強い営業組織で継続的に売上げを上げるためには

強い 営業 組織

御社の営業部は、強い営業組織と言えますか?もしくは、強い営業組織を持つ会社と聞くとどのような企業をイメ―ジするでしょうか?

「軍隊をイメージさせるような厳しい営業会社」
「起業家精神あふれる優秀な営業マンが多い企業」「外資系企業のように成果主義が徹底している企業」

など、何社か思い出せるのではないかと思います。営業力の強さで急成長したベンチャー、独自性のあるサービスを展開してマーケット創り出す会社、業界トップとして他社を大きく引き離す企業…いずれも優秀な営業マンを多数抱えています。そのような企業の営業組織は一体何が違うのでしょうか?

本記事では、常に高い売上げを上げ続ける強い営業組織に共通する特徴や、企業の営業部門を強くするポイントについて解説していきます。

強い営業組織とは

本記事では、強い営業組織を「高い営業成績を出す組織」と定義します。

もちろん、強い営業組織と言ってももう一歩で売上げ目標に届かないこともあれば、業界に逆風が吹き一時的に売上げが低迷することはあります。しかし、そのままダメになることはなく、圧倒的な営業力で再び盛り返すことができるのが強い営業組織です。

企業を分析する際に使われる「競合価値観フレームワーク」によると、組織文化は以下のように大きく4つの種類があるようです。どの文化が優れているということではなく、業界、創業者の個性、たどってきた歴史で企業DNAのようなものが培われていくので、文化にはそれぞれに強みがあると考えて良いでしょう。

競合価値観フレームワークにおける4つの組織文化

出典:総務省

ただし、企業の社風は真逆でも、強い営業組織は売上げを上げていく力があること、営業マンの数字に対するモチベーションが高いこと、土台となる基本的な営業管理が徹底しているところは共通しています。

強い営業組織がなぜ重要なのか

「IT化が進めば営業マンは要らなくなる」「AIが登場して営業マンは不要に」「コロナウィルス感染症の影響で営業マン失業」など、ここ20年ほど定期的に「営業マン不要論」が出ています。実際、オンライン化によって営業マンが不要になった業界もあります。

しかし、BtoB市場の専門的な商材や、高額商材を販売する企業においてはまだまだ営業部門の存在は大きく、強い営業組織を持ちたい経営者の方は多いのではないかと思います。

商品開発部門が強く、宣伝広告費も豊富で、マーケティングのノウハウも優れている大企業やメガベンチャー企業なら営業部門がなくても大丈夫かも知れませんが、一般的な企業の場合、商品力だけで市場で勝ち続けるのは、むしろ厳しい時代だと言えるでしょう。

  • 同業他社が、よりよい商品を低コストで展開してくる可能性がある
  • 業界間の垣根も曖昧な時代なので、異業種からライバル企業がすぐ参入する可能性がある
  • コロナウィルス感染症のような事態が発生すれば有望事業の見込みがいきなり消える可能性がある(例:2019年まで順調だったシェアビジネスは2020年以降かなり厳しくなるでしょう)

景気・不景気の波はビジネスにはつきものですが、営業組織が強いと、不景気になればなったで営業マンが「A業界での販売は当面難しいから、至急伸び筋のB業界に営業しよう」「お客様の課題はこの状況では〇〇だからこんな提案しよう」などと迅速に行動を切り換えることができます。

競合企業の新商品に対しても「〇〇の機能が目玉だから、当社はこの切り口で勝負しよう」とすぐ対策を現場で立てるでしょう。さまざまな逆風があっても、お客様にもっとも近い現場にいる営業マンが新しい市場、新しいビジネスチャンスを見つけ迅速に営業活動していくことができれば、売上げは上がっていきます。

営業部門が稼ぎ出す売上げ金額という源泉があるからこそ、会社は社員への給与や設備費用を支払うことができ、企業として長く存続していくことができるのです。

強い営業組織の特徴とは

強い営業組織にはいくつかの特徴があります。あてはまる項目も、あてはまらない項目もあるかも知れませんが、一つでも強い組織のノウハウを取り入れると、変化が起きていくでしょう。

組織の全員が目標に向かって取り組んでいる

強い営業組織には結集力があります。組織を構成するメンバー全員が目標に向かって取り組んでいます。KGI、KPIが明確であり、末端の営業マンまで浸透しているからです。以下にKGI、KPIの例と設定のポイントを記載します。

