リーダーシップがある営業トップに共通する6つのスキル

リーダーシップ 営業トップ

企業の売上げ、収益を担う営業部門は、景気の良し悪しに関わらず高い数値目標を掲げ、それを達成するのが使命です。営業部門のトップには部下のモチベーションを高め、目標を達成させていく強いリーダーシップが求められます。

しかも、近年は社会やビジネススタイルの変化が非常に速いため、営業戦略を立てるにも以前より高度なスキルが必要です。かたや、日本の人口は急速に減少しています。若くて優秀な人材を各企業が取りあっている状況のため、営業部門の戦力不足に悩む中堅・中小企業も多いでしょう。

このような厳しい環境では、営業部門を率いるトップのリーダーシップはより重要になっていきます。市場の変化を素早く察知して現実に適した営業戦略を構築し、いろいろな個性の部下を育成しながら、目標を達成していかなければなりません。

今回は、これからの時代に営業部門のトップに必要なリーダーシップを発揮するためのスキルについて解説していきます。

営業トップとしてリーダーシップを発揮するには

営業部門のトップとなる方は、営業現場からのたたき上げ社員がほとんどなため、営業力については人並み以上のスキルがあることが多いと言えるでしょう。

しかし、「良きプレイヤーが必ずしも良きリーダーにあらず」といわれるように、優秀な営業マンがマネジメント職につくとあまり力を発揮できないケースがあります。

営業マン、マネージャー、営業部長では、それぞれ求められるビジネススキルや心構えが異なります。ビジネスマンは昇進・昇格とともにより高度なスキルを身に着け、包容力や忍耐力などの人間力も磨いていく必要があるのです。 

まず、簡単にリーダーシップの基本について説明します。リーダーシップというと小説のヒーローのような、持って生まれた資質で決まる能力というイメージがあるかもしれませんが、長年の研究により、「リーダーシップ=身に着けることができるスキル」であることがわかっており、強い企業や組織はリーダーシップ教育を実施しています。

「EQ こころの知能指数」の著者として有名な米国の心理学者、ダニエル・ゴールマン氏は、リーダーシップには以下の6種類のタイプがあることを研究発表しています。

リーダーシップの6つのタイプ

『EQリーダーシップ 成功する人の「こころの知能指数」の活かし方 -日本経済新聞社』をもとに作成

また、ゴールマン氏の研究によると、最高の成果を出すリーダーは、状況に応じて絶えずリーダーシップのスタイルを変えることが判明しています

一般のビジネスマンにとって、この6つのスタイルを切り替えながらリーダーシップを発揮するのはかなりの高等スキルかもしれません。しかし、営業現場でコミュニケーション力を磨いてきたリーダーであれば、コーチ型とベースセッター型、強制型を状況に応じて使い分けられる方もいるのではないでしょうか?

基本的には自分の性格に合わせたリーダーシップのスタイルをモデルとし、人間力に磨きをかけていくことが早道だと言えるでしょう。

そして、同時に営業部門のトップとしてビジネススキルや経営能力に近い戦略構築能力を高めていく必要があります

信頼される営業部門のリーダーになるための6つのスキル

営業部門のトップには、リーダーシップのスタイルに関係なく、必要な共通のビジネススキルがあります。企業の規模や部下の人数によっても多少は異なりますが、最も求められるのはビジョンを描き、戦略を構築し、部下を率いていくスキルでしょう。

大勢の部下から、尊敬や信頼を得て「あの人に評価されたい」と思われるようなリーダーシップを発揮するには、高いビジネススキルが必要です。以下、営業部門においてリーダーシップを発揮するために必要な6つのスキルを紹介します。

1. ビジョンを描く力

リーダーシップを発揮するために必要なのは統率力です。そのためには、営業部門のリーダーとしてチームの理想とするビジョン・目標を掲げ、自分たちが顧客にどんな価値を提供していくのか、どのような戦略で他社に打ち勝っていくのかを部下に納得させる必要があります。

一例を挙げれば、近年は部下を育成し生産性を上げる手法としてOKRという目標管理手法が注目されています。「ムーンショット(ケネディ大統領が月面着陸を目標に掲げたことに由来している目標)」と呼ばれるほどの大きな目標を打ち出し、全員でチャレンジしていく手法です。

これは100%達成するのは非常に困難で、「もし達成したら周囲から素晴らしいと称賛されるような大きな目標」が前提であるため、そうそうは達成できないのですが、たとえ達成できなくても大きな目標にチャレンジする過程で人の能力が飛躍的に成長する効果が注目され、Google、メルカリをはじめ日米のベンチャー企業が積極的に導入しています。リーダーのビジョンは部下の動機付けになるのです。

2. 営業戦略、営業戦術を構築するスキル

近年は社会もビジネス環境も急速に変化しています。営業の世界でリーダーシップを発揮していくには、古典的な営業スタイルも踏襲しつつ、時代に合った営業戦略、営業戦術を構築していくスキルが必須だと言えるでしょう。

例えば、営業マンが不足しているのであれば、インサイドセールス部隊の増設や、テレマーケティングの外注などを検討し、営業マンには重要な案件に集中してもらうなど、営業組織の編成から考え直すことが大切です。

BtoC企業であれば、デフレなのかインフレなのか、あるいは他社の打ち手の変化によって商品価格、品ぞろえを俊敏に変えていくセンスも必要でしょう。過去に成功した営業戦略が常に通用するとは限りません。市場の変化を的確にとらえながら営業戦略を考えていく必要があります。

