ソリューション営業とは?時代から取り残されないために経営者が知っておくべきこと

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ソリューション営業とは「ソリューション(solution)=問題解決」という意味からもわかるように、お客様の課題を解決することを目的とする営業スタイルであり、日本では2000年ごろから浸透してきました。

「営業の仕事とは商品を売ることではなく、お客様の問題を解決することにある」と明確に定義づけたソリューション営業の考え方は、多くの企業の営業現場に賛同され、BtoB営業のここ20年の標準だったと言ってもよいでしょう。

しかし、昨今はインターネットの普及によりお客様の購買プロセスが大きく変わりました。ハーバード・ビジネス・レビューに掲載された「ソリューション営業は終わった」という調査結果に象徴されるように、ソリューション営業が今後は通用しなくなるという意見も増えつつあります。

ソリューション営業は本当に終わったのでしょうか?本記事では改めてソリューション営業の本質とこれからの時代のソリューション営業に必要なスキルについて解説します。

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ソリューション営業とは?

ソリューション営業とは、お客様の抱えている課題に対して自社の商品・サービスを軸に提案を行い、問題解決していく営業スタイルのことです。あくまでお客様の課題を解決することが第一の目的であり、そのためには他社サービスと連携した提案をすることもあります。

ソリューション営業は単純な課題を持つお客様よりも、複雑な課題を持つお客様への提案に特に有効と言われています。

ソリューション営業の台頭した背景

これまで日本国内の営業スタイルは、御用聞き営業、プロダクト営業、コンサルティング営業、ソリューション営業ほか、多種多彩な呼び名とともに枝分かれしつつ進化してきました。そのなかでソリューション営業は、バブル崩壊後の景気停滞やグローバル化による新興国との競争などを背景に登場してきます。

単に商品を売るという姿勢では新興国との価格競争に負けてしまったり、お客様のニーズが複雑化して応えられないことが多くなり、営業マンにも付加価値の高い提案が求められるようになってきたことが、大きな理由だと言えるでしょう。

現在では「お客様の課題解決」という考え方は、ごくあたり前に感じるかもしれません。

しかし、当時は「営業=セールスマン」という認識が営業マンにも根強く残っており、業界によっては「お客様の役に立たなくても売れたらいい」「売った後はどうでもいい」という営業マンも今より少なくありませんでした。現在でも営業マンが偏った印象を持たれやすいのは、それなりの歴史があってのことなのです。

ソリューション営業とはそのような時代に、営業職をより高い視座でとらえた営業スタイルだったと言えます。

また、2000年代は今ほどインターネット環境が充実しておらず営業する側に情報の優位性もあったため、営業マンが圧倒的な情報量をもとに課題を把握してお客様に提案するソリューション営業は、効果的だったと言えます。

ソリューション営業が終わったといわれる背景 

ところが、2010年前後からインターネットの高速化やスマートフォンの普及、SNS、受発注サイト、レビューサイトなどの台頭によりビジネス環境が大きく変化します。

お客様はBtoBであれBtoCであれ、インターネット上から膨大な情報を収集することができるようになりました。相対的にこれまでの情報収集元であった営業マンの優位性は下がってしまいました。

今のお客様は課題を感じたら、まずその課題を解決しようと検索し情報収集します。BtoB市場のお客様の中には、収集した情報をもとに自分たちで課題を把握し課題解決の仮説まで構築できるお客様もいます。米国の調査では「購買担当者は営業マンに接触する前に57%の購買活動を終えている」という結果も出ています。

営業マンに会うのは見積もり依頼の段階からという取引が多くなり、営業マンは厳しい価格競争を強いられることが増えてきたのです。

インターネットの普及によりお客様が得た能力

  • 膨大な情報の収集と分析をする力
  • 自分たちの課題を把握する力
  • 自分たちで課題解決策の仮説を立てる力
  • 発注先企業をシビアに評価する力
  • オンライン上で簡易に商品・サービスを発注する力

端的に言えば、今のお客様は情報リテラシー、発注リテラシーが格段に向上しました。そのため単に商品説明だけをするような営業マンは、課題解決のパートナーではなく決まった予算内で仕事を行う実行部隊の窓口になってしまったと言えるでしょう。

ソリューション営業の基本戦略とスキル

ここではソリューション営業の基本戦略と必要スキルを紹介します。前述のとおり、最近のお客様の能力は向上しています。

しかし、「購買活動の57%を完了している」ということは、自社で情報収集して仮説を立てても決定しているわけではなく、よりよい提案があれば受け入れる余地のある割合だと解釈できます。「8割がた決めている」のではなくあくまで「6割弱」なのです。

お客様はビジネス環境の変化に合わせて、至極まっとうな購買活動の姿勢をとっています。むしろ今後は、営業マンが時代の変化とお客様の成長に合わせてレベルアップする必要があると言えるでしょう。

ソリューション営業における基本戦略とは?

