近年はビジネスシーンでSMSの活用が進んでいます。賃貸物件の更新手続きの案内、お客様へのギフトカードやアンケートの送付、セミナーやイベント日程のリマインド通知など、相手に必ず読んで欲しいメッセージを送るときにSMSはとても有効なツールです。
SMSは、大手キャリアの携帯電話にデフォルトで搭載されているため開封率が高く、多くの人が目を通します。電話番号さえわかっていれば簡単に送れる手軽さも魅力で、BtoC領域では営業活動にSMSを活用して成約率を高める企業も増えつつあります。
本記事では、営業活動のどのようなシーンでSMSを使えばよいのか?SMSのメッセージはどのような内容が効果的かなど、実際の例も提示しながら活用のポイントをご紹介します。
SMS(ショートメッセージサービス)とは
SMS(ショートメッセージサービス)とは、携帯電話番号にテキストのメッセージを送ることができるサービスです。ドコモなら「ショートメール」、KDDI(au)では「Cメール」と呼ばれることもあります。
SMSはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなどのキャリアの携帯に標準搭載されており、異なるキャリア同士でも送受信が可能です。
日本ではコミュニケーションツールというよりも、キャリアからの重要なメッセージ、台風や地震など災害情報の緊急連絡に使われている印象が強いかもしれません。
しかし、海外ではSMSのビジネス活用は一般的であり、見込み客へ高速で到達する手段して営業活動に積極的に使われています。日本でも最近は活用が進みつつあります。
SMSの特徴
- 電話番号さえわかれば送信できる(個別でアプリのインストールが不要)
- 開封率が非常に高い(多くの統計で90%以上)
- 送れるのは短文のテキスト(670文字まで)
- 送信は有料
- 受信は無料(お客様に負担はなし)
SMS活用例
- 保険会社の契約更新の連絡
- 宅配会社の配達日時の連絡
- 不動産会社からの更新時期の連絡、家賃の督促通知
- 不動産売却査定業界のおすすめ物件の案内
- ホテル、飲食店などの予約リマインド通知
- ギフトカードの送付、アンケート依頼、他
SMSの種類
SMSには、大きく「個別SMS」と「一斉配信SMS」の2種類があります。
個別SMS
個別SMSとは、個人の携帯から相手の携帯へ一通一通発信するSMSです。あるいはシステム経由のSMSでも返信ができ、個別にコミュニケーションのとれるSMSのことを指します。
個別SMSには、送信数の上限があります。2021年8月現在、大手キャリア3社の上限は1日200通までです。そのため、大規模な一斉アンケート調査などには適さないのですが、営業マン個人からお客様への連絡などには問題なく活用できます。
SMSの価格は、キャリアによって多少異なりますが、文字数によって1通3円~33円までと細かく設定されています。例えば、NTTドコモなら、全角1~70文字まで=1通3円、336~402文字まで=1通19円、604~670文字=1通33円です。
一斉配信SMS
一斉配信SMSは、システムから一斉送信で配信され、返信することができないSMSです。
一斉配信SMSを送る方法には、携帯キャリアの一斉配信機能を使う方法と、一斉配信サービス提供会社のサービスを使う方法の2種類があります。
一斉配信SMSの場合、送信数の上限はありません。また、サービス企業によって「長文機能」「短縮URL機能」「エクセル・PDF送信機能」など多彩な機能があります。
顧客数の多い企業ならアンケート調査、展示会・ウェビナーのリマインダーなどを簡単に完了できるためとても便利です。
一斉配信SMSは、URLを記載して別なコミュニケーションチャネルに誘導することはできます。ただ、受信者が返信できないところが課題です。サービス企業によってはチャット機能があります。
2021年6月からは、大手キャリア3社がSMS送受信の際に「共通番号」を使用することになったため、共通番号を使って受信者から問い合わせや、アンケートの回答をもらえるようになるなど双方向コミュニケーションがこれまでより容易になります。ますますSMSの活用は広がるでしょう。
送信数上限なしで送れる一斉配信SMS(ドコモの例)
(画像出典:NTTドコモ)
なぜSMSの活用が有効なのか
ここでは、なぜ営業活動にSMSを活用すべきか?その理由を解説します。
到達率・認知率が高い
日本の携帯電話普及率(ガラケー・スマホ・PHS含む)は、今や100%を超えて213.9%です。SMSは携帯電話に標準搭載されておりデフォルトでONとなっているため、到達率・認知率が非常に高いところが特徴です。
今どきはPCを持っていない人、メールを使わない人はいても、携帯電話を持っていない人はほとんどいません。SMSは幅広い年代の層にリーチできる貴重なツールと言えるでしょう。
米国のデータでは、82%の人がSMSメッセージの通知をオンにしています。つまり携帯電話を持つ約8割以上の人にSMSは到達するということです。SMSは重要な内容のメッセージがくる認識を持たれているため、メールや電話にくらべ配信停止、着信拒否をしている人もあまりいません。
