買い手が自ら積極的に情報を検索し、購買活動の主導権を握るのが当たり前になった現在、いかに先回りするかが営業活動の成功の鍵を握るようになっています。
情報収集を始めた後、できるだけ早く知ってもらえるようにするだけでは不十分となり、ニーズが顕在化する前から育成していくことが必須となっています。
そこで注目を集めているのがインサイト営業です。
インサイト営業とは、簡単に言うと顧客が気づいていない課題を洞察し、掘り起こす営業スタイルです。『Insight Selling』の著者の一人、マイク・シュルツは、インサイト営業を「重要なアイディアにより営業機会を作り、勝ち取り、変化を起こすプロセス」と定義しています。
見えている課題についての答えや解決策を提供する受動的な営業スタイルとは異なり、能動的なアプローチが必要です。
顧客にとって響く重要なアイディアを得るには、顧客の現在の考え方について掘り下げ、人を動かす隠れた心理である「インサイト」を見つけていく必要があります。
今回は、重要なアイディアやインサイトを導くために、顧客に投げかけたい質問の例をご紹介します。
インサイト営業を成功させる質問例
1. なぜ今はそうしているのですか?
インサイトを探る質問の基本は理由、つまり「なぜ」を問うことです。
例えば、相手の判断を批判するトーンは避けながら、今なぜ自社の製品やサービスではなく、既存(他社)の 製品やサービス を利用しているのかを聞いてみましょう。
「〇〇だからこれが最適だと思っている」
「〇〇なのでずっとその方法を取ってきた」
「丸〇〇年利用しているので変える理由がない」
などといった答えに、ヒントがたくさん詰まっています。
そう思う理由も掘り下げていきましょう。これらの「〇〇」の中に新たに提供できる価値や情報が見つかるでしょう。
顧客の回答は現在の常識や視点に基づいたものです。現状に対して、新たな視点や価値を提供することが営業パーソンの役目です。明確な回答がないことも発見のひとつです。
2. 具体的な方法はなんですか?
目的や課題がはっきりしていても、まだまだ具体的な実現方法を模索しているケースは多いものです。
「どのように」を聞く質問は、現実に対するインサイトをあぶり出してくれます。
3. 試したけれども上手くいかなかったことはなんですか?
課題や解決方法についての限界をどう認識しているか知るには、この質問をしてみましょう。
いろいろと試したけれどもダメだったと思われていても、あなただったら他の提案ができるかもしれません。
4. 他に何を検討されましたか?
他のソリューションについても、具体的な製品やサービス名をあげて検討したかどうかを聞いてみましょう。
知っていたかどうか、どのようにアプローチをしてどのような提案を受けていたかによって、提案したいことも変わるでしょう。
5. 投資額は十分ですか?
ほとんどの顧客は費用対効果を極力高めたいと、必要最低限の投資しかしないものです。
そして、そのため上手くいかないことも事実です。
その投資額が本当に十分なのかという疑問を投げかけることも、インサイトを引き出すのに大切です。
6. このまま何も変えなかったらどうなると思いますか?
現状に対する疑問を持たせる機会となる質問です。
その場で何もしないことのリスクに気付くこともあるでしょうし、反応次第では、顧客により良い結果のためのアクションについてガイドすることも必要になるでしょう。
7. 今後できることはなんでしょうか?
今後の可能性についてのインサイトを得るための質問です。
変化について考えたことのなかった認識を変えるきっかけを得ましょう。
8. 今足りていないことは何かありますか?
「足りていないこと」
「欠けていること」
「あったらいいこと」
「強いて言えば変わってほしいこと」
「理想的にはどうあってほしいか」
など、表現を変えながら探ります。
「そうは言ってもこうあるべきだ」
「社内的にどうしても変えられない」
などといった回答にも、ヒントがあるはずです。
今回は、インサイト営業を成功させる質問を紹介しました。
一緒に協業しながら解決策を探っていこうという姿勢を前面に出し、営業パーソンが顧客をリードする戦略コンサルタントとして能動的に動くのが、インサイト営業です。
現状について多方面から問いかけ、現在の認識と限界を知り、新たな提案をするためのヒントを掴みましょう。
インサイトのヒントとなる情報を質問により得た後は、点と点をつなぐ作業も必要になります。
焦らずにじっくり次の戦略を立てて、顧客と向き合っていきましょう。