ソリューション営業の基本戦略とはお客様と信頼関係を構築し、丁寧なヒアリングを行ってお客様の課題を把握して、課題を解決するための提案をすることです。

以下のように情報収集→ニーズ把握(ヒアリング)→課題分析→課題解決の提案という流れです。 

情報収集→ニーズ把握(ヒアリング)→課題分析→課題解決の提案

ソリューション営業を行なっている営業マンに必要なスキルとは?

お客様の能力が進歩した今、ソリューション営業を行う営業マンはこれまで以上にお客様のことに詳しくなり、お客様をとりまく環境について幅広い知識をももったうえで、本質的な課題をつかんで提案するスキルが必要になります。

以下、具体的なスキルを紹介します。

情報活用力

情報活用力とは、情報を点で捉えるのではなく、情報と情報を結びつけて捉えたり、多角的にみることで「新しい意味」を見出す能力のことです。

お客様の情報収集能力はたしかに向上していますが、どのような情報を発見するかはその人の「検索能力」「前提としている仮説」「バイアス(思い込み)」などによって異なります。情報をどう紐づけるかもお客様の思考回路ごとに違ってきます。

営業マンはお客様の状況を俯瞰してみることができるようになったうえで、情報収集能力の高いお客様にはインターネット上には出ていない事例などをピンポイントで提供し、検索が不得手なお客様には詳しく説明するなど、お客様に合わせて情報を扱うことが望ましいと言えます。

そのためには、日々「これはお客様に役に立つ情報」、「もしかしたらお客様に脅威なる話かもしれない」という視点で情報を見続け自分なりに考える習慣をつける必要があります。

言論の世界で「知の巨人」とも評される佐藤優氏やジャーナリストの池上 彰氏は、毎日多くのメディアに目を通すなか特に新聞記事、書籍などの情報を重視しているそうです。なぜなら、Web上に出ている多くの記事のソースが新聞であることが多いからだそうです。紙メディアも含めてチェックしましょう。

自分の関心にあわせて国内外のニュースを配信してくれるアプリもあるので活用すると便利かもしれません。営業マンなら日経産業新聞日刊工業新聞などは大企業から中小企業、ベンチャー企業の新規事業動向や新商品開発などの具体的な情報が多くおすすめです。

お客様のインサイトをつかむ力

近年はAI、IoTなどテクノロジーの進歩によりビジネス環境は進歩を続けており、次から次へと新しいビジネスモデルが登場します。これから指数関数的に変化すると言われるほど変化の幅が大きく、そもそも予測そのものが難しい時代です(指数関数的とは以下のようにある時点で急激に変化することです)。

指数関数的な変化のプロセス

出典:総務省「令和元年版情報通信白書」

正解というものがなく最適解を探すしかない難しい時代なので、営業マンはたとえお客様から課題を提示されても、まず自分なりにお客様のインサイト(隠れているニーズ)をつかむ姿勢を持つ必要があります。

もちろん、お客様の設定した課題で正しい場合もありますが、さらに重要な課題を再定義していただく必要がある場合も出てくるかもしれません。インサイトをつかむ手順としては以下がおすすめです。

  • ステップ1:
    基本知識としてお客様のWebサイト、SNS、経営者のインタビュー記事、会社四季報の情報、転職系口コミサイトなどお客様の公的な情報と内部情報および日頃の対話から、以下のような特徴をつかみます。

    ビジネスモデルの特徴
    ・業界内での強み、弱み
    ・社風の長所・短所(保守的か変革志向か)
    ・イメージできる課題
  • ステップ2:
    次にお客様の課題解決に役立ちそうなデータや事例を国内外から幅広く収集します。インターネット上の情報はもちろん、専門誌、専門サイトなどが発行する有料の情報も会社として購入することをおすすめします。

    (例)
    ・米国先端企業の事例(職種ごと業種ごとの傾向、GAFAの動き等)
    ・国内大手企業の事例、成長中のベンチャー企業の事例
    ・自社商材の他社効果事例
    ・公的機関のデータ(官公庁、大学)

なぜ海外企業の事例まで必要かというと、日本の大手企業は一部先見性に優れたオーナー企業などを除き、米国の先進事例をモデルにする傾向が強いからです。国内大手企業に普及したころ中小企業が後を追う流れです。

可能であれば国内はもちろんですが海外のカンファレンス(展示会)などに営業マンを参加させ、業界の最新動向をつかむと国内市場において優位になりやすいでしょう。

多くの企業に「稟議」という仕組みがある以上、先行事例がない提案は通りにくいという現実もあります。お客様も営業マンが事例やデータを提示すると興味を持ってくれやすいのです。

