成果につながる営業プロセスの見える化のポイント

成果 営業プロセス

2019年4月1日から「働き方改革」が順次施行されてます。残業の制限が厳しくなり、有給取得の方法も変わることから、今まで以上に限られた時間の中で成果を出すことが求められます。そのため、営業の効率化や生産性向上に関心がある方も多いのではないでしょうか。そこで、成果につながる営業プロセスの見える化についてご紹介します。

今回は、営業アプローチの振り返りから、プロセス分解、フロー図への落とし込み、運用までを網羅してご紹介します。

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営業プロセスの見える化とは

営業プロセスの見える化とは、アプローチから受注までの流れをフロー図などにまとめて、可視化することをいいます。例えば、以下の図のように営業活動を分解していきます。

営業プロセス

では、なぜ営業プロセスを見える化するべきなのでしょうか。例として、OA機器メーカーの営業チームをみてみましょう。現在、年間予算の達成率は70%。残り3ヶ月で目標達成をし、110%達成を目指すという営業会議の場面です。

A部長の場合

「とにかく訪問数を増やそう。今までの1.2倍の行動量確保!」

B部長の場合

「訪問数は目標達成しているが、提案合意がとれていないな、要因は何か。

  • 成果を出している営業マンは決裁者に会えている(課長以上面談率50%以上)
  • 成果が乏しい営業マンは決裁者に会えていない(課長以上面談率が20%以下)

では、営業プロセスを細かく分解し、営業マン毎で面談者に差がでる要因を分析しよう」

課題特定

この場合、どちらの部長が率いるチームが成果を上げられる可能性が高いでしょうか。

両者の違いは、課題特定の精度です。営業プロセス見える化のメリットは、課題特定の精度をあげることにより、効果的な施策を導き出しやすいという点にあります。見える化により上手くいかない理由がわかり、そこを集中的に改善することにより、より成果が出やすくなるからです。ここからは、営業プロセス見える化の具体的なやり方を解説していきます。

現状の営業アプローチを振り返る

まずは、現状の営業活動を振り返ります。振り返る目的は、全体を俯瞰して「上手くいっていない要因の特定するため」です。振り返りのポイントは3つあります。

① チームのアウトプットを定義せよ

まずは、KGIを明確にします。KGI(Key Goal Indicator)は、「重要目標達成指標」と訳され、「結果」を見る指標です。営業部門であれば、売上げや成約件数、粗利がこれにあたることが多いでしょう。第三者が見ても客観的に判断できるように、目標期日と達成水準を明確にするのが基本です。目標に対して、進捗がどうかを推し量るためのものです。

② プロセス指標はSMARTに

KGIを明らかにしたら、KPIを明確にします。KPI(Key Performance Indicator)は「重要業績評価指標」と訳され、KGIを達成するための「過程」を見る指標です。KPIを設定する際は「SMART」かどうかを確認していくと、目標達成がしやすくなります。「SMART」とは下記のそれぞれの頭文字をとったものです。

Specific 「具体的な」

新規面談数、見積提出数など、誰もが分かるような具体性が必要です。曖昧な表現は使わずに具体的にします。新入社員でも分かるか、経営層や上司でも分かるか、他の部署の社員でも分かるかなどの視点でチェックしていきます。

Measurable 「計測可能な」

KPIは、KGI達成までの過程を管理するものです。今目標に対してどれくらいまで来ているのか、達成までにあとどれくらい必要なのかを定量的に計測する必要があります。新規面談数目標30件に対して、実績15件、進捗率50%、というように数字で測れるものにします。

Achievable 「達成可能な」

高い目標値を達成するためにあまりに非現実的な目標数値になっていないか確認しましょう。例えば、「月間120件訪問」という目標設定をしたとします。月20日稼働として一日当たり6件です。1件当たりの時間が1時間以上かかるような提案型営業では、準備等の時間も含めると現実的には達成が難しい数字となります。頑張れば手が届くくらいの数値にするのが良いでしょう。

Related 「関連した」

KPIで設定した指標が、KGIと連動しているか、営業チームの戦略や会社のミッションに関連しているかを確認します。KGIの達成が最終的な目標であるため、直接結びつかない項目はKPIとして適してはいません。

