ジャパネットたかた前社長・高田明氏から若手営業マンへのメッセージ「自己更新を続けて武器を見つけよ」

ジャパネットたかた 高田前社長 若手営業マン
from 営業type ※この記事は2015/3/15に営業typeに掲載された記事の転載です

営業マンといえば、ガツガツしてて、泥臭くて、お金に貪欲で、遊び上手……そんなバブルの頃のイメージはすっかり合わなくなっている現代。“草食男子”や“さとり世代”と呼ばれ、上昇志向や根性論の枠にははまらないイマドキの20代にとって、営業職で活躍するには、何が武器となるのか。各界の著名人たちの目に映る「イマドキ20代営業マンの強み」とは何か、本人たちも自覚していない、周りの大人たちも分かっていない、彼らの武器を探る。

今回は、2015年1月にジャパネットたかたの社長を退任した高田明氏に登場いただいた。

後進に道を譲ったばかりの経営者であり、「売る」のスペシャリストだから見える、現代の20代に足りないもの、そして20代に抱く期待について聞いた。

若手に足りていない力を伝授する最後の1年

「今の若手営業マンには足りないものがあると思うんです」

自身も営業マン出身であり、「売る」ことに関してはおそらく日本一有名であろうジャパネットたかたの前社長、高田明氏は、現代の若手営業マンに足りないものは「伝える力」であると言う。

「メールやLINEなどの技術の普及で、声に出して何かを伝えるということが少なくなりました。固定電話の時代に友人と連絡を取るときは、電話口で友人の家族に○○くんいますか、と伝えて繋いでもらっていました。しかし今は、無表情のまま、言葉を発しなくても親指の動きだけで、意思の疎通が取れる。これが必ずしも悪いこととは思いませんが、若手社員を見ていても表情と言葉が少ないと感じますね」

高田氏は2015年をテレビショッピングに出演する最後の1年と明言している。

それは若い世代に「伝える力」を身を持って受け継ぐためでもあるという。

「私が“伝える力”が何より大切だと思うのは、何かを売るということがすなわち人を幸せにできるということだと思うからです。この商品を買っていただいたお客さまに幸せになってほしい、という想いを伝えようと思うからこそ、テレビショッピングで私の声が高くなり、アクションが大きくなるんです。そんな気持ちがお客さまに伝われば、自然と商品は売れていきます」

1年後の目標しか立てなかった理由

営業マンとして大きな武器である「伝える力」が弱いと評された現代の20代。しかし、決して嘆くことはない。

「どんな一流の人でも最初は低い目標を、ほんの少しでも、毎日必ず更新してきたからこそ今があるんです。ゼロから自己更新を続けてきた結果、いろいろなものを身に付けられるのです」

そう高田氏が話すのは、彼自身がいわゆる「街のカメラ屋」だった家業を年商1500億円を超える巨大企業に成長させた経験があるからだ。

高田氏は大学卒業後、機械製造メーカーの海外営業を経て、25歳で家業のカメラ店に入社した。

数年後、高田氏は実家がある長崎県平戸市から海を隔てた松浦市に出す支店を任されることになったのだという。

「最初の1カ月の売り上げ目標は55万円。それを1年で月300万円にする目標を自分で立てたのです。それ以降、つまり直近1年以降の目標は全く考えませんでした。そして、目標に設定した売上をあげるためなら何でもやった。隣の時計店に声をかけ、他の島まで1泊で営業に行ったり、スリランカまでお客さまに付いていき、記念写真撮影を請け負ったこともありました」

しかし、なぜ1年という短期的な目標しか立てなかったのか。

高田氏は「長期的な目標を立てたところで、結局のところ1年間の積み重ねの延長であり、もっと言えば毎日の積み重ねの延長だから」と説明する。

「特に今の時代は変化のスピードが早い。だから今の20代が、『自分が50歳になったときにはああなっていたい』と目標を立てるのは意味がありません。きっと時代の流れに合わせて途中で変わりますから。営業マンなら特に、目の前の売上という指標を常に更新していけばいいのです」

日々、目標を持って自己を更新し続けていくことが成長の近道だと高田氏は言う。

「ゲーテが残したとされる言葉“人は、結局思った通りの自分になる”は、まさにその通りだと思います。20代から着実に目標を持ってやり続けていくことで、“伝える力”やその人なりの武器が手に入るのだと思います。若い営業マンにはぜひ、そう信じて頑張ってほしいですね」

全力でやるからこそ失敗は経験値になる

しかし、人間は「慣れ」る生き物。毎日の自己更新の手を抜いてしまったり、気持ちが中だるみしてしまうことはよくあることではないだろうか。

高田氏はそれについて聞くと「手を抜いたら必ず後悔する」と一刀両断する。

「手を抜いて失敗すると大きな後悔が残ります。しかし、全力で取り組んだ結果の失敗なら後悔しないはずです。だから、とにかく目の前の仕事に全力で取り掛かること。全力でやった失敗は成長につながるんです。全力で取り組んだからこそ得られる経験値は大きいんです」

ジャパネットたかたは、個人情報流出や業績低迷などの企業の危機を何度も経験している。

傍から見れば、紆余曲折があったように見えるが、高田氏は「人生で一度も後悔したことはない。苦労と思ったこともない」と言い切る。

「そのときどきでいろんな方から励ましの言葉をかけていただきました。しかし、私自身はあまり苦労したような記憶がありません。苦労を苦労と思わない人間なんです。なぜなら全てを受け入れ、今何をすべきか考え、そこに全力で生きているからです」

高田氏は、今もテレビショッピングに出演する際、21年前の第1回の収録と同じ気持ちでカメラの前に立っている。

毎回新鮮な気持ちで臨むからこそ、「次はここをもっと良くしよう」と改善点が見つかるのだという。

インタビュー後、テレビショッピング用のスタジオで写真撮影に応じた高田氏。

スタジオに入ってから写真撮影が始まるまで、少しも途切れることなく若手社員たちに声を掛け続けていた高田氏のその姿勢自体が、彼らへの期待をこめたメッセージに見えた。

取材・文/佐藤 健太(編集部) 撮影/小林 正

株式会社ジャパネットたかた
前社長 高田 明 氏
1948年、長崎県生まれ。大阪経済大学経済学部卒業後、機械製造メーカーに入社し、ヨーロッパで英語を使った営業に従事する。退職後、友人と翻訳会社の立ち上げを計画するも頓挫し、父が経営していた「カメラのたかた」に入社。1986年に独立、その4年後にはラジオショッピング、次いでテレビショッピング事業に参入し、通信販売事業をスタート。1999年に社名を「株式会社ジャパネットたかた」へ変更。2015年1月、同社の代表取締役を退任した。

※こちらの記事は『営業type』より転載しております
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