働き方改革とは?経営者が知っておきたい営業組織の新しい働き方

新しい働き方

近年は、政府と企業が総力をあげて働き方の改革に向かって取り組んでいます。社会全体で、業務の効率化と生産性を高めていくことを目指しています。

その中で、営業部門も無駄な時間が多いと見られてしまいがちです。例えば、訪問先への移動時間や数々の会議、資料作成に割かれる時間など、営業マンの本業の営業活動の時間を圧迫してしまう業務が多くあります。

営業部門が効率よく成果を上げていくために、これからどのような新しい働き方をしていけばよいでしょうか?

今回は、経営者が知っておきたい新しい営業部門の働き方について解説します。

新しい働き方とは

近年、日本で注目されている「働き方改革」とは、わかりやすく言うとITを活用して業務効率を上げ、少ない人数で生産性を上げていくということです。また、若い人が急速に減少するという予測があるため、雇用形態を柔軟にして、女性や高齢者、外国人なども活用しましょうという趣旨もあります。 

従来の働き方

これまでの営業組織は、一般的には男性の正社員の営業マンを中心にした縦割りの組織が多かったと言えます。

新規開拓を中心に行う営業部門なら、1日に何十件飛び込む、あるいは1日に数十件~数百件も新規獲得の電話をかけるなど、いわば人海戦術の新規開拓の営業が中心でした。「足で稼ぐ」「断られてからが勝負」「ドアを開ければ開けるほど売れる」と、営業マンは動き回ることで成果を上げてきたと言えます。

また、既存顧客を担当している場合は、1日の訪問件数が2~4件。その後会社に戻り、日報を書いたり、お客様への提案資料などを作成します。会議資料や社内提出書類も多いため、夜中まで仕事することも珍しくありません。

営業部門は、残業手当がつかないかわりに歩合給が出る給与体系であることもあり、営業マン自身も仕事は時間でなく成果で評価されると考える方もいるかもしれません。そのため時短という概念もあまりなく、売上げを獲得するために長時間一生懸命に働いてきたのではないでしょうか。

もちろん、ノルマを達成しないと会社から厳しく責められるということもありますが、営業組織内で競争意識を持っているため、営業マン自身が仲間と切磋琢磨しながら自分の営業数字を伸ばし、トップセールスマンを目指し頑張ってきた面もあります。

新しい働き方

一方、最近は営業部門でも効率的な働き方が増えています。

営業活動の分業

営業の仕事を分業して、手間のかかるアポイント獲得をアウトソーシングしたり、社内のアルバイト、派遣スタッフ、あるいは在宅ワーカーなどを活用する手法です。例えば、Web問い合わせがあった場合に、アポイント獲得までをアルバイトや派遣スタッフが担当して、営業マンは商談を担当するということが挙げられます。

オンライン商談の活用

オンライン商談ツールも登場してきたため、インターネットの環境があれば、どこでもお客様と商談ができるようになりました。それを活用して、インサイドセールス部門を立ち上げ、アポイント獲得から契約締結まですべてオンライン上で完結できる企業もあります。

そのインサイドセールスには、女性スタッフや非正規社員も多く活躍されています。ITの力により、これまでとは違ったタイプのスタッフが営業現場で力を発揮できるようになりつつあります。

外勤の営業マンにとっても、遠隔地のお客様と商談する際にオンライン商談ツールを活用することができます。移動時間がかかってしまい訪問が難しかったお客様でも、効率よく対応することができます。

社内のコミュニケーション手段の簡素化

営業活動だけでなく、社内コミュニケーションの手段もITツールの導入で変わりつつあります。電話やメールの他に「Chatwork」や「Slack」などのビジネスチャットを活用する企業が増えつつあります。

特にメール作成は、「お疲れ様です。」などの定型文を入れるなど作成時に気を配る必要があり、意外に時間がかかります。ビジネスチャットの導入で簡単にコミュニケーションを取ることができるようになり、年間でかなりの時間を削減できることになるでしょう。

また、ビジネスチャットは、1対1のやりとりだけでなく、複数人に対して同時に情報を発信することができるため、営業部門内の情報の共有もスムーズになります。

Web会議の活用も一般的になりつつあります。2017年の独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、Web会議や音声会議などにオンライン会議システムを導入する企業が50%近くにまで増加しています。また、導入企業は移動時間の短縮、コスト削減、生産性向上につながったと実感しているようです。

