対面での営業を敬遠される…」)といった側面から、営業活動のオンライン化が一層進んでいるという傾向も強く見られます。

ここでは、上記のような「デジタル時代」を迎えた今、営業同行のスタイルがどのように行われているのかについて紹介します。

訪問同行

訪問同行とは、従来から行われている営業同行のスタイルのことです。

若手営業マンにとって、自社の優秀な先輩営業マンの営業や顧客の反応を間近で見たり、営業のサポートを受けたりすることは、大きな学びや自信につながるものです。ただし、従来の訪問同行スタイルには、いくつかのデメリットも挙げられます。

訪問同行のメリット

  • 実際のリアルな商談の場を活用して教育・研修を実施することができる
  • ベテラン営業マンがサポートすることで、商談の成約率を高めることができる
  • 管理職者が足を運ぶことで、取引先を重要視しているという姿勢をアピールすることができる

訪問同行のデメリット

  • 訪問する人数分移動時間や交通費がコストとしてかかってしまう
  • 上司側の教えるスキルと部下側の学ぶ姿勢が整っていなければ、研修としての効果が得られないことがある
  • 分からない質問を顧客からされたときなどに、部下が上司を頼ってしまい、自分で対処する力が身につかないことがある

これらのデメリットは、同行営業の取り組み方などによって回避することができます。

オンライン同行

従来の訪問同行のスタイルに加えて、最近ではオンライン同行のスタイルも浸透しつつあります。オンライン同行を実践するためには、Web会議システムなどのビデオ会議システムやSFA(Sales Force Automation=営業支援システム)を活用する場合が一般的です。したがって、オンライン同行をするうえでは、安定したインターネット環境が不可欠です。

オンライン同行では、従来の訪問同行ではデメリットとなっていた時間やコストの「ムダ」を必要最小限に抑えながら、手軽に同行営業を行うことができます。さらに、育児・介護中の営業マンをはじめとした在宅での就労や働き方改革を実現するために、オンラインでの営業同行を活用することもできます。

研修効果については、オンラインでも従来型の研修においても、同様の対策が必要ですが、準備の進め方やフィードバックのやり方を工夫することが、デメリット解消につながります。

オンライン同行の中には、大きく分けて3つのスタイルがあります。3つのそれぞれのスタイルについて、詳しく解説します。

新人・ベテラン営業マン両方ともオンライン同行

オンライン同行の一つ目のスタイルは、新人とベテラン営業マン(上司)がオンラインで同行するパターンです。

同行の方法としては、自社の会議室などで新人とベテラン営業マンが同席して1台のカメラで接続する方法と、2人が自宅などそれぞれ別々の場所から同じWeb会議ツールなどを利用して接続する方法があります。 

どちらの方法をとってもこのスタイルの場合、顧客先に足を運ぶ必要がなくなるため、移動時間がかかりません。また、移動に関するコストもほぼゼロになるため、移動にかかる負担を最小限に抑えられる同行方法です。 

また、オンライン商談では、商談時の内容を録画・録音することで、研修資料として後日使用することも可能です。オンライン同行の中でも、最も効率的なスタイルであるということが言えます。

新人営業マンが訪問、ベテラン営業マンがオンライン同行

2つ目のスタイルは、新人営業マンが顧客を訪問して、ベテラン営業マンがオンラインで同行するというものです。

ノートパソコンやタブレット端末でWeb会議ツールを使って、顧客の会議室や商談スペースと接続をします。このパターンで商談をおこなうのは、以下のケースです。

  • 顧客から「どうしても訪問してほしい」と言われたが、ベテラン営業マンは予定が詰まっていて時間が確保できない。
    → 新人営業マンが基本的な対応をおこない、ベテラン営業マンの隙間時間などを活用して顧客対応をフォローする
  • ほぼ一人で商談を完結できるようになった新人営業マンの補足のフォローとして、ベテラン営業マンが最大限のコストや手間を抑え、遠隔でサポートする

商談のメインが新人営業マンになるため、このスタイルの場合には実践的な研修と位置づけになります。ITツールを用いて資料や画面の共有を行うことにより、ベテラン営業マンのサポートをスムーズ化することができます。

ベテラン営業マンが訪問、新人営業マンがオンライン同行

オンライン同行の3つ目のパターンは、ベテラン営業マンが顧客先に訪問し、新人営業マンがオンラインで同行するパターンです。

リアルの営業の現場は、ベテラン営業マンがどこよりもの力を最大限に発揮できる場所です。商談時のアイスブレイクや雑談力、商談の組み立てなどは、ロープレなどの研修で実践するには限界があるので、新人スタッフに同行させることは非常に大きな学びがあります。

