インサイト営業とは?新しい営業スタイルへの変化の必要性

インサイト営業

2019年現在、顧客が欲しいと思う商品・サービスは高水準で揃いつつあります。不足を感じることがない顧客は、新たな商品・サービスに手を出しにくくなっているのです。営業担当者や営業マネージャーは、このような状況を打開すべく新たな営業スタイルへ着手する必要を感じているのではないでしょうか。

この記事では、アウトバウンド型、ソリューション営業といった従来の営業スタイルと、近年誕生したインサイト営業という新たな営業スタイルの違いに触れながら、インサイト営業の重要性について紹介します。

営業スタイルの変化の背景

見込み客の購買行動を促進するための営業スタイルは、顧客とその顧客を取り囲む環境の変化に応じて常に進化してきました。アウトバウンド型からインバウンド型への移行によって、営業効果の向上を実現した企業も少なくありません。では、営業スタイルの変遷には、どのような背景があるのでしょうか。

アウトバウンド型からインバウンド型へ

営業担当者が直接、あるいは電話でお客様に対し、自社商品・サービスを売り込むアウトバウンド型の営業は、従来の営業担当者の営業スタイルでした。テレマーケティングや、飛び込み営業がこれに該当します。お客様から見れば、必要としていないタイミングで必要としていない商品・サービスを「売りつけられている」印象を受けてしまうため、飛び込み営業は商談化する確率が低いというデメリットがありました。

アウトバウンド型営業と対照的な営業スタイルとして、インバウンド型営業が挙げられます。インバウンド型営業は、お客様が必要としている時に、必要としている商品・サービスを提供するというスタイルです。今ではインバウンド・マーケティングとして、お客様にとって有益なコンテンツをインターネットやメールで配信したり、セミナーを開催したりして見込み客を獲得した上で、お客様が必要とした時に詳細な情報を提供しながら営業を進めていくという方法が主流になりつつあります。

とあるERPシステムの営業でアウトバウンド型とインバウンド型を比較した調査によると、アウトバウンド型営業(訪問営業)で80社回った場合、引き合い社数はわずか2社でした。インバウンド型営業(Webマーケティング)を行った場合は30社からお問い合わせがあり、そのうち5社が引き合いになった事例が挙げられています。

同じ商品・サービスを販売しているのに、顧客獲得単価はインバウンド型の方が効果が見込める結果となっており、インバウンド型営業スタイルを採択する企業が増えたのも納得できるでしょう。

インバウンド型の多岐化で誕生したソリューション営業

インバウンド型の営業スタイルを展開するにあたり、マーケターの人材確保が困難な中小企業では営業担当者がSNS上に顧客にとって有益となる情報をアップし、インバウンド型営業の土台作りをしていることも珍しくありません。

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社調査によると、ソーシャルメディアの中でも調査対象の企業の8割が「Facebook」を公式アカウントとして活用しています。公式アカウントでは、Facebook広告、キャンペーン情報の告知と拡散が可能であり、興味を持った見込み客を取り込むのに役立ちます。

このようなソーシャルメディアやWebサイトなどに多岐化したインバウンド型営業は、営業担当者が自らお客様の元に出向くのではなく、興味・関心を持った顧客側からの問い合わせてもらい、潜在顧客から見込み客へと発展させます。このインバウンド型営業の中の1つの手法として台頭してきたのが、ソリューション営業です。

ソリューション営業とは、お客様(企業)の抱える問題を解決したり、目標を達成するための方法を提案したりすることで、自社製品・サービスをソリューションとして提供するという営業スタイルです。

一方的に売り込むのではなく、お客様の課題感に合わせて営業提案を行うため、アウトバウンド型のような「売りつけられた感」が少なく、NECをはじめとしてアウトバウンド型からインバウンド型のソリューション営業へと切り替える企業も少なくありませんでした。

ソリューション営業の衰退とインサイト営業の台頭

アウトバウンド型の営業からインバウンド型のソリューション営業へと移行していく企業が増加したことで、当初は新鮮だったソリューション営業が、標準的な営業スタイルになりつつあります。

ブレント・アダムソン氏らは、『ソリューション営業からインサイト営業へ』の中で、ソリューション営業の限界について以下のように言及しています。

「今日の顧客は未だかつてなく豊富な情報を持っている。たいていの場合、顧客がサプライヤーに問い合わせる時点ですでに、解決すべき問題、利用できるソリューション、支払ってもよいと考える金額を顧客自身がはっきりと認識している。」

営業担当者がソリューションを提供しようと思って訪問した段階で、お客様は既に解決すべき課題もその方法も知っているほど、お客様は知識豊富で、企業内部は問題解決に対して機能しています。