Time-bounded 「期限がある」

期限が定まっていない項目はKPIではありません。期限があってはじめて達成度合いが測れるからです。目標達成するには、一週間当たり新規面談があと○○件必要というように納期があるからこそ、週単位、一日単位に落とし込むことができます。

KGIとKPIは、下図のような関係性になります。どのような状態であれば目標が達成されているか、目標を達成するためには、いつまでに何をどれくらいやればいいのかのKGI・KPI設定は目標達成の手助けをしてくれるでしょう。

例)KGIが成約件数の場合

KGI

成約件数 = 問い合わせ数 × アポ率 × 受注率

成約件数(100件)= 問い合わせ数(500件)× アポ率(60%)× 受注率(34%)

これらのKPIを日々モニタリングし、KPI①が下がったときには、広告予算を増やしたり、KPI②を上げたりする施策を打ったりしながらゴールを目指します。KPIは状況に合わせて柔軟に変化させていきます。

③ ギャップを明確する

KGIとKPIを明確にしたら、「目標」と「現状」を書き出します。そうすると目標と現状の差異(=ギャップ)がわかります。例として、WEBで集客をして、店舗で反響営業をするリノベーション会社を見てみましょう。この営業チームのKGIは成約件数。KPIは新規面談数、サービス申込率、申込顧客からの受注率です。

KGIとKPIの明確化

KGI、KPIを可視化した上で現状を振り返ることにより、目標達成するためには何をいつまでにどれくらいやるべきかが明確になります。これを行わないと、注力するすべきプロセスがどこなのかがが定まりません。課題をおおまかに見つけた上で、営業プロセスの分解にとりかかりましょう。

この場合、KGIが未達成となっています。KPIを見ていくと目標値を下回っている「サービス申込率」がボトルネックといえます。「サービス申込率」にかかわるプロセスを重点的に見直していくこと生産性向上の鍵となるでしょう。

営業アプローチをプロセスに分解する

営業アプローチとは、受注に至るまでのプロセス(見込み客リストの選定、アポ取り、ヒアリング、提案、クロージングなど)を細かく分解することをいいます。営業アプローチをプロセスに分解することで、具体的にどこのプロセスがうまくいっていて、うまくいっていないかの分析が可能になり、営業効率を高める有効な施策が導きやすくなります。例えば、「分解」にはこんなストーリーもあります。

松下幸之助は「分解」によってトップに立った?

1961年、松下通信工業にトヨタ自動車からカーラジオの金額を20%下げて欲しいという要請がありました。皆が諦めムードの中、松下氏はラジオを分解し、すべての部品をボードに貼り、横に価格を書き、一番高いものから原価を分析していきました。結果、性能は同じで価格は他社より20%安いカーラジオが出来上がり、カーラジオのトップメーカーへと押し上げました。

営業プロセスも同様に現状の営業プロセスを分解し、各プロセスが効率よく実行できているのかを見ていくことが重要です。それにより他社との差別化できるポイントが見つかるかもしれません。

対象プロセスの「スタート」と「ゴール」を決める

まずは、対象プロセスの「スタート」とゴール」を設定します。これを明確にすることで計測が可能になるからです。計測が可能になれば、目標値と現状のギャップが明確になり、解決策がうちやすくなります。そのため、「スタート」と「ゴール」は誰が見ても分かる客観的なものにします。

例)不動産会社の物件問い合わせ

スタート:電話及びWEB問い合わせ
ゴール:内覧のアポ取得

例)結婚式場の会場予約

スタート:お客様の来場
ゴール:会場の仮押さえと手付金の入金

「現場感」のあるプロセスを 

「スタート」と「ゴール」が決まったら、間の過程を書き出します。もしあなたが営業も行うプレイングマネージャーであれば、自分の普段のやり方をもとに書き出していきます。他の営業マンにもヒアリングしながら、共通するプロセスをまとめていきます。ヒアリングではどんな項目を聴いているのか、どんなタイミングで提案を始めているのかなど具体的に書き出します。