  • KGI(重要目標達成指標):売上高、利益率、契約件数、他

ポイント:

・最終的なゴールであること(KGIの下に、KPIがある)
・数字で計測できるものであること
・KGIは一つが望ましい

  • KPI(重要業績評価指標):営業メール数、コール数、アポイント数、商談数、キーマン面談数、提案数等

ポイント:

・数字で計測できるものであること
・営業プロセスの過程の成果を確認するものであること
・目標達成率70%ほどで着地が見込まれる、少々難易度の高いものが望ましい
・1~3種類が望ましい。増やしすぎると効果が薄れる

KGIやKPIが明確であれば、営業マンは売上げ目標を達成するために「いつまでに何をどのくらい行動すればよいか」を正確に把握できます。当たり前のことに思えるかも知れませんが、弱い営業組織では、目標金額だけがあり「もっと頑張れ」「もっと新規開拓しろ」という言葉が飛び交うだけで、管理職も営業マンも、行動を数値ベースでは管理できていないことが少なくありません。

なお、KGIとKPIの設定~活用までの流れは以下の1~6の手順となります。

  1. KGIの設定は、決裁者(部長や課長、企業によっては経営者)が行う
  2. 決裁者が設定したKGIを元に営業部それぞれのチームのKPIが設定される
  3. チームのKPIをもとに営業マン個人のKPIが設定される
  4. 決裁者(部長や課長)が、各チームと営業マン個人のKPIの最終確認を行う
  5. 決裁が出たKPIをもとに各チームや営業マンが営業活動を行う
  6. 各チームや営業マンがKPIを達成することで、KGIが達成される

前期のうちからKGIやKPIを設定し、期初には全営業マンが自分の目標やKPIの数値を把握してスタートが切れることが理想的です。

営業プロセスを全員が理解している

営業プロセスとは、いわば営業の「型」です。すべてのスポーツ、武道、茶道、華道などには型があります。型とは教育の期間を短くできる非常に合理的なメソッドです。

営業プロセスイメージ:

営業プロセスイメージ

まずは営業マンにも型通りに営業活動してもらい、型に慣れたら、取引先にあわせたり自分の個性を発揮してさらに上手くできる方法を見出しながら、活動してもらった方が速く成長します。言い方を変えれば営業プロセスの型があるからこそ、営業マンも新しい手法を試すなど創意工夫しやすくなるのです。

営業プロセスを理解することで、例えば、電話をしてアポイントに繋がらなかった際には、そのまま終わりにせずに相手が興味を持ちそうな資料をメールで送ってフォローをする、初回訪問ではヒアリングに徹する、初回訪問でニーズはまだ先と言われたお客様には、3ヶ月に1回ほど事例を送るなど計画を立てることができます。

営業管理職も、一人ひとりに同じことを何度も教える手間を省くことができるでしょう。

強い営業マンを育成している

強い営業組織は、営業マンを短期間で育成しています。新人営業マンがいつ「新人」ではなくなり、売上高をしっかり上げることのできる営業マンに育つかどうかは、営業部全体の売上額を左右します。1日でも早く、本人の給与の何倍もの金額の売上を上げる営業マンへと成長してもらえば、営業部・会社・本人にとってメリットがあります。

営業マンを短期間で育てる一つの手法として、早い段階で本人と相性がよさそうな大きなお客様を担当させる方法が比較的とられます。管理職がバックアップはします。「営業マンを育てるのはお客様」とよく言われるように、よいお客様を担当すると営業マンはどんどん伸びていきます。下積み期間を短くすると表現してもいいかも知れません。

一方、企業によっては新入社員時代は徹底して新規開拓営業だけさせる方針の企業もあります。どちらが良いかということではなく、業界の違いもあれば、どのような営業マン像が理想かという人物像の違い、それこそ価値観の違いによります。

いずれの方法もハードルは高いのですが、営業マンを強くする方法です。また、基本的なマネジメントとして営業スキルの足りないところを営業マネージャーがコーチングしながら指導したり、社内で研修をするなどの指導もしっかり行われています。

組織内での知識共有を徹底している

強い営業組織は、営業マン同士の知識、情報、ノウハウの共有化が徹底しています。一見、軍隊のような社風で、気合、根性、数で勝負しているように見える営業会社が、そのイメージとは裏腹に、かなり早期からCRMを導入していたことはよく知られています。

