マネジメントスキルとは?管理職が高めるべきスキル

マネジメントスキル

管理職においては、かねてからマネジメントスキルが求められています。そして、グローバル化やインターネットの普及によりビジネスの環境変化が高速化し、競争が激化している昨今、マネジメントスキルの重要性はますます高まっています。

また働き方改革もあり、組織は最小限の労力で最大の成果を出すことが求められています。チームの力を最大限に発揮できるように、マネジメントする必要があるのです。

本記事では、「マネジメントスキルとは何か?」を改めて明らかにしつつ、なぜマネジメントスキルが重要視されているのかについて解説します。さらに、マネージャーがマネジメントスキルを発揮するために、身に着けるべきスキルについて具体的に紹介します。

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マネジメントスキルとは

マネジメントスキルとは、直訳すると「管理能力」という意味になりますが、ビジネスの現場においては「組織を管理するための能力」のことを指します。マネージャーに求められるマネジメントスキルは、チームの目標設定や進捗管理、部下の育成・評価、チームのモチベーション管理、予算の管理など多岐に渡ります。

例えば、営業マネージャーの場合には、チームとしての売上目標の設定、部下一人ひとりの目標に関する進捗やモチベーションの管理などが、主な仕事内容になります。営業スタッフ一人ひとりの仕事内容が「売る」ことであるなら、営業マネージャーの仕事は部下に「売らせる」ことと言えるかも知れません。

マネジメントスキルはどの時代でも重要視されていますが、多くのマネージャーが頭を悩ませてきたのは部下に対するマネジメントの部分が多いのではないでしょうか。チームのパフォーマンスを最大限に引き出すためには、部下全員が同じ目標に向かうこと、課題を共有して解決のために取り組むことが大切です。

マネジメントスキルがなぜ重要なのか?

マネジメントスキルが必要な理由としては、チームのパフォーマンスを最大限に発揮させるためには適切なマネジメントが必要だからです。

学校法人産業能率大学総合研究所の調査では、管理職が組織から求めれることとして、「組織の方向性の明確化」や「部下の育成」が多くの割合を占めていることがわかります。

管理職が組織から求めれること

(出典:https://www.sanno.ac.jp/admin/research/buchou2019.html

ここでは、マネジメントスキルが必要な理由をもう少し掘り下げた5つの点について、営業マネージャーを想定して解説していきます。

理由① 売り上げ拡大のためにはチームで力の向上が必要であるため 

継続的に高いパフォーマンスを発揮し続けるためには、チームで仕事の進め方や理念を共有し、チーム全体の方向性を定め、スキルを底上げすることが重要になります。

特に営業部では、商談の進め方や顧客へのアプローチの仕方などが属人的になりがちです。そのような場合では、営業マンごとに営業成績にバラツキが生じてしまい、効果的なノウハウがチームに蓄積できません。

一部の営業成績の優れた営業マンに依存するような組織体制に陥ってしまい、万が一、営業成績の良い営業マンが退職してしまった場合には、チーム全体成績が急激に下がってしまうという危険性があります。

営業マン全員が「トップ営業マン」や「営業部のエース」として力を発揮できるように、情報共有やマニュアルの作成、研修制度の確立などの組織づくりや体制の管理を行うことが、営業マネージャーのスキルとして重要なポイントです。

理由② 時代や社会の変化に迅速に対応する力が求められるため

現代は、グローバル化やインターネットの普及によって社会やビジネス環境の変化が目まぐるしい状況です。こうした環境下で企業が将来的に存在感を発揮し、価値のある企業として認められるためには、常に時代や環境に合った力を発揮していく必要があります。

この時代の変化に迅速かつ的確に対応するスキルも、マネジメントにおいて非常に重要な力です。マネージャーは時代や環境の変化を敏感に察知し、チームがどのような方向に進むべきかを判断します。そして、部下に対してあるべき姿を提示し、時には他部門を巻き込んでチームを理想的な状態に導くためにリーダーシップを発揮します。

また、変化ばかりに捕らわれてしまって望ましい状態から逸脱してしまうリスクも考えられるため、場合によっては「変化しない」という選択が必要なケースもあります。

理由③ 長期的な視点での部下育成が求められているため

学校法人産業能率大学総合研究所が、2019年に従業員100名以上の規模の部長336名を対象におこなったアンケート調査「上場企業の部長に関する実態調査」によると、「部長として最も期待されていること」の2位に「長期的なキャリアを見据えた部下育成」がランクインしています。

また、同アンケートにおいて、「部長として悩みを感じること」の1位が「部下がなかなか育たない」との結果も示されており、人材育成がいかに重要であり、難しいものであるかがわかります。

部長として悩みを感じること

マネージャーが部下の育成を促進するために行うべき具体的な点は、以下の4点です。

  • 評価制度を整え、部下を公平に評価する
  • 部下の小さな変化を見逃さないように、ていねいに観察する
  • 適度なフィードバックやアドバイスをする
  • 部下にとって最適な職務やポジションを与える

