意思決定者の4つのタイプとその対策とは?

意思決定者 タイプ 対策

営業活動では、購買に関わる意思決定者(購入のキーパーソン)を特定し、その意思決定者に向けて営業アプローチすることが大切です。皆様も、できるだけ早く意思決定者と会えるよう、日々努力を重ねているのではないでしょうか。

意思決定者の見極めを間違えると、営業アプローチの期間と労力が膨大にかけたものの、最終的には契約につながらないといったことも起こりえます。正しい意思決定者に、正しい情報を提供することが営業活動をより効率的に進めるために重要なポイントです。

今回は、購入にかかわる意思決定者の4つのタイプとタイプ別の対策をご紹介します。法人向け(BtoB)の場合はもちろん、個人向け(BtoC)の場合にも、営業アプローチの基本として押さえておきたいポイントです。

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意思決定者とは何か

意思決定者とは、自社の商品・サービスを導入するにあたって、その商品・サービスの購入の意思を決定する人のことをいいます。「DMU(Decision Making Unit)」とも呼ばれます。法人向けビジネス(B2B)では、社長や経営幹部などの最終的な意思決定を行う人にあたります。

ただし、場合によっては顧客側の意思決定者は一人ではないこともあります。CEBがアメリカで法人向けビジネス(B2B)のステークホルダー5,000人以上を対象に行った調査によると、購入には平均で5.4人の承認が必要という実態が明らかになりました。また、役職や所属部門も多岐にわたっているとのことです。

個人向けビジネス(B2C)の場合にも、高額な商品・サービスになると、意思決定者は1人でないこともあります。例えば、住宅を購入する際には、旦那様だけの判断ではなく、奥様の判断や承認などの家族内で別の意思決定者がいることもあるでしょう。

なぜ意思決定者の見極めが大切なのか

意思決定者の見極めが必要な理由は、正しい意思決定者に対して営業アプローチを行わなくては、いつまでも契約に繋がらず、無駄な営業活動をしてしまう可能性があるからです。

トップダウンの意思決定の文化を持つ企業に対して、役職が何層も下の現場のリーダーに営業アプローチをしていても、なかなか案件が進捗しないはずです。この場合、この営業アプローチ自体が契約に繋がりづらく、最終的に失注してしまい、それまでの営業活動が無駄になってしまいます。社長が意思決定者だとわかっていて、営業アプローチができていれば、もしかしたら案件化していたかもしれません。

また、意思決定者が2人以上になると、購入の確率も大幅に下がることもわかっています。意思決定者が1人の場合は、購入の確率が81%であるのに対して、2~5人の場合は50%強、6人の場合は31%にまで下がります。

そのため、いかに営業アプローチ先の企業の意思決定者が誰なのかを正確に把握して、契約への最短の営業アプローチができるようにすることが大切です。

意思決定者の4つのタイプとその対策

では、意思決定者にはどのようなタイプがいるのでしょうか? 意思決定者を見極める上で参考にできる4つのタイプを紹介していきます。

意思決定者の4つのタイプ

意思決定者のタイプ①:決裁者

法人の場合、役員や部門長など、意思決定者から薦められた提案を承認する立場にある人が決裁者になります。決裁者の関わり方はさまざまで、最終的な承認をするだけの場合から、選定プロセス全体を監督している場合があります。個人の場合も同様で、予算を掌握し最終的な購入を決める人です。

対策

営業アプローチの段階ではコミュニケーションをとっている関係者から「最終的な決裁者が存在するのか?」「決裁者は何を重視しているのか?」の情報をヒアリングしておくようにしましょう。

このような関わり方の場合、営業マンが実際に決裁者にアプローチする機会を得ることができるのは、最終判断のタイミングあるいは、直接アプローチできる機会がないこともあります。そのため、現在コミュニケーションを取っている担当者からボトムアップで提案を上げてもらう必要があります。

具体的な提案や商品・サービスのメリットについて、ひと目でわかるポイントを絞った資料や情報を用意して、担当者が決裁者に上げやすいように配慮すると効果的です。

意思決定者のタイプ②:選定者

選定者とは、購入対象となる、商品・サービスについての情報の収集や選定を行い、決裁者に対して購入の働きかけをする人です。多くの場合は、決裁者から指示のあった部門長や現場の担当者が選定者にあたります。

営業活動の早期から接触できることが多く、営業マンはつい選定者の説得をゴールにしてしまいがちです。選定者に価値を感じてもらうことも大切ですが、そのあとに決裁者がいることを忘れないようにしましょう。選定者の説得は提案への最初のステップです。

対策

選定者は多くの場合、現場の責任者や担当者であることが多いため、価値を感じてもらうためには「自社の商品・サービスを活用することでいかに日々の業務の効率や効果が上がるのか」の情報を伝えていくことが大切です。

ただし、それだけではなく、その背後にいる決裁者に向けて最重要課題に絞った資料や情報を用意しましょう。購入プロセスを説明し「最終的な顧客における効果や成果はどうのようなものなのか」といった情報や決裁者が抱える課題や重視するポイントを聞き出し、その対策を一緒に練っていくことも重要です。

