インサイドセールスに適した人材を採用する際に注目すべき8つのスキル

インサイドセールス 採用

インサイドセールス導入で「売上げが3倍に増加!」「1日の商談件数が6件~8件に増加!」などの企業のキャッチコピーを見て、インサイドセールス導入に関心を持った経営者や営業管理職の方も多いと思います。

インサイドセールスとは、ウェブや紹介などから獲得した見込み客に対して、訪問せずに電話やメール、オンライン商談ツールを活用し営業活動を行う手法を指します。業務範囲も、見込み客精査から商談までの範囲だけ対応する場合もあれば、営業活動のすべてを訪問しないで完結するなど、業界や企業の営業活動に合わせてさまざまな活用ができる営業手法だと言えるでしょう。

インサイドセールスは、アメリカでは急速に導入が進んでいます。その背景には、サブスクリプション(利用した期間に応じて利用料金を支払う)型のビジネスモデルが普及し始めたことや、国土の広いアメリカでの移動時間の削減が挙げられます。海外日本での導入事例を見るかぎり、インサイドセールスを効果的に活用できれば売上げ拡大につながる可能性は高いと言えるでしょう。

インサイドセールスは、従来の営業マンが一人ですべての営業活動を完結させる営業手法と少々異なった面もあり、インサイドセールスに適した営業マンの採用方針も意識して考える必要があります。

今回は、インサイドセールス人材を採用する際のポイントをご紹介します。

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インサイドセールスの採用の3つの課題

日本は人口減少期に突入しています。特に若年層が減少傾向にあるため、優秀な若手の採用は苦戦することが予測できます。ここでは、インサイドセールス人材の採用における3つの課題を紹介していきます。

課題1. インサイドセールス経験者の確保

日本では、組織的にインサイドセールスとフィールドセールスを明確に分業している企業は、まだアメリカほど多くはありません。

株式会社エムエム総研の調査によると、インサイドセールス導入にあたっての現在の障壁として、「インサイドセールス組織をリード、マネジメントする人材の不足」がもっとも高くなっています。つまり、既存の営業人材でもインサイドセールスの経験者の少なさが伺えます。

また同調査では、インサイドセールス活動における一番の課題は「優秀なインサイドセールス人材の確保」となっています。このことからも、優秀なインサイドセールス人材を確保していくことが簡単ではないことがわかります。

インサイドセールスは、導入の目的によって業務の内容が異なってきます。業務内容に合わせたスキルも必要なため、それだけ採用で求められる条件も複雑になりそうです。幸いインサイドセールスは顧客への訪問の必要がなく短時間勤務も可能なため、中高年や女性、地方の人材、在宅ワーカー、複業ワーカーのようなさまざまな人材を活用することができます。

● インサイドセールスの業務範囲例

インサイドセールスの業務範囲例

課題2. インサイドセールスの必要スキルを満たした人を採用できない

自社のインサイドセールス業務に適した人材を採用できない理由として、採用人材にどのようなスキルを求めるのかの「必要なスキル」が明確になっていないことが考えられます。この背景には、インサイドセールスを導入する目的が明確になっていない可能性があります。

「ただただインサイドセールスを導入をしてみたい」「導入したら営業効率が上がりそう」といった漠然とした期待だけで導入を考えてしまうと、どのようなスキルに注目して採用の基準を設けたらよいかがわからなくなってしまいます。

そのため、インサイドセールスを導入するにあたって、まず導入する目的が明確になっているかを確認する必要があります。導入の目的を明確することによって、インサイドセールスが担う業務の範囲が明確になります。さらに、業務の範囲が明確になることによって、必要スキルの優先順位も明確になってくるのです。