こうして、次代のリーダーを育てると同時に、部下が成長しやすい企業風土を作っていきます。

理由④ コンプライアンスやセキュリティ管理が強く求められているため

サイバー攻撃や人的ミスによる個人情報の漏洩や従業員のインターネット上での不適切な言動など、企業が消費者や取引先からの信用を失ってしまう要因は少なくありません。

近年はこのような「不祥事」に対して社会の目が非常に厳しくなっています。そして、それらのリスクに対する予防や「事故」が発生した後に、被害を最小限に食い止めるためにはマネジメントスキルの発揮が不可欠です。

そのためにマネージャーが求められる役割としては、例えば以下があります。

  • あらかじめ「トラブル」が起きてしまった場合を想定して、最短・最速で対応が取れるように準備を整えておくこと
  • 万が一の際には自身や部下の業務をストップして、事故の対応に人的資源を集中させること
  • トラブルの再発に向けて取るべき対応を迅速に取ること

重大なコンプライアンス違反を犯してしまった場合には、企業存続の危機に陥るケースもあるので、非常に繊細な対応が求められる部分です。

理由⑤ プレーイングマネージャーとして膨大な業務量をこなさなければならないため

バブル崩壊以来長く続いた不景気やリーマンショックなどを経て、現代の企業は必要最小限の資源(ヒト、モノ、カネ)で最大の成果を上げることが求められています。そうした時勢から、マネージャー自身も現場の最前線に立って成果を上げながらチームのマネジメントを行うことを、会社から求められていることが多いでしょう。

自分自身が成果を上げながらマネジメントを機能させるためには、限られた時間の中で確実にマネージャーとしての役割を担うという、質の高い仕事をこなすことが求められます。

身に着けるべきマネジメントスキルの項目一覧

マネージャーが優れたマネジメントスキルを発揮するためには、必ず身に着けておきたいスキルがあります。ここでは、特に重要なスキルを4点紹介します。

コミュニケーションスキル

マネジメントスキルの中でも特に難易度が高く、重要性の高い仕事が「人」を管理することです。そして、人との関りの中で最も重要になるのがコミュニケーションスキルです。

目標達成や組織の拡大のために望ましい行動を部下に取ってもらうためには、目標やお互いの考えを共有し、理解してもらう必要があります。そして、その土台となるのがコミュニケーションスキルです。

部下をマネジメントするために最適なコミュニケーション方法の一つに、対話型のコミュニケーションがあります。対話型コミュニケーションは、部下に対して指示・命令をする指示型とも、部下一人ひとりの仕事の進め方に依存する放任型とも異なり、質問を通して部下から最適な答えを引き出すコミュニケーション手法です。

ここでは、対話型コミュニケーションを実施するためのポイントを3点お伝えします。

傾聴(承認)

傾聴とは、相手の意見や考えに積極的に耳を傾けることです。アメリカの心理学者カール・は、傾聴のために重要なポイントとして「ロジャースの3原則」を提唱しています。

  • 共感的理解
    相手の話を、相手の立場になって考えること。

  • 無条件の肯定的関心
    好き嫌いや善悪の評価をせずに、なぜそのような結論に至ったのかを肯定的にとらえながら話を聞くこと。肯定的関心によって相手に安心感を与えることができる。

  • 自己一致
    話の内容がわからなかった時は、そのままにしたりわかったふりをしたりせず、真意が分かるまで相手に質問すること

まずは、傾聴を通して部下の考えやその背景を把握していきます。同時に、部下のことを「承認」し、考えや意見を尊重する姿勢を示します。

質問力

傾聴の重要性はさまざまなところで指摘されていますが、傾聴だけで終わってしまうとマネジメントではなくカウンセリングになってしまいます。マネージャーに求められているのは、カウンセリングではなく組織としての成果を上げることなので、部下から答えを引き出していく作業が求められます。

答えを引き出すために重要になるのが「質問」です。質問をする際に重要なポイントは、詰問になってしまわないことです。また、漠然とした質問をすることによって、意図した内容とは異なる返答が返ってきてしまうこともあります。

  • 目標未達の理由はなぜだ?
  • クレーム件数が増えているのはなぜだ?

といった、強い調子で質問をすると、部下に対してプレッシャーがかかってしまい、部下が本当に考えている答えを聞き出せない可能性があります。そのため、

  • 目標が達成できなかった理由は何だと思う?
  • クレームを減らすためには何が必要だと思う?

