飛び込み法人営業をする前に知っておくべきこと

飛び込み 営業

飛び込み営業は、新規開拓営業手法の中でもテレアポと並ぶ昔からある代表的な営業スタイルです。いわば「昭和の営業」「OLD営業」の象徴のような存在かもしれません。しかし、一定の再現性がある手法なため、現在でも多くの企業が新規アプローチの手法として取り入れています。

現場の厳しさを教えるためか、昔から新人社員研修で飛び込み営業をさせる企業も少なくありません。昨今は海外インターンシップで、新興国(インド、ベトナム等)で飛び込み営業をさせる企画も目立ちます。現場を重視する日本企業が、飛び込み営業を仕事の基本として重視する姿勢は、令和の時代になっても変わらないのかもしれません。

飛び込み営業は毎日何十件と断られるのが「あたり前の世界」です。

法人向けの飛び込み営業の場合は一般住宅を回るよりは柔らかい対応をされるものの、やはり精神の強さが必要であり難易度は高い仕事だと言えるでしょう。ましてや、昨今はセキュリティの厳しいビルが増え、働き方改革で誰もが忙しくしています。飛び込み営業はこれまでよりさらに受け入れられにくくなっており、営業マンにとって厳しい時代になりつつあることはたしかです。

本記事では、これからの時代に法人飛び込み営業で成果をあげるための知識やコツ、飛び込み営業にかわる新しい営業手法などをご紹介します。

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飛び込み営業とは?

飛び込み営業とは、アポイントなしで取引のない企業に訪問する新規開拓営業手法のことです。 

一見非効率に見えるかもしれませんが、オフィス機器や通信サービス、採用関連サービスなど、どの企業にもある程度ニーズがある商品・サービスを販売する場合や飲食店、小売店向けの営業の場合などは比較的有効です。エリア内の見込み客数が多いため短時間で営業マンが集中して飛び込み営業を行うことで、一定の確率でニーズのある企業を見つけることができるからです。

また、営業マンがテレアポやメール営業でコンタクトがとれない企業には飛び込み営業をするなど、営業手法の一つとして柔軟に活用していることも多いと言えます。

新人研修で飛び込み営業を実施する企業が多いのは前述のとおりですが、フレッシュな若者があまり商品知識もないまま飛び込んできても、どこか「春の風物詩」ように鷹揚(おうよう)に受けとめられている感があります。

飛び込み営業はネガティブな評価も多いものの、長い歴史があるためかビジネス慣習として日本で容認されている面があると言えるでしょう。

飛び込み営業の現状

しかし、飛び込み営業に代表されるアナログ営業の存在価値が今後厳しくなることは多方面から予測されています。実際、営業マンの数は2000年から2015年の間に150万人も減少しており、代わりに営業・販売事務職というカテゴリーが出現し、増加傾向にあります。

営業職の長期推移

今は企業もさまざまなBtoB受発注サイト、相見積りサイトなどから取引企業を探すことができ、お客様自身の検索能力も向上しています。米国では2013年時点の研究ですでに、見込み客は営業マンに接触する以前に購買プロセスの60%を終了していると報告されています。

インターネットに出ているような情報であればお客様は営業マンを必要としない時代になりつつあるため、単純にパンフレットを配るような飛び込み営業は、今後はさらにお客様の評価を得ることが厳しくなる可能性があります。

飛び込み営業が迷惑と思われる理由

BtoB市場での飛び込み営業が個人宅向けほど厳しい対応をされないのは、企業側にビジネスマンとして「どんな相手にも礼儀正しく接する」という姿勢があることが大きいと言えます。現実には「うちは飛び込み営業を歓迎します」という企業は恐らくほぼなく、迷惑がられることが多い手法であることは否めません。

一般に、お客様が飛び込み営業を迷惑がるのは以下の理由です。

  • 仕事を中断して対応しなければならない(集中力が途切れる)
  • 話を聞いたのにまったく大した要件ではなかった(時間のムダ)
  • 「社長はいますか?」などと知り合いであるかのようなトークで会おうとする営業マンがいる
  • 営業マンが礼儀正しくない

特に無作為に「数うちゃ当たる」というスタンスで行われる、何のインサイト(お客様の課題解決の有益なヒント)も提供できない飛び込み営業は、よほどタイミングがあわない限り迷惑になりがちです。

法人向けに飛び込み営業をする際は、お客様と営業マンの貴重な時間を無駄にしないように事前のリサーチや計画、相手に有益な情報を与える姿勢が必要です。

飛び込み営業のコツと成功率を高めるには?

