レジリエンスとは?営業マンが高い成果を出すために不可欠な再起力

レジリエンス

最近はレジリエンスという言葉をよく耳にします。簡単に訳すと「回復力、治癒力、再起する力」という意味であり、ビジネス、スポーツ自治体ほか、さまざまな領域で注目されている概念です。ビジネスにおいては組織や人の耐久力、回復する力という文脈で使われます。

もともと、日本の企業には体育会系の人材を好む傾向がありましたが、これもスポーツマンが激しいトレーニングや、先輩からの理不尽な要求に耐え抜いてきたタフなメンタル(レジリエンス)を持っていると判断されやすかったためでしょう。

近年の日本企業はこれまで以上に精神的にたくましい人材を求める傾向が強くなっています。

仕事の現場では人間関係のストレス、仕事の成長途上でぶつかる壁、競合他社との争いなどさまざまストレスがかかります。人間は感情があるので落ち込んだりスランプに陥ることはありますが、落ち込んでも復活が早い人のほうが、当然高いパフォーマンスを出すことができるからです。

レジリエンスは特にリーダーに必要不可欠な資質だと言われます。

環境が激変したときでも安定したメンタルのリーダーがいると周囲が仕事に集中できるためです。もちろん何かとプレッシャーのかかる営業マンにとっても必要な資質です。

本記事ではレジリエンスの高い営業マンの特徴やレジリエンスの高め方を紹介します。

レジリエンスとは

レジリエンスとは、もともとは物理学の用語で外部からの力による歪みを元に戻すことを意味しましたが、近年は心理学の領域で「極度の不利な状況に直面しても、正常な平衡状態を維持することができる能力」と解釈されるようになりました。

レジリエンスは比較的新しい研究領域であり、幅広い意味を含みます。

  • レジリエンス(resilience)=精神的回復力、復元力、治癒力、ストレスへの抵抗力、耐久力

人は誰でもストレスがかかると肉体的、精神的にダメージを受けます。まったく何も感じない人はいません。しかし、同じ出来事でも「早めに回復する人」といつまでも「ダメージを引きずってしまう人」がいます。

レジリエンス=精神的回復力の強さ(立ち直りの早い・遅い)は、個人の思考のクセ、それまでの経験、培ってきた自信、生理的特性(セロトニンの分泌等)、個人を取り巻く環境までもが関係しています。

固定的なものでもなく、その人なりに強くすることができる資質でもあり、知識をつけて幅広い視点を持ち、心身をケアすることで向上させることが可能です。少し古い表現ですが「人間力」のような概念にも近いと言えるでしょう。

レジリエンスとストレスの関係性

レジリエンスの強さは平時にはあまりわかりません。特別にメンタルが強い人や不安定な人を除けば、大抵の人はそれなりに自分をコントロールできています。

しかし、ストレスがかかったり、その人が不利な立場になったときには如実に表れてきます。元気がなくなったり体調が悪くなることもあれば、普段は温厚でバランスのとれた人が攻撃的になったり、やけな言動をとったりすることがあります。

今の時代の職場は昔の牧歌的な時代と比較すると仕事の密度もこくなりかなりストレスフルです。

パワハラも増えていますし、今後の景気によっては会社の倒産なども増えるでしょう。ビジネスマンにとって失業は親族の死別に相当するほど心に傷を負うことです。

そこまでではなくても、自分を評価しない上司の下にいるのは、部下にとっては日常的にストレスを感じますし、同僚との人間関係に悩む人も少なくありません。

チューリッヒ生命が行った「2019 年ビジネスパーソンが抱えるストレスに関する調査」では、なんと8割近くのビジネスマンがストレスを感じていると回答しています。今やほとんどのビジネスマンにとってレジリエンスが必要な時代かもしれません。

2019 年ビジネスパーソンが抱えるストレスに関する調査

(参考:PRTIMES|チューリッヒ生命調査

これは、日本だけの話ではありません。イギリスでのレジリエンスの調査でも、再起力が問われるのは、大きな危機より「職場での面倒な人間関係や社内政治」という結果がでています。職場とは災害よりも人間にとってストレスがかかるところなのです。

レジリエンスには「ストレスからの回復力」と「ストレスがかかったときに耐える力」も含まれます。これからの時代はストレスをためないで発散するノウハウやストレスへの対処法「ストレスコーピング」を知っておくことが大切です。

