企業という組織の中で仕事をする以上、避けて通れないのが社内での情報共有です。上司、部下、同期はもちろんのこと他部署などとも情報を共有して業務を進めていく場面は多くあります。
他方、情報共有で課題を感じている企業は少なくありません。2017年にHR総研が行なった社内コミュニケーションに関する調査によれば、4分の1の企業が「社内情報共有ができていない」と回答しています。
「伝えたつもりなのに伝わってなかった……」「誰に何を伝えたか忘れてしまった……」などの理由により、社内情報共有が上手くできないケースが多く見られます。特に営業職で顧客情報やセールスのノウハウを一人で抱えてしまっていては、全体的な売上げ拡大につながらなくなってしまいます。
今回は、社内情報共有の重要性と課題、そして情報共有を促進する際のポイントについて考えていきます。

社内情報共有とは
社内情報共有とは、各社員の持つ情報を関係社員に共有し、全社的に活用できる情報にすることです。口頭や手書きメモもありますが、デジタル技術が普及したことにより、メールやSNS、チャットツールといった手段を用いて行われることが多くなりました。
ここで言う「情報」とは、顧客情報はもちろんのこと、業務に関する知識やノウハウなども含まれます。さまざまな業務から産出される情報を蓄積・整理し、業務に落とし込むことで、より効率化が可能になります。
営業活動の場面においては、
- 顧客情報、会社情報
- 顧客の関係者情報(人脈情報)
- 営業活動の中で得た情報(業界の状況、顧客の目標や課題など)
- 顧客への営業アプローチや訪問内容の記録をまとめた対応情報
などが共有すべき有益な情報といえるでしょう。
社内情報共有がなぜ大切なのか
社内情報共有はなぜ大切なのでしょうか?3つの観点からその重要性について見てみましょう。
ノウハウを共有できる
情報共有をしないとノウハウがその人だけのものとなってしまい、ノウハウを組織的に活かすことができなくなってしまいます。社内情報共有を行うことによって、互いの業務に関係するノウハウを共有することができます。それにより業務は効率化し、ミスも少なくなります。
特に営業マンにとって、ノウハウは貴重な資産です。難しいと思える商談でも、類似案件の成功事例を事前に共有できていれば、会話の糸口を見つけることができるかもしれません。
例えば、◯◯業界の見込み客との商談が初めてであっても、上司や同僚から同じ業界で「顧客がどのような課題を解決したくて導入してもらえたのか」「どのように自社商品・サービスが活用ができるのか」の情報を共有してもらうだけでも、見込み客とのコミュニケーションや提案は変わってきます。
個人だけで情報を独占するのではなく、チームで活用することで組織全体が成長することできます。組織レベルで営業力を高めることが可能となるのです。
疑問点をすぐに解決できる
社内で情報共有ができる体制ができていれば、各社員が疑問に思ったことをすぐに解決することができます。
営業マンの場合、お客様と電話や商談でコミュニケーションをとっている中で、お客様より質問されることがあるかと思います。そのような中で、特に経験の浅い新人営業マンの場合、まだ知識が不十分であったり、実際に運用したことがないことから質問に答えらないこともあるかもしれません。
そのような時に、過去にお客様から質問されたことや他社の成功事例などが蓄積・整理されていると、新人の営業マンもその情報を元にお客様に自信を持って対応することができます。自分自身の疑問点の解消だけでなく、お客様の疑問にもその場で解決することができます。
コミュニケーションが円滑になる
もし情報共有を行わなければ、社内のコミュニケーションはどうなるでしょう。情報不足による話の食い違いによるトラブルが頻発し、ぎすぎすとした雰囲気となってしまうかもしれません。そうなれば、社内の環境は悪化の一途をたどってしまいます。
社内情報の共有を行うことで、共有することから自然とコミュニケーションが生まれ、組織全体のモチベーションも向上します。また、業務の相互理解のきっかけともなります。
営業現場では、上司は部下から情報共有を受ける時間を確保することで、仕事の成果だけでなく営業活動の経過も聞くことができます。気になるところは指摘することができ、自ら考えて行動していれば営業手法や姿勢を褒めることができます。
社内の情報収集を意識している組織は、人間関係も良好なものとなるのです。
社内情報共有の課題
組織によっては、社内情報共有を行うにあたっていくつかの課題が生じることがあります。ここでは代表的な3つの課題について紹介していきます。
何を共有したら良いかわからない
まず、情報共有を行うといっても実際に「誰に何を共有すれば良いかわからない」ということが考えられます。
その人自身が、情報に価値を感じていなかったり、共有するほどの情報ではないと思っていたりすると、当然共有はされません。また、常日頃から社内でのコミュニケーションが不足している場合、同僚や部下がどのような課題に直面しているか把握できていないこともあるでしょう。