今の時代、飛び込み営業で成果をあげるにはきちんと戦略・戦術を練ることが大事です。また、1~2分という短時間で信頼を得るためには「簡潔なトークの用意、基本的な礼儀、第一印象を高める努力」が必要です。ここでは飛び込み営業のコツを紹介します。

飛び込み営業のコツ

コツ1:飛び込み先の情報をリサーチする

飛び込み営業はエリア限定で行う場合や業界をしぼって行う場合、大口の見込み客に限定して行う場合などがあると思います。いずれの場合も飛び込み先をリサーチし、できるだけ相手が興味を持ちそうな情報を把握することがポイントです。近年はインターネットやSNSの普及により、営業マンも従来では知ることができなかった情報を知ることができると思います。

企業情報、業界動向、お客様の課題となっていそうな情報をリサーチして、持参する資料もその課題に役立つデータや情報にすることが望ましいでしょう。

コツ2:アプローチ商材を工夫し、提案の姿勢を持つ

アプローチ用の商材はできるだけ新サービス、あるいは同業の他社事例などお客様にとって目新しい情報が望ましいと言えます。チラシ1枚であっても、例えば「今、社会はこのように変化しており、こんな成功事例が増えている」という情報を出してお客様の興味を引き付けることがポイントです。

「無料業界セミナーのご案内」なども比較的好印象を持たれやすい案内ツールです。

コツ3:飛び込み先と似ている企業のデータを活用する

対象のお客様の情報が、インターネットなどにあまり出ていないこともあります。その場合でも同じ業界、特にトップ企業の動きを把握し、それにより飛び込み先がその業界でどのような強みをもっているか、どのような点を強化すべきかをつかみます。

例えば、トヨタ自動車が自動運転市場に業界が大きく動いていくことを見据えてソフトバンク社と提携したり、中途採用比率を全体の5割に高める動きをすることは、巨大産業である自動車業界関連各企業の多くが気になると思います。

自動車関連業界の企業が新規事業創出に力を入れなければならないという見方もできれば、大手自動車業界から優秀な人材をスカウトできるチャンスと見ることもできます。業界の動向を知っているとちょっとした立ち話の際も話がはずみやすくなります。少なくとも「よく勉強している」という印象は与えらえるでしょう。

コツ4:第一印象を向上させる

飛び込み営業は第一印象勝負のところがあります。メラビアンの法則でも言われるように人は8割を非言語情報(視覚、聴覚)で判断するため、いかに知識が豊富で素晴らしい提案力を持っていても、第一印象が今ひとつだとそこで終わってしまうのが飛び込み営業のつらいところです。

ビジネスマナー、表情、雰囲気すべてに気をつけるべきであり、このような細部への配慮が、むしろ飛び込み営業の成否の分かれ目と言っても言い過ぎではありません。以下、飛び込み営業で第一印象を高めるために見直すべき基本やコツをご紹介します。

最初と最後のお辞儀(15度)を美しく決める

飛び込み営業が嫌われたり、ヒンシュクをかう大きな理由に営業マンの「礼儀がなっていない」ということもあります。基本的なことなので見過ごしがちですが、意外にお辞儀がぞんざいになったり、妙にペコペコしたりと自己流のクセがついている場合があります。

今一度お辞儀の15度、30度、45度の角度と意味合いを押さえ、飛び込み営業でよく使う15度の角度のお辞儀を、すっと綺麗に決めることができるように練習するとよいと思います。特に、去り際のお辞儀が大切です。

情けない飛び込み営業では、1日100件訪問すると90件以上はお客様と会えないか、会えたとしても「時間がない」「今のところニーズがない」とタイミングが合わなかったりします。

商材にもよりますがその日に受注が決まることはほぼなく、あとからお客様に電話やメールでアプローチしていく必要があります。去り際に美しいお辞儀で立ち去ると好印象が残り、次のステップにつなげやすくなります。

また、焦ってそそくさと去る感じになると営業マン自身も情けない気持ちになることがあるかもしれませんが、正しいビジネスマナーにのっとり一礼して立ち去ると、不思議と自己肯定感が保て1日のモチベーションを維持しやすくなるメリットがあります。

