営業力強化に役立つ9つの資格

営業力強化 資格

近年は、インサイト営業セールス・イネーブルメントという考え方が注目されているように、営業マンにも専門分野の知識はもちろん、洞察力や独自性のある提案ができる能力が必要になりつつあります。

もちろん営業職は人対人の仕事であるため、コミュニケーション力、ヒアリング力、質問力などが重要であることは今後も変わりはないでしょう。

しかし、例えば

  • 営業力とマーケティング力を兼ね備えている
  • 営業センスと法律の資格を持っている
  • 営業マンだけでなく中小企業診断士の資格も持っている

というように、営業スキル以外に法律やマーケティング、経営などの知識の幅を広げていくことができると、これからの時代はお客様から一目置かれ、より評価される可能性が高まります。

営業マンに役立つ知識と言ってもかなり広範囲であるため、何となく勉強していると広く浅い知識になる可能性があります。広く浅い知識を身につけることもよいことなのですが、専門性を高めるという観点からは、1つの資格取得をKPIとして設定し、一定期間その分野に集中することが効率的です。

今回は、営業力強化に役立つ9つの資格をご紹介します。

日々の営業活動で活用できる営業スキルのチェックシートはこちら

なぜ資格を持っておくと良いのか

営業の世界では、コミュニケーション力やヒアリング力が求められるため、「営業力=知識力」とは言いきれません。知識をたくさん覚えたからといって、学校のテストのように営業成績がすぐ上がっていくことは少ないでしょう。しかし、営業マンが資格を取得するメリットは意外にあるものです。

ビジネスマンとしての総合能力向上

営業マンは、経理や法務などの職種に比べると「専門職」というより「総合職」に近く、さまざまなスキルが必要です。リクナビNEXTの調査を見ると、営業マン自身もその自覚は持っているようです。

必要だと思うスキル

調査結果からもわかる通り、営業マンは思考力からコミュニケーション力、情報収集力まで幅広い力が必要だと感じています。

知識を増やしたり思考力を鍛える勉強なら、どのような内容でも営業マンのスキル向上に役立つとも言えます。とは言え、すべての分野の知識を習得するのは不可能なため、今の業務に関連した分野に集中して優先順位をつける必要があります。

例えば、営業マンが高い営業実績を上げるためには、複数案件を同時進行で対応できることが必要です。同じ時期に、複数のプレゼンを行うこともあるかと思います。そこで、Word、Excel、パワーポイントなどを熟達していれば、資料作成を短時間で効率的に済ませることができ、自身の必要な新規開拓の営業活動の時間を確保することができます。

また、ターゲット顧客の業界や関連業界の知識を身につけることは、お客様のビジネスの深い理解やその背景の理解に繋がります。さらに、幅広い知識を持っておくことで、さまざまな角度の視点からの分析や提案を行うことができ、鋭い着眼点や提案内容の深さで他社と差別化することもできるようになります。

もちろん、後輩にも自信を持って指導できるようになるなど、ビジネスマンとして の総合能力を高めることができるでしょう。

キャリアアップ

近年は、キャリアアップのために20代で転職することが、ごく一般的になってきました。また、本人に転職する気がなくても、会社の部署異動により違う上司のもとで働くことになる場合もあります。上司が変わると、1から信用を築く必要が出てきます。そのような時に資格があると役立ちます。

資格とは客観的な能力の指標であり、第三者からみてその能力を持っているということの証明になります。さらには、資格試験に合格するためには、仕事と両立しながら勉強する努力が必要になります。

リクルートワークスの調査によると、自主的に自分の仕事に関する勉強をする人は33.1%しかおらず、約7割は本を読んで学ぶことすらしていないようです。誰しも1日8時間一生懸命働いており、アフター5や土日のプライベートの時間に勉強を続けるのはかなり大変なことです。だからこそ、継続して学ぶ人と学ばない人では長期的に見ると大きな差がついてきます。

