営業マネージャーが抱えがちな部下育成の3つの悩み

部下育成

営業マネージャーには営業案件管理やチームマネジメントなど、さまざまな業務がありますが、中でも「部下育成」に課題を感じている営業マネージャーは少なくありません。

今回は「部下育成」に焦点を当て、営業マネージャーがどのような課題を抱えていて、その課題に対してどのように対処していけばよいのかを見ていきます。

営業における部下育成の現状

営業という分野に限らず、企業における部下育成の重要性は高まっていると言われています。一般社団法人日本能率協会が実施した「日本企業の経営課題2018」において、現在の課題に「人材の強化(採用・育成・多様化への対応)」を挙げているのは回答企業のうち39.5%で第2位となっています。さらに同調査の今後の経営に影響を及ぼすと思われる要因について、「人材採用難」が「非常に影響がある」と回答した企業は31.2%で最も高い要因でした。つまり、採用難によって人材不足の問題が深刻化しており、優秀な人材を確保することが難しくなっているため、既存社員のさらなる強化の重要性が増しています。

また営業の分野に焦点を当てると、ソフトブレーン株式会社が2011年に実施した「営業の人材育成についての実態調査」では、営業人材育成を重要課題として認識している企業の割合は約7割であり、多くの営業マネージャーが人材育成を重要視していることが分かります。しかし、同調査では、「営業人材育成のための研修・プログラムがある」と答えたのは全体の31.0%で、営業人材育成の現状として「順調」と答えた企業は24.6%となっており、まだまだ改善の余地が残されているのも事実です。

このように部下育成自体の重要性は感じているものの、企業として体系立てた育成までは出来ていないケースがほとんどです。それでは実際に現場で指導をしている営業マネージャーは、部下育成についてどのような悩みを持っているのでしょうか。

ここからは営業マネージャーが抱える悩みを以下の3つに大別し、それぞれ見ていきます。

部下育成の3つの悩み

① そもそも部下育成の時間が取れない

部下育成は行いたいものの、部下とのコミュニケーション時間が取れないという営業マネージャーも少なくないのではないでしょうか。学校法人産業能率大学の「第4回上場企業の課長に関する実態調査」においては、調査対象の課長の99.2%がプレイングマネージャーであるという結果も出ています。

営業マネージャーに置き換えると、自身もいち営業マンとして個人の成果を求められながら、マネージャーとして部下育成やチームマネジメントも行わなくてはなりません。「営業マネージャーになったからには、なんとかして部下を育成したい」「部下育成が重要であることはメンバー時代から痛感している」のように部下育成にかける熱い想いがあったとしても、プレイヤー時代と同じ働き方をしている営業マネージャーは、時間が足りなくなり部下育成に時間が割けなくなってしまうのです。

② 指導してもなかなか営業力が上がらない

部下育成の時間を確保できたとしても、必ず部下の営業力が向上するとは限りません。しっかりと時間をかけて指導しているにも関わらず、部下の営業の成果が上がらないこともあります。「部下の営業における課題を適切に把握できていない」「課題は把握しているものの効果的なフィードバックができていない」といった状況では営業力を向上させることは難しいでしょう。

部下の営業力を向上させるためには、「同行時の部下の発言や行動をしっかり観察して課題を把握する」「フィードバック時に改善点が端的に分かりやすく伝わるように説明を工夫する」など営業マネージャー側も努力することがあるかもしれません。

③ 部下のモチベーションが上がらない

部下のモチベーション管理も営業マネージャーの役割の一つです。静岡県の企業を対象にした調査ではありますが、公益財団法人就職支援財団と一般財団法人静岡経済研究所が共同調査した「職場の上司と部下の関係実態調査 2010年」では上司との関係性が良好な部下は「仕事満足感」「やる気」「会社の定着意欲」が高く、「ストレス度」が低いという結果が出ています。

②では課題の把握やフィードバックが営業力向上に必要であることを述べましたが、部下も人間ですので、自分の出来ていない部分だけを指摘されるとモチベーションが低下してしまうこともあります。そのため、部下のモチベーションを向上させるような働きかけも同時に必要になります。

部下を育成していく方法

ここから部下育成に活用できる手法を2つご紹介します。

①フィードバック

フィードバックとは「部下の行動や結果など過去を振り返り、課題や改善点を指摘すること」であり、人事評価面談などでよく用いられています。効果的なフィードバックを行うためには、フィードバック内容にできるだけ具体性を持たせることが重要です。株式会社コーチ・エィが実施した「目標達成に向けたフィードバックに関するアンケート調査」では、フィードバックに具体性がないと答えた人は47%で、回答者のうち約半数は具体性を感じていないという結果になりました。また、フィードバックの具体性と目標達成に向けた行動のなりやすさには、強い相関関係があることも同調査から分かっています。