営業マンのモチベーションの高さや、夜中まで飛び込み営業をするような行動力だけで急成長したわけではなく、知識と情報の共有化も徹底していたからこそ、大量採用した社員が次々と力を発揮することができたのでしょう。外資系企業などもそうですが、あくまで土台のインフラがしっかりした上での成果主義なのです。

営業マンが契約に至った案件、失注してしまった案件それぞれに知識とノウハウが詰まっています。社内で営業マン同士の知識を共有させる仕組みがあり、かつ営業マンが情報共有の価値を理解している組織は、強い組織だと言えます。

メンバーの向上心が強い

学生時代にスポーツができた生徒にはどのような特徴があったでしょうか?勉強ができた生徒は、どんな生徒でしたでしょうか?多くの人が、勤勉で向上心があったはずです。向上心やモチベーションとは「もっと成長したい」「将来こうなりたい」「周囲から認められたい」という気持ちがベースにあって起きる心理です。

営業マンが意欲的になれるような組織を作りましょう。といっても社風の違う企業をそのまま真似しても難しい時もあるため、前述の4種類の組織文化のフレームワークに照らし合わせて、雰囲気づくりを意識するとよいかも知れません。

以下は、「競合価値観フレームワーク」を総務省が働き方改革の影響を企業の属性ごとに調査・分析した際に活用した「組織文化ごとの戦略的力点」です。目的が同じでも組織文化によって、マネジメント上の力の入れどころが違うことを知ると組織運営に役立つでしょう。

戦略的力点

出典:総務省

例えば、家族文化が強い組織であれば、無理に競わせずチーム制営業にすると結束力が強まり強い営業組織になるかも知れません。

逆にマーケット文化やイノベーション文化が強いのであれば、営業マンが社内でゲームのように競争できる営業キャンペーンを実施したり、新規事業提案制度を創設するなど、自社の営業マンの成長意欲を刺激する仕組を作ることもお薦めです。組織を変革するにあたり、一度自社の企業DNAを振り返ってみましょう。

強い営業組織であり続けるためには

強い営業組織であり続けるためには、営業活動を常に改善していくことも大切です。目標を追うだけでもモチベーションを上げる効果はありますが、振り返りがないと人はなかなか進歩しません。個人で振り返るのは難しいので、できれば営業マネージャー主導で、チームで「KPT」を実践することをお薦めします。

KPTとは【Keep、Problem、 Try】の頭文字で、トヨタのカイゼン方式に触発されて作られた振り返りのための手法です。

  • Keep:起こったことの中でもプロセスとして維持したいこと
  • Problem:直面した課題・改善すべきであろうこと
  • Try:試したいこと、工夫したいこと

簡単に言えば、営業活動中にうまくいったことや改善すべきことをしっかりと捉えて、改善していくことです。たったそれだけの話ですが、営業マンの場合は意識して課題意識を持たないと成果だけを見て「今月頑張った」「〇件獲得できた」「価格が高いと言われて断られた」と、ざっくり反省して終わりになりがちです。

課題をそのまま放置しておくと、次に同じ課題が発生した時に諦めたり放置したりする可能性が出てきます。一人の営業マンがぶつかる課題は大抵の場合その企業の弱みなので、何が「問題」だったのかをチームで話し合って、改善するべきところは対策を立ててTryすることができれば、チーム全体の成約率が上がっていくでしょう。

まとめ

組織づくりは一朝一夕ではできませんが、強い営業組織を作りたいと思ったら、強い組織の実践しているノウハウを一つでも導入すると少しづつ組織は変化していきます。特に、「営業プロセスの可視化」「営業ノウハウ共有の仕組」「KPIの設定」は組織にとって必要なことであるとともに、営業マン個人のスキルアップにもつながるので、ぜひ導入されることをお薦めします。

強い営業組織とは、営業マンの成長に寄与する組織でもあります。自分のキャリアにプラスになる教育をしてくれる組織であれば、厳しい面があっても営業マンのエンゲージメントは高まり仕事に意欲的になります。また、組織や上司が前向きで、失敗を恐れず新しい手法チャレンジしていく姿勢があれば、営業マンもそうなっていくでしょう。

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