例)リノベーション企業の初回コンタクトからサービス申込までの営業プロセス

問題発見と問題解決のフェーズ

実際にプロセスに分解した例です。「問題発見」と「問題解決」の2つのフェーズからそれぞれ細分化しています。このように、大きなプロセスから徐々に枝葉のように広げていくと、全体像が見えやすくなり、プロセスに抜け漏れがないかを確認しやすくなります。

一通り形ができてきたら、営業マンの視点ではなく、顧客からの視点で見ていきしょう。顧客が自社サービスや商品を購入しなければいけない理由は何でしょうか。どんなお困り事をどうやって解決できるから顧客は商品にお金を払ってくれるのでしょうか。既存の信頼関係が強い顧客なら、直接聴いてみるのもオススメです。営業マン視点では見えなかった思わぬ気付きを得ることもあるでしょう。

分解した営業プロセスをフロー図に落とし込む

最後に、プロセス分解によってでてきた材料をもとに、フロー図に落としこんでいきます。一旦ばらして細かくした部品を再度組み立てていく段階です。フロー図にすることで、営業プロセスの手順を明確に表すことができます。「これをやったら次はこれ」というように誰が何をなすべきかが明確になることで、入社したばかりのメンバーや新卒社員でも、素早く営業アプローチを身につけることができるでしょう。

① 条件分岐をつくる

営業マンのアクションに対して、顧客の反応が「YES」か「NO」か条件分岐を使って落とし込んでいきます。営業でよく言われるのが「小さなYESを積み重ねる」ということ。どこでどんな「YES」を積み重ねていけば、受注に至るのかを考えながら落とし込んでいきましょう。

営業マンのアクション

② 振り返りでプロセスの微調整をする

一度フロー図を作って完成ではありません。それをベースに実験と検証を繰り返していきます。例えば、「YES」「NO」の判断はそれぞれの営業マンによって異なることもあるでしょう。これを振り返りによって精度を高めていきます。振り返りにはKPTというフレームワークがオススメです。KEEP(よかったこと)、PROBLEM(問題点)、TRY(次に試すこと)の頭文字をとったものです。

KPT

例えば、提案の合意がなかなかとれない場合は、TRYとして、ヒアリングシートを作成する等です。ヒアリング項目を網羅したシートを作成することで、営業マンのスキルのバラつきによるヌケモレを軽減し、精度向上につながる可能性があります。フロー図が完成したら週次でKPTを回して、フロー図の精度を上げていくことで、より高い効果が期待できるでしょう。

③ 習熟度別のマネジメントを

振り返りと合わせて、マネジメントも大切な要素です。営業マンの中には、フロー図など必要ないようなハイパフォーマーもいれば、伝えたこともなかなかうまくできないローパフォーマーもいるからです。大切なのは、メンバーの習熟度別にマネジメントをすること。習熟度別に指示の量や内容を変えていき、メンバーのアウトプットを最大化することを意識します。

例)タスク習熟度別マネジメント「ヒアリング編」

「低」・・・ 作業で渡す。ヒアリングシートを作成し、その通りに行うように指示。
「中」 ・・・業務で渡す。 目的とゴールを共有し、やり方は任せる
「高」 ・・・職務で渡す。営業プロセスそのものの構築の協力を依頼する。

まとめ

営業プロセス見える化とは、営業生産性を上げる手法の一つです。アプローチから受注までのプロセスを見える化することにより、改善すべき点を特定し、効果的な施策を導き出すことができます。営業プロセスの見える化のステップをまとめると以下のようになります。

① 現状を振り返る:ボトルネックの発見のため
② 営業プロセス分解する:有効な施策の導き出しのため
③ 営業フロー図に落とし込む:誰もが施策をできるように標準化するため

営業プロセス見える化と合わせて、営業ツールの見直しをすることでさらなる効果を見込めます。例えば、電話とメールの効率化により、営業効率を2.6倍にした事例も。やみくもなツールの導入は逆効果ですが、ここまで営業プロセスを見える化し、フロー図にした段階では是非ツールの導入も検討してみてはいかがでしょうか。ご興味のある方は是非「営業ワークフローと営業ツール標準化《実践ガイド》」をご覧ください。

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