このように具体的なフィードバックを行うことができれば、営業力向上につながっていきますが、具体性を持たせるにはどうすればよいのでしょうか。それは、部下の行動をしっかりと観察することです。あるべき論で部下の課題や改善点を指摘するのではなく、「この前同行した○○株式会社との商談の○○の場面では……」のように実際に自分が観察した場面を例示することで、具体性は増していきます。フィードバックに自信が持てない方は、まずは部下の観察から始めてみてください。

また、この具体的なフィードバックを行う際には注意が必要です。具体的なフィードバックはシンプルで分かりやすい反面、部下のモチベーションを低下させてしまう可能性があります。課題や改善点を伝える際には、直接的な批判の言葉は使わないなど、言葉選びは慎重に行うようにしてください。

②フィードフォワード

フィードフォワードとは「未来の解決策を部下ともに対等な関係で模索すること」です。新たな人材育成手法として注目されており、フィードバックとは反対の意味になります。フィードバックとの大まかな違いは以下の通りです。

フィードバックは部下のメンタル面を傷つけてしまう可能性があるので、言葉選びに注意する必要があると述べましたが、フィードフォワードの特徴としては、自身の課題や改善点を指摘されるわけではないため、部下側に生まれる負の感情を抑制することができます。そのため、フィードフォワードを行うことは、高いモチベーションを維持することにつながります。

また営業の場面で考えてみますと、フィードバックは過去の事象を対象にするため、どうしても事後的になってしまいます。そのため、上司に事前に相談していれば進捗していた案件が潰れてしまう可能性があります。

一方、フィードフォワードの場合は、事前に上司と案件の進め方を相談できるため、自分ひとりでは進捗が難しそうな案件であっても、上司の力を借りて案件を進めることができるという特徴もあるのです。

部下をさらに育成させるためには

フィードバックとフィードフォワードは片方だけを活用すればよいというものではありません。部下の特徴や成長段階によって、使い分けたり、組み合わせることが必要になります。

例えば、「営業の成果が出ずに落ち込んでいる状態のあまり打たれ強くない部下」にフィードバックを行ってしまうと、さらにモチベーションを低下させてしまうかもしれません。その場合は、フィードフォワードを用いて未来の解決策を一緒に考えていくことができれば、ポジティブなマインドを醸成しつつ、成果の向上を実現することができます。

その一方、「強い向上心を持っていてモチベーションは高いが、自身の営業における課題を認識できていない部下」に対しては、フィードバックが有効である可能性が高いです。具体的なフィードバックによって、自身の課題や改善点に気づかせることができれば、自分で解決策を模索し、さらなる成長へとつながっていくでしょう。

また、このフィードバックやフィードフォワードを実施するには、部下とのコミュニケーション時間を確保できていることが前提にあります。しかし、営業マネージャーが抱える悩み①でも記載したように、そもそも時間が取れないということもあるかもしれません。その場合は、部下育成のための時間をなんとかして確保することが必要です。「マネジメントの父」と呼ばれるドラッカーは「成果を上げる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする」と述べています。

具体的には、まずは時間を記録することからはじめてみましょう。すると自分がどの業務にどれだけの時間をかけているかを知ることができます。次に、出てきた業務を以下の画像のように、4つのマトリックスに分類していきます。

そして、「準備コストが大きい×効果の見込み度は小さい」業務については業務を「棄てる」ことを検討してみるといいかもしれません。また「準備コストが大きい×効果の見込み度は高い」業務は、周囲の力を借りて業務負荷を下げたり、そもそも業務の進め方を見直すことでかかる時間を削減するといった工夫が必要です。このように、業務の効率化を進めていくことで、部下育成にかける時間を捻出してみてください。

まとめ

部下育成は営業マネージャーにとって重要な業務ではありますが、まだまだ改善の余地が残されている領域でもあります。例えば、今までフィードバックしか行っておらず、部下が委縮してしまいモチベーションが低下していることに困っているマネージャーが、フィードフォワードを取り入れて部下との対話を実現できれば、部下のモチベーションを上げることができるかもしれません。このように様々な工夫をすることによって、部下育成の悩みは解決することができます。
何から手を付ければよいか分からないという方は、まず部下の行動を観察することから始めてみてください。部下を観察をするときに使えるツールとして「営業スキルチェックシート」をご用意していますので、こちらもぜひご活用ください。

    営業スキルチェックシート

佐原 業平(さはら なりひら)

中央大学商学部を卒業後、2016年に新卒で株式会社コンベックスに入社。 新規開拓営業を経験した後、eBook・セミナー・研修のコンテンツの作成に従事。 そこで培った営業とマーケティングの知見を生かし、「セールスハックス」の運営に取り組む。 経営者から営業マンまで、ビジネス現場を理解したお役に立てる情報を発信。

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