必ずしも顔を合わせる必要がない会議をオンライン会議に切り替えることで、営業マンは外出先からもミーティングに参加できるため、無駄な移動時間を使う必要がなくなり、その分営業活動に専念できます。

セールスイネーブルメントという考え方の登場

近年、米国では営業マンに高度な能力が求められてきた環境に合わせて、セールスイネーブルメントという概念が登場してきました。セールスイネーブルメントとは、組織体制そのものを見直して、人事部や営業部門が連携して営業現場を支援する仕組みです。

一人の営業マンが飛び込み営業、テレアポなどの新規開拓営業やマーケティング力を駆使した集客、商談、既存のお客様のフォローまでを徹底するのはかなり大変です。また、近年はお客様の情報収集力が向上しているため、お客様は営業マンに、より専門的な知識や洞察力に富んだ提案を求めます。

多忙な中、すべてのお客様に最高の提案ができるのは、本当に優秀なスーパーマンのような営業マンに限られるでしょう。営業マンによっては、時間が足りずフォローしきれないお客様も出てくる場合もあります。

組織変革までは難しいかもしれませんが、営業の幅広い仕事の中で優先順位が低い業務や専門部門の支援が必要な業務を分業し、他部門が支援することができるはずです。どのような営業マンでも安定した成果を出せるようにするという考え方は、日本の企業にも参考になるかもしれません。

新しい働き方の形態

ここでは、営業マンを採用する際の雇用形態について解説します。近年は、正社員だけでもさまざまな雇用形態があり、非正規社員、フリーランス、副業社員などの比率も増えています。

正社員の営業マンが採用できない企業であれば、雇用形態を柔軟にすることで、遠隔地の人材や女性・外国人・高齢者など、事情によりフルタイム勤務や通勤が難しい人材を活用できるようになります。

なぜ新しい働き方が必要なのか?

そもそも「働き方改革」が推進される背景には、日本の若者が急速に減っているという問題があります。この減少ペースは日本が歴史上初めて体験することであり、1週間に10,000人減少するペースと表現されるくらいの速さです。これからの時代、営業部門の管理職は若い男性の正社員だけでなく、さまざまな層の人材を柔軟に活用していく必要が出てくるかもしれません。

総人口の推移と推計

出典:内閣府『地方創生に関する現状について』

正社員

正社員は営業組織の主戦力であり、これからもそれは変わらないと言えます。長期雇用が前提の正社員だからこそ、企業は大きな売上げ目標を掲げることができます。営業は新規開拓を始めてから契約が成立するまで、さらにはその企業の売上げが大きく伸びるまでにかなり時間がかかります。営業マンも正社員で働くからこそ自分の努力の成果を見届け、報酬を受け取ることができると言えるでしょう。

長期雇用を前提とした正社員という制度は、企業にとっては、人材を長期的な視点で教育できるメリットがあります。社員にも心理的安心感があり、腰を据えて仕事に取り組め、その企業内でのキャリアプランを真剣に考えることができます。昨今は、エンゲージメントという概念に企業が注目しつつありますが、企業がある程度安定した雇用を保証し社員を熱心に教育すると、エンゲージメントは高まります。

企業の持続的な成長のためには、その企業の将来を真剣に考える核となる人材が必要です。長期雇用を前提とした正社員という制度は、企業と社員それぞれにメリットがある制度だと言えるでしょう。

派遣・アルバイト

派遣スタッフやアルバイトを上手に活用している営業組織もあります。派遣スタッフは営業経験者が多いため、基本的な営業スキルは一から教育する必要がないことが多く、自社の営業の流れや文化を教えるだけでよいというメリットがあります。

ただし、派遣スタッフやアルバイトは勤務できる期間が短い場合も多いので、新規開拓のアプローチから比較的短期間で受注できる商品・サービスを扱う場合、特に適していると言えるでしょう。また、モチベーションを高く保ってもらうためには、それなりの高い時給やインセンティブは必要です。