特に日本ではこれまで活用が進んでいなかったため、逆にマイナスイメージがついていない点も魅力でしょう。
開封率が高い
SMSはメールに比べて開封率が高いところも特徴です。別な米国の統計ではSMSの開封率は98%というデータが出ています。開封しただけでなく内容を見る確率も82%という高い数値です。
(Dexatel.comのデータをもとに当社で作成)
国内も、キャリアによって若干異なりますが、KDDIのサイトで開封率80~90%とあるように、総じて開封率は高いことがうかがえます。
ちなみに、世界のメールの開封率平均は、米国のメールプラットフォーマーCampaign Monitor社の2020年世界1,000億件以上のメール分析結果によると、平均開封率18%です。
みなさんの中にも朝、まず不要なメールメガジン、営業メールを読まずに削除するタスクから始める人は多いのではないでしょうか?SMSは重要なメッセージがくるという印象、長くても670文字なのでパッと読めることなども影響してか、今のところ開いて読まれる率がダントツに高いツールです。
電話番号だけで送ることができる
SMSは電話番号だけで送ることができます。メールアドレスは英数字のスペルが間違っていただけで届きませんが、SMSなら登録した電話番号をタップすれば簡単に送信可能です。
電話番号だけでメッセージを送れるため、パソコンを持っていなかったり、メールやLINEを使わない中高年~高齢者にも文章でメッセージを届けられます。
- ガラケー保持者にもとどく
- フェイスブックなどのSNS、LINEをしない層にもとどく
- PCが使えない高齢者にもとどく
若者は、メールよりLINEやSMSをコミュニケーション手段として使う人が増えています。電話番号さえわかれば、若者から高齢者層までメッセージを届けられるところがSMSの強味です。
(参照:PRTIMES 『若者のライフスタイルに関するアンケート調査』)
返信までの時間が短い
企業からお客様へメール送信した場合、返信をもらえるまでに1〜2日かかってしまうことは珍しくありません。一方、SMSはレスポンスが速いところも特徴です。米国のデータではSMSの平均応答時間は約90秒です。
もちろん、送るメッセージの内容にもよるでしょう。例えば、当社の住宅不動産業界のSMS返信時間を見ると、30分以内にかなりの人がSMSで返信します。少なくとも不動産業界については、他のコミュニケーションツールより相当にレスポンスは速いことがわかります。
(自社サービスDigima上のデータで集計)
電話番号は変更が少ない
SMSは以前からEC業界でよく活用されています。ECシステム構築事業などを行う株式会社エルテックスの2018年の調査では、コミュニケーションツールとしてSMSの利用が増えつつあり、「顧客とのリレーションを重視するすべての業態にSMSは利用価値が高い」とレポートされています。
同調査によると、実際にSMSを活用している企業がSMSを好む理由は以下の通りです。
参照:PRTIMES(「通信販売事業関与者の実態調査2018年版」ー 株式会社エルテックス)
SMS活用シーン例
ここでは、営業活動でのSMSの活用シーンの例を紹介します。以下のように他のツールと組み合わせて上手に活用しましょう。
電話後のフォロー
一括見積サイトやWebページから問い合わせがあった際に、他社の営業マンよりいちはやく電話をかけることは成約率に直結します。しかし、今は見知らぬ電話番号に出ない人が増えてきたため、もう一工夫必要です。
電話で繋がらなかった際に、「先ほどご連絡しました〇〇社の山田です。▲▲の件でご連絡しました」と、タイミングよくSMSでフォローをするとお客様は安心感を覚えます。場合によってはSMSで返信をもらえますし、次回の電話で繋がる確率を上げやすくなります。
ちなみに、米国Velocify社の調査では、電話連絡後にテキストメッセージを送信すると、コンバージョン率が112.6%に高くなったというデータがあります(電話前に送った場合は逆に下がっているため順番にはくれぐれもご注意ください)。
電話後のSMSには、必ず先に電話したことを明記して、発信電話番号も記載しましょう。
メール後のフォロー
電話でなくメールで最初にアプローチする営業マンも多いかと思います。メールは初回のツールに適していますが、コロナ禍になり企業からの営業メールが激増したため、営業メールを送っても見られてない可能性もあるでしょう。メール送信10分後にフォローのSMSを送ることがポイントです。
それによりメールを見てもらったり、別チャネルでのコミュニケーションラインを確立できるようになります。
見積もり送付や事例送信、おすすめ物件の紹介など特に重要な内容の際は、SMSを送り、かつお客様が返信しやすいように、一文字入力で返信できるようにするなど工夫することがお客様と繋がるコツです。
例:査定金額見積もりメール送付後のSMS
リマインド