導入の目的を考えるためには、現状の営業活動をインサイドセールスを導入して「何を」「どう改善したいか」を考えることです。

例えば、Webからのお問い合わせ案件が多いため、既存の営業マンでは対応しきれない場合を想定します。この場合、以下が導入の目的になります。

何を:Webからのお問い合わせ案件の初期対応
どう改善したいか:効率的にアプローチ

インサイドセールスの導入の目的が決まっていないと、そこで必要となる適切なスキルを持った人材を採用することは難しくなってしまいます。どのようなスキルが必要なのか、どのような気質の人材が適しているのかをしっかり明確化し、必要なスキルをきちんと明記して募集を行わないと、不適合が起きる可能性があります。  

インサイドセールスに適した人材の8つのスキル

では、どのようなスキルに注目したらよいのでしょうか。自社のインサイドセールス導入の目的に合ったスキルの条件を考える上での参考として、インサイドセールスで成果を出せる人材に必要なスキルについて解説します。

1. 処理能力、PCスキル

インサイドセールスは、中長期的にお客様とコンタクトをとりながら商談につなげていく上に、1日に接するお客様の数が多いので、お客様との対話内容の入力、営業フォローメールの送信を素早くかつ正確にこなすスキルも必要です。

お客様とのやりとりをきちんと記録し案件を管理することが、インサイドセールスでは重要になります。営業の進捗状況がすべてデータで可視化されていれば、いつ誰が担当しても、過去のお客様とのやりとりを把握した上で営業活動を引き継ぐことができるからです。逆に言えば、営業経験者であっても、案件管理の丁寧さにかけている人や、処理速度が遅い人は適性に合わない場合もあります。

2. 情報収集スキル

インサイドセールスが徹底して情報の蓄積を行っていれば、前回の会話時にお客様が何を発言したか、どのようなことに興味を持っているかを確認できます。お客様の興味関心に合わせた役立つ情報を案内することで、購買プロセスも進めるお役に立てるかもしれません。

BtoBビジネスの場合は、営業マンと同じようにお客様の業界の最新情報を収集し、それを会話の内容や提案に組み込むことで信頼関係構築に役立ちます。たとえ話題に出せなくても、会話のやりとりで勉強しているかが伝わり、もう少し話を聞いてみたいと思ってもらうことができるかもしれません。

3. 協調性

インサイドセールスには協調性が求められます。なぜなら、インサイドセールスはマーケティング部(マーケティングがある場合)と営業部門と連携して、社内の営業活動を回していく必要があるからです。

マーケティング部から引き渡された見込み案件の対応や、その見込み客に対するフィードバックをしていきます。また、見込み度合いが高い場合は、営業部門への引き渡しを行っていかなくてはいけません。

そのためには、マーケティング部門と営業部門のニーズを理解しながらも、自分たちの意見を伝え、関係部署の状況を把握して、営業活動がしっかり回るようにコミュニケーションをとっていく能力が重要になります。

4. ヒアリング力

インサイドセールスは、購買プロセスの早い段階の潜在的な見込み客にアプローチすることが多くなります。例えば、新しい資料やセミナーの案内をしても、すぐ関心を持ってもらえる可能性は低いと言えます。「まだいらない、来年なら」「これは不要、うちにはあわない」などの反応があったときに、一度受け止め、対話の中からお客様が営業プロセスのどの段階にあるのかを見極め、情報を引き出すヒアリング力が求められます。

現在は興味を示していないお客様であっても、ほかの情報を求めていれば個別に提供し、お客様に心を開いてもらう努力を積み重ねることも必要です。

5. 商品知識、業界知識

インサイドセールスにおいても、外勤営業マンと同じように商品知識や業界についての知識は重要です。特に電話中心で行うインサイドセールスの場合は、わからないことがあったときに表情や身振り手振りで場を持たせることができません。お客様からトークスクリプトにのっていないことを質問されてもきちんと説明できるように、知識を身につけておく必要があるのです。