このような情報過多な時代において、お客様が既に知識豊富な場合でも業績を維持、あるいは上昇させる営業スタイルとして台頭してきたのがインサイト営業です。

インサイト営業とは

「インサイト」とは、「人を動かす隠れた心理」を指します。インサイト営業は、お客様がまだ自覚していない「欲しいモノ」「解決方法」を見つけ、それを気づかせるという営業スタイルです。

前述したように、お客様が既に自社が抱える問題に気が付き、解決策にも気が付いているとしても、「まだ深掘りできる」場所があるでしょう。まだ企業が自覚していない発掘場所にインサイトが隠れていると言えます。

心理学者のフロイトが提唱した精神分析学では、人間の心を3つの領域でとらえています。1つ目は、欲望の主体である「自我(イド)」。2つ目は、必要となった時にも思い出せない記憶内容である「無意識」。3つ目が、日常的には思い出すこともないけれど必要となった時に思い出せる記憶内容を保持している「前意識」です。自我は心の中の氷山の一角にすぎず、ほとんどが無意識であるとフロイトは言及しました。

インサイト営業は、上記の自我と無意識の間にある「前意識」に着目することでお客様のまだ自社で発掘できていない課題、問題点、解決方法を掘り出します。前意識は、潜在的に人(企業)の中にあるにも関わらず、まだ意識上に上っていないため、自分(自社)では気が付かないものなのです。

そこに営業担当者が切り込み、「言われてみれば、そんなのが欲しかったんだ!」と気が付かせ、購買行動へ結びつけるのがインサイト営業だと言えます。

また、インサイトを見つけるためには、お客様に対して「より効果的な別の価値観」があることを気づかせるという方法もあるでしょう。

特に長年にわたって、同一の他社商品・サービスを購入し続けているお客様は、支持し続ける理由が特になくても「長年使っているから」と継続利用していることがあります。しかし、刻一刻と新しい商品やサービスが誕生しており、そちらに目を向けることで更なる効果や利便性が見込めることもあるでしょう。

インサイト営業では、このようにお客様の従来の価値観をいい意味で一度見直させ、新しい他の価値観を提示することができる営業スタイルなのです。

インサイト営業へのプロセス

ソリューション営業とインサイト営業の違い

ソリューション営業も、インサイト営業も、お客様の「ほしい商品・サービス」を提供するという点では共通する要素があると言えるでしょう。しかし、両者には明確な違いがあります。

それは、お客様がほしいと思う商品・サービスが必要と思うニーズが顕在化しているかどうかです。

ソリューション営業は、お客様に徹底的なヒアリングを実施し、お客様が抱えている課題や達成できていない目標を洗い出します。しかし、ヒアリングして出てくる課題や目標は、既に自社で自覚できていて、意識できているものです。

インサイト営業の場合、「ほしい商品・サービスに対するニーズ」は気づいていない、あるいは顕在化していません。お客様自身では「喉元まで出かかっているのに具現化できない答え」がインサイトであり、それを引き出すのがインサイト営業です。

なぜインサイト営業が重要なのか

アウトバウンド型からインバウンド型へ、その中でもソリューション営業を実施する企業が多かったにもかかわらず、インサイト営業に着目する企業が増えたのはなぜでしょうか。

今や十分すぎるほどのモノやサービスが溢れかえり、多くの営業担当者が従来通りのソリューション営業に限界を感じているからです。ソリューション営業からインサイト営業に切り替える企業の視点から、インサイト営業が支持されつつあるその理由についてご紹介します。

インサイト営業のメリット

ソリューション営業からインサイト営業に切り替える人が多いのは、それだけのメリットがあるからです。企業側からすれば、インサイト営業を実施する2つの大きなメリットがあります。

価格競争に巻き込まれずに済む

ソリューション営業では、企業の顕在化しているニーズをヒアリングし、解決するための手段や方策について提案します。

ところが、顕在化している、つまり多くの人の意識上に上がっているニーズは、競合他社も容易に把握でき、どの企業も同じような解決策を提示します。お客様は同じ価値のある解決策を提供してくれるなら、より安価な方を選ぶため、結局は価格競争に陥ることになるでしょう。

しかし、インサイト営業ではまだ顕在化されていない解決策を営業担当者が発掘します。お客様にとっては、競合他社にはなく、かつ自社が潜在的に必要としていたものを提示されるため、競合他社よりも価値を感じやすく、価格競争に持ち込ませずに済むというメリットがあるのです。

新しい市場を開拓できる

それだけではありません。インサイト営業によって顕在化したソリューションを商品化してしまえば、一気に新しい市場を開拓できる可能性があります。ソリューション営業では既に顕在化されたニーズがあるわけですから、インターネットがあれば解決策は山ほど出てくるのです。

一方インサイト営業は、お客様の潜在的な部分に解決策があるため、インターネットでいくら検索してもインサイト営業で得られる本質的な「ほしいモノ・サービス」には気づけないでしょう。