簡潔さ、リズム、間合いに気を付ける

飛び込み営業の最初のトークはいくつかのパターンを事前に決めておきましょう。相手が出てきたら簡潔に話します。忙しい方が多い業界は間合いがゆっくりだと、すぐ「うちは結構です!」と言われてしまうのでリズムを相手に合わせることが大切です。ペーシングとも言われますが、相手とペース合わせようという気持ちでいることがコツです。

なお、古いビルなどでドアを開けて訪問する場合は「相手が一歩引いたら自分も一歩引く」のがコツです。つい一歩踏み出してしまいたくなるかもしれませんが、相手は何かしらの警戒心から後ずさっているので少し引いたほうが安心してもらえます。

色彩のパワーも活用

就職、アルバイトなどの面接では「ドアを開けてから椅子に座るまでで採用が決まる」と昔から言われています。第一印象が非常に重要なため、近年は就活向けのパーソナルカラー講座なども増えています。営業マン個人が受けてもよいのですが、飛び込み営業を新規開拓営業手法の中心にする企業なら、研修で営業マン全員に「似合う色」を知ってもらうことも効果的だと思います。

色の活用など小技に思えるかもしれませんが、似合う色は本人の第一印象を向上させます。また、例えば黄色は、「コミュニケーション色」「ラッキーカラー」とも言われます。理由には元気な印象を与えるなどさまざまな言説があるのですが、色の中でもっとも「瞳孔を動かさずに認識できる色」であることは、色彩の研究で判明しています。そのため信号機、看板などにも使われています。

つまり、すっと相手の目に飛び込む色なのです。営業マンなら誠実な印象を与える紺のスーツに淡い黄色のネクタイを身につけることで相手の印象に残りやすくなるかもしれません。

ある大手外資系IT企業には昔、「赤の会議室」、「青の会議室」があり、会議のテーマによって使い分けていたという話があります。無意識に人の気持ちに影響する色のパワーを知ると自分のメンタルコントロールにも役立つでしょう。

飛び込み営業から卒業するには?

法人向けの飛び込み営業でも、創意工夫すれば今後も成績をあげることはできるでしょう。しかし、時代も人々の意識もビジネスの進め方も常に進化します。飛び込み営業が合わなくなった局面を感じるのであれば、新しい営業手法も取り入れる必要があります。

何より、飛び込み営業はアプローチできる企業数に限りがあります。営業管理職や経営者の方がさらに売上げをあげたい、効率をあげたいという場合には人海戦術だけではなく、テクノロジーを活用して効率的に集客できる新しい手法を検討する価値はあります。

とは言え、相見積もりサイトなどいわゆるプラットフォームに頼ってばかりいると、価格競争を余儀なくされることが多くなります。また、景気が落ち込んだときなどに頼りになるのは、やはり自社の営業力、集客力です。 

以下に近年の新しい営業手法の代表的なものを紹介します。

方法1:ウェブ集客への注力

Web上でお客様に自社をみつけてもらうために、オウンドメディア(自社が運営するメディア)を立ち上げて、集客するインバウンド型の営業手法です。

例えば、自社のお客様が「〇〇 対策」「〇〇 成功事例」と検索しそうだと仮定を立てて、「〇〇の対策と効果事例を紹介」という記事をアップします。より詳細なノウハウを小冊子化してダンロードコンテンツにすることでメールアドレスを取得し、定期的に情報を提供しながらお客様と信頼関係を構築していく手法です。

もちろんWebに訪れる方すべてがお客様ではありませんが、何割かは自社の商品・サービスに興味を持っている方なので、ニーズ発生前に自社を知ってもらうことができるのです。オウンドメディアの長所は、広告とは違って記事がずっと掲載されるところです。24時間365日情報を発信できます。

昨今は、お客様のWeb上の行動解析をできるMAツールもあります。匿名情報ではあっても「このお客様は事例が気になる」「このお客様はいつもすぐ離脱するのに最近熱心に内容を読んでいる」などの傾向もわかります。お客様の動きに合わせてWeb上のチャットで営業マンが対応できる仕組みを構築することも可能です。

メールアドレスを登録いただいたお客様にはメールマガジンを送ったり、見込み度に合わせて電話やメールでアプローチが可能です。即効性があるというよりは中長期的な戦略ですが、見込み客を増やすのに有効です。

