転職先に営業秘密漏洩で日本ペイント元役員逮捕に学ぶ、営業秘密の保護とは?

営業秘密漏洩 営業秘密 事例

現代の企業においてコンプライアンスの遵守は当然の事として求められています。
日頃から個人情報や営業機密に接する機会の多い営業マンですから、十分注意しているよ、という方がほとんどかとは思います。
しかし、成果や利益を求める余りグレーゾーンを突っ走ってしまう方がいるのも事実。
今回ご紹介するのは完全にアウト!という事例ですが、改めてコンプライアンスを考えていただくきっかけにしていただければ幸いです。
塗装大手である日本ペイントの元役員が、転職先の企業に塗料の製法を流出させたとして不正競争防止法違反により逮捕されたニュース。
「不正競争防止法」という法律や、営業マンの注意すべきことを企業法務に詳しい弁護士の高島秀行先生に伺いました。

不正競争防止法とは

読んで字のごとく、不正な競争による不利益を防ぎ経済の健全な発展を促すための法律です。
昭和9年には同名の法律が制定されていますが、市場の多様化に合わせて改正を繰り返し、今年1月に最新版が施行されています。
今回の事例では不正競争防止法のなかの「営業秘密の保護」という部分が焦点となります。
「営業秘密とは、企業のなかでもパスワードやアカウント権限によりかんらん閲覧が制限されている(秘匿性)情報であり、企業にとって有益な(有用性)、公開されていない(非公然性)情報を言います。設計図や製法、顧客情報などですね。裁判ではパスワードの設定などで管理された情報かどうかが問われる場合もあります。」

製品の「設計図や製法」
パスワード管理された「顧客名簿」
社外秘の「販売マニュアル」

このような営業マンが日頃扱う情報も営業秘密に該当する場合が多いでしょう。
「企業にとって有用な非公然の情報は、秘匿性を確保しておく必要がある」ということでもあります。
パスワードの設定は当然ですが、重要度の高い情報にはアカウント権限による制限なども設けるべきでしょう。パスワードが付箋で貼ってあるなどというのは論外です。
今回の事例では「塗料の製法」が営業秘密とされています。
子会社の技術部長であった元役員は、その権限を利用し社外秘の塗料製法をUSBメモリーに保存、競合企業への転職後、不正に利益を得るため複数の社員に情報を開示したと疑われています。
日本ペイントの製法を入手した元役員の転職先企業はすぐさま類似商品を発売し、日本ペイント製品より割安で販売しました。当然日本ペイントの目に留まり、元役員の逮捕に至ります。

どのような刑罰を受けるか

営業秘密の流出は、流出元の企業に多大な損害をもたらす可能性があります。
不正競争防止法違反と認められた場合、どのような刑罰が下されるのでしょうか。
「今回の場合、不正競争防止法違反とされれば個人には10年以下の懲役刑及び1000万円以下の罰金で、併科される可能性もあります。法人の場合は3億円以下の罰金となります。ただしこれは法改正前の規定で、改正後は罰金が個人なら2000万、法人なら5億円まで拡大されます。更に流出先が海外企業の場合、それぞれ3000万と10億円の上限になります。被害規模によって軽重はありますが、今年1月に判決が出た同様の機密漏洩事件では関係者4人に懲役2年6月~1年2月、執行猶予4~3年、罰金100~60万円の判決が下されました。」
今年1月の改正法施行により罰金刑の上限が上がっていますね。昨今相次いでいる海外企業への流出の場合は特に厳しい罰則になります。
昨年和解が成立した新日鉄住金と韓国ポスコの訴訟では、和解金が300億円の高額となりました。
刑事罰以外にもこうした民事訴訟で多額の損害賠償を求められる可能性があります。
改めて企業倫理やコンプライアンスの遵守が求められます。

営業マンが注意すべきこと

①身近な情報の中にも「営業秘密」があり、漏洩により刑事罰や損害賠償請求を受ける可能性もある
②パスワード管理は適切に。覚えられない場合も付箋は貼らずパスワード管理ソフトなどを使う

当然ですが営業秘密の漏洩は、例えそれが利益に繋がったとしても、絶対に行ってはいけません。
今回取り上げた事例では製法の流出という比較的大掛かりなものでしたが、日頃接している販売マニュアルや顧客リストといった身近な情報にも「営業秘密」に該当するものがあります。
また自身が流出に関わらなかったとしても、パスワードなど情報を管理する適切な手段を怠っていると、万が一情報漏洩が起きた際に不利益を被る可能性もあります。
パスワードをパソコンに付箋で貼っている方、すぐに外しましょう。
覚えられない!という方はパスワード管理ソフトを利用するのも一案です。複数のパスワード管理や定期的な変更が簡単になります。
今回は弁護士の高島秀行先生に、不正競争防止法についてお話を伺いました。いかがだったでしょうか。
今後ますます重要になる様々な「情報」。あなたの周りでは適切に管理されていますか?この機会にもう一度見直してみることをお勧めします。

高島 秀行(弁護士) 運営サイト
弁護士経験21年目。テレビや雑誌、新聞からの取材実績多数。相談者の方からは、話しやすく、説明もわかりやすいと言われることが多いです。弁護士もサービス業の1つと考え、依頼者に、事件の見込み、方針、費用などを簡潔にわかりやすく説明してから、依頼を受けることにしています。

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川崎 裕介(かわさき ゆうすけ)

慶應義塾大学卒業後、外資系歯科医療機器メーカーを経てコンベックスに入社。プロダクトセールスチームで新規顧客開拓、既存顧客のコンサルティングに従事する傍ら、セミナー企画・運営を担当。現在は「セールスハックス」の運営、「Digima」のプロモーション全般を担当している。

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