そのためには、社内のお互いの業務理解を意識したり、現在課題となっていることを自ら発信していく環境も大切なのかもしれません。その結果、情報を聞いた社員から情報を共有してもらえることができます。
共有したいと思っていても、周りの人がどのような情報を欲しているのかわからないという理由で、情報を持っていても情報共有までに至らないことは少なくないのです。
自分のノウハウを公開したくない
営業職では「競争心」の強い人もいるかと思います。そうした人は、自分のノウハウを共有することで、他の営業マンに自分より良い成績を残されてしまうのではないかと考えてしまうことも。自分が営業として優位で居られるために、情報を独占してしまうケースが考えられるのです。
競争意識により営業力を磨くことも大事ですが、それだけだと特定の営業マンだけが成長し、組織全体の営業スキル向上にはつながりません。素晴らしいノウハウこそ、積極的に共有し、組織全体の営業スキル底上げをはかること必要があります。そして、そうした人材こそ評価されるような価値観が徐々に広がりつつあります。
共有するために時間を使ってしまう
情報共有をするべきだと意識しすぎてしまい、情報共有のための時間を取りすぎてしまわないように気を付けましょう。
情報を共有することは大切ですが、情報共有によって営業活動やお客様対応の時間がなくなってしまい、営業成績を落としてしまうこととなっては本末転倒です。「どのような情報を」「誰に」共有するのかを見極めた上で、共有を行いましょう。
社内情報共有を促進するポイント
社内で情報共有を上手く促す際に大切な点を確認しておきましょう。
共有する場所を決める
共有する場所を具体的に決めることで、情報共有を促進することができます。例えば、SFA(営業支援システム)やチャットツール、Web会議ツールなどを活用して、誰もが気軽に情報共有できる場所を用意する必要があります。
複雑な操作は敬遠されがちです。自社の営業マン全員がストレスなく使えるようなものが望ましいでしょう。例えば、スマートフォンやタブレットなどの端末で、営業先訪問後すぐに業務報告をできるようにすれば、営業マンも情報共有がしやすくなります。電車やタクシーなど移動時間でも、場所を問わず簡単に報告が行えることでしょう。
情報共有ツールの導入にあたって注意すべきなのは、ツールを一元化することです。
複数のツールが社内に共存していれば、知りたい情報にアクセスする際、どのツールを利用するかわからなくなってしまいます。まずは情報共有ツールの一元化を図り、社内の情報共有を効率化しましょう。
共有する内容のフォーマットを決める
ディップ株式会社による2018年「業務効率の改善について」のアンケート調査結果によると、「無駄な業務をなくすために勤務先に求めること」という質問に対して「情報共有の仕組みをしっかり作ってほしい」と答えた人が全体の約半数を占めていました。

(出典:「業務効率の改善」について)
情報共有の仕組みができていれば、無駄な業務は減ることでしょう。共有する内容のフォーマットがあれば、どのような内容を共有すべきか、どのレベルまで共有すべきか悩む必要もありません。
営業マンが共有する際に必要と考えられる項目を事前に決めておき、フォーマットの中にあらかじめ組み込んでおくと便利です。単純で記入しやすいフォーマットになればなるほど、情報共有は習慣化しやすくなると言えます。共有される情報の品質が一定化し、効率的にもなるでしょう。
メンバーは共有者に反応する
ノウハウや顧客の情報を共有しても、反応がなかったり誰も見ていなかったりすると、共有者は虚無感を覚えます。情報共有をしなくなってしまうかもしれませんし、業務へのモチベーションも下がってしまうことでしょう。
そのため、メンバーが投稿したら他のメンバーが反応することが大切です。あるいは、誰が情報を確認したのか、ログが残るようなツールを使うことも一つの方法でしょう。
共有された情報に対して感謝を表したり、価値を認めたりするなら、モチベーションも高まり組織全体の結束力も高まります。積極的に情報を共有し、会社に貢献する営業マンを称賛することで、全員が情報をあげる環境となるでしょう。
蓄積された情報を整理していく
情報を共有しても、そのまま放置していては情報を上手く活用することができません。情報を活用できなくなると、だんだんと共有もされなくなってしまいます。
そのため、ITツールを活用して整理する必要があります。特に、営業マンが共有する顧客資料は膨大になりがちです。CRM(顧客関係管理システム)などのシステムを導入して整理を行いましょう。
まとめ
社内情報共有は、多くの企業が課題として捉えています。異なる背景を持った社員が集まっている企業であれば、なおさらその課題感は大きくなります。
「特別に情報共有の場を設ける必要はない、適宜共有を行えばいい」と思われる人もいるかもしれませんが、そうした考え自体が共有されていない場合もあるので、気をつける必要があります。共有の方法や、共有の頻度なども企業によってはある程度ルール化した方が良い場合もあるでしょう。自社にあった共有の方法を考えてみてください。
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