新しい事例やデータは新たな視点を得ることにつながり、自社の課題を捉えなおすきっかけになります。海外事例や大手企業の事例がお客様にそのまま当てはまらないとしても「発想のたたき台」になるのです。もしお客様がその最新事例をご存じでも営業マンが知識豊富と判断されれば、同じ土俵でディスカッションしていただける可能性が高くなるでしょう。

話が展開していけば、お客様が描いている成果のイメージ、リスク、そもそもの課題が見えてくるはずです。

ヒアリング力(課題を把握する力)

ヒアリングの際もお客様にデータや事例などをもとに、思考の幅が広がるような会話をすることがポイントです。もちろん、傾聴は基本です。

実際の現場ではロールプレイングのように話が進展しないことも多いため、ヒアリングといっても必ずしも質問のかたちをとる必要はありません。話の合間にデータを提示するなど、自然な流れのほうがむしろ興味を持ってくれるかもしれません。

(質問例)

  • 「そういえば、〇省のデータで日本の企業の社風を4タイプに分類していました。今の組織改革のお話に役立つかもしれません」
  • 「先日、テレワークを導入されても活用が進まないとおっしゃっていたので、御社と同規模の企業様の成功事例と失敗事例をもってまいりました。」
  • 「国内でもサブスクリプションサービスが増えてきましたが、御社のような賃貸業界にも影響はありそうでしょうか?」

自分なりの仮説(意見)を述べる力

営業マンは外部から集めた事例、データを提示するだけでなく自分の仮説を述べることも大切です。

膨大な現場情報に接している営業マンは、現場視点で仮説を述べることができる強みがあります。お客様のユーザー層に近いのであれば「若者として」あるいは「女性として」など自分の立ち位置から、意見を述べても歓迎されることが多いでしょう。メディアなどの表に出てこないリアリティある情報は実は貴重なのです。

今のような変化の速い時代は、アナリストや評論家でも予測する仮説がすべてあたることは100%ないと言えます。仮説はあくまで仮説にすぎないので予測の精度はあまり気にせず、深い話をするために必要という気持ちで自分なりの持論を述べてみましょう。

(例)

  • 「働き方改革については私が担当している業界では〇〇のような課題があり、このままのペースで続けると不満がたまる印象を持っています。来期は運用を見直す企業が増えると思います」
  • 「自分もそうですが、20代だと終身雇用は当に終わっていると思っている人が多数です。この世代は成果主義でも抵抗ないと思いますが、会社の評価軸が見えにくいため不満という人は割といます。もっと明確に成果主義を打ち出した制度のほうが若者はモチベーションが上がると思います」
  • 「自分ならリファラル採用で報奨金目的に友人を紹介しようとは思いません。もし相性が合わなかったら迷惑をかけるからです。リファラル採用を導入するなら副業インターンシップなどの仕組みを構築する必要があると思います」

問題解決能力

課題を把握してお客様が求めている成果もイメージできたら、提案を組み立てる必要があります。

ところがこの段階で、「課題はわかったものの、当社にお客様の課題を解決できる力がない…」という難題が持ち上がることがあります。

もちろん自社商材で何もできないという場合はいたしかたありません。しかし、多少なりとも役に立てる可能性がある場合は、他社とコラボレーションして提案していく必要があります。そもそもソリューション営業とは、問題解決に向けて他社サービスも取り扱う営業と定義されることが多い営業スタイルです。

とは言え、現実にはソリューション営業といっても名ばかりで、企業方針により他社商品・サービスを扱えなかったり、営業マンが間に入る意義を感じなかったり、仕事の工数がかさむと判断し単に「紹介」していた場合もあったかと思います。

しかし、今後はAIやIoTの登場により業界というくくりが曖昧になっていきます。ビジネス上の課題も自社だけでは解決できないことのほうがむしろ増えていくことは想像に難くありません。

他社と組んでお客様の問題を解決する「実行力」を持つことも、これからの時代のソリューション営業において重要スキルになるのではないかと思います。

まとめ

お客様の能力が向上した時代は、パンフレットやHPに掲載されているような情報を、そのまま提供するだけの営業マンは成果をあげていくことが難しくなります。逆に、お客様にインサイトを提供できる営業マンであれば、外回りの営業、内勤営業などの立場を問わずお客様から評価されていくでしょう。 

「売ることではなく、お客様の課題を解決することが仕事」という、ソリューション営業の基本に立ち返りつつも、これからの時代に必要な情報活用スキルなどを身につけ、お客様にインサイトを提供できるソリューション営業を目指していきましょう。

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