資格を取得できていることは、意志が強く、仕事と自分磨きの両方をバランスよくできる人間の証明とも言えるでしょう。

営業実績や社内MVP、社長賞、新人賞獲得の実績などももちろん評価されます。しかし、社内表彰の場合、評価対象が社内に限られていたり指標がさまざまなため、相対的な実力が見えづらく感じてしまいます。転職先の会社からしたら前の会社内の状況はわからないため、賞をとる難易度のイメージもつかないでしょう。厳しい人事担当者に「無いよりは有った方がいい」程度の評価をされる場合も少なくありません。

今のように変化が激しい時代では、学び続けるビジネスマンは歓迎されます。高い営業実績だけでなく、他者からわかりやすい能力の資格を持っていると、社内異動や昇進、転職の際により評価されやすくなるでしょう。

業務の効率を強化する資格

営業マンは電話営業や商談だけでなく、事務作業や提案資料作成、契約書作成などが非常に多い仕事です。そのため、ある程度のITスキルや法律の知識があることが望ましいと言えます。ここでは、基本的なビジネス能力を強化する資格をご紹介します。

マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)

マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)

マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)とは、WordやExcel、パワーポイント、Access、Outlookなどの製品を使うことのできるスキルを客観的に証明できる資格であり、Officeバージョンごとに試験があります。WordとExcelには、スペシャリスト(一般)とエキスパート(上級)の2レベルがあり、自信のある方は最初からエキスパートを受験することも可能です。

MOSのスキルを習得すると、Wordやパワーポイントを活用してビジネス文書や稟議書、提案資料作成を効率よくこなすことができるでしょう。また、管理職以上なら営業数字の分析や営業パイプライン管理、営業戦略書類などを作成する機会があるかと思います。その際には、Excel の知識をふんだんに生かすことができます。

ビジネス実務法務検定

ビジネス実務法務検定

ビジネス実務法務検定とは、法務部門だけでなく、総務、営業、人事、販売などの部門のビジネスマンにも必要な基本的な法律知識を習得しているかを証明する検定です。

昨今、コンビニエンスストア業界の本部とオーナーの契約内容が問題になっていますが、ビジネスの現場では、相手企業の態度が友好的でも契約内容をよく見ると自社に不利益な内容になっていることはあります。しかも、一度契約を締結すると、余程の社会問題にでもならない限り、損をし続けることになってしまいます。

定めるべき内容を契約書に盛り込んでいなかったがために、トラブルに発展することもあります。正しい法務知識を身につけるとリスクやトラブルを回避し、自分や会社に損害を与えることを防ぐことができます。

営業やマーケティングの基礎知識を強化する資格

一般にはあまり知られていませんが「販売士」や「営業士」の資格は、営業やマーケティングの知識を学べる実践的な資格です。また、難関資格ですが中小企業診断士の資格も営業マンにはお薦めです。

営業士検定

営業士検定

営業士は、日本営業士会が認定する「マーケティング・セールスのスペシャリスト」のことであり、精神論を重視する営業ノウハウではなく、近年の営業に必要な科学的な営業スタイルを身につけていることを証明できる資格です。「営業士初級」「営業士上級」「営業士マスター」の3種類があります。

営業士検定に向けて勉強すると基本的な営業業務、マーケティング力、情報収集力、企画力を身につけることができます。

  • 初級:営業担当者が持つべき基礎知識
  • 上級:営業指導や管理業務、営業企画、マネジメント、マーケティング
  • マスター:リーダーシップや営業戦略立案、営業戦略実行、営業事業評価 

販売士

販売士

販売士とは、販売に必要な商品知識や接客マナー、販売のテクニック、マーケティング、在庫管理など、主に流通業界の販売職に必要な知識が身についていることを証明する資格です。販売士は、学べる内容が広範囲なため、小売業界だけでなく他の業界のビジネスマンも多く受験する資格です。