例えば、ファミリー向けマンション販売の場合には、奥様が基本的な情報の収集や選定を行い、最終決済はご主人であるケースなども多くあるかと思います。この場合、選定者である奥様に適切に情報提供することは基本ですが、併せて決裁者であるご主人にも情報の共有をしてもらい、ご主人が何を重視されているのかを明らかにしながら、奥様とご一緒にご主人に必要な情報を提供していくことが成約につながります。

意思決定者のタイプ③:インフルエンサー(影響力のある人)

インフルエンサーは、購買の承認や決断には関わらないものの、購買へ影響を与えます。インフルエンサーへの対応を誤ると、最悪購入に至らない場合や、商談クローズが長引く場合もあります。

法人の場合には、技術的知識のある人、予算やROIを管理する立場にある人、商品・サービスのユーザーなど、社内の多様な意見や立場からの意見や考察を提供する人が商談に影響を与える場合が多くあります。

個人の場合は、家族や親戚が購入に影響を及ぼす可能性があります。例えば、ファミリー向けマンション販売の場合には、奥様が選定しご主人が決済するとしても、一緒に住む子供や祖父、祖母などの家族がインフルエンサーになるケースです。ある程度大きなお子様の場合、部屋の大きさや立地などの希望があり、購入決定を左右する可能性があります。

対策

インフルエンサーの課題を解決する情報を提供しましょう。例えば、技術部門に対しては技術的な優位性をまとめた情報を提供したり、管理部門には実際にかかるコストとそれから見込める効果(費用対効果)などをまとめた情報を提供することが有効です。

もし、営業活動でこのようなインフルエンサーによる課題と直面した場合には、社内でその課題に対してまとめた資料を準備することで、次回以降同じような課題を持たれた顧客に対してもその情報を流用することができ、すぐに提供して営業活動を進めることができます。

意思決定者のタイプ④:ゲートキーパー(門番)

ゲートキーパーは、決裁者や選定者、インフルエンサーが無駄な時間を取られないよう、守る立場にある人です。法人の場合は、受付スタッフや現場担当者で、提案をする企業の商品やサービスが自社の最低基準に達しているかを判断し、スクリーニング(ふるいわけ)を行います。

個人の場合にも、ゲートキーパーが存在することがあります。例えば、ご主人に資産活用の提案がしたいけれども、奥様が電話をつないでくれない場合など、直接アプローチしたいもののなかなか繋げることができない、止められてしまうこともあります。

対策

ふるい落とされないよう、信用をえられるような情報や資料、また購入のメリットをすぐにご理解いただけるようなものを用意しましょう。商品・サービスの評判、事業規模など、社会的な位置づけがわかる情報や資料も効果的です。

追加で詳細な資料を求められたら、迅速に提供するようにしましょう。意思決定者との関係が深い場合や、意思決定者の指示で動いている可能性があることを忘れずにおきましょう。その場合は、実質的にその意思決定者と同じ対応が必要です。また、検討候補としての精査が終わるまで、当面の窓口になることもあります。

意思決定者を見極めるためには

営業活動の中で、意思決定者を見極めるためにはのようにしたらよいのでしょうか? 

担当者の役職や企業の組織図を把握する

コミュニケーションの取っている担当者の役職やその企業の組織図を把握することです。例えば、やり取りしている担当者の役職が社長であるならば多くの場合は決裁権を持っているでしょう。しかし、役職が部門長や現場の担当者であれば購入の最終的な意思決定は、企業の社長や経営幹部がいるのではないかと推測がつくはずです。

また、企業の組織図を見ることで、今アプローチしている担当者の上にはどのような組織や役職の方がいるのか」あるいは「企業全体でどのような部門があるのか」が把握できます。それにより、障壁となりそうな部門を推測したり、合意を取っておくべき部門など営業マンが主導権を握りながら、営業アプローチを進めていくことができます。

コミュニケーションでヒアリングをしていく

役職や組織図は仮説を立てる上での情報としての参考にはなりますが、実際にその通りであるかどうかは実際に顧客にヒアリングしてみなくては分かりません。そのため営業アプローチの段階で逐一、関係者の情報をヒアリングしていくことが大切です

多くの場合、積極的に検討していない限りは、顧客から関係者を引き出してくれたり、巻き込んでくれることは稀です。そのため、営業マンから「このような件に対して、最終的な意思決定をされるかたはどなたになりますでしょうか?」や「〇〇を管理している担当部署などありますでしょうか?」と把握したい情報をヒアリングしてみましょう。

重要な関係者や関連部門を無視してしまうと、案件が順調に進捗しても途中で反対勢力として現れて失注になってしまったり、協力的になってもらえなくなってしまうおそれがあります。

まとめ

今回は、意思決定者のタイプと対策についてお伝えしました。意思決定者といっても役割はさまざま、関心のあることも異なります。役割をしっかりと見極め、関心に応じた情報や資料を提供し、戦略的に営業活動を行いましょう。
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