フリーランス

昨今はフリーランスの営業マンも増えています。フリーランスとして独立するということは、ある程度営業力に自信がある人たちです。

一般に雇用契約ではなく業務委託契約を結びます。採用支援会社がフリーランスの営業マンを紹介してくれる場合もあります。勤務時間、出社日数は契約内容によって異なります。正社員と同様に週に5日勤務とする場合もあれば、週に2日程度の出社で、勤務時間のしばりもなく成果報酬とすることも可能です。

しかし、完全成果報酬型の給与体系だと、場合によっては単なる代理店のような感覚となり、それほど営業に力を入れてもらえない可能性もあります。なぜなら、一から営業開拓してもらうとなると、やはり成果が上がるまでに一定の時間がかかってしまうからです。本人の人脈や顧客ネットワークに販売してもらうか、余ほど高額のインセンティブがある場合は効果的です。

雇用形態別の勤務時間

新しい働き方の勤務時間

昨今は、企業の勤務時間も柔軟になりつつあります。ここでは営業部門の勤務時間について解説します。

フレックスタイム制度

フレックスタイム制とは、勤務時間に自由度を持たせる制度です。コアになる出社時間を定める「フレックスタイム制」と出社時間も退社時間も自由な「スーパーフレックス制」の2種類があります。営業マンは、外勤業務が多いためフレックスタイム制度があると、通常の勤務時間外にまたがるアポイントの時間などに合わせることが可能です。

大きなデメリットはない制度ですが、会議やミーティングの調整などがやや難しくなるため、全員がオフィスにいなくてもミーティングが実施できるように音声会議やWeb会議システムを活用するなどの工夫はしたほうがよいでしょう。

短時間勤務

近年は、1日6時間の短時間勤務制を導入する企業も増えています。短時間勤務には育児・介護休業法の改正によって企業に導入が義務づけられた短時間勤務制度と各企業が独自に導入する短時間勤務があります。

拘束時間が6時間となることで、子育てや介護に従事する営業マンも仕事を続けることが可能です。企業にとっても優秀な人材が家庭の事情で退職したり、仕事と家庭の両立で体力を消耗することを防ぐことができます。

一般の営業マンにとっても、拘束時間が少なくなることは1日の自由度が増すということであり、キャリアアップのための勉強やレジャーなどでストレスを解消できるかもしれません。

ただし、営業マンの場合は、連絡時間や訪問時間をお客様に合わせる必要があるため、6時間で業務が終了できない場合もあります。現場の状況を考慮して導入しないと、単に業務時間外の仕事が増えるだけとなりかねません。

営業マンに限った話ではありませんが、フラリーマンという言葉も登場しています。早い時間に退社しても、暇を持て余してフラフラするだけの中高年社員も増えており、従業員の休息と成長を期待している企業の思いどおりの効果がでない可能性はあります。

また、営業マンのなかには営業が好きなため良い意味で仕事もプライベートも区別がなく、普段からお客様への企画などを頭のなかで考えているようなタイプの人もいます。むしろ会社で集中してもっと仕事がしたいタイプの人もいるため、6時間で帰らなければならないこと自体が不満の原因になってしまうこともあるでしょう。

朝方勤務

早朝に出勤して夕方早めに帰る「朝方勤務」という形態もあります。通勤電車はすいており、取引先からの電話もないため集中して業務に取り組むことが可能です。

しかし、早く出社したものの夕方早めに帰りにくい職場風土であったり、業務が多く早く退社できないという状況であったりすると、単純に勤務時間が長くなるだけになってしまう危険性もあります。

勤務時間を変える際の注意点

近年の働き方改革では、残業時間の規制、定時退社、短時間勤務が奨励されています。ただし、昔から裁量労働制で直行直帰が許されていた営業組織の場合、時間を調整して生産性を上げるという考え方はあまりピンとこないかもしれません。企業にとっても、みなし労働時間は含まれているため残業代削減にはなりません。

拘束時間が短くなることで、より自分の働き方の自由度が増し、それが創造的な仕事への活力につながる可能性はあります。また、定時退社をしづらい風土の企業にとっては、フレックスタイム制や短時間勤務制度、朝方勤務などを取り入れることで、営業マンの満足度が高くなる可能性はあります。

勤務時間を見直すか否かは、現在の自社の労働状況を鑑みて決めるべきでしょう。

新しい働き方の勤務場所

近年は、インターネット環境とパソコンやスマートフォンさえあれば、いつでもどこでも仕事ができる時代です。このような時代の中で、営業スタイルや営業する場所も変化しつつあります。