アウトバウンド型営業が結果重視、ソリューション営業がプロセス重視だとすれば、インサイト営業は顧客理解重視の営業スタイルです。

お客様の現状を十分に理解した上で、問題を打破するための、あるいは本当にお客様に必要な商品・サービスを提案するには、営業担当者のアイディアも重要になります。営業担当者がお客様のインサイトを発掘する力、インサイトを活用する力を身につけることができれば、商談化件数の上昇につながるでしょう。

インサイト営業のデメリット

ここまで読むと、価格競争に疲弊した営業担当者およびマネージャーにとってはインサイト営業の大功が際立ちますが、デメリットもあります。

目立つデメリットはただ1つ。営業担当者の力量が大いに問われるという点のみです。インサイト営業は、文字通り「insight(物事の実態を見抜く力、洞察力)」の高い営業担当者でなければ成立しません。

インサイトを発掘する方法はいくつかあります。たとえば、お客様にインタビューを繰り返して問題を深堀していく方法です。他にも、心理療法の1種である「文章構成法(文章の一部が空欄になっていて、被験者に空欄を適当な語句で埋めてもらう方法)」を用いて、潜在的に欲しているものを文章の空欄に投影させる方法も挙げられます。

このようなインサイトを発掘する方法は、誰もができるわけではありません。同じようにインタビューをしても、深堀できる質問ができるかどうかは、まさしく営業担当者の力量によります。文章構成法にしても、空欄を埋めた語句から、顧客のインサイトを予測できるかどうかは、営業担当者の洞察力によるでしょう。では、どうしたらインサイトを発掘する力量のある営業担当者を育成できるのでしょうか。

現在、SFAやCRMを導入し、営業担当者間にあるスキルの差を埋めて、全体的な営業スキルの底上げを図っている企業が増えています。確かに、SFA・CRMで優秀な営業担当者の商談フェーズやプロセスを「見える化」して共有すれば、基本的な営業スキルは標準化させることができます。

しかし、洞察力や物事の本質を見抜く力は、優秀な営業担当者のプロセスを後追いするだけで完璧に身につけることは難しいかもしれません。

ブレント・アダムソン氏らは、『ソリューション営業からインサイト営業へ』の中で、「営業担当者の活動ではなく、顧客の判定材料(顧客の言動の評価)だけを追跡・報告するようにした」ことによって、マネージャーは最適な方法で結果を出させることを可能にすると報告しています。

このことから、優秀な営業担当者から多くを学んだ上で、より深いインサイトを見抜けるような営業担当者になるために、お客様の判定材料(お客様の行動、興味・関心、文脈など)をしっかりと理解できるよう努めることが重要です。

AI営業に負けない新たな営業スタイルとは

顧客のニーズの大部分は企業によって吸い出された結果、既にカタチになって商品化・サービス化しています。そのため、既に満たされているようでありながら、まだお客様自身も自覚できていない部分に触れることが、これからの時代に必要な営業スタイルです。

なぜなら、お客様が自覚できることは、AI(人工知能)も予測できるからです。営業支援システムにもAIが標準搭載されてはじめているこの時代では、AIを上回る営業スタイルを確立する必要があります。

営業職は売上高の面でAIに勝るという研究がありますが、この研究におけるAI営業はこの時点ではまだカタチとしてあったわけではなく、仮想的なものです。

AI営業が現実のものとなった時、営業担当者がいかにAIよりも価値のある提案ができるかが重要となるでしょう。お客様のインサイトは、お客様の属性や状況などの文脈によって異なってきます。文脈を正確に読み取って、お客様に合った適切なインサイトを提示してあげることが、これからの営業活動で大切になってきます。

まとめ

WebサイトやSNSを駆使したインバウンド・マーケティングが盛んな今の時代では、アウトバウンド型の営業はもはや時代錯誤となってしまいました。インバウンド型へ切り替える企業の中でも、既にニーズが顕在化しているがゆえに価格競争に陥りがちなソリューション営業から、インサイト営業へと切り替える企業も今後増えてゆくでしょう。

もっと新しい方法で売りたい、もっと効果的方法で売りたい…という営業担当者およびマネージャーにとって、インサイト営業という営業スタイル自体が、ソリューション営業の中で見つかった「インサイト」であると考えられます。

お客様のインサイトを発掘するために、お客様が欲しかったモノ・サービスを掘り下げましょう。お客様の隠れた「欲しい」のスイッチを押すことができれば、他社と競合することなく、自社の価値を提示しながら商談フェーズを進めることができるでしょう。
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佐原 業平(さはら なりひら)

中央大学商学部を卒業後、2016年に新卒で株式会社コンベックスに入社。 新規開拓営業を経験した後、eBook・セミナー・研修のコンテンツの作成に従事。 そこで培った営業とマーケティングの知見を生かし、「セールスハックス」の運営に取り組む。 経営者から営業マンまで、ビジネス現場を理解したお役に立てる情報を発信。

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