レジリエンスがなぜ営業マンに大切なのか

大抵の人にとって営業はなかなか厳しい仕事です。冒頭で体育会系人材が好まれると書きましたが、実際は営業現場で、体育会系出身で厳しい経験をしてきた営業マンがテレアポが苦手でなかなかできなく悩むこともあります。

一方で、特に根性とは無縁に生きてきたような営業ウーマンが「飛び込みもテレアポも平気」「お客様と話すことが好きだからいつのまにか売上が上がって……」と発言したりするので、強さとは根性とは一体何なのだろうかと思わないでもありませんが、一般に多くの営業マンにとって「拒絶されるストレス」は辛いものです。

2019年にオンリーストーリー社が調査した結果でも「営業活動で辛いと感じること」のNo.1、No.2に飛び込み営業、テレアポあがっています。

「営業活動で辛いと感じること」調査

(参考:PRTIMES|オンリーストーリー調査

割合は低くてもルート営業を辛いと思う営業マン、定期的なフォローが苦手な営業マンもおり、辛いと思う活動がない営業マンは35%ほどです。人によってストレスがかかる活動が違うだけで約65%の営業マンは、辛いと思っている活動があるのです。営業活動以外にもストレス要因はたくさんあります。

  • 目標数字を達成しなければならない
  • 成績が棒グラフで公開されるので未達だと肩身がせまい
  • 成績がわるいとリストラされてしまうかもしれない
  • お客様から理不尽な要求をされる

もちろん、営業はやりがいのある仕事ですが厳しい面があることも確かなので、営業マンにとってレジリエンスは重要な資質だと言えるでしょう。

レジリエンスの6つのポイント

ここではレジリエンスの6つのポイント解説します。 

自己認識

自分にはどのような考え方の癖があるのか、感情的になるのはどのような時なのかなど「自分がどんな人間か」を認識する能力です。

2種類の自己認識があり、一つは「内面的自己認識」。自分の価値観や自分への願望、自分が周りにあたえる影響などについての認識。もう一つは第三者の視点から自分はどのような人間か、第三者への共感力の程度などの「外面的自己認識」です。

自己認識ができている人は仕事ができて出世も早いと言われます。しかし、米国の組織心理学者のターシャ・ユーリック氏が行った調査では、本当に自己認識ができているのはわずか10~15%であり、自分を正しく認識する力はやはり高度な能力だと言えるでしょう。

自制心

自制心とは、その場の感情で物事を捉えたり、相手に感情をぶつけることをせず理性的でいられる力のことです。

自制心が低く感情的な人はたとえ正しい発言をしても、あまり周囲に賛同されないものです。確実に相手が悪い場合でも、こちらが感情にかられた物言いをすると、相手は「たしかに自分が悪い。でもそこまで言うのはひどい!」となり、なぜか相手に正当性があるような空気になります。自制心は集団で働く上でとても重要な能力です。

精神的敏捷性

精神的敏捷性とは困難に直面しても多角的に物事を捉えたり、困難を目標へと認識を変えて、なんとか達成できるように切り替えることができることです。

動物はストレスがかかるとサバイバル・モードになって扁桃体が「戦うかor逃げるか」の2択の指令を出すそうです。ビジネスの現場では走って逃げるほどの事態はないものの思考停止する人はいますし、中にはムダに戦ってしまう人もいると思います。

逆境やトラブルのときに慌てずに冷静に判断し、本質的な原因をつかみ迅速に問題解決に向けて対処できる精神的な敏捷性はビジネスにおいてとても重要です。

自己効力感     

自分を過大評価をせずに自分にはできる、成し遂げる力があると思う能力です。自己効力感はおもにそれまでの人生の歩みのなかで培われます。「勉強して〇〇検定に合格した」「部活で頑張りとおした」「受験で第一志望に入った」、あるいは結果如何をとわず「自分は全力を出した」という気持ちが自己効力感を高めます。

仕事でも「やり抜く」ことを経験していくと、今のスキルよりもチャレンジが必要な仕事がきた時に「できるかもしれない」という自己効力感を持てるようになります。 

楽観性

物事をポジティブに捉えることができる資質です。ビジネスでは最悪の事態を想定することは悪いことではありませんが、必要以上にネガティブに考えないことが大切です。イメージングの効果も無視できないのでポジティブなストーリーを描いたほうが効果的です。 