1級~3級まであり、3級は売場の販売員のレベル、2級は売場の管理者クラスのレベルで店舗管理に不可欠な従業員の育成や指導、仕入や在庫の管理といった知識が身につきます。1級は店長や経営者クラス向けで商品計画や予算策定、マーケティング戦略、人事・労務・財務管理までを網羅します。

営業職も扱う商材によっては、販売職に近い技術が有効な場合も少なくありません。個人宅や中小店舗への飛び込み営業の際などでは、堅苦しいBtoBのビジネスマナーよりも販売員の接客マナーのような振る舞いが好評な場合もあります。取引先に小売業・サービス業の企業が多い場合は、業界の仕組みや取引先のビジネスを深く理解するために取得してもよい資格です。

中小企業診断士

中小企業診断士

中小企業診断士とは、中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家です。中小企業診断士は国家資格であり一次試験と二次試験があります。合格率3~6%と言われる難関資格であることでも有名です。

営業マンも中小企業診断士の資格を取得するほどの力量を身につけると、経営者や役員層がお客様のときに非常に役立ちます。経営計画や事業計画、マーケティングについての知識が身につくため、中小企業に対する適切なコンサルティング、アドバイスができるようになります。名刺に記載することでお客様からの信頼度も高くなるでしょう。

TOEIC

TOEIC

TOEICとは、英語を母国語としない人を対象とした英語によるコミュニケーション能力を検定する試験です。合否ではなく受験時のスコアを認定します。一般に、TOEIC600点なら日常英会話や簡単なビジネス英会話が可能なレベル、TOEIC800点ならビジネスレベルの英語力があるとみなされます。

外資系企業に英語力が必要な企業が多いことはもちろん、近年は日系企業でも英語力が重視されるようになっています。企業によっては昇格の条件に役職ごとにTOEICの点数を設定しています。楽天株式会社や「ユニクロ」の株式会社 ファーストリテイリング、本田技研工業株式会社などのように社内公用語を英語にする動きも増えつつあります。

営業活動においても、外資系企業が日本に進出する際、当初はキーマンが外国人であり英語によるコミュニケーションが必要な場合があります。アジア、アフリカのマーケットで新規開拓営業する場合も英語が共通言語です。日本はすでに世界5位以内に入る移民大国であり、国内でも英語を使うシーンは増えているため英語力はあったほうがよいでしょう。

特定の業界(IT、不動産、金融)でとっておくべき資格

不動産業界、金融業界、IT業界など特定の業界の営業マンに必要な資格もあります。もちろん、金融やITの知識は違う業界の営業マンにとっても役立ちます。

ITパスポート

ITパスポート

ITパスポートとは、ITに関する知識が証明できる国家資格です。AI、ビッグデータ、IoT などの新しいIT技術の知識やセキュリティ、ネットワークなどの知識、プロジェクトマネジメントの知識、経営戦略、マーケティング、財務、法務など幅広い分野の知識が身につく資格です。

情報システムに関連する商品・サービスを扱っている企業の場合、ネットワークやデータベースなどITの基礎知識が体系的に身につくと、お客様や社内外のエンジニアとの仕事をよりスムーズに進めることができるようになります。

また、社内システムを利用する際の情報漏えいやウィルス感染のリスク、企業コンプライアンス・法令遵守、知的財産権などに関する法律の知識を理解することで自社内でのトラブルを防ぐことができ、自社を守ることになるでしょう。

情報セキュリティマネジメント試験

近年では、インターネットやデジタル機器の普及により、さまざまなサイバー攻撃や個人情報の流出問題になっています。このような問題は、お客様の個人情報や社内の機密情報を保持している企業にとっては大きな脅威になります。

社会的にも個人情報についての取り扱いは年々厳しくなり、もし社内の個人情報が流出してしまったら、責任問題を問われ企業の存続も危ぶまれてしまうほどです。

情報セキュリティマネジメント試験とは、組織として情報セキュリティマネジメントの計画や運用、評価、改善を行い、継続的に脅威から組織を守るために必要なスキルを認定する試験です。