お客様に提案する際には、いかにして自社商品・サービスでお客様の課題の解決ができるのかを伝えなくてはいけません。価値のある提案をするためには必要な知識になります。

IT業界であれ、不動産業界であれ、その業界に関心がある人材や業界未経験でも学べば商品・サービスの特性を理解できる人材を採用することがポイントです。

6. 営業経験、コールセンター経験

営業経験やテレアポの経験は、採用する上で重視すべきポイントです。インサイドセールス経験はなくても、営業としての勘所をわかっているからです。例えば、突然アプローチしてきた営業マンに最初から自分の情報をすべてを開示するお客様は少ないものです。営業経験があれば、お客様の表面的な断りも受け止め、適切な質問手法に変えることができます。

また、それほど関心がない段階のお客様に対しては、情報提供を行いながら信頼関係づくりに注力し、ここぞというタイミングで電話でアプローチするなど相手との間合いをとることができます。

営業部門の戦力を減らしたくないという社内事情から、それほど営業経験のない方がインサイドセールス部門のトップに任される場合があります。そういった場合は、採用した営業経験者などの意見を聞きながらトークスクリプトをまとめたり、KPIを設定していくほうが合理的であり、チームとしてのモチベーションも上がります。

7. 文脈を理解する力

インサイドセールスは、見込み度合いのさまざまなお客様に対応し、購買プロセスを進めていかなくてはなりません。そのため、お客様一人ひとりのニーズと文脈を理解しながらアプローチを変えていかなくてはなりません。

インサイドセールスが、お客様の文脈を捉えるためには、自社HPでよく見られているページやお客様に送ったメールの反応などを正確に読み取って、お客様はどのような情報が欲しいのかを的確に把握する必要があります。アプローチの中でお客様に価値のある情報を提供していくことが大切です。

例えば、お客様がAについての悩みについてのページを頻繁に見ていたら、次回のアプローチの際に、Aの解決策やそのヒントとなる情報を提供してあげるなど、寄り添った提案を実現することができます。

自社の抱える課題に合ったスキルを持った人を採用する

冒頭で、インサイドセールス導入の目的についてお伝えしましたが、御社のインサイドセールス導入の目的は何でしょうか。 

・新規開拓の案件数を増やしたい
・フィールドセールスの平均訪問件数を増やしたい
・セミナー来場者、Web問い合わせ客のフォローを効率化したい

企業によってさまざまな導入の目的があると思います。どこまでインサイドセールスに任せるかは、その企業の導入の目的によって異なります。

中には、新規開拓力こそ営業マンの実力という社風の基では「アポイント獲得を営業マンが行わないなどもってのほか」という価値観をもつ社員も少なくないはずです。多くの場合、新規開拓に力を入れていると目の前の案件を追ってしまいがちになるため、フォロー対応が手薄になってしまう可能性があります。

その場合は、情報提供などのフォロー対応をインサイドセールス部門に任せた方が、営業活動全体の生産性をあげることができます。

逆に、営業マンが新規の電話営業を苦手としているような場合であれば、インサイドセールス部門に見込み客探しからアポイント獲得までを任せることで、フィールドセールスは商談だけに集中することができ、自らの強みを発揮できるようになります。

昨今はビジネスのデジタル化が進んでいるため、一般の営業マンであっても既存のお客様から「次の打合せはオンラインでしてほしい」と言われるもこともあるでしょう。時代の変化に合わせインサイドセールスという手法を柔軟に活用して営業部門を強化していく意識が必要です。

自社の営業部門の状況に応じてインサイドセールス部門の目的や業務範囲を決め、人材採用の際には、その仕事内容に応じて優先順位の高いスキルを採用基準に決めていくことが重要です。

まとめ

インサイドセールスには優秀な営業マンのような卓越した営業スキルや行動力、営業センス、根性の優先順位は高くありません。むしろ、真面目さ、誠実さ、チームワークなどがより重要なスキルになります。

自社に合ったスキルを明確にした上で、適した人材を採用、育成することができれば会社の営業力は底上げされるでしょう。インサイドセールスを採用する際のスキルの参考になる「営業スキルチェックシート」をご用意しておりますので、是非ご活用ください。

    営業スキルチェックシート

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