また、往々にして部下には、持って生まれた個性で何となく売れている営業マン、頑張っているつもりで行動量が少ない営業マン、商品に自信を持っていない営業マンなどがいるものです。営業部門でリーダーシップを発揮するには、3C分析、ランチェスター戦略、KPIなど、営業戦略・戦術についての理論や活用法を学び、部下にも指導しながらPDCAを回していく必要があります。

3. EQ(こころの知能指数)と SQ(社会的指数)

 EQとは簡単に言うと、意欲やコミュニケション力、忍耐力、思いやりなど、自分をコントロールしながら周囲と協調していける能力であり、リーダーシップに必要だとされています。前述のゴールマン氏は、近年はEQを拡張させたSQという指数を提唱していますが、SQとは社会性や社交性などの他者とのより高度なコミュニケーション能力のことです。

ゴールマン氏の研究によるとSQの高いリーダーと低いリーダーは業績に大きな差があり、優れたリーダーはSQが発達しており、常に内省しながら他者や社会に対しても集中力を発揮し、状況にいち早く対応する特徴があるそうです。

どれだけ万全な営業戦略を立てても、競合企業の戦略や顧客のニーズが常に変化するなか、営業戦略が功を奏さない場合は出てきます。しかし、そのときに営業部門のリーダーに必要なのは環境や原因を分析し、部下のせいにするのではなく内省し、次の打ち手を迅速に考えていくリーダーシップだと言えるのでしょう。

4. コミュニケーション力

営業部門のリーダーに、最も必要なのは部下育成能力だと言っても過言ではないかもしれません。実力にばらつきがある営業マンたちの能力を全員底上げできれば、売上げの向上が期待できるからです。

しかし、営業現場で顧客とのコミュニケーションが抜群だったからといって、部下とのコミュニケーション能力が高いとは限りません。部下を育成するためには、コーチング(相手の話を聴くことに徹しながら、ときに効果的な質問をすることで気づきを促し、目標達成を支援していく手法)を身に着けるなど、対部下のコミュニケーションスキルを高めていく必要があります。 

営業マンといっても、新規開拓営業が得意、既存顧客深耕が得意、プレゼンテーション能力が高いなど個性や長所はさまざまです。営業部門でリーダーシップを発揮するためには、部下の個性や潜在能力を認めて、相手の性質に合わせたコミュニケーションをとるスキルを身に着けましょう。

5. ファシリテーション力

ファシリテーションとは、営業現場においては、部下を支援したり、部下同士の相互理解を促したりしながら、営業チームに意見や提案を出しやすい雰囲気を醸成し、営業マンのモチベーションが上がるチーム環境を作っていくスキルです。 トップダウンではなく、あくまで部下たちが自発的に動いていくことを支援します。

近年はチーム営業という組織形態も増えていますが、多くの営業会社では営業マン同士はライバルであることもあるため、情報の共有化が円滑でない場合があります。

たとえ、SFAを導入してもチームワーク意識が低ければ、貴重な情報は集まりにくくなるでしょう。自分たちにとって「敵」とは競合企業であり、同僚は良きライバルであるとともに良き仲間であると思えるような風土をリーダーは作り上げていく必要があります。

スポーツでもビジネスでもチームワークがいい集団は強いものです。営業部門のリーダーにとってファシリテーションスキルは非常に重要だと言えるでしょう。なお、相手の成長を促すための支援とは実は加減が難しく、安易に助けることもマイナスです。簡単そうに見えてなかなか奥が深いスキルなのです。

6 . 巻き込む力

営業部門のリーダーには影響力がなくてはなりません。部下はもちろん、他の部署を巻き込んで一つの目標に向かっていくスキルが必要だからです。近年は、セールス・イネーブルメントという概念が登場しているように、有効な営業戦略を実行し目標を達成していくためには、経営陣、マーケティング部門、人事部門などの協力が必要になりつつあります。

もちろん、他部門とは日ごろからコミュニケーションを円滑にとることが大切です。ただ、部署同士の利害関係が相反するケースもあり、うまくいかないことも出てくるでしょう。

しかし、営業部門のトップと言えばいわば経営幹部に近い存在です。そして、経営陣よりも他の部門よりも市場の変化を理解しているはずです。時代に合わせた営業組織のスタイルを経営陣や人事部に提案するなど、経営目線での営業改革を、周りを巻き込みながら実行できるリーダーシップがあることがより望ましいと言えます。

まとめ

近年は、リーダーシップとは一つのスキルであり、ほかのビジネススキルと同じように身に着けることができると言われています。もちろん、どんな職場でもリーダーシップを発揮する前提として、実績があることや実務能力の高さは必要です。

それに加え、営業現場でリーダーシップを発揮するためには、自分の仕事は「部下が成長し、実力を発揮できるような環境を整えていくことである」という心構えを持つ必要があります。さらに、時代の変化に適応した有効な営業戦略を打ち出していくスキル、PDCAを回していく実行力なども必要になってきます
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佐原 業平(さはら なりひら)

中央大学商学部を卒業後、2016年に新卒で株式会社コンベックスに入社。 新規開拓営業を経験した後、eBook・セミナー・研修のコンテンツの作成に従事。 そこで培った営業とマーケティングの知見を生かし、「セールスハックス」の運営に取り組む。 経営者から営業マンまで、ビジネス現場を理解したお役に立てる情報を発信。