定期的に営業プロセスを改善する4つのステップ

営業プロセス KPI

近年は、営業部門の売上げを効率的に最大化するために、自社の営業プロセスを「見える化」する会社が増えてきました。営業プロセスとは簡単に言うと「どのような流れで営業活動を進めていくか」と言うことです。

具体的には、営業活動を分解して段階ごとに営業マンがするべきことを明確にします。営業プロセスを営業マンが理解していないと、各営業マンが好き勝手な営業活動を好きなタイミングで行ったり、どのように動いてよいかわからない営業マンが出てきたりします。

これでは、一部の優秀な営業マンと「自分が売れない理由すらわからない」営業マンとの格差が広がるばかりなので、営業プロセスを社内で設計して、ワークフロー図などにまとめることは大変重要です。

さらに、営業プロセスは環境の変化に応じて見直す必要もあります。本記事では、定期的に営業プロセスを改善する4つのステップを解説します。

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営業プロセスとは?

営業プロセスとは、自社の営業活動の流れが可視化されたものです。営業プロセスは業界や商品・サービスによって多少差はあるものの、分解すると以下のような流れになります。 

① ターゲティング
  ↓
② アプローチ
  ↓
③ 初回訪問
  ↓
④ フォロー(信頼関係構築)
  ↓
⑤ ヒアリング(ニーズや課題の把握、BANT条件の確認)
  ↓
⑥ 提案(解決案の提示)
  ↓
⑦ クロージング(顧客に決断してもらう)
  ↓
⑧ アフターフォロー

※②のアプローチの部分はテレアポや飛び込み営業、DM、展示会、インバウンド営業、オンライン営業、SNS営業、コンテンツマーケティングなど、さまざま手法があります。しかし、以下のように入口は多様ですが、初回訪問以降は上記④以降とほぼ同じ流れとなります。

テレアポSNS発信オウンドメディア

企業によっては①~⑧の流れを分業することもあります。例えば、見込み客創出までをマーケティング部門やインサイドセールス部門が担当し、フォローをカスタマーサポート(カスタマーサクセス)部門が担当し、営業は②のアプローチから⑦のクロージングまでを担当します。

分業型がよいか一気通貫型がよいかは、アポイント獲得までの労力、商品・サービス、リピート受注の頻度など企業のビジネスモデルによって異なりますが、どのような体制であれ営業プロセスごとの行動を明確にすると、営業マンは自分が今何をすべきかがわかり業務に集中できます。

なぜ定期的な営業プロセスの改善が必要なのか

企業活動では「目標」「戦略」「戦術」という3つの考え方が重要です。営業プロセスはこの中の「戦術」に該当する部分です。目標と戦略が変われば、戦術である営業プロセスは変更する必要があります。

例えば、近年に顕著ですが、お客様の大半がインターネットで情報を収集した後に営業マンに会うような購買活動の変化が起きた場合、当然、営業プロセスもお客様の動きにあわせて変えたほうが売上げが上がりやすくなります。営業プロセスはお客様の購買プロセスと連動している必要があるからです。

仮に10年前と同じ商材を扱っていても時代の変化、革新的な新しいツールの登場、お客様の世代交代など営業現場には変化が発生します。常に状況に適した目標、戦略、戦術に基づいた営業プロセスでPDCAを回していかないと、時代遅れな売り方を続けてしまう可能性があるのです。

なお、目標、戦略、戦術は意味を混同されがちな用語なので、念のため各用語の意味を以下に解説します。 

目標とは? 

企業の目標は一般に「自社の〇〇をもって社会に〇〇な価値を提供する」という理念で表現されます。一方、ビジネスの現場では提供する価値=お金の等価交換が行われるため、経営理念を具体化して、自社の商品・サービスでどのくらい社会に貢献したいかは「〇億円目標」というように金額で設定されます。

営業部門においては「売上げ目標」「利益目標」など一定期間内(年度、半期、四半期、月)に受注すべき金額が目標になります。一般に前年度売上げ実績の100~120%位の範囲で年間目標を設定し、四半期目標、月目標などに振り分けます

戦略とは?

戦略とは目標を達成するために「何をするか (=what to do)」を定義することです。営業部門の戦略とは主に、「どの商品・サービスを誰に(どのような顧客)に売るか」を明確に定めることであり、同時に「何をしないか」も定義することです。手持ちの人材と予算で、最大限に成果を上げるための優先順位を決めるのが戦略です。

戦術とは?