また、新人スタッフはテレアポ研修やOff-JTなど社内での業務・研修も少なくないので、効率よく研修を実施できるという面もあります。

新人営業マンの営業同行の目的

営業訪問による効果を得るために大切なことは、何のために営業同行をするかといことを理解することです。

  • これまでも、このスタイルで研修をしてきたから…
  • 他社も営業同行をやっているから…

といった漠然とした理由では、営業同行をするメリットは薄れてしまいます。

そこで、まずは新人営業マンにとって営業同行にどのような目的で行うべきかについてのポイントを紹介します。

営業同行の目的

商談の雰囲気を体感する

新人営業マンにとって、商談の雰囲気は実際に体験してみないと分からないものです。ある程度、場数を踏んでおかないと、いざ商談の際に雰囲気にのまれてしまったり、名刺交換やあいさつなどのマナーがおぼつかなかったりするなどの事態に陥ってしまうケースが考えられます。

商談の雰囲気を、安心して体験できるということは、新人営業マンにとって非常に重要なことです。また、同行の際に、商談の雰囲気を感じられるようにするためには、マナー研修や営業スキル研修などのOff-JT、営業資料の準備など、事前準備を整えることが大切です。

商談の仕方やスキルを学ぶ

新人営業マンが、営業の場数を踏むことが大切です。しかし、最初から一人で商談を担当しようとしても、成果にはつながらないでしょう。お客様に対して失礼な対応をしてしまったり、それによって新人営業マンが自信を喪失してしまったりするなどのデメリットが考えられます。

先輩であるベテラン営業マンがどのようにお客様の緊張を解いているか(アイスブレイク)、商談をまとめているか(クロージング)、資料やデモなどをどのように案内しているか?など、営業のテクニックやノウハウを、間近で学んでいきましょう。

人脈を形成する

新人営業マンにとっては、人脈形成も非常に大切です。商談に同席して名刺交換をして社外にも人脈を作ることで、サブ担当者として上司が不在時に対応するなど、少しずつ業務の幅を広げていくことができます。また、顧客側にとっても担当者であるベテラン営業マンと連絡が取れないときに窓口が一つ増えるというメリットがあります。

ベテラン営業マンの営業同行の目的

ベテラン営業マン自身も、目的をもって営業同行をするべきです。では、ベテラン営業マンは、どのような目的で営業同行をすべきなのでしょうか? ここでは、ベテラン営業マンの営業同行の目的を3点紹介します。ベテラン営業マンがこれらを意識することで、ベテラン営業マン自身はもちろんですが、会社にとっても大きなメリットがあります。

ベテラン営業マンの営業同行の目的

新人営業マンの教育

ベテラン営業マンが新人営業マンと同行営業する際には、新人営業マンにとっての研修効果を最大化できるように意識することが大切です。具体的に注意するべきポイントは、次の通りです。

  • 営業訪問前に部下にも準備するように指示をすること
    自社の説明、商品知識、顧客の状況、顧客の業界知識など、商談に必要な知識を共有しておきましょう。また、商談の際に重要となるポイントを事前に共有し「自社商品をどのようにアピールすれば成約につながるのか?」という点を理解してもらいやすくしましょう。
  • 案件によって任せる部分を作る
    部下の積極性を促すことも大切です。案件の内容や顧客との関係性などによりけりですが、可能であれば部分的であれ、部下の説明を任せる部分を設けるなど、部下に任せる部分を設定しましょう。
  • フィードバックをする
    商談時のポイントを、部下にフィードバックしましょう。「なぜ、受注につながったのか?(つながらなかったのか?)」「次回の商談までに何をすべきなのか?」など、新人営業マンには気が付きにくいポイントがあるので、丁寧に解説しましょう。また、部下の姿勢や発言で気になった点や褒めるべき点があれば、できるだけ早く伝えることが大切です。
  • レポートや日報での報告をチェックする
    商談時に感じたことや学んだことを、部下自身の言葉でレポートや日報にまとめるように指示しましょう。疑問・質問に対して、一つひとつ解消していくことが大切です。

新人営業マンのスキルの評価

先輩営業マンにとっては、後輩の営業マンの営業スキルの評価をすることも、とても大切な業務です。ブラックボックス化しやすいといわれる営業の業務ですが、特に商談のプロセスについては同行しないと見えない部分が多いでしょう。適正な評価をすることは、部下のモチベーションアップにもつながります。