特に、営業マンは顧客情報を扱うことが多いため、「どのように個人情報を適切に扱っていくのか」「情報を流出しないために気をつけるべきことは何なのか」を意識するためにも身につけておくべき知見を学ぶことができます。セキュリティへの意識は会社の一部の社員だけが意識することではなく、全員が意識する必要があります。

ファイナンシャル・プランニング技能検定

ファイナンシャル・プランニング技能検定

ファイナンシャル・プランニング技能士は、顧客の資産に応じた貯蓄や投資についての相談やアドバイス、プランニングを行える技能があると認定する国家資格です。1級から3級までの区別があります。「ファイナンシャル・プランナー」という名称で呼ばれることが一般的ですが、ファイナンシャル・プランナーという名称には民間資格の取得者も含まれることに注意しましょう。

保険、銀行、証券業界の営業マンは、お客様の金融資産を増やすという視点からいろいろな提案を行うため、ファイナンシャル・プランニング技能士の資格をとると業務に役立つ知識を得られるだけでなく、お客様からの信頼が得られやすくなります。

FP技能検定を実施している機関は2つあります。

宅地建物取引士

宅地建物取引士

宅地建物取引士とは、宅地建物取引業法に基づき定められている国家資格者です。宅地建物取引業者(不動産会社)が行う宅地や建物の売買、貸借などの取引に対して、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通ができるように重要事項の説明などを行います。

不動産会社は、宅地建物取引士資格を持っている人が、5人に1人いなければならないことが法律で定められています。宅建資格を取得すると、建築基準法、民法、都市計画法などいろいろな法律についての知識が身につくため、宅地や建物を買う側、売る側それぞれのトラブルを防げる可能性が高くなります。

不動産を扱う多くの営業マンが資格を持っており、不動産業界で働くならば持っておくべき資格です。

学んだ知識を営業活動で活かすためには

中小企業診断士や宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランニング技能士などは、名刺に記載することで営業マンの信頼度を高めるため、メリットが非常にわかりやすい資格です。もちろん、名刺に出せない資格であっても、本来の目的は営業マン自身が力をつけるためであるので学ぶべきです。

営業マンは、お客様と商談以外でもかなりの量の会話をします。会話中、少なからずお客様は営業マンの能力を測っているものです。「この営業マンは経営にも詳しい」「IT知識に熟知している」「小売りの世界も詳しい」など、自社の商品・サービスの知識以外の専門性が見えると評価が高くなり、さまざまな課題について意見を求められることが増えていきます。

提案書類の作成にも学んだ分析手法や知識を活かした内容や、それに基づく自分なりの意見や予測を入れてみるなど、実践の場で積極的に知識を活かしていきましょう。

まとめ

独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)の「職業資格の取得とキャリア形成に関する調査(平成26年)」によると、「資格を取得してよかった」「どちらかと言えばプラスになった」と答えた人は7割を超えています。一定期間集中して勉強し「合格」という結果を得た人は、満足感や達成感を得られていることがうかがえます。

資格取得での総合的評価

自己効力感という言葉をご存知でしょうか?「自分が成し遂げたいことを成し遂げることができると信じる力」という意味であり、米国の心理学者James E. Maddux氏は、この自己効力感こそが成功においてもっとも重要な要素だという見方をしています。自己効力感が高ければ自信があり粘り強く努力し、そのことが先天的才能よりも結果に強く影響するという意味です。

資格を取得するという目標を立てて勉強し合格すると、「努力は報われる」「自分はやればできる人間だ」と体感し、自己効力感を高めることができます。スキルが身につくだけでなく、仕事や人生全般にもよい影響を与えることになるでしょう。知識を学びながら、営業力も身につけていただければと思います。セールスハックスでは、自分の営業力を診断できる「営業スキルチェックシート」を用意しておりますので、是非ご活用ください。

    営業スキルチェックシート

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