戦術とは「目標」と「戦略」を実践するために「どのように動くか (=how to do)」を定めるものになります。営業部門においては、お客様にどのようにアプローチをしていくかという営業プロセスそのものです。

営業プロセスを改善する4つのステップ

ここでは、営業プロセスを改善するステップを解説します。営業プロセスは主に、以下のような場合に見直します。

  • 前提となる「目標」「戦略」が大きく変わった
  • 「目標」「戦略」は変わっていないが「戦術」を変える必要が出てきた
  • 現状の営業プロセスで予想していた成果が上がらなくなった

例えば、現状の営業プロセスでは新しい時代についていけない、一年前は効果的だった営業プロセスも、同じような手法をとる同業他社が増えたため効果が薄れてきた、営業プロセスそのものに粗があり失注が多く改善する必要があるという時などに見直します。

以下が見直すステップです。

ステップ1:現状の営業プロセスのボトルネックを調べる(原因特定)

営業プロセスを改善するにあたり、まず行うことは現状の営業プロセスのボトルネックの洗い出しです。KPIの数字の検証と現場の営業マンからのヒアリングから「真のボトルネック」をつきとめます。

例えば、KPIで「商談数」が伸びないことがボトルネックになっている場合、さまざまな理由が考えられます。KPIを見ると全体的にアプローチ数も少ないし、会話の質が悪いという場合でも、営業マンからヒアリングを行い事実に基づいた原因を特定します。

ヒアリング内容例:

  • ターゲット層は適当と思うか?
  • 最初のコミュニケーションでヒアリングはスムーズにできているか?
  • アポイントが取れないのはなぜだと思うか?
  • 何があればお客様の課題がより把握しやすくなると思うか?
  • 決裁者に会えない理由は何か?会うためには何が必要だと思うか?
  • やめるべき営業アプローチ手法はあるか?
  • 取り入れるべき営業アプローチ手法はあるか?

そもそも、商談を増やしたいのは営業マンも同じです。「商談を増やせ」と言われても簡単に増やせないから困っているのです。その大きな原因が営業マンの能力やスキルなのか?営業プロセスそのものの問題か?ツール不足など違う要因なのか?などをまず見極めることが大切です。この時点で営業マンの意見を十分聞くことが、営業プロセスを見直すときに役立ちます。

ステップ2:営業マンのスキル以外の原因があれば先に対策する

商談数が増やせないというボトルネックの場合、

お客様の課題が把握できていない
 ↓
そもそもヒアリングができていない
 ↓
アプローチの段階で信頼が得られてない
 ↓
それはなぜだろうか?

と、突き詰めて考えていくことが必要です。多くの営業マンが商談を増やせないという同じ状態であれば、何が原因かを追求する必要があります。

例えば、事例不足が原因だった場合、初めて会う営業マンに「御社の課題は何でしょうか」と直接的に質問されて親切に教えてくれるお客様はあまり多くありません。営業マンが興味深い事例などを提示してはじめて、「この会社なら……」と少し相談し始めるような流れが多いと思います。

ボトルネックの原因に、営業マンの武器に相当する「お客様に提供できる事例」「お客様に役立てる情報」などのツールが不足していないか確認しましょう。場合によっては不足しているがゆえに、営業マンが事例作成や提案資料作成に追われて、外勤時間が多く取れないでいる可能性もあります。しかも多くの場合その事例は属人化しています。

もし、営業マンの環境面が整っていないのであれば、先に根本的な対策をしないと、営業プロセスの徹底だけ指示しても大きな効果は上がらない可能性があります。

ステップ3:新しい営業プロセスを構築する(対策決定)

資料も事例も十分にあり、単純に営業マンがお客様を見極め切れていなかったりニーズの少ない企業にアプローチしている場合もあります。その場合は営業プロセスの顧客ターゲティングの条件(どのようなお客様を中心に営業していくのか)を再定義したり、「決裁者面談率」をKPIにするなど営業プロセスの運用を見直すだけでも効果は上がるでしょう。

元々の営業プロセスが曖昧だった場合は、単純に営業プロセスを見直すだけで状況が改善する場合もあります。また、市場の変化に合わせて営業プロセスを柔軟に見直し、成果を上げることができる場合もあります。

以下に、3パターンの営業プロセス改善例を紹介します。

例1)展示会出展後の営業フォローができておらず売上げに結びついていない

ボトルネック:長期的なフォロー

展示会営業などは通常の営業活動とは異なりイベントという印象が強く、そこでお客様を獲得できなくても大きなペナルティもないため、あまり費用対効果を気にされないところがあります。そのため出展して終わり、営業マンも一度電話をかけて放置となる場合が少なくありません。

しかし、アプローチから受注までの流れを具体的に図で可視化して営業マンに営業活動を理解してもらえば、収集した名刺情報が売上げに結びつく可能性が高くなります。営業プロセスを可視化することで、営業マンの責任範囲が明確になります。

(以前の営業プロセス)

以前のプロセス

(改善後の展示会営業プロセス)

改善後の展示会営業プロセス

ポイント:展示会で収集した名刺・アンケート情報を整理し、見込み度の高いお客様には営業が直接コール。それ以外のお客様にはメールマガジンを配信(配信許可はアンケートで事前に確認)。信頼関係を構築しながら問い合わせを促進するとともに、メルマガ内URLクリック率の高いお客様などには、別途コールも行いアポを獲得する。