物事には、自分が変えられることと変えられないことがあります。変えられないことについては必要以上に悩んでも同じですが、変えられることに着目して努力するだけでも事態はプラスに転じていくことが多いものです。

繋がり

人間は1人では大きなことを成し遂げることはできません。そのために会社やチームといった組織が存在します。近年のように文明が発達したからこそ都会では一人で不自由なく暮らせますが、何世紀もの間人間は集団行動しなければ生きていけなかったため、何かのグループやコミュニティの一員であることに安心します。

テレワークを経験して一人ではストレスがたまる、雑談が貴重だとわかったという人も多いように、人とのつながりがあってこそ仕事のやりがいや満足度も高まる人は多いはずです。

レジリエンスがある営業マンの共通点

ここでは、レジリエンスがある営業マンの共通点についてまとめます。

途中で諦めない

レジリエンスがある営業マンは、物事を途中で諦めるという発想がありません。多くの人が挫けてしまうところで踏ん張ることができ、さらにそこから目標を見据えて達成しようとする意志を持っています。

営業活動ではアポイントや受注数が伸びなかったりした際に、スランプに陥ってしまうことがあります。そのような時にも「自分には営業はあっていなかった…」「自分は駄目になってきたのかもしれない…」と思わずに、再度調整します。あるいは愚直に同じやり方を要領悪いながらも続ける営業マンもいます。

他の仕事ならあまりあり得ないかも知れません、営業の場合は、適性がなさそうな人でもなんだかんだと量をこなすと成果が比例してきます。ホームランとまでいかなくともヒットくらいは打てるため、いわゆる「化ける」ことがあります。

また、スランプに陥ったときも諦めずに動き続ける営業マンは、後から振り返るとスランプのときの努力が花開いて能力が伸びたりします。成長曲線を体験的に知っているのかも知れません。

考え方が柔軟

レジリエンスのある営業マンは思考が柔軟なところも特徴です。

目標が未達であっても今後の改善のチャンスと捉えたり、上司やお客様からのフィードバックやお叱りを成長の機会と認識したり、マイナスの一面だけを捉えるのではなく、多面的に物事を捉えることができます。たとえ苦手な人からの指摘であっても「確かに言っていることは正しい」と感情と事実を切り分けて解釈できます。

また、相手の立場や心理に対する想像力もあります。多くの人は他人に注意したりネガティブなことを伝えるのが好きなわけではありません。「もし、自分が逆の立場なら相手に嫌われる可能性もあるのに厳しい指導をできるだろうか?」「お客様も本来ならこんなクレームをつけたくないだろう……」と相手の立場になって考えることができるため、必要以上に被害者意識を持ちません。

困難にも立ち向かおうとする

目標が未達である場合は、多くの場合営業マンの能力がそのレベルに達していないのですが、そのような実力よりも少し高い目標に対しても挑戦していく姿勢があります。また目標を達成しても安住せずに、次の高い目標に向かっていく姿勢を持っています。

ダメなときに腐って「やる気が出ない」「商品が悪い」と嘆かず、調子がよいときにも「自分は営業力がある」と慢心しないところが特徴です。

自分の能力を正しく把握している

レジリエンスの高い営業マンは、自分の実力を過大評価も過小評価もせずに把握しています。そのため、必要以上な無理もせずストレスと上手く向き合っています。

いかにあせっても営業できる時間帯は決まっています。自分が頑張りたいからといって、ニーズのないお客様に無理に営業しても迷惑なだけです。アプローチしてから成果が出るまでには何ヶ月もかかるので努力がすぐ実るわけではないため、ラッキーな受注を喜びはしても幸運をあてにすることはありません。

例えば、自分は50件アプローチしたらアポが1件とれて10件商談すれば半年後に2件成約するなど、自分の実績から能力を把握して計画を組み立てたり、営業ターゲットを変更するなど現実的な努力をすることができます。

感情的にならない

レジリエンスの高い営業マンはいつも機嫌が良いように見えます。多くの人は意外に自分で気付かず顔に出したり、ちょっと嫌味っぽくなったりしますが、感情が安定しています。

だからこそお客様も安心して付き合えますし、社内のほかの部署のスタッフからも親しみを持たれます。すると情報も入ってきます。もともと明るい性格の場合もあれば、本人が努力している場合もありますが、周りの人を安心させる能力があります。 