といったように「なぜ?」ではなく「何?」で質問すると、印象が柔らかくなり、質問の意図も明確になります。部下のスキルレベルに合わせて、意図した質問の返答が得られるような質問をすることが重要です。

フィードバック

質問によって認識を共有できたら、最後にフィードバックをします。フィードバックとは、部下に対して「変化」や「改善」を促すために気付きのきっかけを与えることです。具体的には、面談やミーティング、評価などを通して、フィードバックを実践していきます。

フィードバックの際に重要なポイントは、部下に対して「承認」をしっかりとした上で行うことです。叱責されるにせよ褒められるにせよ、部下にとって「普段、あまり自分のことを見てくれない……」と感じている上司からのフィードバックに対しては心が動きにくいものです。フィードバックが効果を発揮するには、傾聴(承認)・質問の段階で「いつも気にかけている」ということを指し示すことが重要であるということです。

率先して行動するスキル

リーダーシップの示し方にはさまざまな方法がありますが、その重要なポイントの1つにマネージャー自身が率先して行動を起こすという点があります。ここで重要なポイントは、会社の方針に沿った行動を率先するという意味であり、「どんな仕事も率先してこなす」という意味ではないことに注意する必要があります。

例えば、有給取得率の向上を企業施策として掲げているにも関わらず、マネージャーが他の社員の仕事を引き受けてしまっている組織では、仕事の効率化に成功しているとは言えません。

また、部下にとっても「休まされている」という感覚になってしまい、心地の良い施策にはなりません。マネージャーが自らの仕事を効率化し、休める環境を作ることによって、初めて部下が自身の仕事の効率化を考えられるようになります。

反対に、どんな仕事でもマネージャーが率先してやろうとすると、部下が委縮してしまったり、信用されていないと感じてしまったりする可能性があります。あくまでも「会社の方針を示すため」に率先して行動することを重視しましょう。

プロジェクトをマネジメントするスキル

プロジェクトをマネジメントするスキルは、本来のマネージャーの職務といえます。しかしながら、全体的にこなさなければならない業務量が増えていること、プレイブックマネージャーとして活躍することが期待されていること、目標達成に対するプレッシャーが厳しいことなどから、プロジェクトマネジメントの職務が後回しにされてしまっている状況も珍しくありません。

プロジェクトマネジメントを行うために必要なスキルは多岐に渡ります。スケジュールや仕事内容、リスクの管理、部下とのコミュニケーションなどです。マネージャー自身の仕事と並行して、これらのスキルを発揮してタスクを遂行していかなければなりません。

部下を評価するスキル

部下に対する評価は、効果的なフィードバックを実践する上でも重要なスキルです。そして、多くの部長が「難しい」と回答している項目でもあります。

マネージャーが部下を評価する際に、意識したいポイントは以下の2点です。

  • 昇給や昇格のためだけではなく、部下の成長を促すために評価すること
    → 結果を伝えるだけではなく評価の根拠や改善点を部下に指し示すことが重要

  • 適性を見極めること
    → 評価を踏まえて部下が能力を発揮しやすい仕事内容やポジションを把握すること

適切な評価を行うためには、部下をよく観察して客観的な評価を下していく必要があります。さらに、複数の部下に対して公平性を保ちながら評価を行っていく姿勢も重要です。

マネジメントスキルを継続して向上させるために重要なこと

マネジメントスキルは、継続的に向上させる姿勢が重要です。マネージャーのスキルアップにより、組織力の更なる向上が見込めることや、社会情勢やビジネス環境の変化に対応する力が必要になるためです。

管理職者のマネジメントスキルを向上させるために取れる施策はさまざまですが、代表的なものを紹介します。

  • 管理職者向けのセミナーや研修を受講させる
    管理職者になるスタッフは、社内で優れた成果を発揮した方が多いことが多くあります。しかしながら、「プレーヤー」としての役割と「マネージャー」としての役割はそもそも大きく違うものなので、基本的なことから学習することは重要です。

  • 部下から上司の評価をおこないフィードバックをする
    マネージャーと部下とで相互に評価することも効果的です。さらには、同僚や他部署、自分自身からの評価をおこなう「360度評価」を実践している企業もあります。客観的・多面的な評価を実施することにより、マネジメントスキルにおける課題や改善点を把握することができます。

  • 長期的な仕事におけるフローを可視化する
    短期的な目標や課題に追われている状態だと、長期的な課題が見えづらくなり、達成状況が把握しづらいくなってしまいます。特に、マネジメントスキルに関しては成果が現れるまでに時間を要することが多く、中・長期的な状況の把握が不可欠です。

まとめ

「マネジメントスキル」と一口に言っても、必要とされる能力は多岐に渡ります。さらに、多くの企業ではマネージャーと同時にプレーヤーとしての結果も重要視されるため、マネージャーが担う責務・負担としては大きくなっています。

マネジメントスキルを発揮して、組織の力を最大限に発揮するためには、コミュニケーションや部下の評価、課題の設定など一つひとつの役割を的確に把握して全うすることが重要です。さらに、多くの仕事を並行して正確にこなすためには、効率よく情報や人を管理することが不可欠です。

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戸栗 頌平(とぐり しょうへい)

B2Bマーケティングを幅広く経験。外資系ソフトウェア企業の日本支社立ち上げを行い、創業期の全マーケティング活動を責任者として行う。現在、東京と海外を行き来しながら場所にとらわれない働き方を通じ、日本企業のマーケティング支援の戦略立案から実行までの支援を行なっている。

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