例2)営業マンの提案通過率が低い

ボトルネック:提案通過率

提案数は多いものの提案通過率が低いことがボトルネックの場合、お客様に商材のニーズが発生する時期を確認できていなかったり、決裁者(キーマン)に会えていないなど見極めが曖昧である可能性もあります。この場合営業プロセス上で「BANT条件」を可視化するのもよいでしょう。

BANT条件とは、Budget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(必要性)、Time(導入時期)の4つの条件のことです。もちろん、「予算はいくらですか?」「いつごろ導入するつもりですか?」と詰問する調子で聞くのではなく、さまざまな質問を重ねながらお客様の状況を把握していきます。必ず提案の前には押さえておかなければいけません。

BANTを意識することで、営業マンがニーズが当面ない企業に必要以上に訪問することや、ダメもとでとりあえず提案するというムダな仕事を避けることができ、営業活動を効率化することができるでしょう。

(以前の営業プロセス)

以前の営業プロセス

(改善後の営業プロセス)

改善後の営業プロセス

例3)営業ターゲットが枯渇していたため戦略と営業プロセスを変更

ボトルネック:アポイント数不足

背景:営業ターゲットの枯渇。中小企業経営者をターゲットとした経営コンサルティング事業を行ってきたがすでに市場をあたりつくしており難易度の高い顧客か予算の少ない企業しか残っておらずアポ獲得が難しい。

戦略:営業ターゲットを中小企業経営者のみ → 中堅企業の部課長までに広げる

商材:経営コンサルティング → 組織開発、働き方改革支援。総務人事部門の働き方改革・採用、ハラスメント・コンプライアンス対策など現状ニーズの高まっているテーマに対して、経営に強い優位性を活かした人事コンサルティングができるという切り口でアプローチ。

(以前の営業プロセス)

以前の営業プロセス

(変更後の営業プロセス)

変更後の営業プロセス

ポイント:アポイントの対象が経営者相手ではなくなったので、再度近い条件のターゲットに電話営業でアプローチを行うことができる。経営者よりアポイントは取得しやすいが、決裁までには時間がかかり提案通過率も下がる可能性が高い。しかし、アプローチ対象者が格段に増えるため売上げ拡大は見込める。

ステップ4:現場に新しいKPIを定義(PDCAを回す)

新しい営業プロセスを決めたら、そのプロセスを通して「目標」「戦略」に一番影響する要因(KPI)を決めます。営業マンに意識してもらうKPIは可能な限り少ないほうが上手くいきます。営業マンの習熟度にもよりますが、「商談数」「キーマン面談率」など、簡単でわかりやすいKPIが望ましいでしょう。

KPIを決定した後は、各営業マンのKPIを確認し変化を見守ります。KPIを達成できなくても営業マンが数字を上げることはあります。逆にKPIを達成しても、数字が未達成の場合も出てきます。

管理職としては数字を達成した営業マンを褒めたい心情になると思いますが、KPIの数字と実際の売上げにタイムラグは発生する場合もあるので、KPIを愚直に達成している営業マンを評価することを忘れないようにしましょう。売上げが上がったときだけ評価するのではなく、営業プロセスを評価することで、営業マンもKPIに対してより真剣になります。

また、KPIは目標・戦略から導き出されたものですが、市場は景気の変動を常に受けており、競合他社も予想のつかない動きをしてきます。現在の戦略・戦術で勝てないと判断したら、営業プロセスを大きく変える必要も出てくるでしょう。

営業プロセスもKPIもあくまで目標を達成するための打ち手なので、現場の営業マンの意見も反映しながら、もっとも良い営業プロセスを目指して絶えず改善を加えていく姿勢を持つことが大切です。

まとめ

営業プロセスとは「目標」や「戦略」の実行のために「何をするか (=how to do)」ということです。

営業プロセスは「戦術」に位置するので、さまざまな選択肢があります。特に近年は、デジタル営業の打ち手がかなり増えています。変化の速い今の時代において最適な営業プロセスを作り上げるには、定期的に現状の営業プロセスを見直しする必要があります。

自社の営業プロセスを可視化してプロセスごとのKPIの数字の変化を追い続けていると、これからの時代はどのような営業プロセスが効果的か見えてきます。もちろん、個々の営業マンがよく躓く段階もわかり営業マンの育成もしやすくなります。市場の変化もチームの状況も一目瞭然にわかるようになります。まず、自社の営業プロセスを可視化してみましょう。

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    営業ワークフローと営業ツール標準化《実践ガイド》

佐原 業平(さはら なりひら)

中央大学商学部を卒業後、2016年に新卒で株式会社コンベックスに入社。 新規開拓営業を経験した後、eBook・セミナー・研修のコンテンツの作成に従事。 そこで培った営業とマーケティングの知見を生かし、「セールスハックス」の運営に取り組む。 経営者から営業マンまで、ビジネス現場を理解したお役に立てる情報を発信。

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