自身のレジリエンスを高めるためには

身体を鍛えるのに一定の期間がかかるように、レジリエンスも急に明日から一気に高めることは難しいので、まずは自身の思考や習慣の癖を理解して、どのようにストレスに対して上手く向き合っていけるのかを考えましょう。

例えば、アメリカ心理学会は「レジリエンスを築く10の方法」を提唱しています。日本人でも参考になる項目があります。

  • 親戚、友人と良好な関係を保つ
  • 危機やストレスに満ちた出来事でも耐え難い問題として見ないようにする
  • 変えられない状況を受容する
  • 現実的な目標を立て、それに向かって進む
  • 不利な状況であっても、決断し行動する
  • 損失を出した闘いの後は自己発見の機会を探す
  • 自信を深める
  • 長期的な視点を保ち多角的にストレスの多い出来事を検討する
  • 希望的な見通しを立て良いことを期待し、希望を視覚化する
  • 心と体をケアし、定期的に運動し自分自身ののニーズと気持ちに注意を払う

レジリエンスを高めるアプリ

「アメリカ人のようなポジティブシンキングなど無理……」「ネガティブな性格だから仕方ない……」という人にはレジリエンスを高めるアプリもおすすめです。

もともと人によって心理的敏感さが違いストレスを感じやすい人とそうでない人がいるという観点から、東京大学、東京家政大学が男女150名(うち女性100名)を対象に実証研究した結果、レジリエンス尺度の得点の向上が有意に示されています。

レジリエンスの低い人の自尊感情が向上したとあるので、スキルは高いのになぜか自分に自信が持てない人は試してみるとよいかもしれません。

レジリエンスさがし

(参照:App Store

「なぜ?」はなく「何を?」の発想

何かに悩んだり、過去の出来事についての自分の心理を分析するときに「なぜ、あのように判断したのだろう」「なぜ、Aを選択しのだろう」と考えると、際限なく課題が細分化されるだけだったり、同じ悩みをグルグル回るだけになったことはないでしょうか?前述の心理学者ユーリック氏は「なぜ」ではなく「何」を自問すると客観性、未来思考が保たれ行動に結びつきやすいと述べています。

スランプの際はあまり自分を深堀せずに「今の自分ができることは何か?」とシンプルに考えたほうが、復活の日は早いかも知れません。

他人を助けること(ヘルパーズハイ)

人は「他人に贈り物をする」と同じ物を自分にプレゼントするよりも幸せになってレジリエンスが高まるそうです。ヘルパーズハイといって他人を助けることもメンタルの安定や意欲回復につながります。誰かから「ありがとう」と言われると自尊感情が高まるのです。

「電車で席をゆずる」「コンビニのレジで順番をゆずる」「ボランティア活動をする」などの方法があります。営業マンなら落ち込んだときは、自分を頼りにしてくれるお客様とのコミュニケーションを意識的に増やすとよいかも知れません。

1日に何回かエネルギー(ブドウ糖)を補給する

レジリエンスには気持ちだけでなく生理学的な面も影響します。研究によってレジリエンスを高める食事は判明しています。また、人はブドウ糖の割合が低くなると集中力が落ちるため、レジリエンスを高めるためには10時と15時のおやつも理にかなっているそうです。

午後にやる気が落ちてきたら「自分はダメだ」と思わずに「ブドウ糖が切れたかも知れない」と考え適度に糖分を補給してテンションを回復させましょう。

レジリエンスにはさまざまな要因が影響しているため、高めるアプローチの種類もかなり豊富です。自分の営業活動に落とし込みやすい方法をピックアップして試してみてください。

まとめ

2020年から、日本も世界も先が見えない時代に突入しています。

具体的な予測ができない今のような時代は、ある程度トライ&エラーを繰り返しながらビジネスを進めていく必要があります。予測が外れることも多くなるため、「失敗から立ち直る力」「失敗を糧に前に進む力」「復活する力」はますます重要になっていくでしょう。

営業マン個人も営業組織もレジリエンス(ストレスがかかる環境下で耐えられる力、ダメージを受けてもそこから回復できる力)を高めていきましょう。

こちらから「営業スキルチェックシート 」がダウンロードできます。自己認識力のアップにご活用ください。

    営業スキルチェックシート

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