オウンドメディアの成功例としてよく知られるサイトは以下のとおりです。

方法2:SNS営業

米国ではB2B営業でもSNS活用が盛んですが、日本でも昨今はFacebook、Twitter、リンクトイン、Instagramなどで社員全員が発信したり、会社の許可を得て個人として仕事について発信するようなSNS活用法が増えてきました。

日本の場合はSNSで直接DMを送るというよりは、どちらかというと「当社はこのようなことをしています」ということを発信して、引き合いを集めるスタンスが多い印象です。

SNS営業の魅力は「コストが発生しないこと」と「拡散力」です。例えば、Twitterでフォロワー数が500人だとしても、フォロワーの何人かが「いいね」してくれたりリツィートしてくれたたりすると、掛け算で情報が拡散していきます。商品・サービスの宣伝だけでなくセミナー、展示会への集客にも効果を発揮します。

方法2:デジタルツールの活用

デジタルツールを活用することも営業活動を効率化させるために重要です。 

メール営業

メール営業は営業する側にとっては飛び込み営業やテレアポより気持ちが楽な手法であり、お客様にとっても不要なら削除すればよいだけなので双方にストレスがあまりない手法です。しかも、テキストやリンク先の紹介などで十分な企業説明、商品説明も可能です。

昨今はWebサイトからメールアドレスを収集するITツールもありますし、業界団体のサイトなどで各企業のメールアドレスを紹介している場合があるため、リストを作成してメールDMを送ることもできます。なお、HPなどで電子メールアドレスを公表していても「営業お断り」という趣旨の記載がある場合は、同意なく送信すると法律違反になるため気をつけましょう。

 Webや展示会で集客したり、テレアポや飛び込み営業で知ることができたメールアドレスにも定期的に情報をお送りすることで、潜在的な見込み客に社名、商材名を覚えていただける効果があります。

オンライン商談ツール

最近は、コミカルなオンライン商談ツールのCMが話題になったりします。オンライン商談ツールは、オフィスにいながら「お客様と会う」ことができる画期的なツールです。テキストだけのコミュニケーションより信頼関係が築きやすく、対面の営業より距離感が保てるためお客様がプレッシャーを感じない良さがあります。

また、お互いの時間を節約できます。移動時間がなくなることで営業マンの1日の商談件数のアップにもつながるでしょう。オンライン商談ツールについては、今なら特に働き方改革の影響もあり、業務効率化につながるという考え方からお客様も試しておこうという意識になりやすいと思います。

方法3:既存顧客へのアップセル

オウンドメディアやSNS営業、オンライン営業などは新しい手法とはいえ新規開拓営業なので、それなりに時間はかかります。新規開拓営業の労力は既存顧客営業の5倍と言われます。既存顧客であれば信頼関係もできているため、話を聞いてもらえる確率は高くなります。

シンプルな手法としては、スケールメリットを理解していただき単発の契約 → 年間契約にしていただく、より高機能なサービスが適するのであれば、高価格の製品を一度お試しいただいてみて効果を実感していただく方法もあります(もちろん、あくまで課題解決に適していればということであり、過剰な機能があって高いだけの製品を営業するということではありません)。

取引企業の違う事業部を紹介してもらうことも有効です。本社、支店、工場などにもニーズがありそれぞれの部署が予算を持っていることは多々あります。仕事につながらなくても、各現場の意見を知ることができるのでお客様の全体像をより深く理解でき、今後の提案の際に役立ちます。

難易度は高いのですが、もっとも理想的なのはお客様が「〇〇が課題」と言われる場合、その課題にこたえるだけでは対処療法にしかならないことも少なくないため、本質的な課題を把握し全社的なプロダクトに取り組むような大きな提案をするインサイト営業を心がけることだと言えます。

まとめ

法人への飛び込み営業は、テレアポとともに現状ではある程度数字が読める営業手法だと言えます。まれに大きな取引に発展することもあり、飛び込み営業を長く経験してきた営業マンの方はその効果を実感しているかもしれません。

ただ、今はかなりのスピードでビジネスがデジタル化しており、大半のことがWeb上できるようになりつつあります。それこそ「飛び込み営業をする前段階」をめがけて、多くの企業がアプローチし始めている状況だと言えます。

変化の激しい時代なので、時代の波に合わせながら新旧さまざまなアプローチ手段を柔軟に使っていくことが、売上げをあげるためには大切です。

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