イベントや来店・来場の予約ができた場合には確認のリマインドを入れることで、来店来場率を上げることができます。メールや電話でもよいのですが、SMSの方が認知されやすいのでおすすめです。1週間前や前日にSMSを送信するとよいでしょう。
急なハプニングによる時間変更など至急の連絡をする必要がある場合も、SMSなら素早く相手にメッセージを届けられます。
ヒアリング・アンケート
SMSでお客様へ確認したいことやアンケートのリンクを送ることもできます。例えば、不動産売却査定業界の営業マンであれば「売却の検討期間」を選択肢にして返信してもらうと、各お客様の検討ステージがわかり、それぞれに合わせたフォローをできるようになるでしょう。
以下のように導入検討時期について簡単なアンケートを送り、番号だけで答えてもらいましょう。
- なるべく早く
- 1ヶ月~6ヶ月
- 6ヶ月~1年
- 上記以上
そうすると以下の図のように見込み客をざっくりと3種類に分類できます。この中で「いますぐ客」のお客様への提案はスピードが勝負なので、できるだけ早くアプローチします。「そのうち客」「まだまだ客」の方には、押しすぎると逆に迷惑がられる可能性があるため、ほどよい距離感を保ちながらじっくりと営業します。
営業シーンに合わせてSMS活用方法を使い分ける
SMSは営業シーンに合わせて使い分ける必要があります。リマインドなどは一斉配信でもいいのですが、後々できるだけ個別のコミュニケーションにもっていくことが重要です。
一斉配信でも「お客様の姓」と「担当者の姓」を自動で差し込んで個別SMSのように送ることがポイント。こういった一工夫が、後々、個別に繋がるときの布石になります。
営業活動はあくまでお客様と営業マンの1対1の双方向コミュニケーションが重要。一斉メールで心が動くお客様は少ないのはご存知のとおりです。「自分あてにメッセージを送ってくれているんだな」と感じられることが大切なので、個別SMSに見えるようにカスタマイズして返信もしっかりできる仕組みにしましょう。
また、SMSはメールマガジンのように、時期を開けて定期的に回数送れば効果が上がるというものではありません。毎回、電話やメールの後に送る必要もありません。あくまで営業の流れを考慮して、以下のような感じで「ここぞというとき」に送ることがポイントです。
- メール → メール → SMS → メール
- 電話 → SMS → メール → メール
そのためには、各ツールの長所・短所を理解しておきましょう。
各コミュニケーションツールのメリット・デメリット
SMSは強力な武器、しかし使うためには大きな責任が伴う
最近は、SMSを唐突に送った企業がTwitter等でさらされてしまうような例もあります。
開封率90%以上、若者から高齢者まで幅広い層にリーチでき、返信率も高いSMS。電話番号あてに簡単に送れてお客様に行動を起こしてもらう力も強い、という素晴らしく強力なツールだからこそ、慎重に扱う必要があります。
SMSはかなり強いプッシュ感があり心理的距離も近いツールです。人間関係ができていない初めの段階でお客様にアプローチしてまうと、恐怖と猜疑心が生まれ、逆に信頼を失い、前述の米国Velocifyデータのように、コンバージョン率が逆に下がってしまうリスクがあります。
また、頻繁に送りすぎないようにしましょう。現在はSMSを活用する企業が少ないため着信拒否をする人が少なくても、今のメールマガジンのような状況になれば同じように読まれなくなったり、購読解除されてしまうでしょう。
営業活動全体の中で、きちんとしたコミュニケーションのシナリオを設計した上でSMSを扱うことが大切です。営業マン個人でSMSを活用する場合は、自分が営業される立場であれば、最初に何でアプローチされたらきちんとした会社という印象を持つか? その後SMSが届くとどのように感じるだろうか? とイメ―ジして考えてみましょう。
企業としてSMSを使う場合は、個々の営業マンにSMSの運用をまかせると新人営業マンが勇み足をするケースも想定されるので、管理職の方が自社の営業ワークフローをしっかりと作成して、SMS運用の簡単なルール(どのシーンで送るか、メッセージの内容等)を決めるとよいでしょう。
まとめ
日本人のほとんどが携帯電話を持っています。スマートフォンの普及率も60%を超えており、今はスマホはお客様の分身ともいえる存在になっています。朝起きてすぐスマホを見る人、暇ができたらスマホを触る人も多く、大半の人がスマホを常にチェックするようになりました。
SMS自体は昔からあるのですが、スマホの普及とともにコミュニケーションツールとして見直されるようになりました。日本ではまだあまり活用が進んでいないSMSだからこそ、早めに営業活動に活かした企業は多くのお客様と繋がることができるでしょう。
SMSの活用は単独で考えるのではなくマルチチャネルで考えることがポイント。ランダムに送らずしっかりした営業ワークフローにそって活用することで効果を発揮します。
こちらから「営業ワークフローと営業ツール標準化《実践ガイド》」がダウンロードできます。あわせてご覧いただきSMSの有効活用に活かしていただければ幸いです。