顧客課題のヒアリングは国語・算数・理科・社会で【前編】

顧客課題 ヒアリング

営業場面は新規事業のネタの宝庫

私は普段、リクルート社の新規事業開発室やオールアバウト社の起業経験をベースに、企業の新規事業開発の支援を仕事にしています。
新規事業開発というと、現場での営業の仕事と全く別物のように思う方がいるかもしれませんが、実は営業場面は新規事業のネタの宝庫です。
お客さんとの会話の中にはたくさんのネタが埋まっています。その中から芽を見つけ育てられるかどうかは、営業マン次第です。
リクルート社でも、数多くの新規事業のアイデアが、現場の営業マンの発案から生まれました。
そのどれもが、営業マンがお客さんとの会話の中で気付いた新たなビジネスチャンスを見逃さず事業案としてまとめ起案したことによるものです。
もちろん「販売する」ことで売上数字を作ることは営業マンとして最も大事な仕事ですが、本来仕事がそれだけではないはずです。
市場に一番近いところにいてお客さんと日々接点を持っている営業マンのもう一つ大事な仕事は、現場から次のビジネスのネタを見つけてくることです。
経営者も企画スタッフも、現場から遠い分、市場の声に気がつくのが遅くなりがちです。営業マンは、見つけたネタを早く正確に社内に持ち帰ってこなければいけません。
その後長らく新規事業開発畑で働く私も、社会人としての仕事のベースは最初に就いた営業マンとしての仕事で培いました。
お客さんとのやり取りの中で学んだことが、今の新規事業開発の仕事に活きています。

営業と新規事業開発の共通点

とは言え、営業の仕事と新規事業を考える仕事は大きく違うと感じる人も多いでしょう。
たしかに一見すると仕事の仕方は違うのですが、実はその原点は同じで、共通点も多いんです。
私の著書「はじめての社内起業」( goo.gl/WHvYfm )では、「事業とは『不』の解消である」と書きました。
世の中にある様々な「不」(不満、不足、不便、不平、不合理、不都合、不幸・・・)を解消することができれば、それは「事業」として何らかの形で収益を生みます。
営業の仕事も原点は同じです。お客さんから「不」を聞き出し、それを解消できる製品やサービスを提案し、お客さんには便益を、自社には収益を生むのが仕事です。
営業マンとして、お客さんがどんな「不」を抱えているのかを把握しようとすることや、どうすればお客さんの「不」を解消することが出来るだろうかと考えるプロセスは、新規事業を考えるプロセスとまさに同じなのです。

「営業」によって鍛えられる力

今営業を仕事にしている方の中にも、将来は自分で何か新たに製品やサービスの企画をしてみたいとか、新たな事業を興してみたいとか、独立して起業したいと考えている人も多いかもしれません。
次にそのような仕事に就いて行く為にも、営業は格好のトレーニングの場です。
新規事業の企画マンに必要な力でまず鍛えられるのは「質問力」です。「お客さんの『不』を聞き出す」と簡単に書きましたが、それは容易なことではありません。
営業経験があれば分かりますが、お客さんはなかなか本音を話してくれません。表面的な言葉の裏にどんな真意があるかを読み取ることも時に必要です。
さらに、お客さん自身が「不」に実は気がついていないというケースもよくあります。
口に出すことはないけれど潜在的に抱えている不満に気付くことができ、それを解消できたなら、それはとても大きな商売に繋がる可能性があります。
営業マンがお客さんの「不」を聞き出そうとあれこれ質問を考えることは格好のトレーニングです。
次に鍛えられる大事なことは「ユーザー視点」です。営業マンがお客さんの身になって考えることは大切ですが、いつもお客さんと同じ目線に居るだけではなかなかお客さんと違う発想の提案をすることが出来ません。
時に視点を変えお客さんも気がついていないような発想から提案を考える必要があります。
その時に大事なのが「ユーザー視点」です。お客さんは、どうしてもどこかでプロダクトアウト発想、自社都合で物事を見がちです。
そんな時、敢えて営業相手であるお客さんと反対側、お客さんの商品を買う更にその先の客さんの視点で意見を言うことが出来ると、それはとても重宝がられます。
ユーザー視点は全ての仕事の基本です。特に新たに製品やサービス、事業を考えようというときにはとても大切なことです。
営業マンとしての仕事は、自然にそのトレーニングになっていると言えるでしょう。
営業という仕事においても新規事業開発の仕事においても大事なこと「質問力」と「ユーザー視点」。この2つを実行する上でのコツをお教えします。
それが「国語・算数・理科・社会」です。
この続きは後編にて詳細をお伝えします。ぜひご覧ください。

石川 明(新規事業インキュベータ石川明事務所 代表)
1988年、(株)リクルートに入社。7年に渡り新規事業開発室のマネージャとして数多くの社内起業や、起業促進のための社内制度の設計・運用を経験。2000年、(株)オールアバウトを起業し、10年に渡り事業責任者を務める(2005年JASDAQ上場)。2010年に独立。様々な業種の企業と契約し、新規事業の企画・企業内起業活性化のための制度設計・社員教育に従事。これまで100社、1,500案件、3,000人の社内起業に携わる。
著書:『はじめての社内起業 「考え方・動き方・通し方」実践ノウハウ』

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原誠

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