在宅勤務

最近は、インサイドセールスが普及してきています。営業マンは、必ずしも外出して営業しなくても商談をすることができるという概念に変わりつつあります。営業活動の内容によっては、在宅のスタッフにテレアポやインサイドセールスなどを任せることもできます。子育てや介護のためにフルタイムでは働けない人材に、在宅ワーカーとして活躍してもらうことが可能です。

オンライン商談

オンライン商談ツールを活用すると、営業マンも移動時間や交通費が削減でき、1日の商談件数を増やすことができます。オンライン商談といっても、パソコンの画面上で顔を合わせ、資料を画面共有しながら説明できるため、対面で商談を行っているのと同じような商談を行うことができます。

お客様も、電話をかけてきた営業マンの話に興味があれば、そのままオンライン上で対面で話すことができ、アポイントを設定する場合も隙間時間の15~20分を使うことができるなど、業務効率化が図れるメリットがあります。オンライン商談ツールの登場により、営業マンがお客様に訪問をしなくても商談ができるようになったことは大きな変化だと言えるでしょう。

しかし、ずっとデスクで人と折衝することは疲れやすいものです。インサイドセールスで、1日6~8件の商談を仮に入れることができたとしても、休息時間を適切にとれるようにするよう重々注意する必要があります。

新しい働き方を実行するためには

働き方改革が推進される流れにより、自社の制度を改めて整え始めている企業も多いかと思います。そのような中で、最近になって働き方改革が「働かせ方改革」であるとか、残業時間が減ってしまい従業員の生活が苦しくなったなどさまざまな課題も出てきています。

そもそも働き方改革とは生産性を向上させることが目的ですが、単純に業務時間を減らせばよいというものではありません。まずは無駄な業務を減らすなど、業務フローを効率化する必要があります。近年は営業のパイプライン管理を行っている企業も多いと思いますが、営業の工程管理だけでなく社内の手続きも徹底した効率化が必要です。

また、昨今は取引先企業も働き方改革に取り組んでいるため、お互いの業務効率化という名目でITツールの活用を依頼してもむしろ歓迎されるかもしれません。

業務効率化の手法例

  • 社内の無駄な業務、重複している業務などの廃止や業務フローの見直し
  • 社内の稟議手続きをITシステムにより簡略化
  • 会議をWeb会議や音声会議用のシステムによりの簡略化
  • 契約業務をクラウドサインの導入により簡略化
  • 営業支援ツールの導入による営業マンの負担軽減 など

とはいえ、必要以上に効率化しないでもよい時間はあります。それは休息の時間です。営業マンは感情労働の一種です。商談の時間は30分から1時間とはいえ、その間交感神経を張り詰めています。これまでは無駄だと批判されていた移動時間が、脳を休める役割を果たしていた面もあります。今後は営業の業務がより効率化されていく可能性があるため、効率化で削減できた時間を休む時間に適度に割り当てる必要もあるでしょう。

まとめ

近年の営業職はかなりの知的労働です。収集すべき情報は多く、お客様の役に立つために斬新な企画を考える必要もあります。また、常に自分のモチベーションを維持しなければ、高い成果は望めません。体力勝負ではなく、頭脳も精神もフル回転する仕事が営業なのです。

まずは、社内の無駄な業務を効率化し、営業マンが商談や企画提案に割く時間を増やしていくように努めましょう。あまりに労働時間削減のみを意識するのではなく、売上げを上げるための仕組みづくりや新規開拓手法を導入していくなど、創造的な領域に力を入れることが重要です。

創造的な業務を行うには、ぼーっとする時間も必要だと言われています。近年は、脳は何もしていないときの方がむしろフル回転しているという研究結果が出ています。成果を上げるためには営業マンが自由に使える時間をある程度確保したほうがよいかもしれません。

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佐原 業平(さはら なりひら)

中央大学商学部を卒業後、2016年に新卒で株式会社コンベックスに入社。 新規開拓営業を経験した後、eBook・セミナー・研修のコンテンツの作成に従事。 そこで培った営業とマーケティングの知見を生かし、「セールスハックス」の運営に取り組む。 経営者から営業マンまで、ビジネス現場を理解したお役に立てる情報を発信。