また、成約率や受注率などの結果からだけでは分からない課題や改善点を上司が発見し、フィードバックをすることにより、部下の営業力アップにつなげることもできます。

案件対応のサポート

停滞している案件の場合、部下の力だけでは進められない場合があります。商談の進め方自体には問題なくとも、担当者との相性や、経験の違いなどにより、ベテラン営業マンが対応することで成約につながることがあります。あるいは、役職者や上司が同行することで、顧客側の役職者や決裁者が商談の席に着くこともあります。

営業同行の目的を明確にするためには

営業同行のメリットを活かすには、目的を明確にすることが重要です。

では、目的を明確にするにはどのようなことを意識すれば良いのでしょうか?

ここでは、営業同行のメリットを最大化するために新人営業マンとベテラン営業マンがそれぞれ意識するべきことについて解説します。

新人営業マンの場合

新人営業マンが営業同行の目的を考える際に重要なことは、課題を明確にして商談前に同行するベテラン営業マンと共通認識を持つことです。

営業同行の主な目的が新人営業マンの教育・研修にある場合は、課題を明確にすることにより何を意識して商談に臨むのかをはっきりさせることができます。例えば、まだ自分自身で商談を進められる力を身に着けていない場合でも、課題を意識しながら議事録を取ったり、ベテラン営業マンの対応を見たりすることで、学びの効率を高めることができます。

また、営業のサポートのためにベテラン営業スタッフに同行してもらう場合にも、商談でつまずく点を、あらかじめ情報共有しておくことでスムーズな役割分担をすることができます。さらに商談完了後に苦手な項目についてのフィードバックをもらうことで、課題の克服につなげることもできます。

ベテラン営業マンの場合

ベテラン営業マンは、部下の課題や弱点を把握することと併せて、部下が意識すべきポイントを明確にすることも大切です。部下自身が何を課題と感じているのかという観点と合わせて、次の点を意識しましょう。

  • 売上に結びつけるためにどのようなことを意識すれば良いのか?
  • 会社のビジョンや方向性に合った営業をするにはどのような商談をすれば良いのか?
  • 課題を解決するためには、部下の営業の仕方のどのような点を改めれば良いのか?

新人営業マンの場合、課題があっても本人が自覚していないこともあるので、事前に部下と打ち合わせや情報共有をしながら課題を探っていく姿勢も大切です。

また、営業フォローの場合には、部下の課題を事前に確認して商談の組み立てに活かすことができます。また、若手営業マン自身が課題であると感じていたことと、実際の商談の際に課題になっていた部分のすり合わせをすることで、部下を正当に評価することができます。

これらの目的を踏まえて、ベテラン営業マンは以下の点についても検証しましょう。

  • 自分が一緒に同行する必要性があるかどうか
    顧客から同行を求められた場合や新人営業マンが自信のなさから同席を求めているときには、オンラインでのサポートや同行以外の手段を取った方が良いこともあります。
  • 新人営業マンと自分自身との役割分担
    新人営業マンのスキルの程度にもよりますが、ベテラン営業マンが一人で対応しすぎてしまうと、新人営業マンのモチベーション低下につながってしまうリスクがあります。また、役割を設定しておかないと、商談の内容ガチグハグになってしまうことがあります。

まとめ

営業同行を効果的に活用することで、新人営業マンの教育・研修や案件の成約率アップ、新人営業マンの営業プロセスの評価などを行うことができます。

研修・ロープレ → 営業同行 → フィードバックの流れを通して、新人研修をおこなうことで、営業に必要なスキルを効率的に見につけると同時に、ブラックボックス化しやすい商談の進め方に関しても自社の営業手法に沿った流れを指導することができます。

最近ではオンライン同行の手法がとられることも増えてきていますが、いかに商談の内容を可視化し、的確なフィードバックを行えるようにしておくことが大切です。

営業スキルチェックシート」では、営業マンが身につけておくべき基本的なスキルをチェックリストとして紹介しております。商談にも通じる営業スキルを紹介しておりますので、商談を行う前にぜひ確認してみてください。

    営業スキルチェックシート

kondo

関連記事

  • 心構え

    営業同行の際に心がける基本マナーとは

  • 特集

    営業同行後の報告書(レポート)の書き方とは

  • 心構え

    新人営業マンにとって上司との営業同行で重要な3つのポイント